原子力委員会参与会

第 2 回

〔日 時〕2月19日(木)14.00〜17.00

〔場 所〕東京都千代田区永田町2の1総理官邸

〔出席者〕稲生、井上、大来、大屋、岡野、倉田(代理柴田)、久留島、駒形、瀬藤、高橋、田中、中泉、三島、安川、山県、脇村各参与
石川、有沢、兼重各原子力委員
佐々木原子力局長、法貴次長、島村、亘理各調査官、中島助成課長ほか担当官

〔議 題〕
1.原子力関係の技術導入について
2.昭和34年度の補助金および委託費の要望課題について
3.その他

〔配布資料〕
1.原子力関係の技術導入について
2.昭和34年度原子力平和利用研究委託費要望課題の例示(案)
3.昭和34年度原子力平和利用研究費補助金要望課題の例示(案)
4.核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律(案)
5.核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律新旧対照表

1.原子力関係の技術導入について

 佐々木局長から資料1を説明し、技術導入に関する各参与の意見を聞いた。

 稲生参与:甲種の技術導入も検討していただきたい。他の工業と同様に、外国の進歩した技術を相応な対価で入れたうえで外国を追い越すことを考えたい。導入の基準が問題であるが、次のように考える。

(1)導入したものが十分こなしうること。

(2)導入する技術の範囲はなるべく広くして当面完成されているものばかりでなく、予想される進歩も含められるほうがよい。

(3)技術導入したあとで日本がさらに進んだ技術をつくりあげても、それに対してロイヤルティを払わねばならないという条件のついている場合が多い。このような不利な条件をつけないようにし、もし日本の技術を逆に向うが利用したいときには向うがロイヤルティを支払うようにしたい。

 (4)燃料の製造技術は乙種に属するもののほか、適当なものがあればもっと長期の契約を考える時期と思う。

 瀬藤参与:原電が英国から購入する原子炉については技術導入の問題をどう考えているか。第1基目の導入は技術提携をせずに行うべきだと思う。

 稲生参与:JRR−2はAMFが契約者で三菱電機(その後三菱原子力工業に引継)が下請けとなって建設している。三菱は技術導入の契約をしたわけでないからというので、AMFはほとんど教えてくれない。英国から発電炉を入れる場合も動力試験炉の場合も技術導入を行わねばあまりプラスはないと思う。英国から1基だけ入れるのなら別だが2基目、3基目も考えるのであれば技術導入をしたはうがよい。

 岡野参与:その際も契約の条件次第である。

 三島参与:燃料の加工、金属材料の加工について日本でも将来英国と同じ技術ができたとしても、特許権の侵害という問題から製造できないこともありうる。したがって、そのような問題が起らないような包括的な技術を提携しておくほうがよい。

 駒形参与:実用原子炉に関する技術導入は乙種にかぎるという枠をはずす段階にきていると思う。しかし原子力関係の技術導入をとかく重視する傾向があるのでこの点は十分考える必要がある。日本自体の研究成果により多くを期待したい。

 乙種の技術導入に関する条件として、資料1に(イ)(ロ)(ハ)(ニ)があるが、甲種の技術導入を考えるときもこれらは当然な条件である。さらに特にstartにおいてはあまり技術導入の種類を広げるべきではなく、同じ技術導入を何社もがやるような重複をさけるべきである。

 また別の問題であるが、乙種の場合でももっと簡単に導入できる方法はないものかと思う。乙種として許可を得たなかには特殊なhandbookを買うという内容のものがあった。このような場合は乙種よりも簡単な手続で入れられるようにしてほしい。

 大屋参与:技術導入の問題は、甲、乙というような区別をつけて考えるべきではない。条件次第である。技術導入のそれぞれの実体を考え、契約の条件にてらしてみてそれを実行に移すか移さぬかを判断すべきである。判断は役所でもできるし、技術導入をしようとするほうもそうむやみにはできないものであって、甲乙というような区別を設けるべきではない。

 技術導入は一度契約をしたらその後の改良も続いて入ってくるというような契約はできないもので、そのつど新しい契約になる。したがって不必要な技術も入ってくるからといって包括的な技術導入はいけないというのはおかしいと思う。

 島村調査官:技術導入の問題は条件次第であって内容さえよければというような考えと聞くが、さらにつっこんで原子力の場合はどうするかという問題がある。

 技術導入の可否を決定する際には第一にその効果が十分検討されねばならないが、この点では原子力には未知の分野が多く需要が不確定である。特にそれぞれの炉型式やメーカー別に見た需要となると問題が多くその上技術導入をするとたいていの場合はロイヤルティが年に最小いくらはいるという条件がついてくる。第二に個別に条件次第で考えていくのは当然だが、多数の会社が技術導入を望んでいるとき、内容さえよければ各社とも認めるのか、需要との関連もあって問題となる。

 大屋参与:原子力にかぎらず海外の産業と提携するときにはいつも起きる問題である。さきに提携したものがとくをするということもあるが、企業者の良識で決めるべき問題と思う。

