昭和34年度原子力平和利用研究費補助金、委託費の研究概要


 昭和34年度の原子力平和利用研究費補助金、委託費についてはさきに紹介したが(Vol.4 No.9 55ページ)、その試験研究の概要は下記のとおりである。

昭和34年度原子力平和利用研究費補助金の交付研究の概要

  注) ① 被交付者    ③ 研究費総額
     ② 研究期間    ④ 補助金交付額

 1.原子炉用熱交換器のエ作方法に関する研究

  ① 新三菱重工業(株)   ③ 12,585千円
  ② 34.9.1-35.3.31  ④ 6,900千円

 目的:軽水型動力炉の熱交換器(伝熱面積115m2,800φ×5,500mm程度)を目標として、その工作方法に関する技術を開発する。

 内容: (1)光電管式マルチプルチューブウェルダーを用いて18-8ステンレス鋼管と管板の溶接法の研究、 (2)シェルと水室との溶接および焼鈍方法の研究、 (3)シェル溶接部の放射線検査の研究、 (4)ステンレス管台と内面肉盛クラッド水室との溶接法の研究、 (5)以上の研究を総合して熱交換器の試作を行ない、水圧試験その他の試験を行なう。

 2.原子炉用圧力容器の残留応力および熱応力に関する研究

  ① 三菱造船(株)    ③ 6,148千円
  ② 34.9.1-35.3.31 ④ 2,913千円

 目的:模型圧力容器を用いて、その熱応力を実測し強度計算法の確立を図るとともに、圧力容器の加工および繰返し使用によって生ずる残留応力を確認し、この種容器の設計資料を得る。

 内容:圧力容器(shipping portの約1/6寸法)を電熱器により内部から加熱し、肉厚方向の温度分布と熱応力を実測し計算値と比較する。

(2)圧力容器内に試験用ボイラにより約100気圧350℃の蒸気を通気し、約100回運転を操り返した後に容器内外面約60点の残留応力を測定する。

 3.原子炉用容器の微少漏洩に関する研究

  ① (社)日本機械学会  ③ 7,756千円
  ② 34.9.1-35.3.31   ④ 3,897千円

 目的:原子炉用容器を必要最少手数により合理的に製作を可能ならしめるため、漏洩検査に使用する Heガスの漏洩量と原子炉用流体(D20、 H20等)の漏洩量との関連を研究し、原子炉容器の漏洩に関する検査基準を確立するための基礎資料を得る。

 内容: (1)漏洩測定法の研究、 (2)試験片の製作と定性的漏洩試験、 (3) He およびH2Oの漏洩量を質量分析型ガスデテクターおよび電離真空計による圧力上昇法により測定し、 He とH2O の漏洩量の比を得ると同時に圧力に対する漏洩量の依存性を明らかにする。これらの試験を約50の試料について行ない、 HeとH2Oの漏洩量の関連を統計的に求める。

 4.特殊鋼鋳鋼の溶接加エによる原子炉用ポンプの試作に関する研究

  ① 新三菱重工業(株)  ③ 8,602千円
  ② 34.9.1-35.3.31  ④ 3,712千円

 目的:ステンレス鋳鋼の溶接加工に関する技術を開発し、ステンレス鋳鋼製キャンドモーターポンプ用ポンプを試作し、その性能試験を行なう。

 内容: (1)ASTM CF-8、CF-9、CF-8Mの3種の鋳鋼につき溶接性を比較検討し、溶接部の試験を行なう。(2)ケーシングを分割鋳造して衝合溶接するための継手の設計につき検討を行ない、継手部の設計研究を行なう。 (3)ケーシングを溶接組立する際に生ずる工作上の問題点、すなわち分割継手の自動溶接化、ケーシング内部のガス包被方法、溶接部の検査方法ならびに熱処理方法について検討する。 (4)前項までの研究結果を基礎としてステンレス鋳鋼製ケーシングの試作を行ないポンプの運転試験を行なう。

