原子力平和利用研究の紹介

 昭和32年度原子力平和利用研究費補助金による原子力平和利用研究のうち、原子炉用ジルコニウム合金の加工法とその性質についての研究(神戸製鋼所)を以下に紹介する。

原子炉用ジルコニウム合金の加工法とその性質について

株式会社 神戸製鋼所

1.緒  言

 熱中性子吸収断面積の小さいこと、耐食性が良好であること、高温強度がすぐれていること、加工性が一般に良好であること等の点からジルコニウムおよびその合金は原子炉用材料としてすぐれた金属材料であるため、均質型、非均質型を問わず多くの原子炉炉心部の重要な箇所に多量に使用されており、その代表例をあげると次表のとおりである。

ジルコニウムの原子炉への実用例

 特にジルカロイ-2は潜水艦用加圧水型原子炉(就航中4隻、建造中20隻以上と伝えられる)の各部に多量に使用された実績がある。このため米国はもちろん、英国、ソ連等の原子炉先進国においては強力にこれらの開発研究をおし進めている。

 一方わが国においてはジルコニウムおよびその合金の溶解、加工についてはまだ経験が少なく、原子炉用ジルコニウム合金の一般金属材料にみられないきびしい条件、たとえば不純物の許容限界、きわめて微量の合金元素の添加、さらに加工の特殊性等の困難が予想され、その溶解加工技術のすみやかなる開発が望まれていた。

 昭和32年度に「原子炉用ジルコニウム合金の溶解加工に関する研究」が原子力平和利用研究費補助金により実施されたが、以下にその試験研究の結果を報告する。

2. ジルカロイ-2、ジルカロイ-3の溶解法および加工法

(1)溶解法

 消耗電極式二重溶解法によって健全なジルカロイ鋳塊を溶製した。すなわちスポンジジルコニウムおよび添加合金元素をダイス中にプレスし、 80mmのブラケットとしてこれを真空容器中にシグマ溶接機を内蔵せしめた不活性ガスチャンバー溶接機で溶接し、約1,500mm長の消耗電極とした。この消耗電極を前述の真空アーク溶解炉にて溶解し130mm¢の鋳塊とした。次いでこの一次溶解鋳塊を再溶解し180mm¢の鋳塊とした。溶製した鋳塊は超音波探傷機で内部欠陥のないことを確かめ、また鋳塊各部から分析試料を採取して添加合金元素の偏析試験を行った。その結果は第3表に示すとおりジルカロイ-2およびジルカロイ-3のいずれもほとんど偏析がなく,満足すべきものであった。なお第1表および第2表に使用した原子炉純度スポンジジルコニウムおよび比較材として同様に溶製した工業用純ジルコニウム鋳塊の化学組成を示した。

第1表 ジルカロイ鋳塊溶製に用いた原子炉純度スポンジジルコニウムの化学成分

第2表 工業用純ジルコニウム鋳塊の化学成分

第3表 ジルカロイ鋳塊の化学成分



(2)加工法

 溶製したジルカロイ鋳塊をスラブおよびビレットに鍛造し、さらに熱間圧延、冷間圧延、熱間押出および冷間抽伸によって板、棒、線および管を試作した。おのおのの加工工程を述べると次のとおりである。

 鍛造--鋳塊を850℃に加熱し35mm x260mm X580mmおよび100mmφ×430mmの形状のものに鍛伸し、機械加工で30mmx250mm x 570mmのスラブおよび95mmφ×420mmのビレットとした。

 熱間圧延--上記スラブを850℃に加熱し、熱間圧延ロールで4mm厚の板にした。

 冷間圧延--熱間圧延で得られた板を750℃で10分間空気中にて焼鈍した後、表面スケールを除去し、 4段ロ-ルで2mm厚板に冷間圧延した。またこの2mm厚板の一部は650℃で1. 5時間、真空中で中間焼鈍を行い、ふたたび冷間圧延で1 mm厚の板にした。

 熱間押出--ビレットを850〜880℃に加熱し、熱間押出によって10mmφおよび20mmφの丸棒とした。また一部のビレットは中心を穿孔し、同様にして30mmO.D. ×25mmI.D. ×2,000mmの管とした。

