原子力委員会参与会

第 4 回

〔日 時〕 4月16日(木)14.00〜17.00

〔場 所〕 東京都千代田区永田町2の1 総理官邸

〔出席者〕 稲生(代理 大井上)、井上、大屋、岡野、茅、倉田(代理大西)、久留島、駒形、瀬藤、高橋、伏見、三島、安川、山県、脇村各参与
石川、有沢、兼重、菊池各原子力委員会委員
佐々木原子力局長、法貴次長、井上政策課長、太田調査課長、中島研究振興課長、井上核燃料課長、鈴木アイソトープ課長、藤波原子炉規制課長、亘理放射線安全課長ほか担当官

〔議 題〕
1.原電の発電炉について(中間報告)
2.昭和34年度原子力開発利用基本計画について(報告)
3.昭和34年度原子力平和利用研究委託費および補助金の試験研究課題について(報告)
4.核融合の研究体制について
5.その他

〔配布資料〕
1.昭和34年度原子力開発利用基本計画
2.昭和34年度原子力平和利用研究委託費および補助金の試験研究課題(科学技術庁告示第3号、第4号)
3.核融合反応の研究の進め方について
4.B計画推進要領
5.核融合専門部会委員の追加について
6.核融合研究委員会名簿
7.研究用原子炉計画(JRR−3)のためのウランの供給についての日本国政府に対する国際原子力機関による援助に関する協定
8. 原子力委員会各専門部会の活動状況(34.3.21〜4.16)
9. 原子力局所掌事務
10.昭和34年度核原料物質探鉱計画
11.日本原子力研究所昭和34年度事業計画
12.原子燃料公社昭和34事業年度事業計画

1.原電の発電炉について(中間報告)

 安川参与から報告を聞き、各参与の質問があった。

 安川参与:昨年7月に提出された仕様書を中心として3社の設計を検討した。昨年いっぱいで技術的な問題に関する討論は満足できる程度に終了した。その結果は、技術的な評価からは一般的な甲乙をつけることはできないが、主要な点を個々にみればそれぞれ特徴があるということで、したがってコストで比較してきめるほかはなくなった。そこで、本年に入ってから価格表をあけて比較したうえで1社に対象をしぼり、それについて交渉を進めていくたてまえとした。結局、GEC−サイモン・カーブスのグループが最低の価格を示しているのでGECを指名し、3月16日にGECの設計やそれを土台としたデータをそなえた認可申請書を関係当局に提出した。

 その後GECに対して3月中にレターオブインテントを出す方針で交渉を続け、4月3日に手交した。

 値段は価格表を開いたときは約178億円といってきた。このうち100億円程度が英国からの輸入分で、残りの約80億円が国内分である。原電のほうからその後設計上で追加の要求を出したので、上記178億円は若干増加すると思われるが、この問題はまだ交渉中である。総建設費は285億円は越さないようにと希望している。

 285億円から計算すると発電原価は4円98銭になる。これは負荷率を80%としている。GECのクレジットには英国の公定歩合4%に政府の保証料を加えて4.5%の金利が考えられている。期限は目下8年となっており、これはさらに2〜3年延長してくれるよう交渉中である。

 GECの設計で一番問題となったのは中空の燃料要素で、リライアビリティーが問題と思われるのでいろいろ研究した。GECとしても研究、実験に待たねばならぬ点を残している。しかし設計の着想としてはすぐれているので、GECがさらに1〜2年実験を続けた結果を逐次日本に報告してもらい、もし否定的な結論がでたら、日本に金銭上の迷惑はかけないで中実燃料に設計を変更することとし、2〜3年の間に設計変更をするときまれば設備の完成期日も予定どおりの期日にする という文書をレターオブインテントの手交に際して受け取った。

 発電炉の建設に際して英国の経験を教えてもらうことが必要になるので、AEAとコンサルタンシーの契約を結んだ。

 燃料の価格と3,000MWD/トンが保証できるかどうかという問題があるが、いずれも交渉中である。

 安全性に関する問題としては、まずプラスの温度係数があるが、タイムコンスタントが10数分程度なので十分制御できると思われる。

 また、クセノンの発生と温度係数の問題とが加わって炉内にフラックスのインスタビリティーが起る問題は、炉心をいくつかに区分して各区分にファイン・ロッドを設けることによって調節すれば克服できる。

 緊急時停止は制御棒でもできるが、そのほかボロンを含んだペレットを炉の上部から自動的に炉心に落し込むという方法もとれるようになっている。液体を注入して停める方法も提案されたが、この場合は炉が使えなくなるので採用しないこととした。

 耐震性の問題については、現在建築研究所に設けた震動機をGECの設計に合わせて実験を行う予定である。

 工期は、7月に認可があれば8月から設置場所に立ち入り、本年末に基礎工事に取りかかる。工事を始めてから54ヵ月で37年末に工事を終り、燃料を挿入する段どりとなる。

伏見参与:GECのが安い原因は。

安川参与:炉の直径が小さく燃料の量も少ないことだが、これも中空燃料の利点と思われる。

伏見参与:もしも中実燃料に変更することになれば、急に大きくなるか。

安川参与:こちらに迷惑はかけないと言っている。

瀬藤参与:第三者損害補償の問題はどうか。燃料はたとい欠陥があっても英国側を免責することになっているが装置のほうにもそういうことはないか。

安川参与:テンダーにはなんらふれられていない。

岡野参与:第三者の損害補償の問題だが、保険をかけその他必要と思われる措置をとっておいても災害が起きた場合には、政府がめんどうをみるということを発表しておく必要があるのではないか。