 5.国産1号炉用天然ウランの熱間押出Lによる燃料棒の製造に関する研究

  ① 住友金属工業(株) ③  9,038千円
  ②34.8.1-35.3.31  ④ 4,711千円

 目的:天然ウランおよびその合金の熱間押出し加工による均一健全な燃料棒を製造する技術を確立する。

 内容:アーク式溶解法と高周波誘導式溶解法の併用により押出素材の成型法を探究し、押出素材の製造履歴と組織、表面状況、押出棒の性能との関係を検討し、有効な押出素材の製造法を求めるとともにα相での押出法につき工業的な押出の諸条件を探究する。またこれらの研究と関連して押出材の処理と性能の研究を合わせ実施する。

 6.国産1号炉用天然ウラン燃料の被覆に関する研究

  ① (株)日立製作所  ③ 12,275千円
  ② 34.9.1-35.3.31 ④ 6,650千円

 目的:国産1号炉用天然ウランアルミニウム被覆型燃料の国産化を計らんとする研究の継続で、従来試作してきた非結合型燃料棒を金属型とする方法を見い出し、燃料要素の性能改善に資する。

 内容:ウランの上に NiおよびSn-Zn 合金結合層を真空蒸着法により作る方法を検討する。さらに結合金属層を表面に作ったウラン棒にアルミニウムを引抜で被覆し、その後拡散焼鈍を行なうことによって結合させる方法を検討し、適正な製造方法を確立するとともに試作した結合型燃料棒と非結合型燃料棒の諸特性を比較検討する。

 7.増殖炉用トりウム質ブランケット材料の成型加工に関する研究

  ① 昭和電工(株)   ③ 7,217千円
  ② 34.9.1-35.3.31 ④ 3,608千円

 目的:高純度Thメタルを母体とし、これに高純度黒鉛メタルをマトリックスにしたTh-黒鉛系およびTh炭化物-黒鉛系の燃料親物質要素の加工技術を追求する。

 内容:Th塩のCa還元および電解精製によって得たThメタルあるいはトリアト黒鉛から生成されたTh炭化物のいずれかを主原料として、これに各種の割合に黒鉛粉末を添加し、圧縮成型後加熱焼成し、さらに必要あれば加圧成型を操り返す一連の加工法について研究する。さらにこれら加工品についてその特性試験を行ない製造加工条件との関係を検討する。

 8.圧縮成型法による寸法精度の良い二酸化ウラン焼結体の製造に関する研究

  ① 三菱原子力工業(株)  ③ 8,349千円
  ② 34.9.1-35.3.31 ④ 3,727千円

 目的:核燃料体としての二酸化ウランペレットの製造原価を低減させるため、高比重で均質なしかもグラインダー仕上加工の不要な程度に寸法精度のよい二酸化ウラン燃料体の製造法を確立する。

 内容:充填密度の高い酸化ウラン粉末を製造し、これを圧縮し均一な高比重の圧縮体に成型した後、焼結する各工程を検討し研摩仕上の必要のない程度に寸法精度のよい二酸化ウラン焼結体の製造条件を確立するとともに得られた焼結体について各種試験を行なう。

 9.ニ酸化ウラン焼結体の製造に関する研究

  ① 住友電気工業(株)  ③ 7,735千円
  ② 34.9.1-35.3.31  ④ 4,130千円

 目的:二酸化ウラン焼結体の諸特性を試験し、製造研究成果を正確に把握してその性能の向上に資するとともに二酸化ウラン焼結体の製造法を確立する。

 内容:二酸化ウラン焼結体の各種製造法、組成(添加物、不純物)が焼結体の実用性能に及ぼす影響を明らかにするため、原子燃料としての二酸化ウラン焼結体の高温における熱伝導度、熱膨張、熱衝撃試験、高温ガスおよび高温高圧水中での耐食試験を行ない、未知の点の多い高温特性を明らかにし、二酸化ウラン焼結体の製造法を検討する。

 10.二酸化ウラン粉末の製造に関する研究

  ① 三菱金属鉱業(株) ③12,426千円
  ② 34.9.1-35.3.31  ④ 5,370千円

 目的:キログラム規模の製造装置により二酸化ウラン粉末の製造条件およびそれに用いる装置の構造、材質等を検討し、均一な二酸化ウラン粉末の製造条件を確立する。

 内容:精製ウラニル水溶液を使用しての重ウラン酸アンモン法による二酸化ウラン製造試験を主体とし、1ロット約1 kgの二酸化ウラン粉末を作成し、粉末製造条件に対応させて粉末の物理的性質、加工性を検討するとともに各種製造装置の能力、形式、材質等の検討を行ない大量生産実施の際の基礎資料を得る。

