参与会
第 6 回 〔日 時〕昭和34年6月18日(木)14.00〜16.00 〔場 所〕港区麻布市兵衛町2の8 第三公邸 〔出席者〕稲生、大屋、高橋、山県、安川、三島、瀬藤各参与 〔議 題〕 〔配布資料〕 1.昭和35年度原子力関係予算案について 井上政策課長および担当官から資料1を説明し質疑を行った。 大屋参与:原研はこれからは大いに民間との協力を図るべき時期である。民間の会社も極力原研を利用すべきである。材料試験炉を来年度予算でどうするかが一つの問題としてあげられたが、以前、参与会でわたしから質問したときは、1014ぐらいの中性子束を使う実験ならばCP-5でもできるということであった。原子炉の国産化のためにCP-5だけでMTRが必要かどうかが結局問題であって、CP-5でどこまでの実験ができるのかtest pieceの大きさ等をはっきりさせて、それ以上のものが国産化に必要であればMTRをやらねばならない。 やがてはCP-5よりも強力な材料試験炉がいる時期がくるに違いないが、メーカーが使うのだからメーカーも強力に出資して原研とは別の形でやったほうがよいと思う。原研からまったく切り離すのではなく、原研の出店としてメーカーが容易に参加できるようにしたい。 原産でも、原子力船の問題を検討しており、マネージメントのグループを組織してサバンナ号を一度視察してきたいと計画している。調査団として11月に出発し、年末に開催が見込まれるIAEAの原子力船のシンポジウムに出席し欧州を回ってくることを考えている。 人形峠の採掘が問題にあげられたが、鉱山というものはやるときは思いきって採掘せねば効果はない。日本で製錬すれば国際価格より高くなるかも知れないが、どんどん掘って製錬し、政府が高く買い上げて国際価格で研究者に売るという価格政策を適用してほしい。 山県参与:原研が船の遮蔽等応用面にもっと力を注ぐことは、人の関係、適正規模の関係等から問題があろうと思われる。原子力船のほうは舶用炉、遮蔽の基礎研究等を積極的にやらねばならない状況であるのに、原研以外に中心になる研究機関がないのは困ったことである。 三島参与:原子炉材料を国産化しようという考えがあるならばMTRは当然必要である。どこが管理するかを早く討論して決め、早くMTRを設けてほしい。 発電用原子炉の場合と同様に核融合の装置についても構造材料の国産化という問題が起ってくると思う。どういう材料を仮想して研究するかはまだ見当がつかないと思うが、結局D2Oのイオンはしぼり切れずに壁にぶつかるだろうから、特に壁に衝突する場合を問題にして研究してほしい。材料は耐熱性よりも熱伝導度をよくすることを問題にして選択すべきであり、低温のプラズマを磁場でつくり、10〜100keVぐらいのエネルギーを使うようにすれば構造材料の研究が可能だと思われる。 ベリリウムは大切な役目を果すようになるであろうが、34年度の補助金、委託費の対象としては申し出がなかったようである。民間が衛生上の問題を考えてちゅうちょしているようならば、金のほうの面倒を見て援助してほしい。 稲生参与:ICAの招きで米国を見て回ったが、リンチバーグにあるB&Wの研究所でサバンナ号に関するトレイニングをうけている4人の日本の技術者に会った。日本からは原子炉の製造、設計を習うつもりで行っているのに、乗組員の養成を主眼とする訓練を受けている状況で、これは日本側の思い違いが原因のようである。B&Wやワシントンの田中アタッシェに善処かたを頼んでおいた。ベニントンにも昨日頼んだがトレーニングの内容を変えるように交渉しようといっていた。 安川参与:MTRについてはだいぶメーカーから要望があるようである。嵯峨根さんは相当runnigcostがかさむから、よほど必要性を確かめないと経費の点で十分に機能を発揮できない結果になるといっている。CP−5は材料試験炉としてどの程度の利用価値があるのか、それ以上の要求があるとしてどの程度の規模のMTRが必要かを確かめるために、予備調査を1日も早くやるべきだと思う。35年度の予算で考えるのならばまず予備調査費を入れたい。 稲生参与:ウエスチングハウス社にMTRができた。ループが沢山ついており、材料試験をやってくれるかどうかたずねたところ、3〜4ヵ月を1期として依頼費が1億円という大変な金額をいってきた。 大屋参与:大変な金額だということは、日本で材料試験をやるならぜひMTRを入れろということにもなる。 瀬藤参与:核融合の研究はB計画によって中型実験装置を造ることになっているが、やがてメーカーが設計を依頼されるであろう。日本ではConceptual