 冷間抽伸--熱間押出によって得られた10mmφ丸棒をドローベンチで冷間抽伸し3.Ommφおよび1.6mmφの線とした。

 加工は一般にチタンの場合とほとんど同様の工程で進めたが、ジルコニウムはチタン以上に酸素、窒素等との反応が激しいので、この点細心の注意が必要であった。この意味で熱間加工における加熱温度は低いほど好ましいが、材料の硬度から判断して850〜900℃の温度を選んだ。さらに重油炉等を使用したときは火焔が直接材料に触れないようにステンレス製マッフルで被覆した。板については冷間圧延の際の中間焼鈍および仕上焼鈍はすべて高真空焼鈍炉を用いた。このように汚染に注意して加工すれば工業用純チタンと同様に加工することができ、後述するように製品の確性試験結果からもほとんど材質の損傷がなく、十分な靱性が保たれることが判明した。したがって一般にチタンの加工と大差なく行いうると言える。しかし第2回ジュネーブ会議における報告1)では押出加工の潤滑剤について種々試験した結果、工業的に満足すべき押出加工は銅シース法のみであるとしている。また最近では熱間圧延後β範囲に加熱、焼入し準熱間圧延で仕上げた後焼なましおよび急冷すれば等方性で紐状体の第二相のないジルカロイ板が得られるという報告2)もあり、今後ジルコニウムあるいはジルコニウム合金の加工法についてさらに研究を進める必要がある。その他鍛造、熱間圧延の際の空気中加熱による表面スケールはチタンの場合に比べてはるかに除去しがたく、ソルトバスまたは酸洗のみではほとんど脱スケールは不可能であった。報告3)4)にもあるように、サンドブラストまたはショットブラストで一応のスケールを除去し、その後に硝弗混酸で酸洗して仕上げる方法、すなわち機械的手段と化学的手段とを併用しなければならず、この点についてもなお検討の余地がある。写真1〜2にジルカロイ-2およびジルカロイ-3のと、おのおのの加工成品を示した。

写真1 ジルカロイ鋳塊

写真2 ジルカロイの各種加工製品

3.ジルカロイ-2、ジルカロイ-3の性質

(1) 常温および高温抗張性質

 ジルカロイ-2およびジルカロイ-3の棒試料につき常温ならびに高温における抗張性質を試験した。また比較材として工業用純ジルコニウムについての結果を付記した。試料は第1図のごとき試験片に機械加工し5 ×10-4mmHgの真空中で750℃、 2時間焼鈍した。

第1図 常温、高温抗張試験片

 抗張試験の結果は第2図に示すとおりで、耐力、抗張力の試験温度上昇に対する下降の程度はいずれの材料も300〜500℃で停滞する傾向にあり、この温度範囲でクリープ強度が強い傾向にあることがうかがえる。工業用純ジルコニウムとジルカロイ-2およびジルカロイ-3とを比較すると、常温では前者が高い耐力、抗張力を持っているが、高温になるほど後者との差違がなくなり500℃では後者のほうが高い値を示した。伸びの試験温度上昇にともなう傾向は300〜500℃の範囲で耐力、抗張力の停滞と関連して停滞する傾向を示した。停滞温度は工業用純ジルコニウムが最も低温でおこり、ジルカロイ-2が最も高温でおこる傾向にある。工業用純ジルコニウムの絞りは300℃までは低下し、それ以上の温度で上昇しているが、ジルカロイ-2およびジルカロイ- 3はほぼ直線的に増大している。その直線の傾斜はジルカロイ-3のほうがジルカロイ-2より大きい。このことはジルカロイ-2が少なくとも300〜400℃の範囲で常温の抗張性質の割に他の材料より強い耐熱性をもっていることを想像させる。

 第2図中の点線で示したものは Technical ProgressReviews, Vol. 1 , No. 4 (1958) Reactor Core Materials5)に示されているジルカロイ-2およびジルカロイ-3の高温抗張性質である。ジルカロイ- 2、については伸びがやや異なる傾向を示すが、総合してほぼ本試験結果と大差ない値である。ジルカロイ-3は常温抗張性質にかなり差が見受けられるが、高温になるとともにその差は少なくなり250〜300℃以上ではほとんど差違がないと判断される。

第2図 常高温抗張試験結果

(2)クリープラプチャー性質

 ジルコニウムが使用されるPWR、 BWR型炉等の冷却剤の温度を考慮し、また文献との比較を勘案して316℃を試験温度とした。使用した試験片寸法は第3図のとおりで、熱処理その他は抗張試験試料と同一である。

