第3回放射線取扱主任者試験問題

1.法   令

 「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」及びその関係法令につき解答せよ。

第1問 貯蔵施設に備えるべき放射性同位元素を入れる容器は、どのようなものでなければならないかを記せ。、

第2問 次の10の文章中誤っているものが8つあるが、誤っているものの番号を抜き出し、誤っている点を指摘せよ。

(1)この法律でいう「放射線」とは、電磁波又は粒子線のうち直接に空気を電離する能力を有するもので、政令で定めるもののみに限定されている。従って、この法律でいう「放射線障害」には、紫外線による障害を含んでいない。
(2)放射線照射装置の使用の許可を受けた者が、放射線照射室の改造工事を行い、その壁の厚さを増した場合には科学技術庁長官に届け出るだけでよいが、その壁の厚さを薄くする場合には科学技術庁長官の許可を受けなければならない。
(3)放射性同位元素の使用の許可を受けた者は、その使用を開始する前に放射線障害予防規定を作成し、科学技術庁長官の認可を受けなければならない。
(4)放射性同位元素の使用の認可を受けた者は、その使用施設に立ち入る者(一時的に立ち入る者を除く。)の皮ふが放射性同位元素により最大許容表面濃度をこえて汚染され、かつ、その汚染を容易に除去できないときは、遅滞なく、その者につき総理府令で定める健康診断を行わなければならない。
(5)放射性同位元素の使用の許可を受けた者は、その許可証に記載された種類の放射性同位元素であっても、その許可証に記載された使用数量をこえては、どのような場合でもそれを所持することはできない。
(6)放射性同位元素装備機器の使用の許可を受けた者が、その機器を診療のために用いるときは、放射線取扱主任者免状を有する者又は医師のうちから、放射線取扱主任者を選任しなければならない。
(7)放射性同位元素の使用の許可を受けた者は、その使用を開始するまでに必ず放射線取扱主任者及びその代理者を選任し、選任した日から30日以内に、その旨を科学技術庁長官に届け出なければならない。
(8)この法律又はこの法律に基く命令の規定に違反したときに限り、科学技術庁長官は、放射線取扱主任者の代理者を直接に解任することができる。
(9)科学技術庁長官が放射性同位元素の使用の許可を取り消した場合において、この処分に対して不服のある者は、処分の日から30日以内に、科学技術庁長官に異議の申立をすることができる。
(10)科学技術庁長官は、この法律又はこの法律に基く命令の実施のため必要があると認めるときは、放射線検査官に、無許可で放射線発生装置を使用している者の事務所に立ち入り、その者の帳簿、書架その他必要な物件を検査させることができる。

第3問 次の文章中の      のうちに入る適当な語句を番号とともに記せ。

(1)この法律でいう放射線照射装置とは、装備している放射性同位元素の数量が1.     をこえる放射線照射機器で、これを随時移動して使用する場合の使用施設の基準として政令で定められているものは、2.     を設け、かつ、総理府令で定めるところによりこれに標識を附することだけである。
(2)漏水の調査、昆虫の疫学的調査、原料物質の生産工程中における移動状況の調査等放射性同位元素を3.     使用し、かつ、その使用が4.     である場合には、政令で定める使用施設の基準は適用されない。
(3)貯蔵施設は、貯蔵室、貯蔵箱等5.     の施設でなければならない。
(4)放射性同位元素の販売の業の許可は、6.     ごとに受けなければならない。
(5)18歳末満の者であっても7.     その他総理府令で定める者については放射性同位元素の取扱をさせることができる。
(6)放射性同位元素によって汚染された物を海洋投棄する場合の投棄する箇所の海洋の深さは、8.     でなければならない。
(7)放射線障害者の発見のために放射性同位元素の使用の許可を受けた者が9.     ごとに行わなければならない健康診断における検査又は検診の部位又は項目は、10.     11.     及び12.     である。なお、その他の部位又は項目が科学技術庁長官によって定められた場合は、これらの部位又は項目の検査又は検診をも行われなければならない。

2.管理技術

第1問 本年1月14日にリン32を2mc購入した。当日1mc、つづいて1月29日に0.3mcを使用者に渡した。3月30日現在での残存量はどれだけか。
 なお、リン32の半減期は15日とする。

第2問 1種類の放射性同位元素を使用した実験室の排液処理槽の廃液をそのまま下水に排水しようとするさい、管理者としての実際にとるべき処置を順をおって記せ。

第3問 使用施設に附けねばならない標識の種類を3つあげ、これを附ける3箇所について簡単に説明せよ。

第4問 下記のうち法律上換気設備を必要とするものをあげよ。

 (イ)60Coによるγ線照射室
 (ロ)90Srを常時1mc以上取扱う実験室
 (ハ)フアンデグラフ室(ただしアイソトープ製造は行わない。)
 (ニ)1c程度の60Coを化学的に取扱うトレーサー実験室
 (ホ)10μc程度の32Pを取扱うトレーサー実験室