designの程度では設計費を出してくれないのが慣習になっている。予算として調査費を考えて設計費を入れておいてほしい。 養成訓練専門部会では部会長を頼まれている。専門部会では原子力関係の科学者、技術者の需要と現在行われている養成方法の調査をやり始めた段階である。専門部会から答申が出ないうちに来年度の養成訓練の予算が問題になったならば、養成の方針としてはだいたいの方向しかわからないと思う。 現在行われている養成方法の一つとして外国への留学があげられるが、帰国してから実務につく人がほとんど全部である。将来の養成のためには、先生の卵になるような人を養成せねば役にたたない。文部省に先生の養成計画を聞いたが、文部省からの海外留学にも粋があり原子力ばかりに多くを出せないということである。 石川委員:原子力留学生としては第1年度には大学の先生も出したが、第2年度からは出していない。大学関係の予算はこちらからはずせということになっているので先生の養成を考えるのはむずかしい状況である。 佐々木局長:先生の養成に効果があるように努力したい。 村上文部省学術情報主任官:文部省からの原子力関係の留学生の枠は5名である。アイソトープ関係をいれると多少ふえる。 瀬藤参与:材料試験炉の問題だが国1炉、CP-5と大きな出資が続いているので、それが一段落するころを考えるべきである。CP-5に続いて置く以上、かなり大きなものを置くべきである。 原研の設備を産業界が利用する場合には、データを公表せよといわれるのが産業界としては一番困ることである。この点さえ大丈夫ならば、MTRを原研に置いても構わない。 大屋参与:放射線化学についても同じことがいえる、3原則に反しない程度で必要な秘密は保持してほしい。 山県参与:外国の原子力船が来航することも考えられるので、国際協定、国内の整備の問題は焦眉の急である。今日、わたしのほうから3人ほどロンドンに行き、22日からの会議に出席し原子力船の問題を討議してくる。こういった費用をどこでみてくれるかはっきりしないので困っている。 佐々木局長:海外出張旅費が一番問題になる。学界からの出張は文部省の予算でということになっているが枠が少ない。原子力予算にも行政面以外に対しては枠がないので、学界の人に行ってほしい場合にどこからも金が出せないことになる。根本的には枠の組み方が問題である。 山県参与:サバンナ号がきても防ぎ手がない。早く関係法規を整備する必要がある。 佐々木局長=国際法規にも関連があり、歴史もあるので運輸省で早く解決してもらわねばならない。 千葉運輸技官:サバンナの委員会を造って検討中である。結論はまだでていない。 井上政策課長:要は運輸省、原子力局双方がもっと熱心にやらねばならない。サバンナ号入港にともなって法規、施設、港湾、障害防止関係等の問題がある。両方が行動を早くする必要がある。こちらはいつでも応援する。 石川委員:国内の問題を早く固めるよう考えておく。 瀬藤参与:災害補償の法案は今年末に原案が出せるか。 島村次長:災害補償専門部会の議論は、これまで民営による原子力保険の約款がどうあるべきかについて費やされてきて、2回ぐらい前からようやく全般的な災害補償の問題に入った。従来と違った例外的な要素が多く2〜3年かける必要があると思っていたが、世の中のテンポからいってそうもいかない。専門部会における法理論の議論と並行して事務局でも法案の準備をし来国会に法案を提出することを目標としている。 瀬藤参与:原電の炉やMTRが臨界になる時期と関連して災害補償法の施行が問題とされているか。 