教育訓練用小型原子炉の試作について


 原子力平和利用研究費補助金による教育訓練用小型原子炉の試作については、本年2月16日付官報により民間から公募して審査を行ってきたが、さる6月17日開催の原子力委員会において、 (株)日立製作所および東京芝浦電気(株)から申請のあった原子炉2件を採用することに内定した。この原子炉はさらに原子力委員会原子炉安全審査専門部会でその安全性が確認された後、正式に補助金交付を決定する予定である。

 原子力開発の進展にともない、原子力技術者の需要が増加し、その養成訓練にとって教育訓練用の原子炉が必要とされ、かつ大学その他の研究機関において設置の希望が増加しつつある現在、同種原子炉の国産化は今後さらに動力炉の国産化を計る上にも促進されねばならない機運にあることの考慮のもとに補助金の交付を行い試作を行うこととなったものである。

 試作原子炉の仕様は、先進国における原子炉のうち、アルゴノート、トリガーII、 L-77、 AGN-201等の原子炉を対象として、これらの持つ特性を総合し、慎重なる比較検討を行い、大学などにおいて教育訓練用に使用する原子炉で、熱出力は10〜30kW、最大100kW以下とし、負温度係数をできうるかぎり大とする等自己制御が良く、誤操作によっても危険を生じないような安全装置を施したものであることを第一義とし、燃料要素もできるだけ国内加工によるという要望のもとに決定された。これらの要望と合わせて、補助金本来の使命である各部品の国産化の比率が高いこと、また外国製の原子炉にくらべて新味を有し、かつ自社あるいは大学等で教育訓練用に使用する見通しのあること等が審査の主体となった。

 この教育訓練用小型原子炉の大要は別表のとおりであるが、おのおののおもな特長としては I は超過反応度が0.7%に押えてあるので比較的安全であること、II は燃料を国産する、可能な実験範囲が広い、中性子束が高い、強制循環であること等がみられる。製作期間はII が燃料を国産する関係で I よりは若干日時を要するものと思われる。