原子力平和利用研究委託費の交付研究の概要

1.高温プラズマ現象の測定に関する研究

 ① 理化学研究所    ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 6,628,350円    ④ 6,628,350円

〔目 的〕マイクロ波および流し写真による高温プラズマの測定法を研究すると同時に、それによりプラズマの物理的特性を測定し高温プラズマの基礎資料を得る。

〔内 容〕(1)流し写真を用い、プラズマの形態の時間的変化を観察し、その電流電圧、放電管内磁束、スペクトル線強度等の時間的変化と比較し、プラズマの物理的特性研究の一助とする。
(2)35GC帯のマイクロ波を用い、プラズマによる移相量の時間的変化を測定することにより、プラズマの電子密度の変化を知る。この際プラズマによるマイクロ波の散乱、反射に基づく誤差を補正し、測定の正確を期する。

2.核融合器壁材料のプラズマによる損傷の研究

 ① 理化学研究所    ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 1,841,453円    ④ 1,841,453円

〔目 的)種々の器壁材料のスパッターリング特性を研究し各種材料の優劣を比較検討し核融合反応器の器壁材料として最適な材料を探究する。

〔内 容〕(1)既設の小型陽イオン照射装置(PIG型、加速電圧10kV、イオン電流10~20μA)の一部を改造する。すなわちマグネットの製作、真空系の改造を行なう。

(2)ガスとして重水素、水素、その他のガスを用いて実験を行ないガスの影響を研究する。

(3)器壁材料としては、金属(Mg,Al,Feなど)、セラミック(Al2O8、MgO)、その他研究の進展とともに新しい材料を探究する。

 以上の実験により、入射イオンのエネルギー、ガス圧力、器壁温度等とスパッター原子数の函数関係を測定し材料の適否を検討する。

3.高温プラズマ測定用3ミリ波測定器の試作に関する研究

 ① 沖電気工業(株)    ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 7,943,708円    ④ 7,943,708円

〔目 的〕3ミリ波帯のプラズマ測定器を試作し、前年度試作した50GC帯の測定器から一歩進んだ高密度、高温プラズマの測定を可能とするとともに、核融合反応制御に実際必要な1mm以下の測定器の製作技術を開発するための基礎研究を行なう。

〔内 容〕(1)70GC帯ミリ波測定器により電子密度を測定する。その結果をProbe法と比較し測定確度をあげる。その後Noise電力を受信して、これから電子測度を算出しこのデータとProbeのデータを比較する。

(2)50GCから逓信技術を開発して100GC帯の密度、温度を測定する。較正を容易化するため現在のlittle PIG を改良し、測定精度を上げる実験研究を行なう。

(3)測定装置完成ののち名古屋大学のゼーター型実験装置に装着してプラズマの測定実験を行なう。

4.大電流イオン源の試作に関る研究

 ① 三菱原子力工業(株)  ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 3,699,260円    ④ 3,699,260円

〔目 的)核融合実験装置の入射用イオン源としてVonArdenne型イオン源装置を試作し、集束状態で既存のイオン流の10倍程度のイオンビームを得る技術を開発する。合わせて一般の加速器の開発に資する。

〔内 容)(1)大電流イオン源としてVon Ardenne型イオン源の試作を行なう。特に大電流を得るために、イオン引出部分の電極および磁極構造に新い、方式を採用する。

(2)ガス流量、電磁石電流、アーク電流、引出電圧、アインツェルレンズ電圧とビーム電流ならびに集束状態との関係を調べる。

(3)イオンの質量とエネルギースペクトルその他核融合実験装置の入射用としての最適条件を検討する。

 試作イオン源の目標は50kVにおいて20~30mAとする。

5.高純度重水素ガス製造充填に関する試験研究

 ① 昭和電工(株)     ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 1,601,588円     ④ 1,601,588円

〔目 的〕重水素ガスを経済的に製造する技術を確立し、核融合反応の研究に寄与することを目的とする。

〔内 容〕従来のダイヤフラムコンプレッサーの代りに、吸脱着剤の等温吸着カーブを利用し、吸着、脱着のサイクルによって所要ボンベ中に重水素ガスを高圧充填する方法について研究を行なう。合わせてイオン交換樹脂を使用して、重水素ガス中のアルカリミスト等を除去する精製法についても研究を行なう。

6.原子力船における原子炉周辺の船体構造に関する研究

 ① (社)日本原子力船研究協会  ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 13,545,340円  ④ 13,545,340円