島村次長:今度改正された規制法では原子炉の設置に際しては損害を賠償する措置が適当とみとめられなければ設置が許可されないことになっている。4月から起算して9ヵ月以内にこの改正法が施行されることになっているから、来年までに損害賠償措置の方法や金額が決まる。原電の原子炉の設置許可が法律の施行前になされるときは問題はない。ただ法律が施行された後の猶予期間内に損害賠償措置を講じなければ許可が失効する。原研の原子炉はこの法律の適用外である。 大屋参与:民間の保険会社はどの程度の金額以上は政府が面倒をみるという方針をはっきりさせないと困るといっている。政府の方針をはっきりしてほしい。来年度の予算との関連はどうか。 島村次長:国家が再保険をみるという方法をとれば予算が必要である。災害が起ったときだけ金を出すという考え方が支配的だが、普段から積み立てておくことを考えるならば予算が必要になろう。 佐々木局長:国家補償の問題は日英協定の批准の際にも国会で問題になった。国に最終的な責任があることは、大蔵の事務当局も納得しているが、どういう形で法律でうたうかが今後の問題である。 瀬藤参与:再保険を英国に交渉しているということだが、地震による災害は除外され、災害救助法によらねばならないということだが。 佐々木局長:日本で災害補償の法律を作るときは地震も包含したいが、再保険に出しても引き受け手がないと国でみる必要が生じたり、保険料が高くなることも考えられる。 山県参与:サバンナ号が来年くるかも知れない。保険の問題もはっきりさせてほしい。 石川委員:見本市展示炉は、万一の事故があれば米政府が全責任を持つということで許可された。そういう考え方も可能かも知れない。 2.各専門部会の審議状況について 資料2および3によって法貴次長から説明を行った。 3. 昭和34年度補助金、委託費の申請状況について 資料4および5によって中島研究振興課長から説明した。 中島課長:34年度の補助金、委託費はこのほど申請を締め切った。補助金について33年度の申請状況と比較すれば次のようである。
また、委託費については次のようになっている。
去年委託費で金を出した研究が今年は補助金でみることになったというような出入りがあるので、補助金、委託費は合計して比較する必要がある。前年度と比較すれば次のようになる。
審査を行っているが、8月の終りに最終決定をしたい。 三島参与:資料4に「ベリリウム・・・」というのがある。これは要望課題にはのっていたが、補助金は出さないのか。 中島課長:どこからも申請してこなかったものである。 三島参与:衛生上の問題が起ったからと思われる。大切な問題であり、事情を聞いて対策を考えてほしい。 4.重水専門部会の答申書について 資料6によって法貴次長から説明した。 大屋参与:現在やっている核融合反応の研究には重水が多量にいるか。将来はどうか。 菊池委員:多量にはいらない。将来核融合をやるとすればもちろん多量に必要である。 大屋参与:核融合でも重水のコストは大きな問題となるか。 菊池委員:そうである。 大屋参与:重水の研究に使った研究費はどのくらいか。 田宮技官:29年度に始まり1〜2億円は出している。 大屋参与:国家で助成して研究させるときには、選考委員会のようなものを設けて良いものに集中して金を出すようにしてほしい。重水の場合にはこのような問題の示唆になると思う。今後日本で重水を製造するようになるにはいろいろな前提条件が必要と思う。 佐々木局長:第1回調査団が派遣されたとき、黒鉛系統より重水系統のほうがよかろうということで重水が非常に買われていた。 大屋参与:その後のウランの過剰傾向から重水の価値が低くなった。重水の研究がむだだったとは思わないが、一度研究を始めても役だたないとわかればほかのもっと有効なものにすぐ振り向けるようにしたい。 石川委員:重水は原子力の創生期に取り上げたものである。 大屋参与:金の出し放しでなく、このように答申書を出して締めくくりをつけるのはよいことである。しかし少し前から重水に金を出すのはどうもおかしいと思っていた。核融合も同じ結果にならないようにと思っている。 |