第1回原子炉主任技術者試験問題

1.原子炉理論

第1−1.毎秒Q個の熱中性子を発生する点状の中性子源がある。これをとりまいて半径Rの球状の減速材をもうけるとき、減速材内部の熱中性子束を与える式を導け。

第1−2.反射体つき熱中性子原子炉内における中性子スペクトルについてなるべく詳細に説明せよ。

第1−3.ウランを燃料とする非均質(heterogeneous)原子炉における燃料転換率(conversion ratio)を求め、この値を大きくするための原子炉設計上の条件を考えよ。

 ただし

燃料転換率=生成されるプルトニウムの原子数/燃焼したウランの原子数

第1−4.天然ウランを燃料とし、黒鉛を減速材とする裸の立方体の原子炉の臨界寸法を求めよ。ただし、この原子炉の四因予定数は、η=1.30、ε=1.03、f=0.90、p=0.88であり、また黒鉛の定数は、L=50cm、τ=350cm2として計算せよ。

第1−5.次の事項について簡単に説明せよ。

(イ)遅発中性子(Delayed Neutrons)
(ロ)幾何学的バックリング(Geometrical Buckling)
(ハ)損失因子(Disadvantage Factor)
(ニ)キセノンの毒作用(Xenon Poisoning)
(ホ)指数函数実験(Exponential Experiment)

2.原子炉の設計

第2−1.直径25mmの天然ウラン燃料が熱中性子束1012n/cm2/sec内にある場合、天然ウラン棒1m3当りほぼ何Kcalの発熱があるか。また、その燃料表面の熱流束はほぼ何Kcal/m2/hrか。

 ただし、天然ウランの密度は18.68g/cm3235Uの熱中性子分裂断面積は590バーンとし、また、アボガドロ数を6.023×1023、1MeVを0.382×10−16Kcalとして計算せよ。

第2−2.ウオーター・ボイラー型原子炉において、燃料溶液の質量の増加と実効増倍率(effective multiplication factor)Keffの増加との間には次式が成立することを示せ。

ただし、
1.炉心は球形
2.mは燃料溶液の質量
3.燃料溶液の追加により、炉心容積は増加するが、濃度は変らない
として計算せよ。

第2−3.次の事項について簡単に説明せよ。

a)原子炉の負の温度係数(negative temperaturecoefficient)
b)ウイグナー・リリーズ(Wigner release)
c)熱遮へい体(thermal shield)
d)ヌツセルト数(Nusselt number)
d)熱応力(thermal stress)

第2−4.次の左欄の(1)から(10)までの原子炉部分を設計する上に適当と思われる材料を各二つずつ右欄の(a)から(u)までの各項目のうちから選び出せ。ただし、同一の材料を重複して選んでさしつかえない。

(1) 炉心タンク

(a)木 材

(2) 燃料棒

(b)アルミニウム

(3) 燃料棒被覆

(c)不銹鋼

(4) 減速体

(d)マグネシウム

(5) 制御棒

(e)カドミウム

(6) 生体遮へい体

(f)ほう素

(7) 熱交換器

(g)珪素鋼

(8) 実験筒

(h)モリブデン鋼

(9) 熱中性子柱

(i)銅

(10)燃料キャスク

(j)ジルコニウム

 

(k)コンクリート

 

(l)軽水

 

(m)重水

 

(n)鉛

 

(o)黒鉛

 

(p)普通鋼

 

(q)ポリエチレン

 

(r)ウラン

 

(s)ビスマス

 

(t)トリウム

  (u)ラジウム

3.原子炉の運転制御

第3−1.次の事項について簡単に説明せよ。

 a)period meter
 b)proportional counter
 c)shim rod
 d)prompt critical

第3−2.起動から定常運転までに出力が10-4Wから106Wまで変化する原子炉の中性子計測設備の一例をブロック図で示し、各計測装置の受け持つ計測範囲を略記せよ。

第3−3.原子炉の炉心中央部にCd板をそう入した状態で制御棒を調整し、出力を0.5Wに保った。次にこのCd板を急速に取り出して、出力が2倍になる時間をはかったところが、47.2秒かかった。このCd板の等価反応度を求めよ。

 ただし、反応度をρ、周期をTとすると


 また、この原子炉の中性子寿命lは1×10-4として式を計算せよ。

第3−4.次の表は原子炉を起動する際の制御棒の位置と検出器の読み(計数率)の関係を示したものである。この表より、原子炉が臨界になる制御棒の位置を推定せよ。

制御棒位置(cm)
計数率(カウント/分)
0
910
2
990
4
1,180
6
1,670
8
2,780
9
4,160

第3−5.原子炉の正常運転(起動および停止を含む。)中の反応度変化に影響を及ぼす重要な諸因子を上げ、簡単に説明せよ。

 ただし、対象とする原子炉として、次のa、b各組から一つずつを選ぶこと。

 a)研究用原子炉
   ウオーター・ボイラー型(出力10kW)
   CP−5型(出力10MW)
 b)発電用原子炉
   コールダー・ホール型
   沸騰水型

4.原子炉燃料及び原子炉材料

第4−1.