第3図 クリープラプチヤー試験片

 第4図に316℃クリープラプチヤー試験結果を示した。ジルコニウムはチタンと同様に316℃で特異なクリープ性を示す。すなわちある応力(抗張力にきわめて接近した)以上ではきわめて短時間で破断するが,わずか0. 5〜1.0kg/mm2程度低い応力では非常に長時間で破断するか長時間でも破断しない。これはすでにチタンについて種々の角度から調査したごとく歪硬化現象と想像される6)。

第4図 (1) 工業用純ジルコニウムの316℃クリープラプチヤー曲線

第4図 (2) ジルカロイ-2の316℃クリープラプチヤー曲線

第4図 (3) ジルカロイ-3の316℃クリープラプチヤー曲線

 316℃における応力、クリープラブチャー時間曲線を第5図に示す。ジルカロイ-2は他に比して応力、クリープラプチヤー時間曲線の傾斜が最もゆるく耐熱性のあることを示している。第4表第5図から内、外挿によって求めた各材料の316℃クリープラプチャー強度である。第6図は316℃における各材料の応力最小クリープ速度曲線でジルカロイ- 2は工業用純ジルコニウムに比し19kg/mm2以下の応力では低い最小クリープ速度を示している。第5図および第6図中に点線で示したものは前記文献5)中に示されたジルカロイ-2およびジルカロイ-3 (ジルカロイ-3は推定値)で、本実験結果と比較すると大きな差違は認められない。

第5図 316℃における応力、ラプチャー時間曲線

第6図 316℃における応力、最小クリープ速度曲線

第4表 クリープラプチヤー強度

(3)機械的性質に及ぼす冷間加工の影響

 熱間押出により製作した10mmφ丸棒を冷間引抜によって4mmφの線とし、 750℃で2時間、5 ×10-4mmHgの真空中で焼鈍した試料についてさらにドローペンチで引き技きおのおの12%、 34%および60%の加工率を有する線とした。これらの試料について抗張力および硬度を測定し、これら機械的性質に及ぼす冷間加工の影響を調べた。第7図にその結果を示した。

第7図 機械的性質におよぼす冷間加工の影響

 報告7)によるとジルコニウムの加工硬化は2段におこるが、第7図の結果からもその傾向がみられる。これはチタンの場合にはみられないものである。また加工の初期において急速に硬化することも第7図からうかがえる。

(4)焼鈍による軟化試験

 50%加工度を有する1mm厚のジルカロイ板を用い真空中各温度に1時間保持後焼入したものについて抗張力、耐力、伸びおよび硬度を測定し、焼鈍温度の影響を調べた。第8図および第9図にその結果を示した。

第8図 ジルカロイ-2軟化試験結果

第9図 ジルカロイ-3軟化試験結果

 また37%および67%の加工度を有するジルカロイ線についても同様の試験を行った。これは第10図および第11図に示した。

第10図 ジルカロイ線の軟化試験結果

第11図 ジルカロイ線の軟化試験結果

 これらの結果から、 50%加工度の板試料では400℃から軟化しはじめ700℃で最低値を示した。線試料についても軟化の傾向は同様で400〜500℃から軟化を示し、 700℃で最低となる結果が得られた。

(5) エリクセンおよび曲げ試験

 1mm厚のジルカロイ板を用いてエリクセン試験と曲げ試験を行った。ジルカロイ-2についてはエリクセン値は7.49〜7.85、ジルカロイ-3で6.62〜6.67であった。

写真3 エリクセン試験試料

 また曲げ試験ではジルカロイ-2およびジルカロイ-3とも曲げ角度180で曲げ半径2 tまで可能であった。したがってジルカロイ-2およびジルカロイ-3ともかなりの靭性を有していることが認められた。写真3、 4にそれらの試料を示した。

写真4 曲げ試験試料

(6)溶接試験

 ジルカロイ-2およびジルカロ-3の1mm板を真空容器中にタングステン電極を内蔵する不活性ガスチャンバー容接機で溶接した。すなわち試料を装置中に装入し容器をいったん高真空にした後アルゴンガスを徴正圧まで充填し、直流正極法で溶接した。この溶接材から試験片を取り曲げ試験を行った。第5表にその結果を、写真5に曲げ試験試料を掲げた。

第5表 ジルカロイ-2、 3の溶接試験結果

写真5 ジルカロイ溶接材の曲げ試験試料

 ジルコニウムおよびジルカロイの溶接については2、 3の報告8)9)があるが、本溶接試験の結果からもジルカロイ-2およびジルカロイ-3もチタンと同様に溶接することができることが判明した。

