日本原子力研究所昭和35年度事業計画

  第1章 全 般 計 画

I 一 般 方 針

 日本原子力研究所は創立後約4年を経た今日、ようやく草創の域を脱して新しい発展の段階に入ろうとしている。この時にあたり、広く世界の情勢を考慮しつつ、4年間の体験に徹して研究開発方針および研究体制の再検討を行ない、逐次これを再編成していく。研究開発にあたっては、関係各方面との連繋をいっそう緊密にし、これら関連の研究開発体系の中における当研究所の果たすべき役割を明確にし、特殊法人としての使命達成に万全を期する。特に業務各分野の内容整備を行なうとともに、研究と事務との関連および各研究相互の関連を有機的に組み立て、適切な運営と相まってその効率的な運用をはかる。

 多くの研究室においてはすでに初期的な段階を終り、一応標準的な器材が整備されたので、本年度は成果の結実に重点をおくとともに、次年度以降の発展のための準備に着手する。

II 計画の概要

 昭和34年度においては、JRR-2の組立および試験、JRR-3建家の建設工事、半均質炉の開発研究、高放射性物質取扱特別研究室(ホットラボ)の建設、原子炉研修所の開設等がおもなるものであった。研究活動の一つの指標として、たとえば、昭和35年2月開催された原子力研究総合発表会の全論文数279件中、当研究所の発表分は75件に及んでいる。特に基礎的な分野では相当の成果を収めつつある。

 さて、本年度の全般的な状況をみると従来は放射線源としてはJRR-1および60Co10kcがおもなものであったが、本年度はJRR-2およびリニアアクセレレーターが稼働を始める。またホットラボの一部も使用を開始し、JRR-2に使用するインパイル水ループおよびガスループならびに5.5MeVのヴァンデグラフの発注、再処理試験用ホットケーブ、プルトニウム特別研究室、ラジオアイソトープ試験製造工場等の建設が開始されるなど、取扱放射線からみて低レベルから高レベルへ移行し、いよいよ原子力関係の研究所として本格的な段階に入いる。

 本年度のおもなる事業について、その概要を述べると次のごとくである。

 原子炉建設部門では、JRR-3が前年度までに建物の建設工事をほとんど終り、本年度から炉体の組立を行なう。JPDRおよび軽水炉臨界実験装置は、契約の終了をまって建設に着手する。

 原子炉の運転の面では、JRR-1が燃料採取試験のため、年度当初から低出力運転に入り、次いで停止し下半期に稼働再開を予定している。JRR-2については、上半期に燃料を装荷し、特性測定を行ないつつ低出力定常運転に入る予定で、第4・4半期には共同利用が再開される見込みである。リニアアクセレレーターは納入が遅延しているので、一般の使用開始はJRR-2と同じころと考えられている。したがって、研究の手段として最も重要なこれらの施設の利用開始が、下半期以降になるのでホットの状態での本格的な研究に入るのは年度後半となる。今まで遅延していた水均質炉の臨界実験装置は上半期に完成するので、これによる実験研究に着手する。

 一方、JRR-1、JRR-2、JRR-3、JPDRなど創立当初に考えられていた原子炉の運転および開発が、一応軌道にのったので、材料試験炉、原子力船、核融合反応などを第2期の事業対象として検討するため、新しく開発室(仮称)を設ける。そのほか、増殖炉については諸外国における開発態度が当初に予想されたものから大きく変化してきているので、それらの情報に基づき、当研究所の開発態度に再検討を加える。また半均質炉についても、従来高温ガス炉としての開発を考慮してきたが、ビスマス冷却の方法も有望と考えられはじめたので、本年度はこれは徹底的に検討し、可能ならば一部実験に着手する。

 ラジオアイソトープの生産については、前年度までに製造試験の一応終了した核種を対象として、試験製造工場を建設する。

 基礎研究部門においても、JRR-2、中性子回折装置およびリニアアクセレレーターの稼働によって研究の分野が一段と拡大する。さらに核物理的研究においてエネルギー範囲を拡大するため、5.5MeVのヴァンデグラフの発注をする。また新しくプルトニウムの研究にも着手するなど、逐次内容の充実をはかる。

 技術者の養成訓練については、従来に引き続き原子炉研修所において高級課程、一般課程を実施し、ラジオアイソトープ研修所においては一般課程のほか新たに第4・4半期から高級課程を開設する予定である。