(1)黒鉛を熱中性子炉の減速材として使用する場合、下に掲げる諸性質のうち特に重要なもの三つの符号を記せ。
 a)電気抵抗が低いこと。
 b)密度が高いこと。
 c)硬度が低いこと。
 d)純度が高いこと。
 e)熱中性子吸収断面積が小さいこと。
 f)化学的に安定であること。

(2)重水について次の間に答えよ。
 a)天然水中に何%含まれるか。
 b)100%D2Oの比重は250℃で如何程か。

(3)下のa)に掲げる天然元素を熱中性子に対する吸収断面積によってb)に掲げる三つの分類に区分せよ。
 a)元素名:B,C,Na,Al,K,Fe,Cd,Dy,Hf,Pb,U
 b)分 類:I(1バーン未満)
       II(1〜1,000バーン)
       III(1,000バーンを超えるもの)

第4−2.使用済ウラン燃料を溶媒抽出法によって再処理するには、燃料を取り出して後数十日あるいはそれ以上放置冷却してから行う。

 この冷却期間を決定する支配的な因子となる放射性元素はいかなるものか、また、その理由を述べ、出来得れば冷却期間を決定する式を導け。

第4−3.気体拡散法によるウラン濃縮プラントにおいて、装置に天然ウランの6弗化物を導入し、最終濃縮生成物中の285Uの濃度が90%、最終劣化生成物中の235Uの濃度が0.2%であったとする。

 定常運転状態において、単位時間に導入する原料ガスの量と生成する最終濃縮ガスとの量の比を求めよ。

第4−4.金属材料を原子炉内の高速中性子で照射すると、材料の性質にどのような変化が起るか。また原子炉を造る上においてそれらのことは如何に考慮されなければならないか。

第4−5.熱中性子炉において、燃料要素被覆および炉心容器等に使われる金属材料3種をあげ、それらが使われる理由をそれぞれ説明せよ。

第4−6.燃料要素の製造工程並びに完成品に対し、どのような検査が必要であるかを燃料要素の一例について説明せよ。

第4−7.研究用(試験用を含む。)原子炉および実用動力炉に用いられる燃料について、それぞれ2、3の例をあげて、それらの特徴および性能を比較説明せよ。

5.放射線測定及び放射線障害の防止

第5−1.1MeVのエネルギーのガンマ線を1崩壊当り1個放出する点状の物質が1キュリーであるとき、これから1m離れた点における線量率は毎時何レントゲン(r/h)となるか。ただし、1rは標準状態の空気の1cm3につき6.77×104MeVに相当するものとし、同じ空気に対して1MeVのガンマ線のエネルギー吸収係数は3.5×10-5/cm-1とする。

第5−2.1,000kW程度の研究用原子炉を格納している建物について、放射線管理上必要な施設および各種測定器をあげて、これらの用法ならびに椎持上の注意事項を説明せよ。

第5−3.固体状、液体状および気体状の放射性廃棄物の処理方法もしくは処置について技術的に説明せよ。

第5−4.放射性物質が身体内に入る過程について、放射線障害の上で特に危険視される放射性同位元素の種類を例にあげて説明せよ。

第5−5.つぎの事項について簡単に説明せよ。
a)生物学的半減期(biological half-life)
b)生物学的効果比率(relative biological effectiveness)
c)問題となる臓器(critical organ)
d)最大許容線量(maximum permissible dose)
e)急性曝射(acute exposure)と慢性曝射(cronic exposure)

6.原子炉に関する法令

第6−1.「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」において、原子炉の設置の許可を受けてから原子炉の運転を開始するまでに、原子炉設置者がとらなければならない手続六つを列挙せよ。

第6−2.「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」において、原子炉の設置の許可を受けた者が核燃料物質を使用する場合について次の問に答えよ。
 (イ)新たに手続をしないで如何なる核燃料物質の如何なる使用が認められているか。
 (ロ)如何なる手続を踏めば(イ)の他に如何なる使用が可能となるか。