 需要との関連を問題にされたが、それを判断するのは役所のはうでも返答に困る問題ではないか。Minimumchargeもあるので企業としては需要もないのにやたらに契約するわけではない。したがってあまり心配をせずにまかせておいたほうがよい。

 安川参与:原子力に関しては早晩技術導入が必要になる。条件の問題になるが、算盤をはじいて利益か不利益かさを判定するような性質ではなく常識で判断されるような問題と思う。あらかじめ分類してあてはめるような問題ではない。

 有沢委員:企業家の良識を尊重するとしても、為替統制の必要からいってもおのずから秩序がある。需要がそれほどないのに技術導入の希望が多数出てきたらどうするか。

 大屋参与:需要がすぐにないという場合にも準備のために技術提携が必要となる。ところが現在では実需がないと技術提携もできない状態である。すべて需要が確かにならねば入れないというのでは本当にプラスとなる技術は入ってこない。

 瀬藤参与:需要はいつか、それに対して必要な準備はいつかというtimingが問題になる。

 新鋭火力の技術導入のときには、最初は米国で完成して使っているものを造り、持って来てその後は段々と日本で造れるようになるというstepを割合に忠実に踏んできた。需要も割に確かなのでそれを見越して少しずつ技術を進歩させてきた。ところが原子力ではテンポが早く需要が不確定である。技術導入で準備をしておきたいのは英国型の2基目であり、米国型についても早目に用意しておきたい。

 有沢委員:大屋さんにお尋ねしたい。事業にはまだ移さないがinformationを長期にわたって入れたいというときには甲種でも技術導入すべきだということですか。

 大屋参与:informationだけしか入れず仕事は当分考えないというのではいい会社は話に乗ってこないと思う。技術提携の問題は需要とからみ合わせて考えず、産業人の判断にまかしてよいのではないか。

 兼重委員:これまでは甲種の技術導入はいけませんということにはなっていないが、乙種は適当であれば考えるという表現なので、甲種は当分考えない方針と了解された向きもあるように思われる。そのように了解しておいででしたか。

 瀬藤参与:甲種は当分見送る方針と了解していた。

 兼重委員:一つはそういう了解を与えていたことに対して訂正する必要があるかどうかという問題があり次にコールダーホール改良型の最初の1基については技術導入を行わないという了解を与えていたとすればそれについて問題がある。あとのほうのは、たとえば英国のメーカーの一つが「日本のある会社と技術提携をしたうえでなければ原子炉を輸出しない」といったとし、そのメーカーがテンダーを提出したもののうちで最適なものであったとき、そのメーカーを失格させるという了解ですか。

 瀬藤参与:英国からテンダーを提出した三つのグループがある。その一つが技術導入を約束しなければ原子炉を入れないというときには、その理由を問題にすべきである。

 兼重委員:下請けだけではあまり役にたたないだろうという見方からは、英国から発電炉を導入する場合にも最初から技術提携をしたはうがよいということになる。これに対して最初から技術提携をして早いうちに勝負をきめてしまうと後になってもっとよいメーカーが出てくるかも知れないから、最初は技術提携をしないほうがよいという考えがあるわけですね。

 稲生参与:今後3基も4基も続くかどうかが解らないときは技術提携をしないぼうがいい。あとも入れるときには技術提携したほうがいい。「長期計画」ではコールダーホール型が一番よいから当面はそれを入れるということであった。

大屋参与:入札した3グループから適当なものを選ぶのに、技術提携を前提にしているかいないかを考えてはいけない。契約の内容で将来非常に不利になるという場合を除き公平に考えるべきである。

 瀬藤参与:大屋さんのおっしゃるところに賛成である。技術提携の条件を問題にすべきであると思う。

 大屋参与:技術導入の問題ははっきり枠をきめておかないでゆとりのある考えでやってほしい。

 稲生参与:わたくしどもが甲種の技術導入は取り上げられないと考えていたのは確かである。技術提携を度外視して向うと交渉していた。

 兼重委員:原子力関係では特許がないから造れないということのほかにknowhowが知りたいという点がある。knowhowを知りたいというものでグループを造って向うと提携していくことを考えるか、または1対1で提携することを考えるべきかという問題がある。

 瀬藤参与:一つの窓口で受け入れるのでは向うからみると信頼度が違い不安に思うだろう。

 大屋参与:特許ばかりでなくknowhowの問題があるから向うが話にのらないと思う。

 有沢委員:英国で調べたところでもやはり実現の可能性はない。

 山県参与:技術導入の窓口を一つにするめどがつかないうちは当分は技術導入をしないという説明があったと思うが。

 佐々木局長:最初の1基については技術提携はしない。技術提携をするとしても窓口を設けてやってはどうかということが当時いわれていた。はっきり決ったことはない。

 瀬藤参与:技術提携は初めの1基はやらないが2基目からやるという感じで了解していた。

 大屋参与:わたくしはそうではないが、甲種の技術導入は認めないものと思っていた。

 岡野参与:これまで甲種の技術提携を申し込んで断わられたという実例はないか。

 稲生参与:断わられたのではないが早いといわれて引っこめたことがある。

 島村調査官:三菱から正式にではないがこういう考えだがという話を聞いた。また古河は正式の甲種の申込をした後で乙種に変更した。住友も同じように甲から乙に変更した。最近では富士電機から正式に甲種の申請が出された。

