1960年海上人命安全条約会議の対処方針について

 海上における人命の安全を確保するための政府間の条約は1929年に締結され、1948年に一度改正されて現在に至っているが、原子力船を含む大幅な改正が提案され、今年5月17日からロンドンでこのための会議が開かれている。

 これに先だち原子力委員会は勧告を骨子とする日本提案に加えて、この会議の原子力船に関する事項に対処する基本的な方針を次のように決定した。すなわち「原子力船については、条約の適用船舶とし、原子力船として特に取り決める必要のある事項については追加規制すること、ただし原子力船の正常な発展を阻害し、またはその運航について過度の規制を加えることとならないよう努めること」とした。

 さらに5月4日の第24回定例委員会において会議に対処する具体的な態度を以下のように決定した。

1.会議の取扱範囲
 本会議においては、原子力船の安全に関して必要な事項を取り上げることとし、第三者に対する原子力災害による損害の補償、廃棄物の海洋投棄等に関してはわが国の提案のとおり、IAEAが担当し、これにIMCOおよび条約の締約政府が協力して措置するよう取り決めること。

2.本条約の適用対象とする原子力船の範囲
 軍艦および軍隊輸送船以外のすべての原子力船とする。なお、原子力船とは原子力プラントを設置した船舶をいう。

3.条約付属規則として規制すべき事項
 わが国がさきに勧告として提案した次の諸点についてほ条約付属規則として採択すること。
(1)原子力船の船長は、その環境に対し放射性災害を及ぼす恐れのある事故を起こした場合には、災害を及ぼすと認められる国の適当な機関に対し、その位置、事故の程度およびその他必要な事項を通報すること。

(2)締約政府は、その国に登録される原子力船が他国の港に入港しようとするときは、受入国政府が入港許諾を与えることができるための当該原子力船の安全を確認するに必要とする事項その他の資料を通報し、かつ、その承認を求めること。

(3)原子力船は、受入国があらかじめ承認した当該原子力船の安全規制事項が守られるかどうかを確めるためその国の正当な職員が入港前および入港後に行なう監督に服すること。

(4)上記(2)にかかわらず、受入国政府は、第三者補償に関する保証措置等の有無を考慮して当該原子力船の入港の承認を拒否することができるものとすること。