第6−3.次の文章中正しいものには○印を、誤っているものには×印をつけ、誤っている場合には正しい文章を記せ。

(1)原子炉設置者は、当該原子炉における使用済燃料については、許可を受けて再処理の事業を行うことができる。

(2)原子炉設置者は、他の原子炉設置者にその所有する核燃料物質を自由に譲り渡すことができる。

(3)原子炉設置者が、設置許可申請書に記載した使用済燃料の処分の方法を変更しようとするときは、その変更の許可が必要である。

(4)プルトニウムは、1グラム以下の使用については、核燃料物質の使用の許可を必要としない。

(5)「放射性物質車両運搬規則」というのは、核燃料物質以外の放射性同位元素を運搬する場合について規定するものである。

(6)国際放射線防護委員会の勧告によれば、最大許容量とは自然放射線源による被ばくを含んでいる。

第6−4.次の文章中の下線のうちに入る適当な語句を番号とともに記せ。

(イ)原子力基本法第2条は、次のように定めている。
  原子力の研究、開発及び利用は(1)     の目的に限り、(2)     的な運営の下に(3)     的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。

(ロ)運搬する使用済燃料を封入した容器の表面の放射線量率は(4)     をこえないようにし、かつ、容器内の使用済燃料から1メートルの距離において放射線量率が(5)     をこえないようにしなければならない。ただし、(6)     内を運搬する場合は、この限りでない。

(ハ)放射性廃棄物を排気施設によって排出する場合は、排気施設において(7)     し、必要に応じて放射線の強さの(8)     による減衰、多量の(9)     による(10)     等の方法をとって、排気中における放射性物質濃度をできるだけ低下させなければならない。この場合、排気口において、又は排気口を中心とする周辺に放射性物質濃度を必要に応じて測定することができる排気監視域を設け当該監視域において、排気中の放射性物質濃度を監視することにより、人が居住し、又は通常立ち入る場所のいかなる地点においても、その空気中の放射性物質濃度を(11)     以下としなければならない。

(ニ)計測制御系統施設の定期検査は、緊急しや断を起すべき各条件について緊急しや断のための性能検査を(12)     ごとに、緊急しや断検査を(13)     ごとに行うこと。原子炉施設の保安のために直接関連を有する計器及び放射線測定器こついては、校正を(14)     ごとに行うこと。

(ホ)ウラン235のウラン238に対する比率が天然の混合率に達しないウランは、(15)     以下ならば核燃料物質の使用の許可を必要としない。
この量は、おおむね100マイクロキュリーに相当する。

第6−5.次の文を読んで下の問に答えよ。

A) The maximum permissible total dose accumulated in the gonads,the bloodforming organs and the lenses of the eyes at any age over 18 years shall be governed by the relation
 D=5(N−18) 
where D is tissue dose in rems 
N is age in years.

B)For a person who is occupationally exposed at a constant rate from age 18 years,the formula implies a maximum weekly dose of 0.1 rems.It is recommended that this value be used for purposes of planning and design.

C) To the extent the formula permits,an occupationally exposed person may accumlate the maximum permissible dose at a rate not in excess of 3 rems during any 13 consecutive weeks(i.e., in no 13 consecutive weeks shall the dose exceed 3 rems).If necessary, the 3 rems may be received as a simple dose,but as the scientific knowledge of the biological effects of such exposure is scant,single doses of the order of 3 rems should be avoided as far as practicable.(from"Recommendations of the International Commission on Radiological Protection")

 上の文章と原子炉の設置、運転等に関する規則に基く告示の考え方との主要な相違点をABCについてそれぞれ一つあげ、これについて簡単に説明せよ。

第6−6.次の文章中、正しいものを選びその番号を記せ。

(イ)アルゴン41の空気中最大許容濃度は、〔(1)5×10-5 (2)5×10-7 (3)5×10-11 (4)5×10-13〕μc/ccである。

(ロ)セシウム137の空気中最大許容濃度は、〔(1)2×10-5 (2)2×10-7 (3)2×10-11 (4)2×10-13〕μc/ccである。

(ハ)天然ウランの空気中最大許容濃度は、〔(1)3×10-5 (2)3×10-7 (3)3×10-11(4)3×10-13〕μc/ccである。

(ニ)種類が明らかでない放射性物質でアルファ線を放出するものの水中最大許容濃度は、〔(1)10-5 (2)10-7 (3)10-11 (4)10-13〕μc/ccである。