 なお、研究第6棟の着工に伴い、その一部に開放研究室を設置するため、開放研究室制度の確立を期す。
 これら事業を遂行するため役員1名を増加し、管理体制を強化するとともに職員数を190名増加し、年度末において1,197名とし、このほかに外来研究員50名を予定する。

III 研     究

 本年度は原子力開発のための研究所として本格的な段階に入るにあたって、研究体制の確立、研究内容の充実および将来に対する研究方針の見通しをたてることに重点をおく。なお、試験研究計画の内容については第2章に述べる。

 当研究所の研究部門の活動を分析すると
(1)基 礎 研 究
(2)目 的 研 究
(3)共用施設の運営
(4)研究施設の建設
とに区分される。

 基礎研究とは、現象そのものを追求、確認し、その間に存在する一般法則を探究することである。したがって、通常の概念でいう物理とか化学のみが基礎研究ではなく、工学的研究の中にも基礎研究が包含されるのは当然である。この部門は、研究開発の一般的水準を高め、将来の発展のための可能性を培養するものであって、当研究所としては重視しなければならない。しかし、当研究所の特質にかんがみ、その課題の選択は大学等とはおのずから異なっている。

 目的研究は前者と対象的で、目的意識が確固としており、あるものについては、時間的な制約すら付されている研究で、開発事業の基幹となるべきものである。通常概念でいう応用研究、開発研究はこのカテゴリーに包含されている。この部門では、相互の連絡を特に緊密にし、効率的な運用を期さなければならない。

 共用施設の運営もまた当研究所に課せられた任務の一つである。当研究所が広く官民の出資によって運営され、日本の原子力センターとしての機能を果たすためには、この分野を重視して一般の要請に答える必要がある。こうした機能を遂行することは大局的にみて、当研究所に課せられた任務であるので、本年度からはこれをさらに徹底するよう万全の策を講ずる。

 研究施設の建設とは、原子炉、高放射性物質取扱特別研究室(ホットラボ)、リニアアクセレレーターの建設および試作装置の組立のごときもので、開発の主体的部分をなし、その体験は、日本の原子力開発に対して多くの資料を提供し、寄与するところ大である。

 以上の研究活動のうち、基礎研究および目的研究を効率的に遂行するため、これを総合化する必要がある。そのため次の二つの方法が考えられる。
(1)プロジェクト
(2)総 合 研 究

 すなわち、プロジェクトとは一定の目的を有し、物を作ることも対象としており、時間的な目標も定め、これを強力に総合的に推進するものである。総合研究とは研究相互の目的を一にするが、必ずしも時間的な制約を付さない方式であり、必ずしも物を作ることのみを対象としない。このなかには、研究方法の面でかなり関連があり、得られた知識を相互に貢献しあうため連絡を緊密にしながら行なう研究も包含される。これらのほか各研究室においては当然独自の個別研究を行なう。

 前年度においては「半均質炉の開発」、「JRR-3用2次装荷燃料の開発」をプロジェクトに指定したが、本年度は総合研究についても、実施可能なものから逐次指定していく予定である。これらの実施にあたっては広く外部関係者の参加を求め、課題の撰択、成果の批判を通じ、相互の研究分担を体系化していく。なお、これと関連して研究の委託、受託、共同研究等の体制を確立する。

 新たに設置する開発室(仮称)においては、材料試験炉、原子力船、核融合反応、動力炉等の技術的な調査を行なう。

 すなわち材料試験炉については、34年度においてある程度の計算を行なったが、需要の実態調査、炉の仕様、付帯施設、経済性等について具体的に調査するし、一方、外国からのコンサルタントの招聘、外国調査、仕様のチェック依頼等を行ない、開発準備を進める。原子力船については、JPDRによりある程度の試験を行なうことになっているが、本年度は関係者と連絡を密にし、分担を明らかにして、調査研究に入る予定である。核融合反応については、本年度は基幹要員を確保し、外地留学、内地留学等の手段によりその養成訓練に重点をおく。なお、動力炉については広く技術的経済的な調査を行ない、問題点の発見に努めるとともに必要があれば逐次研究に着手する。