 11.核燃料体外套用不滲透性炭素の製造に関する研究

  ① 日本カーボン(株)  ③ 6,599千円
  ② 34.4.1-35.3.31   ④ 3,334千円

 目的:高温ガス冷却型原子炉用核燃料体外套として1,000℃以上の高温で炭酸ガスのごときクーラントに対して安定で、しかも核分裂生成物およびクーラントに対し実用上不滲透な炭素鞘の製造法を確立する。

 内容:ポリビニルベンゼンを充填、焼成した不滲透カーボンの耐熱度、不滲透度の向上を計るとともにそのクーラントに対する反応を防止するために黒鉛表面へのカーボンランダムのコーティングの研究、適当な有機物または無機物による不滲透融着の研究を行なう。

 12.核燃料体外套用不滲透性炭素の製造の関する研究

 ① 東海電極製造(株) ③ 9,929千円
 ② 34.6.1-35.3.31  ④ 4,827千円

 目的:不滲透性炭素の製造およびこれの酸化防止のためのセラミックコーティング処理を工業的規模の下に実施し、製造技術上の諸問題を解明し、高温ガス冷却型原子炉燃料外套体としての適性品の国産化を計る。

 内容:変成タール滲透ならびにハロゲン処理による不滲透性炭素の試作研究、その加工、接着法等の検討とともに各種試験を実施する。

 合わせて試作不滲透性炭素の緻密な炭化珪素等によるコーティング法についても研究を行なう。

 13.原子炉用ジルコニウム合金およびマグネシウム合金の溶接に関する研究

 ① (財)日本熔接協会 ③ 13,659千円
 ② 34.9.1-35.3.31  ④ 7,943千円

 目的:近い将来建設が予想される加圧水または沸騰水型のような水冷却型原子炉に使用されるジルコニウム合金と炭酸ガス冷却型原子炉に使用されるマグネシウム合金についてその溶接施工法を確立する。

 内容:ジルコニウム合金の国産展伸材、マグノックスA12、マグネシウムージルコニウム合金およびそれらの改良材についてTIG溶接による溶接条件の検討、溶接部の各種試験を行ない、最適溶接条件を決定するとともにジルカロイ板とステンレス鋼板を使用して異種金属との溶接も研究する。

 14.原子炉用ジルコニウム合金製パイプの製造に関する研究

 ① (株)神戸製鋼所  ③ 16,924千円
 ② 34.9.1-35.3.31 ④ 9,242千円

 目的:継目無しジルコニウム合金パイプ、溶接引抜ジルコニウム合金パイプの製造条件を検討するとともに試作パイプの諸性質を調査し、原子炉用ジルコニウム合金パイプの経済的な製造法を確立する。

 内容:不活性ガス中アーク溶接ならびに真空中電子衝撃溶接による溶接引抜パイプ素管の製造研究、熱間押出しによる継目無し、パイブ素管の製造研究ならびに冷間抽伸の前後および中間の汚染の防止、焼付の防止等を研究するとともに試作したパイプの機械的性質、耐食性、耐酸化性等を合わせ検討する。

 15.原子炉用ジルコニウム、鋼、モリブデン系合金の製造に関する研究

 ① 古河電気工業(株) ③ 9,484千円
 ② 34.8.1-35.3.31 ④ 4,212千円

 目的:国産のジルコニウムスポンジを使用して核燃料構成材としてのジルコニウム-銅-モリブデン系合金の製造技術を確立する。

 内容:スカール式アーク炉を使用してジルコニウム-銅-モリブデン系合金の均一なインゴットを得るための諸条件について研究を行なう。得られた合金については高温高圧炭酸ガスに対する耐食性の試験、高温における各種機械的試験を行ない強力合金としての銅、モリブデンの量を検討する。次いでこの系の合金に第4元素を添加して熱処理効果等について検討し、最終的な合金の組成ならびに熱処理方法を確立する。