 しかしCox8)によるとジルカロイ-2について多層溶接すると、ルートパスが加熱および徐冷される結果化合物の析出がおこって脆化を示すことを報告しており、またNiemannら10)は同じくジルカロイ-2の溶接部の化合物の析出による脆化について研究し溶接後熱処理することによって回復せしめる試験を行っている。したがって有害なガスの汚染を防止しても、なおジルカロイの靭性は上記のごとき理由から低下することがあり、これらについてジルカロイの溶接方法をさらに検討する必要がある。

(7)熱処理性質および組織

 鍛伸で得た10mm角試料を750℃、 2時間真空焼鈍したものについて400〜1, 000℃の各温度に1時間保持後水焼入したジルカロイ-2、 3の試料について硬度を測定した。第12図にその結果を示した。

第12図 ジルカロイ焼入試験結果

 ジルカロイ-2およびジルカロイ-3とも700℃までは焼鈍硬度と同じ値を保っているが700〜1,000℃においては温度の上昇とともに硬度は急速に増加し1,000℃から焼入れたものは230〜235(ピッカース)の値を示した。

 これらの各試料の顕微鏡組織を写真6に示したが、焼入温度が700℃までの試料はジルカロイ-2, 3ともすべてα相からなっているが、 800℃から焼入れたジルカロイ-3ではαの中にα′がみられ、 850〜900℃では両合金ともα+α′組織となり1,000℃ではいずれもα′組織となっている。

写真6 ジルカロイ−2焼入試料の顕微鏡組織(×100)

  

写真7 ジルカロイ-3焼入試料の顕微鏡組織(×100)



(8)高温加圧水に対する耐食性

 理化学研究所金属材料研究室に工業用純ジルコニウムジルカロイ-2およびジルカロイ-3の2mm厚板についての原子炉雰囲気における腐食試験を依頼し、高温加圧水での腐食試験について次のごとき結果が得られた。

 試験方法は1試料につき3試片を蒸留水に浸漬し、オートクレ-ブ中に入れ、加熱放置し、一定時間ごとに引き上げて試片の重量変化を測定した。試験液は測定ごとに取り替え、試験片は秤量後試験を続けた。試験条件は300℃、 85気圧の蒸留水(pH7)で24、72、 168、 360および697時間である。第13図にその結果を示した。ただし比較材のジルコニウム試料の化学成分は第6表のとおりである。

第6表 供試工業用ジルコニウム成分表

第13図 高温純水腐食試験結果

 第13図の結果から明らかなように、高温加圧水に対するジルカロイの耐食性は比較材の工業用純ジルコニウムに比較しきわめて良好で、同様の条件で試験されたヨード法ジルコニウムおよびジルカロイの試験結果では10mg/dm2/300hr程度の腐食増量値が報告されていて11)本ジルカロイ試験材は十分実用に耐えられるものと考えられる。

4.ジルカロイの分光分析12)13)

 ジルカロイの合金組成はきわめて微量の錫,鉄、クロム、ニッケルであり、これらの合金成分を規格値以内におさめ、その偏析を防止することがジルカロイの製造上最も重要な問題の一つである。これにともない溶製鋳塊または製品について、それらの合金元素を迅速かつ正確に定量分析することが製造過程における品質管理上非常にたいせつなことである。

 ジルコニウムのスペクトルはウランのそれと似て非常に複雑であるため、合金元素の感度を高くするためにはスペクトルの複雑さと、バックグラウンドによって生ずる影響を最小にするような手段を講ぜねばならない。大分散度の分光器ならびに火花励起法の使用がこの目的に合致する。一方ジルカロイの分光分析用金属標準試料を作製することは非常に困難かつ長期にわたる問題であるが、これを化学的な溶液に合成することは容易かつ正確である。以上のごとき理由により回折格子分光分析装置ならびにPorous Cup Electrodeを用いる溶液火花法の分析条件を確立し、中間インゴットならびに最終インゴットの数ヵ所から採取した削粉2grをH2SO4(1 : 4)溶液50ml中に溶解した溶液を分析に供した。第14図に Porous Cup Electrodeの説明図を示した。また第7表にジルカロイの分光分析条件を掲げた。