〔目 的〕昭和34年度に引き続き、原子力船の船体設計上最も重要な原子炉周辺構造について、衝突、座礁など原子力船に加わることが予想される外力に対して最も合理的な設計を行なうための資料を得る。

〔内 容〕(1)平面構造物の外板に普通鋼板および高張力鋼板を取り付けた模型に振子式衡撃試験機により衝撃を加え、それぞれの破壊状況を計測して高張力鋼の耐衝撃性を検討する。

(2)二重底構造のフロア、ガーダーの板厚およびマン・ホールの大きさ、位置等を変えた模型に挫屈圧壊にいたるまで荷重を加え、最も座礁に有効な二重底構造を見い出す。

(3)格納容器と船体構造の一体化をはかるべく、フラッシュ時の圧力に最も有効に耐えるウェブリング構造を見い出すため、最も応力集中の生ずるブラッケット部分のコーナー半径、面材の寸法等を種々変化させて加重挫屈試験を行なう。

7.原子力船における外力の原子炉に及ぼす影響に関する研究

 ① (社)日本原子力船研究協会  ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 24,661,320円  ④ 24,661,320円

〔目 的〕昭和34年度に引き続き、原子力船が航行中にうけるべき動揺、振動、スランミング等による加速度の諸影響ならびに各種船型における船体振動の実態を把握する。

〔内 容〕(1)高速貨物船2隻(川崎汽船もんたな丸、三井船舶穂高山丸)及び大型油槽船(飯野海運剛邦丸)の航行時を利用して動揺加速度の各レべルごとの頻度、大きさおよび分布、ならびに船体振動およびスランミングによる加速度の頻度を計測する。

(2)新造大型油槽船、鉱石船および貨物船計6隻により試運転時に推進器回転数を階段的に変更して、船体振動の振動数および加速度を計測する。また試運転時と同一載貨状態で起振器により起振力を加え、同様の計測を行なう。

8.遠心分離法によるウラン濃縮に関する研究

 ① 理化学研究所   ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 19,625,095円   ④ 19,625,095円

〔目 的〕ウラン濃縮法の諸方式のうち濃縮に必要なエネルギーが最少であると考えられる遠心分離法について研究を行ない、本方法によるウラン濃縮の経済性を検討するとともにその技術の確立をはかる。

〔内 容〕前年度に引き続き次の項目について研究を行なう。

(1)遠心分離機(直径300mm、1,200mm、回転数20,0000rpm)を製作し、既設のものと直列に配置し、濃縮実験を行ない、濃縮ガスの処理量、段分離係数、消費動力等の関係を求めるとともに、遠心分離機相互の関係、ガス輸送導入の問題等について検討する。

(2)原料ガス六弗化ウラン中に含まれる不純物は濃縮の精度を低下せしめるので、原料六弗化ウランの蒸滑法による精製について研究を行なう。

9.ウランの濃縮を目的とするウラン化合物に関する研究

 ① 理化学研究所    ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 4,464,578円     ④ 4,464,578円

〔目 的〕各種のウラン化合物を合成し、その諸性質を調べ、六弗化ウラン以外のウラン濃縮に適した化合物を探究し、濃縮ウランの製造に寄与する。

〔内 容〕無機化合物としては五弗化ウランを合成し、その化学的諸性質を研究するとともに、その複合物蒸留等による濃縮法について検討する。有機化合物としては今までに合成してきたアルコキシ化合物を原料とし、その一部のアルコキシ基を他の基に置換した種々の新化合物を合成しその諸性質について検討する。

 特に揮発性の有機化合物については、分子蒸留法によるウラン同位体の濃縮の可能性等について研究する。

10.ウラン濃縮プラントの設計計算に関する研究

 ① (社)化学工学協会  ② 35.8.1~36.3.31
 ② 1,810,000円     ③ 1,810,000円

〔目 的〕各種のウラン濃縮法の工業化の可能性につき調査研究を行なうとともに工業的生産規模としてのカスケードの構成を理論的ならびに経済的見地から詳細な検討を行ない、ウラン濃縮をわが国において実施する場合に最も適当な分離法の決定およびその経済性、技術的問題点等を解明するための資料を得る。

〔内 容〕ガス拡散法、遠心分離法、ノズル分離法の3方法について検討する。ガス拡散法については段分離係数あるいは隔膜分離効率に影響を与える諸因子について、従来考慮の不完全であった問題を取り上げ研究を進める。