 16.金属ハフニウムの製造に関する研究

  ① 東洋ジルコニウム(株) ③ 7,492千円
  ② 34.9.1-35.3.31 ④ 3,974千円

 目的:金属ハフニウムの酸化ハフニウムからの工業的製造技術を確立し、原子炉用ハフニウムスポンジの国産化をはかる。

 内容:酸化ハフニウムを塩化して塩化ハフニウムを製造し、この塩化ハフニウムを精製したのちマグネシウム還元により金属ハフニウムを製造する各工程を10kgバッチ程度の規模で実験を行ない、この各工程を検討し、その製造技術を確立する。

 17.完全オーステナイト鋼用溶接棒の製造に関する研究

  ① 日本ステンレス(株) ③ 2,421千円
  ② 34.4.1-35.3.31  ④  718千円

 目的:フェライト相を含まず組織は完全オーステナイトを有し、かつ亀裂を生じない溶接棒を作り、オーステナイトステンレス鋼の溶接の改善に資する。

 内容:18-13-3Mn溶接棒のクロム量を再検討してシグマ化への影響を研究し、同時にニオブの添加による亀裂性への感受性を検討して、高温でのクリープラプチャ性質を改善するとともに含有各種元素の量と亀裂性との関連性を見い出し、 18-13-3Mn棒を実用棒として発展させるべく研究を行なう。

 18.燃料被覆用改良型ステンレス鋼管の製造に関する研究

 ① 日本冶金工業(株) ③ 5,904千円
 ② 34.9.1-35.3.31  ④ 3,446千円

 目的: Co、 Mn、 Ta等を極度に制限した改良型ステンレス鋼を使用して燃料被覆用薄肉細径チューブの製造法を確立する。

 内容:改良型ステンレス鋼をアーク炉で溶解L、板材および棒材に製造したのちこれを使用しての電縫管およびシームレス管の製造法を検討する。また得られた試作品のそのおのおのについて非破壊検査等の性能試験を行ない、これらの管の燃料被覆管としての適合性を調べ、溶接管と継目無管の比較検討を行なう。

 19.原子炉用鉄アルミニウム系合金の製造に関する研究

  ① (株)神戸製鋼所  ③ 4,460千円
  ② 34.9.1-35.3.31 ④ 1,488千円

 目的:原子炉炉心用材料、燃料被覆材として注目されている鉄アルミニウム合金またはこれに2、 3の元素を添加した合金の消耗電極式ア-ク溶解炉による製造研究を行ない、その製造条件を確立する。

 内容:消耗電極式アーク炉を利用して鉄アルミニウム合金およびこれに2、 3の元素を添加した合金の健全な鋳塊を製造するに必要な溶解研究を行なうとともにこれら合金の鍛造、圧延、熱間押出等の加工法の研究およびその機械試験、耐食試験等の諸性質の試験等を合わせ実施する。

 20.原子炉用ボロン入りステンレス鋼の製造に関する研究

  ① 日本冶金工業(株)  ③ 6,654千円
  ② 34.9.1-35.3.31 ④ 3,859千円

 目的:原子炉用熱遮蔽材および制御棒を目的とした含ボロンステンレス鋼に対しそのすぐれた核的性能をそこなうことなく、冶金学的な性能を改善し、その工業的規模の製造法を確立する。

 内容:実験室的規模にて大気中および真空中溶解によりボロンステンレスの予備的試作試験を行ない、改良効果を与えるために必要な合金組成、製造条件に関する基礎的方法を確立し、次にこの成果を利用して現場的中間規模により約300kgの試作溶解を行ない、その製造法を検討するとともに一部の鋼塊について機械的性質、加工性、腐食試験等を実施する。

 21.放射線によりポリエステル樹脂の硬化に関する研究

 ① (財)日本放射線高分子研究協会 ③ 11,635千円
 ② 34.4.1-35.3.31 ④ 6,256千円

 目的:ポリエステル樹脂は触媒熱などの手段で硬化し、一部実用に供されているが、本研究では放射線による硬化反応によって物性のよりすぐれたものを得ようとするものである。

