原子力委員会

 昭和34年度核原料物質探鉱計画が4月15日開催の第16回定例委員会で決定され、今後も引き続き探鉱を推進することとなった。科学技術庁の設置法その他関係政令等の一部改正にともない、各専門部会の主管課および幹事の変更が、4月23日の第17回定例委員会で承認された。原電から発電用原子炉の設置許可申請書が提出され、審議に付されることとなった。また原子力事情視察のためアメリカに出張中であった高碕大臣が5月2日帰国した。

昭和34年度核原料物質探鉱計画


 核原料物質開発促進臨時措置法第3条により、通商産業省および原子燃料公社が行う探鉱の合理的な実施を図るため、毎年原子力委員会の議決を経て核原料物質採鉱計画を定めることとされているが、昭和34年度核原料物質探鉱計画については、さる4月15日開催の第16回定例委員会において以下のとおり議決された。

昭和34年度核原料物質探鉱計画

 昭和34年度における核原料物質の探鉱については、前年度に引き続き通商産業省地質調査所が基礎的調査を実施し、その成果を取り入れ、原子燃料公社が民間企業と調整をとりつつ効果的に企業化調査を実施し、国内資源の早急な開発を期するものとする。

1.通商産業省地質調査所が行う探鉱

 わが国において、核原料資源の賦存の可能性が大きい地域は酸性迸入岩およびその周縁部ならびに堆積岩地域であり、このうち約80,000平方キロメートルについて、昭和31年度を初年度とする3ヵ年計画をもって、組織的に放射能強度分布調査、放射能異常地調査および鉱床調査を実施し、おおむねこれを完了した。その結果、わが国において有望と認められる核原料資源の賦存は、人形峠周辺におけるごとく主として堆積岩中に胚胎する鉱床に期待されることが判明したので、さらに堆積岩地域を主とする約120,000平方キロメートルについて本年度以降調査を実施する必要が認められるに至った。

 この見地から本年度については、下記により調査を行うこととする。

(1)放射能強度分布調査

 約120,000平方キロメートルのうち本年度はさしあたり約24,800平方キロメートルの地域を対象としてエアボーン、カーボーン、地表概査および鉱山坑内調査により放射能強度の分布を調査する。

(実施地域)

(イ)エアボーン、カーボーンおよび地表概査

 秋田県下、栃木県下、富山県下、岐阜県下、三重・奈良県南部地域、京都・兵庫・鳥取県北部地域、大分・宮崎・熊本県境等

(ロ)鉱山坑内調査

 北海道岩内郡・檜山郡・松前郡・瀬棚郡・奥尻郡下、秋田県北秋田郡下、岩手県二戸郡・和賀郡下、山形県米沢市付近、福島県石城郡下、群馬県高崎市・吾妻郡下、新潟県南魚沼郡下、長野県西筑摩郡・南佐久郡下、愛知県北設楽郡下、京都府船井郡下、岡山県津山市・岡山市・赤磐郡・邑久郡下、広島県三次市・豊田郡・安芸郡・賀茂郡下、山口県大津郡下、香川県大川郡下、愛媛県宇和島付近、鹿児島県大島・徳之島等

(2)放射能

 放射能強度が特に異常な地域については、地質鉱床調査、物理探鉱、地化学探鉱、試錐探鉱等を実施し、鉱床型式、規模、地質構造等の概要を明らかにして今後の探鉱に関する基礎資料を得るとともに、地質鉱床学的研究を推進する。

 調査地域は前年度までの放射能強度分布調査の結果にもとづき下記地域を予定するほか、本年度における調査の結果にもとづき適宜追加する。

(実施地域)

(イ)異常地調査

 群馬県勢多地区、新潟県小出市地区、中条地区、富山・石川県境地区、福井県大野郡地区、 広島県三段峡地区等

(ロ)鉱床調査

 山形県東田川地区、宮城県大内北部地区、栃木県新玉生鉱山等

2.原子燃料公社が行う探鉱

 前年度に引き続き人形峠型の堆積型ウラン鉱床の探鉱に重点をおき、地質鉱床精査、物理探鉱、地化学探鉱等の地表精査延約4,400日、試錐探鉱約17,000メートルおよび坑道探鉱約5,900メートルを行うほか、必要が認められるときはさらに探鉱規模を拡大する。

(1)人形峠鉱山およびその周辺地区

 前年度までの調査により、人形峠鉱山においては、平均品位0.06%(U3O8)として約1,400,000トンの鉱量の賦存が予想されるに至り、さらにウラン鉱床を胚胎する第三紀層は、人形峠東方および人形峠から三朝町北方にわたる広範囲な地域に賦存することが判明し、かつ、各所に優秀な露頭が発見されている。本年度は、これらの地区に重点をおいて、探鉱を実施することとし、地表精査延約2,700日および試錐探鉱約15,000メートルを実施して、第三紀層の広がりおよび鉱床の賦存範囲等を調査するとともに、坑道探鉱約5,300メートルを実施し、鉱量および品位を把握する。

(2)山形県鶴岡南方地区、岩手県北上地区、岐阜県黒川鉱山、岡山県南部地区、山口県防府北方地区、鹿児島県垂水鉱山等

 前年度において小規模に探鉱を実施した地区であるが本年度も引き続き地表精査を行うとともに必要に応じ試錐探鉱および坑道探鉱等を実施して鉱床の実態を把挺する。

(3)その他地区

 地質調査所等の調査により、発見される有望地区および公社出願鉱区等については随時地表精査等を行う。