第14図 Porous Cup Electrode

第7表 ジルカロイの分光分析条件

本法の精度を変動係数(ただしn =11)で表わせば

   Sn, Fe, Cr  2.4〜3.7%

   Ni      7. 0%

で40試料について比較を行った化学分析値、分光分析値の差の平均値の検定結果は

    Sn      5 %有意

    Fe, Gr, Ni 有意差なし

であった。また分析所要時間は本法により現行化学分析(30時間)の1/3に短縮することができた。

 以上のごとく本分析法はジルカロイ中の合金元素について、 Snに関しては正確度は化学分析に比して若干おとるが、これを除くFe, Cr, Niの定量に関しては十分の実用性と信頼性を有することを確認した。

 またジルコニウム中のハフニウムについては、試料を酸化物にした後、同様に格子分光分析装置、ライスキー火花発生装置を用い、コーティング法によって分光分析を行う方法を研究した。しかレ、ハフニウムについては比較すべき化学分析法がなく、その正確度は社外的に実証される必要があった。これに関してはジルコニウム分析研究懇談会のもとに、東京大学および弊社を含む民間数社の研究機関が共通試料についてハフニウムの分析を行い、数回にわたっておのおのの分析方法、分析値の比較検討を重ねた結果、弊社で研究した分析方法およびその分析値の信頼性が確認せられた。

5.結  言

 ジルカロイ-2およびジルカロイ-3の鋳塊を溶製し板、棒、線、管の各製品に加工した。これらについて機械的性質、熱処理性質および耐食性質を調べ、文献による国外のジルカロイの諸データと比較検討し、またジルカロイ中の微量合金元素ならびにハフニウムの分光分析法を研究した。

1.従来使用されている真空アーク溶解炉に検討を加え原子炉用ジルコニウム合金溶解のためのより合理的な真空アーク炉を設計製作した。

2.消耗電極式2重溶解法によりジルカロイ-2およびジルカロイ-3の鋳塊を溶製し、偏析のきわめて少なく、内部欠陥のない鋳塊を得るために必要な溶解条件を求めた。

3.加工はチタンとほぼ同一の条件で行い、一般に良好な結果が得られた。しかし今後さらに次の点について検討を加える必要がある。

(1)加工前後に行う適当な熱処理法の研究

(2)冷間加工時の加工条件の研究

(3)加工工程中の汚染の防止研究

4.機械的諸性質の試験から文献による諸外国のジルカロイと同程度の強度、靭性を常温ならびに高温においても有することが判明した。

5.不活性ガスチャンバー溶接機により靭性のある溶接部が得られたが、ジルカロイ溶接部の化合物析出による脆化の問題については引き続き研究を進める必要がある。

6.熱処理試験の結果、 α→←β変態点の上限は900〜1,000℃の間に、下限は800〜850℃の間にあることが明らかとなった。この点原子炉純度の純ジルコニウムと大差なく、焼入組織も純ジルコニウムと類似する。

7.高温加圧水に対してはジルカロイ-2、ジルカロイ-3とも報告による国外のジルカロイと同程度の耐食性を有することが明らかとなった。

8.ジルカロイ中の合金元素についての分光分析技術を確立した。すなわちSnを除くFe, Cr, Niの定量に関しては十分な実用性と信頼性を有することを確認し、これによって分析時間を現行化学分析に要する時間の1/3に短縮することができた。またジルコニウム中のハフニウムについてもその分析方法を確立した。

参考文献

(1) A.A. Kiseleev他:第2回ジュネーブ会議、15/P/2049

(2) G.M. Adamson, Jr,他:   〃   、15/P/1993

(3) Zirconium-Technology and Economics, :A Fortum Committee Report(1955)

(4) E.L. Richards,他:第2回ジュネ-ブ会議、15/P/1010

(5) "Reactor Core Materials," Technical Progress Reviews Vol.1. No.4(1958. 11)

(6)山本他:材料試験、 Vol.6. No.49(1957. 10)

(7)三島、森川:第2回原子力シンポジウム報文集、3 (1958)

(8)F.G.Cox : Murex Review 1/ll(1952) 3

(9)G.E. Elder他: J.Metals 6(1955)No.5

(10)J.T. Niemann他: Weld.Jnl 35(1956)No.1

(11)C. Tyzack : Nuclear Engineering(1958. 3)

(12)三好:ジルコニウム分析研究懇談会 第5、 6回会議に報告

(13)三好:神戸製鋼所研究報告 神第1128号