有沢委員:昨年の暮から専門部会を設けて補償制度について検討している。まだはっきり骨子はできていないが国家補償の問題もあわせて考えることになっている。災害が起ったときの責任は法律的には設置者にある。設置者は保険プールに付保する。この保険の設定によって設置者の責任は免除される。装置の欠陥により災害が起きたときの処置としては、メーカーと設置者との間で商業上の契約を行っておけばよい。

安川参与:本契約の段階で入れられる問題と思う。

有沢委員:もしも付保した以上の災害があれば国家補償の問題が起ってくる。今年度のうちには骨子をつくり、設置場所の居住者にも不安をいだかせないようにしたい。

2.昭和34年度原子力開発利用基本計画について(報告)

 資料1によって事務局から説明した。さらに資料11により駒形参与が原研の事業計画を、資料12により高橋参与が燃料公社の事業計画をそれぞれ説明された。

伏見参与:日本でウラン金属を国産することも可能になったが、採算を問題としうる時期にきているか。

高橋参与:国産鉱石→イエローケーキ→天然ウランの一貫した工程が稼働しなければだめだが、年内には見当がつくと思う。

伏見参与:原研の事業計画にざっと目を通しただけの感じだが、原子炉そのものの研究は増殖炉の開発だけであるか。

駒形参与:そうばかりではない。増殖炉にはカを入れるが、そのほかの軽水炉、ガス炉等についても研究を行い、これらについては炉全体を取り扱う書き方ではなくテーマに分解して「工学的研究」に入れてある。

伏見参与:原子炉を次々に造ると、造るほうにエネルギーがいって、研究がおろそかになるような印象があるが。

岡野参与:基礎研究にもっと力を入れるということですか。

伏見参与:新しい原子炉の設計とか、自分でデータをとってなにか独自の力でやるとかいったことである。

駒形参与:原研としては両方をやらせてもらいたい。

3.昭和34年度原子力平和利用研究委託費および補助金の試験研究課題について(報告)

 資料2によって中島課長から報告した。

4.核融合の研究体制について

 資料3〜6によって法貴次長が説明した。

 法貴次長:B計画の実施機関をどこにするかが問題である。いままでも議論され、(1)原研でやるのがよい。(2)原研では人を集めることや大学の基礎研究との連絡がむずかしいから大学に付置したほうがよい。(3)別に特別の機関を設ける。(4)理研でやるのがよい。という四つの案があった。現在では(1)、(2)が有力で、さらにどちらかといえば(1)が主張されている。問題は予算、人員を確保して確実に仕事を推進できることにあるのだが、これについて御意見を承りたい。

 石川委員:自由に御意見を承って修正できる段階にある。予算の関係から7月中に見当をつけたいと思う。

 瀬藤参与:設計をやることになっているが、メンバーには過当な人がいないようである。

 法貴次長:おおざっばな仕様をやる。その後さらに詳細な設計を行うときにはメーカー等からも加わっていただくことになろう。

 瀬藤参与:日本では設計は無料でやるのが慣習となっているが、メーカーにも人は余ってはいないし、金をとってやるようにしたい。

 茅参与:大学の付置研究所で核融合の研究をやるべきだというのは人が集まるからでてきた意見だと考えられる。また、原研でやるべきだというのは金が集まるからであろう。結局原研によい人を集めるのが肝要である。したがって、原研で基礎研究を原子力に限定せずに十分にやり、良い人も金も集まるようにしてほしい。

 伏見参与:茅さんのおっしやったことは大切なことと思う。

 石川委員:特にお考えがあればまた後程おうかがいしたい。

5.その他

(1)IAEAから天然ウラン購入の件について

 資料7にしたがって太田調査課長が説明を行った。

(2)原子力局の機構改革について

 資料9により佐々木原子力局長が説明し、新課長を参与に紹介した。

(3)ワインバーグの訪日について

 太田調査課長が説明を行った。

太田課長:現在のところでは確定したスケジュールになっていないので資料にしてないが、ワインバーグは5月3日に来日し5月15日に日本を離れる予定である。その間、原子力委員会、原子力学会、産業会議とそれぞれ懇談会を行い、東海村は3日間をあてて詳細に視察することとなっている。

(4) IAEAが論文を募集中の国際会議について、

 伏見参与から質問があった。

伏見参与:IAEAから国際会議の論文を募集しているということだが、その件につき説明してほしい。

兼重委員:5月何日までにアブストラクトを出せということが2〜3日前にわかり、とりあえず今年の初めに開かれたシンポジウムの論文をあてたいと考えている。また、旅費の手当もできなかったので、向うへ行く人は手弁当でということになる。主催者のIAEAは研究機関とはいえず、また正確な内容や開催期日が昨年の予算編成期にわかっていなかったというようなことから、予算要求をしたが最も削りやすいものとして落されてしまった。今回の実例によって来年から予算がとりやすくなると思う。

(5)映画「日本の原子力」を上映した。