原子力局

 第4回放射線取扱主任者試験が9月3、4日の両日東京、大阪で実施された。受験者は696名であった。放射線審議会ではICRP新勧告を検討した結果、放射線障害防止に関する意見書を内閣総理大臣あて提出した。昭和34年度原子力平和利用研究委託費、研究費補助金の交付が正式決定した。また昭和34年度IAEAアイソトープ研修生受入れについて候補者および受入の機関が内定した。

第4回放射線取扱主任者試験の実施

 受験申込者は総計696名


 第4回放射線取扱主任者試験は、6月26日の科学技術庁公告に基づき9月3日(木)、4日(金)の両日東京(拓殖大学)および大阪(関西大学天六学舎)において実施されたが、その受験者の内訳は下表のとおりである。なお合格者の発表はおって公告される。

第4回放射線取扱主任者試験受験者数


第4回放射線取扱主任者試験問題

1. 法  令

「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」及びその関係法令につき解答せよ。

第1問 放射性同位元素を使用している施設に火災が生じ、放射線障害が発生するおそれがある場合に、使用者は如何なる措置を講じなければならないか。

第2問 下の文章は、国際放射線防護委員会の最近の勧告の内容の一部を述べたものである。職業的に放射線にさらされる者の最大許容放射線量について、この文章で述べられている内容と現行法規との差異を簡単に述べよ。

「(1)生殖腺、造血臓器及び眼の水晶体に蓄積される最大許容全線量は、18才をこえるいずれの年令においても次の関係式により定められねばならない。

  D=5 (N-18)

   ここでDはレムで表した組織線量

   Nは年令数

 この式が許す範囲であっても、職業的に被ばくする者は、任意の引き続いた13週間において3レムをこえて放射線を受けてはならない。

(2)被ばくが、必然的に生殖腺、造血臓器及び眼の水晶体以外の身体のある部分又は単一臓器に限られる場合には、式D=5(N-18)から由来する線量より大きい線量が、すなわち、皮ふについては13週につき8レム、手、前ばく、足又は足関節部については13週につき20レム、甲状腺、生殖腺及び造血臓器以外の体内諸臓器の局限被ばくについては13週につき4レムが許される。

第3問 この法律において下記の各項のごとき場合、科学技術庁長官の許可を受けること又は届け出ることが必要な項にはそれぞれ許可又は届出の字句を、許可又は届出の両者とも不必要な項には不必要の字句を番号順に記せ。

(1) 210Po 2,000cを装備する原子電池を使用する場合
(2) 45Ca300mcを使用してダムの漏水調査を行う場合
(3) 1mcのRaの針を使用して患者を治療する場合
(4) 131I 500mcの使用の許可を受けた者がその使用を廃止した場合(許可が取り消された場合を除く。)
(5) 60Co500mcを装備する放射線探傷装置を他の使用者へ貸与する場合
(6)放射線照射装置を購入しようとする者が購入にあたって試みとしてそれを使用する場合
(7)放射性同位元素を鉄道によって輸送する場合
(8)放射線取扱主任者を選任した場合

第4問 次の文章中正しいものには○印を、誤っているものには×印をつけ、誤っている場合にはその理由を簡単に記せ。

(1)固体状の放射性同位元素は、次の3つの条件に合致している場合には、海洋投棄が常に許される。

イ 容器に封入すること。
ロ イの容器は、廃棄の際及び廃棄後において破損するおそれがない程度の強度を有し、水が浸透せず、腐食に耐え、かつ、放射性同位元素を入れた時の比重が1.2以上であるものとすること。
ハ 投棄する箇所の海洋の深さは、 2,000メートル以上であること。

(2)使用者は、その使用施設の構造を政令で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない。

(3)放射性同位元素によって汚染された物を土中埋没した場合には、廃棄の年月日、廃棄した物及びその数量、廃棄の方法及び場所並びにそれに従事した者の氏名を帳簿に記載し、その帳簿を3年間保存しなければならない。