 内容:種々の不飽和ポリエステルを醋酸ビニル、スチロール、メチルメタクリレート等のモノマーに溶解させ、 104~106rad のγ線およびβ線を照射して硬化させる。その間赤外線吸収スペクトルによって架橋の状態や進行度を調べて硬化のメカニズムを研究するとともに照射温度、外気の種類、圧力等を変化させてその影響を調べ硬化に最適の条件を見い出す。

 22.微弱放射線量測定器の試作に関する研究

 ① 大倉電気(株)   ③ 9,298千円
 ② 34.5.1-35.3.31 ④ 4,951千円

 目的:電離箱と振動容量電位計を組み合わせ、いわゆるチャージングメソッド法により極微弱線量率(0.6μr/h~6mr/h)から強線量率(0.6mr/h~600r/h)まで変化する場合、無調整で自動記録でき、しかもその積算値も求めうる測定器を試作する。

 内容:(1)振動容量電位計をチャージングメソッドにより1×10-15クーロン、 1×10-18アンペアを安定に測定できるよう改良研究を行なう、 (2)パルス積算機構の研究、 (3)微弱の放射線源定に適した差動接続の電離箱の試作研究、 (4)以上を総合した場合の相互関係の問題検討

昭和34年度原子力平和利用研究委託費の交付研究の概要


 注)① 被交付者   ③ 委託費交付額
   ② 研究期間

 1 イオン、サイクロトロン、レゾナンス方式による高温プラズマの発生に関する研究

 ① (株)日立製作所   ③ 17,637,815円
 ② 34.9.16~35.3.31

 目的:サイクロトロンレゾナンスによりイオンを加速し、高温プラズマを発生させうることを確かめ、この方式による核融合反応実用化のための資料を得る。

 内容:サイクロトロンレゾナンス方式のプラズマ発生装置(20,000gauss/10,000gauss)により(1)サイクロトロン輻射およびスペクトル、 (2)イオン電流、 (3)イオン密度、電子エネルギー等のプラズマの物理的諸量を求め、この方式による超高温発生の可能性を検討する

 2 核融合を目的とした超高温プラズマに関する研究

 ① 三菱原子力工業(株) ③ 5,672,952円
 ② 34. 9.16~35. 3.31

 目的:高周波予備放電、誘導ピンチ放電、軸方向大電流放電により小型環状放電管内に高温プラズマを発生させ、高温プラズマの特性、各放電回路の制御動作がプラズマの加熱および保持に及ぼす影響、放電回路の電気的特性の研究を行ない、核融合反応実用化のための資料を得る。

 内容: 33年度委託研究の継続として(1)高周波予備加熱の研究、(2)放電制御とプラズマの加熱および保持に及ぼす効果、(3)放電回路の電気的樽性の解析、(4)大電流イグナイトロン性能改善の研究を行なう。

 3 高温プラズマ現象の測定に関する研究

 ① 理化学研究所 ③ 7,248,407円
 ② 34.9.16~35.3.31

 目的:高温プラズマの測定法を確立すると同時にプラズマの物理的特性を測定し、核融合反応制御の基礎資料を得る。

 内容:(1)直線状低電圧放電装置に高性能な真空排気装置および高周波発振器を付加して高純度でかつ安定なプラズマを発生させ、測定を容易にする。(2)(1)により発生したプラズマの現象あるいは物理的特性を次の方法により測定し、測定方法の基礎を確立する。(イ)3cmおよび8mmのマイクロ波、(ロ)発光スペクトル分析、(ハ)パルス的測定法および荷電粒子密度直視装置、(ニ)駒撮りカメラによる写真測定

 4 高温プラズマ測定用ミリ波測定器の試作に関する研究

 ① 沖電気(株) ③ 6,873,195円
 ② 34.9.16~35.3.31

 目的:ミリ波プラズマ測定器(50GC. 120db)を試作し、名古屋大学の放電装置に取り付け、プラズマの電子密度、衝突周波数、プラズマ温度等を測定し、 6mm波測定技術を確立する。