 このほか、直接発電については前年度に引き続き文献調査を行ない、研究の具体的な問題点を発屈し、可能ならば一部研究に着手する。

IV おもなる建設工事

(1)原子炉の建設
 (イ)JRR-3
 33年度から着手した建家工事は、そのほとんどを34年度中に完了し、本年度は仕上工事ならびに付属設備工事を行なう。原子炉部品の製作は34年度から担当会社において進められ、炉本体基礎の一部の埋込部品はすでに据付がはじまり、年度中には炉の据付工事を終る予定である。

 (ロ)JPDR
 契約完了後、約4、5ヵ月で整地を開始し、引き続き格納容器、タービン建家、取水口などの基礎工事に着手する予定である。

(2)そ の 他
 原子炉以外のおもな新規建設工事は次のごとくである。なおこのほかホットラボは前年度に引き続き建設整備が行なわれる。

 (イ)研究第6棟
 (ロ)軽水炉臨界実験装置建家
 (ハ)再処理試験用ホットケーブ
 (ニ)ラジオアイソトープ製造試験工場
 (ホ)プルトニウム用特別研究室
 (ヘ)セラミック系燃料特別研究室
 (ト)ヴァソデグラフ建家
 (チ)高温高圧ループ用建家
 (リ)ラジオアイソトープ研修所増築
 (ヌ)廃棄物処理場の増築
 (ル)厚生施設

V 技術者の養成訓練

(1)原子炉研修所
 34年度には高級課程および一般課程を開設した。本年度は従来JRR-1で行なっていた短期訓練を研修所の事業として吸収する。本年度の研修計画は次のとおりである。

        期間  回数 人員
高級課程    1 年  1  16
一般課程    6ヵ月  2 16+20=36
短期訓練    8 日  3 15×3=45

(2)ラジオアイソトープ研修所
 34年度までに合計16回506名の研修を行なった。このうち、外人は51名で、だいたい年1回東南アジア地域の外国人に対し英語による研修を行なった。本年度は前年度に準じ、日本人技術者は最低224名の訓練を行なうほか外国人の訓練を予定している。

 このほか建家の増築をまって、第4・4半期から新たに高級課程を開設し約2ヵ月の予定で10〜20名を受け入れる。なお、一般の要望に答え、新たに有機化学、生物関係への応用についての施設を拡充する。

(3)留学生の海外派遣
 本年度は、IAEAのフェローシップによるものを含めて、合計約12名を海外に派遣する。これら留学生は主として外国研究所における研究員として、日本では得られない知識を習得せしめるよう配慮する。

VI 事務関係の整備

 以上の諸事業を遂行するため事務関係を整備し、すべての活動が組識を通じ有機的に行なわれるよう配慮するとともに、各職位に応じた責任体制の確立を期す。また、IBM計算機の整備に伴い事務関係諸計算にもこれを用い、遂次事務の機械化に努める。

 なお、外部に対するサービス活動を徹底するため体制の確立をはかる。

  第2章 研 究 計 画

I 研究炉の運転管理

(1)JRR-1
 JRR-1は34年度末までに積算出力量としてほぼ50,000kWhに達し、この種の原子炉としては世界有数の運転記録を保持した。しかし、反応度の異常低下、高出力運転時における出力の不安定、その他各種の問題が発生しているので、本年度は約2ヵ月間炉の運転を休止し、燃料のサンプリング等により徹底的な検討を行なう。

 このため年度当初から低出力運転に入り、次いで休止し、試験終了後異常がなければ、第3・4半期から定常運転に入る予定である。したがって一般の共同利用は定常運転に入るまでに停止する。

(2)JRR-2
 本炉は、この型式のものとしては世界でも数少ない高出力炉であり、運転にあっては、炉の安全性、特性、性能に検討を加えつつ慎重に行なう。34年度末までに各種の機能試験をほぼ終了したので、本年度は臨界試験、試験運転を経て第3・4半期ごろから1MWの正常運転に、引き続き年度末には5MWの正常運転に達する予定である。なお、特性測定に支障ないかぎり第3・4半期から実験孔の利用を開始し、第4・4半期から共同利用が行なえるよう配慮する。

(3)研究炉管理部(仮称)の設置
 JRR-1およびJRR-2(将来はJRR-3を含む)を一元的に管理し、利用の条件を勘案して、両炉の特性に応じた利用分担を計画するため研究炉管理部を設置する。なお、当部においては管理のみではなく、研究炉の特性測定など炉自体に関連した研究も行なうこととし、関係各室と積極的に共同して問題の解明にあたる。

