第3回放射線化学懇談会

〔日時〕昭和35年1月30日(土)10.30~12.20

〔配布資料〕
(1)懇談会および打合せ会名簿
(2)原子力予算による放射線化学関係研究概要
(3)放射線化学技術者の養成について
(4)放射線利用専門視察団
(6)「プロセス工業のための放射線エネルギー――原子核の挑戦」

〔議事概要〕
 第2回議事録、線源および研究方針両打合せ会名簿を事務局から提出、出席全員の承認を得たのち、雨宮委員から線源打合せ会、千谷委員から研究方針打合せ会の第1回の審議内容についての報告および今後の運営方針についての説明があった。

 次いで事務局から、原子力予算による放射線化学関係の研究概要の説明、放射線化学技術者の養成訓練計画の報告ならびに検討、放射線利用専門視察団派遣計画ならびにアーサー・デ・リトル社の報告についての説明があり、議事を終った。

(1)線源打合せ会の報告
 雨宮委員から第1回打合せ会の審議内容について次のように報告があった。

◎ メンバーは加速器、ケミカルパイル、スペントフュエル、アイソトープの関係者およびその使用者をもってあて、今回はこれらの線源の現状の把握と Free Discussionを行ない、次回からは、重点として工業用を目的として線源のあり方、加速器では新しい型の紹介、ケミカルパイルの基礎データと紹介、化学工業からの線源への希望、加速器に対する現在の使用者からの注文などについてそれぞれ担当者を決定して、3月末までに第1次の結論を出すよう努力していく旨の発言があった。なお補足としてできるかぎり早い時期に研究方針打合せ会から希望線源の申し出があるよう要望があった。

(2)研究方針打合せ会
 千谷委員から第1回の会合の経過報告があり、内容としては、Free Discussion の形で審議し、それぞれ担当を決め研究テーマの決定を3月中に行なうこととする旨の言があった。なお分割した研究分野は次のとおりである。

 有機材料、有機高分子、重合、高分子および電気材料、線量、無機材料、基礎的事項、原研での研究内容、原子炉による研究テーマ

(3)放射線化学技術者の養成について
 鈴木アイソトープ課長から技術者問題についての検討を願いたい旨の発言があり、事務局から、養成訓練部会へ提出する資料についての説明を行なった。

 その要旨は、原産でのアンケートによれば約400人(国立172人、大学120人、民間92人)であり、これを500人とし、資料中には毎年50人を養成すると出してあるがいかん。これはその他を含めて100~150人、10年間で1,000~1,500人としたがその点いかん。

 また大学講座としては、阪大産研に大学院コースが現存するだけである。なお、参考までにアーサ・デ・リトル社の報告によればアメリカにおけるこの面の従事者は500~1,000人とされている。

(4)原子力予算による放射線化学関係研究概要その他
 事務局から来年度予算の概要の説明、エバソルド論文ほんやくの概要および放射線利用専門視察団についての予定の説明があり、あわせて同視察団に対する要望を4月ごろ出発するので、それまでに本懇談会としてある程度のoutline を示して示唆したいと考えている旨の発言があった。

(5)アーサー・デ・リトル社の報告について
 事務局から本報告について、大略次のような説明があった。

◎ 米国AECがEmerson,G.E.に対して調査契約を結び、この2社が Arthor D.Little Inc.に委託し、放線線化学の研究、開発の現状と将来について調査して、約1年前に提出されたReportである。

 これは300人(200機関に属する)の技術者および2,500冊の報告を参照して作ったものである。

 この結論としては、過去10年間にわたりアメリカで行なわれた大多数の研究については、工業化の段階に達していないでわずか10テーマが工業化の研究中である。

 その例はポリエチレンへのスチレンのグラフト重合による半透膜の製造であって、他の9例は商業上の秘密で公表されていない。

 現状としてはまだ化学工業の重要な要素とはなっていない。

 将来の問題としては次の2点が重要である。

 ① 独特な製品の発見
 ② コストの低下

 照射コストは1~10ドル/kWhを10セント/kWh以下にしたい。またMW sourceの開発が必要である。

 なお、現在アメリカではこの方面の研究が年間約1,000万ドル使用され、この方面の研究者は500~1,000人と思われる。

 その他線源開発について原子炉の利用とか加速機の新規のものの出現、その他研究テーマの概要の説明があった。