原 子 力 委 員 会

原子力開発利用長期基本計画の
基礎となる考え方について

1.原子力委員会はその草創の年、すなわち昭和31年の9月に原子力の開発利用に関する「長期基本計画」を内定し、その後これに基づいて「発電用原子炉開発のための長期計画」(昭和32年12月)、「核燃料開発に対する考え方」(昭和33年12月)を公表してきた。

 しかし、前回の長期計画作成当時から4年の間に原子力をめぐる世界の情勢にはかなりの変化が生じたし、原子力の平和利用の見通しについても各分野にわたり当時よりは正確に把握することができるようになってきたので、この機会をとらえ新たな情勢分析を行ないここに長期計画の改訂を行なうこととした。

2.今回の長期計画の作成にあたっては、広く各方面の意見が十分に反映されるようにするため、まず長期計画の骨子となるべき「基礎となる考え方」を作成しこれを関係機関、団体その他各方面に公表し、これによってそれぞれの分野における具体的な意見をまとめて原子力委員会に呈示を求めることとした。原子力委員会は関係機関および団体等から呈示された具体的な意見を検討し、本年末までに総合的な長期計画をたてる考えである。

3.今回の基礎となる考え方の特色としては、第1に計画期間の20年を前期および後期の各10年にわけ、前期の約10年における原子力開発利用のすすめ方に重点をおいてこの期間についてはできるだけ具体的な計画をたてることとし、後期約10年については前期の計画の進展に応じて展開される原子力開発利用の姿を展望するにとどめたことである。

 第2には、計画をたてるにあたって、原子力発電および原子力船のごとき動力としての利用、アイソトープおよび放射線化学などの放射線の利用、核燃料および材料の開発利用、ならびにこれら3部門の基藤となる研究開発のすすめ方の四つの柱をもって基本とし、これらの4部門について、経済性、安全性、放射線障害防止等を十分に考慮して計画を作成し、この四つの柱の確立に伴ってこれに関連する分野の計画を検討するという方法をとったことである。

 第3には上述の原子力開発利用に関する四つの柱を検討するにあたっては、単にそれぞれの部門についてばかりでなく、これら相互の関係を把握することに重点をおき、総合的な観点に立って検討を行なったことである。

4.今回の長期計画の期間のうち特に前期10年においては関係する諸機関および団体が力を合わせて原子力の開発利用を推進する必要があるばかりでなく、広く国民一般の理解と協力が不可欠と考えられるので、この基礎となる考え方について、さらには、これを具体化する上の方策について、各方面から積極的な意見を寄せられることを期待する。