II 原子炉の開発および関連研究

 本研究は大別して次の3種類に区分される。すなわち
(1)長期的な目標をもって研究を進めているもの――主として増殖炉関係
(2)先進国の既存の動力炉について問題点を解明しようとするもの
(3)原子炉開発に関連した共通的研究

(1)増殖炉関係
 (イ)半均質炉
 本炉は33年度なかばから研究に着手したが、今までの研究、調査によれば、相当すぐれた性能の動力炉となりうる利点を有し、かつ、当研究所独自の着想によるものであるのでこの開発を重視し、34年度にこの研究をプロジェクト化し開発の体制を制度化した。本年度も引き続きこの体制をもって研究にあたる。ただし、従来、高温ガス炉として開発の目標をたて、これに関連した研究を行なってきたが、気体冷却の代りに溶融ビスマスを用いる構想が提案され、この冷却方式がはなはだ有望であると推定されるので、本年度はこれらの比較検討を行ないつつ研究を進める。

 本研究の中心となるものは半分割式臨界実験装置であり、燃料の到着をまって核的特性を測定し、黒鉛濃縮ウラン系の炉物理等の研究を行なうとともに関連諸研究を総合的に進める。

 これらの研究を基礎として、半均質動力炉について概念設計を行ない、動力炉としてまとめる場合の問題点の解明に努める。

 (ロ)水均質炉
 本炉については、34年度に来日したワインベルグ博士との討論会および同年秋入手したアメリカのアド・ホック委員会の報告などから判明した技術的諸問題を再検討することとし、所内に熱中性子増殖炉評価委員会を設け、本炉を中心とし、構想を練り直し水均質炉研究に対する基本的態度を本年度中に決定する。

 しかし、本炉の開発時期が遅れることはあっても、本型式の炉に対する知見をうることはわが国の原子力開発にとって必要と考えられるので臨界実験装置により炉物理的研究を行なうほか、従来から計画された関連諸研究を基礎研究として進める。

 (ハ)高速炉
 本型式の炉についてはとりあえずブランケット部分の基礎的研究を行なうこととし、速中性子増殖炉系指数実験装置を用いヴァンデグラフ、JRR-1を中性子源として研究に着手する。

(2)その他の原子炉関係
 従来から行なってきたガス冷却型および水冷却型原子炉における流体の伝熱および流動に関する研究等をさらに深化せしめるとともに、水冷却炉についてJPDRの臨界以前にその基本的特性を測定し、さらに軽水炉の炉物理的諸問題の研究を行なうため軽水炉臨界実験装置の建設を行なう。

(3)共通的研究
 上記のほか炉物理的研究、核物理的研究、固体物理的研究、原子炉の計測制御、その他原子炉一般に共通する基礎的、理論的研究を行なう。本年度は特に核物理的研究においてエネルギー範囲を拡大するため、5.5MeVのヴァンデグラフ設置のための準備を行ない本年度中にこれを発注する。

 また原子力関係の特殊施設につき調査研究を進め、建設、設計、施工上の各種問題点の解明にあたる。

III 燃料、材料の開発および関連研究

(1)燃  料
 (イ)JRR-3用燃料
 JRR-3用2次装荷燃料の開発は、34年度にプロジェクトに指定し、開発体制の整備を行なった。本研究については一方において直径25mmのウラン棒を圧延加工により試作を行ない、民間会社の製造による押出ウラン棒とともに外部に依頼し、接合、被覆、溶接等を行なう。圧延加工した試料について、各種試験の後、必要あれば海外に照射試験を委託することも考慮する。

 また径10mm、長さ20mmの小試片については、前年度に引き続き熱サイクル試験等によりスクリーニングを行ない、JRR-2の使用が可能になれば、照射試験により照射生長率その他の検討を行なう。また非破壊試験による検査の確立を期す。

 なお、1次装荷燃料については海外における加工終了後、民間会社に冷却管取付けその他を依頼し、燃料要素としての完成を期す。

 (ロ)その他燃料製造研究
 金属燃料については高周波誘導炉による溶解技術を用い、微細結晶粒ウランについての基礎的研究を行ない、セラミック系燃料については新しく特別研究室を増設し、前年度に引き続き酸化ウランペレット型燃料の研究を進める。

