JRR-1核燃料物質の取扱施設変更の
安全性に関する委員会の答甲

 原研では、JRR-1に最近現われた出力不安定の原因を明らかにするため、運転が50,000kWhをこえた機会に、原子炉をいったん停止して、燃料溶液とガス再結合器内の水を少量(各10cc程度)取り出し、主として燃料溶液の組成の変化、燃焼度およびプルトニウム生成量の測定などについて分析試験を行なうことになった。これらを行なうために、原子炉内から燃料溶液および水を取り出すための装置を、一時的ではあるが、原子炉に取り付ける必要があるので、内閣総理大臣あて核燃料物質の取扱施設の変更の届出を行なった。下記は、この届出に基づき、その安全性についての意見を求められた原子力委員会の答申である。

35原委第56号
昭和35年6月8日

  内閣総理大臣 岸 信介殿

原子力委員会委員長 中曽根康弘

JRR-1核燃料物質の取扱施設の変更の安全性について(答申)

 昭和35年6月6日付35原第1384号をもって諮問のあった標記の件について審査を行なった結果、下記のとおり答申する。


 日本原子力研究所が、JRR-1の燃料溶液およびガス再結合器内の水の分析試験を目的として提出した「JRR-1の核燃料物質の取扱施設の変更について」の書類に基づき審議した結果、その安全性は、次に述べる事由により十分確保しうるものと認める。

(1)この施設は、JRR-1の炉心容器内の核燃料およびガス再結合器内の水を取り出すことを目的とした、小口径の不銹鋼管系からなる簡単な装置である。

(2)この施設の据付および燃料と水の取出し作業は、原子炉の運転を相当期間停止して行ない、作業終了後原子炉の運転を再開する場合には、この施設は分解搬出されるから、原子炉の運転上の安全性に直接影響を及ぼすことはない。

(3)核燃料およびガス再結合器内の水の取出し作業は原子炉の運転停止後放射能の減衰を待ってから行ない、その取出し量もわずかであるので、放射能は少ないのみならず、装置の気密性および放射線に対する遮蔽について十分な考慮が払われており、また作業中の放射線管理は適切に行なわれるよう計画されているので、作業員の被ばく線量は許容値を十分下まわるものと認める。