(4)放射線照射装置の使用の許可を受けた者以外の者が、放射線照射装置を所持することは許されない。

(5)使用者は、その所持する放射性同位元素について盗取、所在不明その他の事散が生じたときは、遅滞なく、その旨を警察官に届け出なければならない。

(6)放射線取扱主任者試験には、学歴、年令等の受験資格の制限は附されていない。

(7)科学技術庁長官は、使用者が禁治産者となった場合には、ただちに使用の許可を取り消すことができる。

(8)放射線照射装置を使用する場合には、この法律でいう管理室は必要としない。

2. 管 理 技 術

第1問 32Pを含む排液の放射能をG-M計数管で測定した結果1,000ccにつき2,000cpm (カウント毎分)であった。みかけの計数効率が10%であるとしたときそのまま下水に排水してもよいか。ただし、 32Pの水中の許容濃度は2x10-4FLc/ccである。

第2問 1cの60Coを装備した放射線照射装置を使用しようとする人に対し放射線取扱主任者としていかなる注意を与えたらよいか。

第3問 次の2問のうち1問について答えよ。

(1)使用施設の作業室につける換気設備を設計する際の注意事項を列挙し、簡単に説明せよ(「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令」に示してあること以外でも、必要と思われる事項があれば列挙し、説明せよ)。

(2)廃棄すべき液体状若しくは固体状の放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染されたものを容器に入れて保管する場合の注意事項を列挙し、簡単に説明せよ(放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令及び施行規則に示されてあること以外でも、必要と思われる事項があれば列挙し、説明せよ)。

第4問 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令でいう管理室について次の間に答えよ。

(1)管理室はどんな目的で設けるのか。
(2)管理室の位置はどこにすべきか。
(3)管理室にはどんなものを備えなければならないか。
(4)管理室の表面仕上材料について必要な注意事項は何か。
(5)管理室にはどんな標識をつけるか。

第5問 実験室で数mcの137Cs又は90Srを使用する場合健康管理上の観点より次の問に答えよ。

(1) 137Csが誤って体内に入り最大許容量以上に沈着した場合の危険性
(2) 137Csの体内沈着を体外より確かめる方法
(3) 90Srの溶液の入っている硝子器具を取り扱うときの注意
(4) 90Srの体内沈着を確かめる方法

3.測 定 技 術

第1問 放射性同位元素の表面濃度(放射性表面汚染)の測定法を述べ、測定上の注意事項について記せ。

第2問 35Sと198Auを用いて実験を行って10リットルの廃液を7月1日午後3時に得た。この廃液のうち100ccを蒸発乾固し、計数装置で測定したところ下記の様な値をえた。


 7月22日午後3時における核種とその濃度を求めよ。また、この実験により廃液中に捨てられた7月1日午後3時の35S及び198Auの量を求めよ。ただし、蒸発乾固により試料は散逸しないものとする。35Sの半減期は87.1日、 198Auの半減期は2.69日、35Sのみかけの計数効率は10%、198Auのみかけの計数効率は20%とする。放射性同位元素の減衰曲線は解答用紙中のグラフに与えられている。

第3問 14Cを含む炭酸バリウムがある。この放射能を測定するのに、

(i)そのままの形で、薄窓をもった端窓型G-M計数管を用いて計数した。
(ii)そのままの形で、窓なし2πガスフロー計数管を用いて計数した。
(iii)炭酸ガスに変え、電離箱に充填し、真空管電位計または振動容量型電位計を用いて電離電流を測定した。
(iv)適当な化学操作によってメチルアルコールに変え、液体シンチレーダーと混合し、シンチレーションカウンターを用いて計数した。

 以上の4方法につき、種々の面からその長所及び短所をあげ、簡単な説明を加えよ。

4. 物  理

第1問 β崩壊の三つの型について簡単に説明せよ。

第2問 次の語句を簡単に説明せよ。

(1)電子ボルト
(2)質量吸収係数
(3)電離電流
(4)核反応断面横
(5)核分裂

第3問 60Co用のしやへい容器を設計するためごそのγ線の鉛中における全吸収係数を本でしらべたところ、0.68cm-1とあった。これは、半価層およそ1.0cm(1/0.68×loge2)に相当する。そこで、γ線量率を約1/32に減衰させることを期待し、厚さ5cmの鉛しゃへい容器を作り、線源を入れたところ、容器は完全であったにもかかわらず、予期に反して線量率は1/10にしかならなかった。この理由を簡単に説明せよ。