第5問 放射線取扱主任者が、取扱従事者に、遅滞なく、健康診断を受けさせるようにしなければならない場合を4つ以上あげよ。

3.測定技術

第1問 ガンマ線に被ばくするおそれのある場所で作業する者の、個人被ばく線量を測定するために使用する器具の種類をあげ、それぞれの測定原理、特徴および使用上の注意事項を簡単に述べよ。

第2問 ガイガー・ミュラー計数管による実測計数率からベータ線放射体の崩壊率を算出する場合、その実測値を補正しなければならないが、その際考えられる要因(factor)につき、その項目のみをあげよ。(解説は必要としない。)

第3問 60Coのガンマ線で正しく目盛られているガンマ線用サーべ−メーターを用い、10mcの137Cs線源の中心から50cm離れたところでガンマ線照射線量率を測定したところ、その指示値が14.7mr/hであったという。60Coのガンマ線を基準とした137Cs線源のガンマ線に対するこの測定器の更正定数の値を計算せよ。
 なお、1cの137Cs線源から1m離れたところの照射線量率は0.39r/hとし、更正定数とはその値を指示倍に乗ずれば正しい値が得られるような定数とする。

4.物 理 学

第1問ベータ線と物質との相互作用について簡単に述べよ。

第2問 次のことばを簡単に説明せよ。

  (イ)ガンマ線の内部転換(internal conversion)
  (ロ)アルファ線の飛程(range)
  (ハ)サイクロトロン(cyclotron)
  (ニ)熱中性子(thermal neutron)

第3問 半減期5.2年のCo60の1mgは1年後にはおよそ何キュリーあるか。

5.化   学

第1問 汚染除去剤として使われている次のものは、それぞれどんな性質が利用されているか。

  (イ)石けん
  (ロ)クエン酸
  (ハ)酸化チタン
  (ニ)EDTA(ETA)
  (ホ)有機溶剤

第2問 つぎの文および式中の語、数字または記号を番号と共に記せ。

 ウラン系列の核種の質量数は4n+2(ここでnは整数)の形で、1.     系列の核種の質量数は4nの形で、また2.     系列の核種の質量数は4n+3の形でそれぞれあらわされるが、天然にはこれまで質量数が4n+1の形であらわされる壊変系列は知られなかった。しかし、人工的に

237は、4n+1なる形であらわされる質量数をもっており、これから始まるつぎのような壊変系列の核種の質量数はいずれも4n+1の形をとる。この壊変系列をネプツニウム系列という。

 

 (なお、4番から15番までは化学記号、質量数、原子番号を、たとえば→→の如く記すこと。)

第3問 つぎの文中の{  }内の語句のうち正しいものを番号と共に記せ。

 過去10年の間に、放射線によって化学変化をうける多数の系が報告されているが、それらのうち線量測定のため利用されているのは主に1.{固体・液体・気体}の2.{単相系・多相系}である。その中には3.{第1鉄・第2鉄}イオンの4.{酸化・還元}反応、5.{第1セリウム・第2セリウム}イオンの6.{酸化・還元}反応、メチレンブルーの7.{着色・脱色}、ヨウ素化合物の8.{附加・分解}反応、および各種酵素類の9.{安定化・不活性化}反応などがある。一般的にいって10.{常に鋭敏で放射線生物学上の目的に使用出来る、少ない線量では変化が認めにくいので主に放射線化学上使用される。)}

6.生 物 学

第1問 電離放射線(ionizing radiation)の照射による生物学的効果(biological effects)はいろいろの要因(factor)に影響される。この要因をあげて説明せよ。

第2問 下にあげた二つの語の意味の差異を説明せよ。

 (イ)自然突然変異(natural mutation)と放射線誘発突然変異(radiation−induced mutation)
 (ロ)生殖腺線量(gonad dose)と遺伝有意線量(genetically significant dose)又は遺伝線量(genetic dose)

第3問 RBE(生物学的効果比率)の生物学的意義について述べよ。

第4問 次の語を生物学的に簡単に解説せよ。

 (イ) 潜伏期(latent period)
 (ロ) 限界線量(threshold dose)


第3回放射線取扱主任者試験の実施

受験申込者は総計529名


 第3回放射線取扱主任者試験は、2月2日の科学技術庁公告にもとづき4月1日(水)、2日(木)の両日東京(拓殖大学)および大阪(関西大学天六学舎)の両試験地において実施されたが、その受験者の内訳および試験状況は次のとおりである。なお合格者の発表はおって公告される。

第3回放射線取扱主任者試験受験者数一覧表