 内容:(1)6mm波プラズマ測定器を試作し、その受信回路系の周波数特性を精密に測定する。(2) mm波プラズマ測定装置較正用小型プラズマ発生装置を製作し較正実験を行なう。特に電磁ラッパとプラズマの整合の問題に重点を置く。(3)名古屋大学において同大学のゼーター型放電装置にプラズマ測定器を装着して測定実験を行なう。

 5 高温プラズマ観測用真空紫外分光光度計の試作に関する研究

 ① (株)島津製作所 ③ 8,934,320円
 ② 34.9.16~35.3.31

 目的:高温プラズマ測定用真空紫外線分光光度計(10-4mmHg.3,000~1,000Å 8.3Å/mm)および光電測光部を試作し、その製作技術を確立する。

 内容:(1)凹電回折格子を使用した真空紫外線分光器(10-4)mmHg.3,000Å~1,000Å8.3Å/mm)を試作する(2)測光部は写真測光の他に、特定のスペクトルにセットされたスリットを通じて各スペクトル線の時間的推移を光電子増倍管、増幅器、シンクロスコープにより記録しうる光電測光部の試作を行なう。(3)分光器と測光部を結合し、次の項目について研究を行ない分光光度計の性能を高める。(イ)真空紫外域、特に1,600Å以下の短波長における光電面の感度の試験、(ロ)光電面と併用すべき蛍光材料の研究、(ハ)分光器の光学的諸条件の試験、(ニ)その他

 6 原子力船における原子炉周辺の船体構造に関する基礎的研究

 ①(社)日本原子力船研究協会 ③ 14,975,710円
 ② 34.9.16~35.3.31

 目的:原子加船船穀設計上特に重要と考えられる次の3項目について実験を行ない原子力船船体構造の設計資料とする。(1)衝突または接岸時の衝撃に対する船側の耐衝突構造、(2)コンテナーおよび二次遮蔽等の集中荷重に対する船体構造および支持構造、(3)コンテナーと船体構造の一体化。

 内容:(1)梁および平面構造物約50個に振子式衝撃試験機により衝撃を加え塑性域の実験を行ない、応力分布、変形等を計測する。(2)二重底格子桁構造模型に集中荷重をかけ、局部曲げと各部材の圧縮による応力分布を計測する。(3)コンテナー兼用船体構造の構成部材の単独試験を行ない応力分布、焼みを測定する。またコンテナーを想定した油槽船タンクの模型について中心から空気により荷重を加え、各部の応力撓みを測定し、また破壊荷重を求める。

 7 原子力船における原子炉に及ぼす影響に関する研究

 ①(社)日本原子力船研究協会 ③ 23,134,960円
 ② 34.9.16~35.3.31

 目的:原子力船が航海中にうける各種の動揺、スラミング等に基づく外力による加速度の影響ならびに船体固有振動の実態を把握し、船体構造、原子炉室の最適位置、舶用炉に対する条件等の関連性を解明し、原子力船設計に関する基礎資料を得る。

 内容:(1)高速貨物船二隻について船体各部の上下および水平方向の加速度の振幅頻度、加速度の伝達状況を冬期北太平洋およびニューヨ-ク航路において計測する。(2)新造鉱石船2隻、同油槽船6隻について試運転時に水平および上下方向の振動の周波数、振幅または加速度を測定する。また試運転時の同一載荷状況で起振器による実験も行なう。

 8 六弗化ウランの小規模生産に関する研究

 ① 大阪金属工業   ③ 8,676,177円
 ② 34.9.16~35.3.31

 目的:重ウラン酸アンモンを出発原料としてこれをフッ素化し、四フッ化ウランを経て六フツ化ウランを製造するに必要な反応の諸条件を確立する。

 内容:重ウラン酸アンモンを出発原料として四フッ化ウランを生成するに際して水素ガスおよび無水フッ酸の混合比を適宜にとり、熱分解還元およびフッ素化の工程を同時または並行して行ない、短い工程で四フツ化ウランを製造するための小規模生産に必要な反応条件を検討する。