 遠心分離法については向流型遠心分離機内のガス流型の解析および、それの分離パワーに対する影響について考察を行ない、これから得られる結果をもととして設計計算を進める。

 ノズル分離法については、分離パワー、圧力損失等に関する考察を行なって、上記3分離方法中最も未解決部分の多い、この方法の工業化の可能性について検討を行なう。このほか三つの方法の共通の問題としてはカスケード理論の検討を行なう。

11.放射性廃棄物容器の臨海実験に関する研究

 ① 理化学研究所    ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 4,348,664円     ④ 4,348,664円

〔目 的〕放射性廃棄物の海洋投棄に際して、投棄用容器が、長期間安全な状態にあって、放射性廃棄物の海洋投棄を十分安全ならしめるようにする。

〔内 容〕長期間海底に置き、一定期間後、所定の日時に自動的に浮上する臨海実験装置を設計製作し、この装置に試験用容器をつけて約2,000mの海底に沈め、一定期間後に浮上させ、容器の耐圧、耐腐食の状況を、34年度室内で行なった結果と比較検討し、海洋投棄用容器の安全性に関して必要な資料を得る。

12.亜酸化窒素の分解による大線量(γ線)の測定に関する研究

 ① (株)日立製作所    ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 2,800,320円     ④ 2,800,320円

〔目 的〕γ線による亜酸化窒素の分解の際の圧力変化を利用し、γ線の大線量を連続的に測定しうるγ線線量計について、その基礎的資料を得る。

〔内 容〕(1)精製された亜酸化窒素を石英容器(約25mmφ×25mm)に密閉し、108rまでのγ線に照射して、石英容器に付したマノメータで全圧変化を求める。

(2)また、現象の基礎的検討を行なうため、各分解ガス成分の組成の変化を測定し、全圧測定法の結果と対照する。

(3)これらの測定結果から、石英容器、マノメータ、測定記録装置を用いて、亜酸化窒素の分解を利用したγ線量連続測定記録装置の実用化のための研究を行なう。

13.塩ビフィルムの着色による大線量(電子線)の測定に関する研究

 ① (財)日本放射線高分子研究協会  ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 4,571,820円  ④ 4,571,820円

〔目 的〕電子線のポリ塩化ビニルフィルムその他の物質中での吸収線量の測定法を検討し、これをもとにして、ポリ塩化ビニルフィルムの放射線に基づく着色作用を利用した電子線の2次的線量測定法の確立をはかる。

〔内 容〕(1)電子線の絶対吸収線量の測定の基礎となる電子線の物質透過を理論的、実験的に検討するため、線量測定用熱量計と電離函を改良試作し、標準とする電子線の種々物質中の吸収線量の測定法を決定する。②以上の二つの方法から、ポリ塩化ビニルフィルムの着色機構、線量率およびエネルギー依存性、温度の影響、熱処理方法等についての検討を行なう。

14.軽水型動力炉の2次元燃焼度計算コードに関する研究

 ① 日本原子力発電(株)  ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 11,422,400円    ④ 11,422,400円

〔目 的〕軽水型動力炉について、臨界計算と燃焼度計算コードを開発し、原子炉の建設および運転にあたって必要な解析の手段を提供する。このコードは組常数、拡散、燃焼の三つの部分からなり、これらは独立に十分にはたらき、全体として2次元燃焼度計算用として役だつものを作成する。

〔内 容〕(1)中性子スペクトルおよび組常数の計算コード 熱中性子グループについては、Wigner-Wilkinsの方法でスペクトルを計算し ミクロ断面積を平均する。速中性子グループについては、輸送理論によりスペクトルを計算し断面積を求める。さらにDeutschの方法による組常数の計算を行なう。また各種のパラメーターサーベィができるよう考慮をはらい、さらにボイドの発生を取り扱う。

(2)気泡分布を考慮した臨界計算コード 拡散方程式は、繰返し法で解き、Source IterationはChebyshebv多項式法により、Flux IterationはPeaceman Rachford法で加速する。またボイド発生を考慮する場合は、Backward法により、与えられた出力分布を実現する吸収体分布の計算を可能とする。

(3)燃料中の同位元素濃度の計算コード ウラン系およびトリウム系について各格子点における燃焼計算を行ない、自己遮蔽効果を考慮した可燃性毒物の燃焼計算も行なう。また常数計算のための入力として必要なアイソトープ濃度の平均化も行ない、さらに時間遅れを考慮した各種の燃料取替の計算も行なう。