5. 化  学

第1問 放射性廃液の処理法のうち、次の各方法の長所および短所を1つずつあげよ。

(イ)イオン交換法
(ロ)凝集沈澱法(フロキュレ-ション法)
(ハ)蒸発法

第2問 次の6間のうち4間を選び、それぞれの場合に趣こる現象を簡単に述べよ。

(1) 90Sr-90yを含む塩酸酸性溶液に、少量の塩化ストロンチウム及び塩化第二鉄を加え、アンモニアでアルカリ性にするとき
(2) 35Sを含む硫酸ナトリウムと131Iを含むヨウ化ナトリウムとの混合溶液に、塩化バリウム溶液を加えるとき
(3)短時間熱中性子照射を行なって24Naを生成させた炭酸ナトリウムを水に溶解し、塩酸を徐々に加えて静かに加温し、蒸発乾固させるとき
(4)硝酸第ニセリウムの水溶液に多量のγ線を照射するとき
(5)短時間熱中性子照射を行なって128Iを生成させたヨウ化エチルを分液漏斗中で水と振りまぜるとき
(6) 64Cuと65Znとを含む中性ないし微酸性溶液に1本の鉄釘を投入するとき

第3問 次の2問のうち1問について答えよ。

(1)熱中性子線束2.0×1011n/cm2・secの原子炉で、1.0gの無水炭酸ナトリウムに1時間中性子を照射する場合、照射終了時に生成している24Naは何mcか。

 ただし、原子量:Na=23, C=12
 24Naの半減期: 15.0時間
 23Na(n.γ) 24Naの核反応断面積: 0.54バーン(barn)
 23Naの同位体存在北(abundance) : 100%
 Avogadro数: 6.0×1023

 また必要があれば次の表を使用せよ。


(2) 14Cで標識されたC,H,Oよりなる有機化合物試料がある。この試料の6.81mgを完全燃焼し、生じたH2O及びCO2を捕集して容積と圧力とを20.0℃において測定したところ、 H2Oは175cc,17.2mmHg、CO2は350cc、20.0mmHgであった。次にこのCO2の85%を気相計数管(gas phasecounter)にうつして放射能を測定したところ、11,550cpmを得た。用いた計数管の計数効率を60%として

(イ)試料中のC及びHの百分率
(ロ)試料の比放射能(μc/mg)

を計算せよ。


6. 生  物

第1問 生物に対する放射線の作用機構における間接作用の証拠としてあげられてきた現象のうち2つをとりあげて簡単に説明せよ。

策2問 次の各図は放射線の線量とその生物学的作用率との関係を示す図である。各図の代表的な現象を1つずつあげて簡単に説明せよ。

第3問 下の文は放射線の影響に関する国際連合科学委員会報告書の一般的結論のところからとったものである。このなかで[  ]になっているところに下に書いた語又は丈の中から適当なものを選べ。

 「この報告(国連の報告書)に述べられたことから次のような結論が、はっきり出てくる。すなわち、

(1)いかに少量の放射線でも、これを受けると[ 1 ]と、また多分[ 2 ]が起ることが免かれない。

(2) [ 3 ]及び[ 4 ]からの放射線は、世界人口全体が多かれ少なかれ受けている。これに反し、 [ 5 ]及び[ 6 ]の照射を受けるものは、人口の一部にすぎない。しかし、人々のどんなグループでも、 [ 7 ]及びそれ以前に照射されると、 [ 8 ]が放射線にさらされる限り、その照射は[ 9 ]の遺伝的影響を増大させることになる。

(3)放射線の身体的影響があらわれ、またその遺伝的影響が明らかになるまでには[ 10 ]。そこで人間の働きが照射の水準を変化させる速度を考察することは重要である。

(イ)有益な遺伝的影響、(ロ)白内障、(ハ)時間がかかるので障害の全体は直ぐには埋われてこない、(ニ)人口全体、(ホ)アイソトープ、(ヘ)成人期間、(ト)医療用、(チ)身体的影響、(リ)その人個人、(ヌ)降下物、(ル)時間がかからないので、障害の全体は直ぐに現われてくる、細身体の一部、(ワ)生殖腺、(カ)ガン発生、(ヨ)有害な遺伝的影響、(タ)職業上、(レ)身体、(ソ)自然の放射線、(ツ)子供のできる年令の間

第4問 レムとは、いかなる単位か。またこうした単位をつくっておくのは、どんな点で便利であるかを述べよ。