 かくして得られた四フッ化ウランにフッ素ガスを作用し、六フッ化ウランを生成する反応を連続反応に適した装置を使用して、その反応条件について検討する。

 9 遠心分離法によるウラン濃縮に関する基礎的研究

 ① 理化学研究所 ③ 12,959,922円
 ②  34.9.16~35.3.31

 目的:濃縮ウラン製造方式のうちで理論的に濃縮のためのエネルギーが最少と思われる遠心分離法について、他の方法に比較して経済的に濃縮ウランを製造しうるかを検討するための基礎データーを求める。

 内容:ウラン同位体濃縮用の遠心分離機(200mmφ×1,200mm、 20,000r.p.m)を設計製作し、 HeまたはAr で予備試験を行なった後六フッ化ウランで分離効果に対する操作条件の影響、長期運転等について研究を行ない、その結果から遠心分離カスケードによる濃縮ウラン製造の可能性、経済性の検討を行なう。

 10 ウラン濃縮を目的としたウラン化合物に関する研究

 ① 理化学研究所 ③ 5,002,182円
 ② 34.9.16~35.3.31

 目的:各種の鎖式および環式ウラン有機化合物を合成し、その諸性質を検討して濃縮ウランの製造に寄与する。

 内容:昨年度の研究に引き続き本年度は蒸留に適するような熱に安定な液体化合物の発見に主目標をおき、鎖式ウラン有機化合物を中心として研究を実施する。昨年度はウラン・ペンタエトキサイド、ウラン・ペンタメトオキサイド、ウラン・ヘキサエトキサイド、 1-3ジケトン・ウラン錯化合物などを合成したが本年度はさらに他の鎖式ウラン化合物の合成を行なう。同時に合成されたウランの有機化合物の物理的、化学的諸性質の研究を行なう。

 11 水素液化精留法による重水の濃縮に関する研究

  ① 日本酸素(株)    ③ 7,018,942円
  ② 34.9.16~35.3.31

 目的:棚段式精留塔を使用して液体水素の精留棚の化学工学的諸特性の究明、高温交換接触反応用触媒の研究等を行ない、水素液化精留法による重水製造の基礎資料を得る。

 内容:液体水素の精留に必要な棚段式精留塔の構造を決定し、これを使用して種々の条件下で精留効率等について検討するとともに、液体空気を使用して液体水素精留装置のスケールアップのための諸因子を追求し、大型液体水素精留装置の設計資料を得る。一方原料水素の濃縮に必要な高温接触反応に使用する触媒についてはアルミナクロミナ系のものを中心として高性能の触媒を探究する。

 12 海洋投棄用放射性廃棄物容器に関する研究

  ① 理化学研究所   ③ 5,696,249円
  ② 34.9.16~35.3.31

 目的:近来著しく増加しつつある放射性廃棄物の安全かつ経済的な海洋投棄用容器の設計に資するため、種々の形状の容器について耐圧、耐食性の研究を行なう。

 内容:球形、円筒形、テトラポット形等各種の海洋投棄用容器モデルを試作して、水圧試験機に入れ250kg/cm2までの耐圧破壊試験を行なう。さらに容器材質の耐食性試験のためには種々の金属の試験片を原子炉で中性子照射してアクチベイトし、毎秒数cm の速度で流動する人口海水中に浸漬して、一定期間ごとにその海水の放射能を測定することによって試験金属片の耐食性の研究を行う。

 13 トリチウムのトレーサー利用に関する基礎的研究

  ① 放射性同位元素協会 ③ 7,657,337円
  ② 34. 9.16~34. 3.31

 目的:トリチウムは物質界における水素の存在の普遍性からしてきわめて有用なトレーサーと考えられるが、放射線エネルギーが微弱で測定法がむずかしいため、ほとんど利用されていない。かくて本研究ではトリチウムのトレーサー利用技術開発のためその測定法を中心とした研究を行なう。

 内容:電離函比例計数管、シンチレーションカウンター、ラジオオートグラフ等各種の測定方法の優劣を測定試料の形状と関連させて比較研究するとともにトリチウムの同位元素効果、交換反応を究明する。さらに動物植物のメタボリズムおよび細胞核の生成状態の研究へトリチウムをトレーサーとして使用し、この方面へのトレーサー利用方法を検討する。