15.原子力気象の統計的処理法(コード化)に関する試験研究

 ① (財)気象協会   ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 3,501,400円    ④ 3,501,400円

〔目 的〕原子炉設置の立地条件、原子炉平常運転時および事故時の対策に必要な気象条件からみた大気の代表的状態を検討し、その判定規準を見い出す。

〔内 容〕(1)東京における気象観測資料から最近5ヵ年間の風向、風速、日射、雲量、降水量、湿度、気温の7要素をとり英国気象局方式により7階級に分類する。これらの要素を統計用パンチカードにせん孔し整理する。

(2)統計機により、各型の月別、季節別、年別出現頻度を求める。

(3)各型の月別、季節別、年別の出現頻度の差を検討する。

(4)一地点の代表大気を判定する際の合理的統計年数および観測回数を検討し、合わせて短期間の資料から代表大気を決定する場合の安全係数も検討する。

16.プルトニウム燃料の標的価値に関する研究

 ① 日本原子力発電(株)  ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 4,150,200円     ④ 4,150,200円

〔目 的〕使用済燃料中のPuの同位元素比率および量を計算し、次いでPuを含む原子炉の核的特性を検討し235Uに対するPuの核的価値を評価し燃料サイクルの基礎資料を得る。

〔内 容〕(1)基礎常数の検討 東海発電所取出し燃料組成の計算上用いる断面積としては、Bright WignerFormulaを、燃焼方程式の解法にはWestcott表示のものを用いる。軽水炉の燃焼計算にはWigner-Wilkinsの方法で求めたスペクトルにより平均した断面積を用いる。

(2)東海発電所取出し燃料組成の計算 モンテカルロ法により unitcell中の中性子のふるまいを解析しpoint reactivityの変化を計算する。この結果を用い東海発電所燃料についてPu同位元素の組成および量の計算を行なう。

(3)軽水炉燃焼度の計算 PWR型およびBWR型を対象として、主として point reactivityの計算を行なう。使用する燃料は軽濃縮ウランおよび天然ウランに東海発電所から取り出されたPuを混入したものを種々変えて計算する。

(4)Pu燃料の核的価値の検討上の計算結果からPu同位元素を含む燃料とウラン燃料の核的価値の比較検討を行なう。

17.原子炉遮蔽計算コードに関する研究

 ① (社)日本原子力船研究協会  ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 3,280,000円 ④ 3,280,000円

〔目 的〕原子炉の遮蔽計算コードを開発し、原子炉特に舶用炉の設計ならびに安全性の確保に資する。

〔内 容〕(1)遮蔽体中のγ線束分布 1次元の取扱を主とし、幾何条件として板状、球、無限円筒等を考慮する。減衰計算はビルドアップ方式としエネルギーの組分けを考慮する。

(2)遮蔽体中の中性子束分布 減衰計算は組分け拡散理論を適用する。ただし高速中性子に対しては除去理論を用いる。

(3)遮蔽体中の捕獲γ線束分布 解析的な式を主とし減衰計算は(1)と同じとする。線源は構造材冷却材からのものを考える。

(4)遮蔽体中の熱発生、温度上昇、熱応力の分布幾何条件は(1)~(2)と同じとし、線束分布は(1)~(3)の結果を用いる。解析解を主とする。

18.原子炉配管系の耐震安全設計に関する研究

 ① 東京電力(株)     ② 35.8.1~36.3.31
 ③ 6,200,000円     ④ 6,200,000円

〔目 的〕原子炉冷却系配管の破損は最悪の災害につながり、その有力な原因として地震が考えられる。本研究において、同配管系の地震に対する振動性状の究明を行ない、耐震設計に必要な技術基準作成のための基礎資料を得る。

〔内 容〕(1)東電品川、横須賀火力発電所の配管系を使用し、強制振動および自由振動試験を行ない。記録計付振動計により振動性状の調査を行なうとともに地震計および磁気録音計により磁気テープに録音し、コリレークを使用して固有振動数、減衰定数等の振動特性を解析する。

(2)単純模型実験ならびに1/20~1/100模型による実験を行ない、主として支持点またはダンパの有無についての固有提動数および振動モードを測定する。

(3)以上の結果に基づき、模型-実物間に相似則を適用し、実物の固有振動数、各部応力の推定を可能ならしめるとともに支持機構等耐震設計に必要な諸条件を研究する。

前頁 | 目次 | 次頁