 兼重委員:ウラン製錬技術の導入については、企業化に直結するものは当分の間はさし控えることが適当であろうとはっきりしている。実用原子炉については乙種のことにふれているのみなので、長期の技術導入は認めないという印象を与えたわけですね。

 島村調査官:一昨年12月18日に決めた「実用原子炉に関する乙種技術導入について」というのは、実用原子炉についての技術導入の問題は、当時Gibbs & Hillとの提携だけが出ていたので、とりあえず乙種についてのみ決めた。英国から発電炉を導入するという考えが出てきたとき技術導入をどうするかという問題が起り、参与会などでも御意見を聞いた。そのときはめいめいがやるべきではなく、金額も大きくなるのでむしろ国自体がそういう契約を結んでメーカーに造らすようにしたいという意見も産業界にはあった。甲種の技術導入はまだ早いという空気もあり、そこで技術導入をしないで入れるほうがいいという印象もあったようである。相手方と考えられる外国のメーカーも多数あるのでそのことも議論になった。

 以上のようにそのつどいろいろに考えられていたので、前回の参与会でcase by caseに考えていくといったのはいいすぎになるかも知れないが、最近ではだんだん空気も変り甲種は全然だめだと現在考えているわけではない。

 田中参与:今度英国から発電炉を輸入する場合は、技術提携を排除しているのか。

 兼重委員:今まで排除してきたわけではないが、そういう了解だったと考えている向きもあるということである。

 岡野参与:技術提携をせずに下請けだけで第1基目を導入するときには、全責任は向うにある。AMFのように日本の会社を指導しなかったという例もあるので向うの会社の性格にもよるのかも知れないが、信用にも影響するから向うも指導するのではないかと思う。

 また瀬藤さんのように、技術提携をやりたいが1基目については日本政府が技術提携を排除しているから考えなかったとすると結果にだいぶ影響してくる。

 脇村参与:英国に見積りを提出させた場合に、将来購入する炉のことは向うからなにもいってこないか。

 安川参与:将来2基目も入れることは向うも望んではいるだろうが、2基目のことは向うはなにもいわないしこちらからも触れていない。技術提携についてもわれわれにはなにもいって来ないし、条件に入れていない。メーカーと相談すべきことと心得ているようである。

 大屋参与:原電の1基目は英側が保証して安全に動くことが保証されるのが第一である。部品を日本の方々のメーカーに造らせて集めてみることを株主は要求していないと思う。

 兼重委員:委員の間でも相談し今日の御意見を参考にして考えることとする。

2.昭和34年度の補助金、委託費の要望課題について

 資料2および3について佐々木局長、中島助成課長から説明を行った。

 中島助成課長:今回の案は全くの試案であり、この中から相当整理したりこれに付け加えたりする必要があろう。

 資料の中分類として示されている程度で要望課題を発表したい。25日までにこれに関する御意見を承りたい。

 大屋参与:補助金、委託費の使い方を決めるために審議会を設け事業会社に関係のある人の中から10名ほどを会員にして委員会か科学技術庁で審議するのがいいという人がいる。

 瀬藤参与:事業界の人ばかりでなく学識経験者をも入れて審議し、それを参考として局が決めるようにしたい。

 駒形参与:原研の仕事に直接関係するが一部を民間でやってもらうというとき、今までは政府から委託費や補助金が民間に出ていた。原研の仕事と関連があるから、今後は原研から直接委託し、共同研究のできるようにしたい。

 島村調査官:原研法でもやれることになっているがこれまでは原研は建設過程にあり、建設の仕事もあるので、経理その他の手続上の面倒も考えて、直接外に出すことは行われなかった。現在ではそろそろそういったことを考えるべきであり、どういう範囲と規則でやるかを考えていく。

 田中参与:研究の成果を評価する委員会のようなものはあるか。

 島村調査官:局でそのつど評価しているほか、研究が助成対象として済んだときには発表会を催し、関係の学者、技術者を集めて討論を行っている。一般的にやっているから、時間的制約などによりそれで十分かどうかは問題である。委員会月報にも研究の成果を発表している。

 山県参与:委託費、補助金でやる研究の期間はどのくらいか。

 島村調査官:契約してから10ヵ月になっている。前年の続きが必要なときは新しく検討して翌年も交付することになる。

 稲生参与:核融合の研究はできるだけ1ヵ所でやる方針であると聞いている。34年度はどうするか。

 石川委員:核融合の研究装置には沢山の種類があるので、さらに1年ぐらい検討してどれから始めるかを決める。場合によっては原研のような研究機関をつくる話も出ている。

3.その他

 規制法の一部改正案について資料4および5によって、改正案の要点を島村調査官が説明した。