 (ハ)プルトニウムの研究
 本研究は将来における核燃料としてのプルトニウムの開発を目指しているのであるが、とりあえずプルトニウムに対する取扱技術に習熟するため、溶液化学的な研究から始める。

 本年度プルトニウム特別研究室を建設するが、これが完成するまではトレサーレベルで、研究棟で研究を行なう。

 (ニ)そ の 他
 燃料開発に関連し、分析化学的研究を進めるとともに、アクチニド元素について固体化学的な研究を行なう。

(2)材   料
 当研究所における材料研究の終極的目標は、照射損傷に対する知見をうることであるが、現在のところは金属部門としてはまず燃料、被覆材、容器材等炉心に近いところの材料に着眼し研究を進める。その他腐食、材料の強度、接着、溶接等の工学的研究、中性子に対する炉材料の核物理的性質の研究、照射損傷の機構を探究するための固体物理的な研究、材料の分析化学的な研究および黒鉛の放射線化学的な研究などを行なう。

IV 燃料再処理および関連研究

 使用済燃料再処理をはじめとして高放射性物質を処理する装置の研究を行ない、高放射能下の操作、技術の開発をすすめる。そのため溶媒抽出法による再処理装置を目標として研究を行なう。すなわち34年度に設計製作した装置について、コールド試験を始めるとともに再処理試験用ホットケーブの設計を行ない、年度内に建設に着手する。

 その他溶媒抽出法については、化学工学的な研究をすすめるとともに物理化学的な研究、放射化学的な研究等、関連基礎研究を行なう。

 溶媒抽出法以外の方法としてフッ化物分留法、高温冶金法およびイオン交換法などについて基礎的研究を行なう。

V 廃棄物処理および関連研究

 34年度までに低レベル放射性廃液は恒常的に処理するようになり、特殊廃液については、試験用の電解膜装置を処理系統に組み入れるように努力してきた。

 固体廃棄物は、紙筒に入れ地下ピットに仮貯蔵している。可燃性のものについては焼却炉の据えつけを終った。

 本年度は、下半期以降にJRR-2の運転、高放射性物質取扱特別研究室(ホットラボ)の使用が開始され、放射性廃棄物量も増大してくると予想されるので、処理および貯蔵管理に万全を期す。

 また、中レベル放射性廃液の貯蔵施設、固体廃棄物圧縮施設等を建設する。

 前年度中に建設した廃棄物貯蔵庫は、本年度からその業務を開始する。

 また、既存の方法を改良するための化学工学的な研究を行なう。

VI ラジオアイソトープ製造および関連研究

 34年度までに製造研究の行なわれたラジオアイソトープについて、工場的生産に移す準備を行なう。そのためラジオアイソトープ試験製造工場を建設する。

 すなわち、24Na、42K、32P、35S、131I、198Auなどにつき各種製造法の比較検討を終り、製造装置の設計発注を行なう。131Iについては当分の間、高放射性物質取扱特別研究室(ホットラボ)の一部で製造試験を行なう。

 本年度は工場生産の準備として技能者の養成訓練を重視する。

 また前年度に引き続き製造研究の分野では、ターゲットの分離情製、高比放射能ラジオアイソトープの製造研究、不純物の検定、核分裂生成物からの分離情製研究などを行なう。

VII 放射線利用および関連研究

(1)60Co照射室
 60Co照射室は前年度に準じ運営するが、線源が全キュリー数で約7kcに減衰しているので、放射線損傷等の研究に対し線量率が不足しているので、5kc程度の補充を考える。

(2)リニアアクセレレーター
 本年度上半期中に納入据付、試運転が行なわれる予定であり、引き続きビームエクステンション系およびビーム分岐マグネットを接続して、出力ビームの電流、スペクトル、安定度などの特性の測定、各部動作特性の測定、放射線遮蔽のチェックなどを行ない定常運転にはいる。

(3)利用研究
 非金属材料の放射線効果に関する研究、有機化合物および水溶液の放射線化学的研究等を行なう。

VIII 保健物理および関連研究

 放射線管理の面では、高レベル放射線の利用開始に伴いますます管理を適切に行なうことを配慮し、特に非常管理に対する体制を整備するとともに放射線管理を周到かつ経済的に行なうための諸研究をすすめる。

昭和35事業年度資金計画

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