原子燃料公社業務報告書(抄)

昭和32年度


 原子燃料公社においては、昭和31年8月10日設立以来、核原料物質および核燃料物質の探鉱、採鉱、精錬、管理等の業務を行っており、現在第3年目を迎えたことになるが、さる10月22日開催された原子力委員会第40回定例会議に、昭和32年度における業務報告書が資料として提出された。以下にその報告書を資料として掲載する。ただし、紙数の関係で一部を省略し、または表示方法の変更を行った部分もあるが、御了承を得たい。なお、昭和31年度の原子燃料公社業務報告書(31.8.10.〜32.3.31.)は、本誌第2巻第8号(57ページ)に掲載した。

目  次

1.業務の概況
2.核原料物質の開発の状況
3.核燃料物質の生産(加工を含む)の状況
4.建物、構築物および機械設備の建設および改修の状況
5.業務組織の概要および職員の状況
6.財務の状況

1.業務の概況

 昭和32年度において、原子燃料公社は、次の方針で事業を行った。
(1)探鉱については、前年度に引き続き有望鉱床地帯を地質鉱床精査、物理および地化学探鉱、試錐探鉱ならびに坑道探鉱により調査するとともに、新たに探鉱地域を拡大する。
(2)製錬については、製錬所敷地を選定し、精製錬、粗製錬の基礎および応用研究を行うための諸施設を整備する。

第1図 昭和32年度探鉱地区位置図

 以上の方針にもとづき、前年度に引き続き人形峠鉱山、倉吉鉱山および三吉鉱山について地質鉱床精査、物理および地化学探鉱、試錐探鉱ならびに坑道探鉱を行うほか、新たに岩手県北上地区、山形県鶴岡地区、宮城県気仙沼地区、岐阜県黒川地区、岡山県南部地区、山口県防府北方地区、鹿児島県垂水地区その他の放射能異常地に対し、地質鉱床精査、試錐探鉱等を行った。(第1図参照)
 特に、人形峠鉱山は、鉱況が優勢であり、重点を置いて探鉱を実施した結果、昭和32年度末現在において、本鉱山の埋蔵鉱量は約100万トン、平均品位0.05%U3O8と予想されるにいたった。
 また、人形峠鉱山の32鉱区、倉吉鉱山の26鉱区、金取地区その他84鉱区について探鉱契約を結び、22鉱区を買収した。いっぽう、全国にわたりウラン鉱賦存の有望な地域について試掘権の出願を行った。
 製錬については、昭和32年6月茨城県那珂郡東海村村松字真砂山に製錬所の敷地を選定し、同7月東海製錬所の建設工事、社員宿舎の建設工事に着手した。いっぽう、製錬担当の今井理事を5月から7月までアメリカおよびヨーロッパ諸国に派遣して製錬の方法についての研究を行ったが、当公社の製錬は、在来の方法によらず、オークリッジ国立研究所の研究による新方法によるという結論を得た。これによって製錬所の諸施設は具体的な方向を得て進展の段階に入った。
 昭和32年8月には、人形峠鉱山に分析室を新設し、岡山大学温泉研究所に依頼していた業務の一部を移し、新たに人形峠鉱山および倉吉鉱山の鉱石の分析を行った。東海製錬所の建設工事の進捗により、昭和33年2月、その一部である原子燃料試験所が完成したので、東海製錬所の組織を定め、操業への準備態勢を整えた。

2.核原料物質の開発の状況

 鉱山別、地区別の探鉱実施状況および成果は、次のとおりである。

2−1 鉱山別、地区別探鉱状況
 人形峠鉱山は、昭和31年度に引き続き、当初は倉吉出張所の管内の一地区として探鉱を行ったが、探鉱開発を重点的に促進する必要が認められたので、昭和32年8月1日、人形峠出張所を開設した。
 人形峠鉱山の鉱床は、中新生末期の堆積鉱床で、その基底礫岩層が含ウラン層として生成されたも のである。昭和32年度未までに探鉱した結果により、不整合面直上で品位が高く、東西方向に向って比較的安定し、峠−夜次間の3kmにわたってウラン層が連続することを確認した。また、同様の鉱床が更に東方に向って、赤和瀬、恩原、辰巳峠方面へひろがっていることを認めた(第2図参照)。
 峠地区は、昭和31年度に開坑した1号坑、2号坑、3号坑の掘進を続けるとともに4号坑を開坑し、各坑道を100mごとに連絡して鉱床の賦存状況を探査した。また鉱層の厚さおよび品位分布を把握するため探査用鉱井を坑道沿に掘さくし、坑道延長2,402mに達した。その他トレンチ126m3、試錐14孔763mを施行した。
 夜次地区は、昭和33年1月に開坑し、部2本の坑道を掘進し、650mに達した。その他

第2図 人形峠鉱山地質図

トレンチ1,532m3、試錐40孔1,096mを施行し、峠、夜次両地区をあわせて300,000m2の地化学探鉱を行った。

 また赤和瀬地区にトレンチ1,537m3、試錐15孔589mを、中津河地区にトレンチ955m3、地化学探鉱2,000,000m2を、恩原地区に試錐23孔1,310mを、電気探鉱240,000m2をそれぞれ施行した。以上の探鉱の結果により算定される人形峠鉱山の鉱量は、次のとおりである。
 倉吉鉱山は、昭和31年度に引き続き円谷、歩谷、よころ谷を中心に、地質鉱床精査、物理および地化学探鉱、試錐探鉱ならびに坑道探鉱を総合的に行った(第3図参照)。円谷地区は、1号坑の鏈押と、その平行脈を掘進し、続いて、2号坑の立入

第3図 倉吉鉱山地質図

と鏈押を掘進し、893mにいたった。その他トレンチ1,340m3、試錐21孔2,076m、電気探鉱400,000m2を施行し、平行脈を捕そくした。鉱脈は、かなり高品位のところもある。歩谷地区は、大切坑の掘進を続け、1号鏈、2号鏈および本鏈に着脈し、延長748mを掘進した。そのほか、トレンチ2,567m3、試錐7孔492m、電気探鉱290,000m2を施行した。これによって鉱床の下部への連続性を確かめ、特に本鏈については、下部にかなりの富鉱を確かめた。よころ谷地区は、1号坑を169m掘進し、1,184m3のトレンチ、7孔858mの試錐、200,000m2の電気探鉱を施行した。広瀬地区は、トレンチ511m3、試錐3孔131mを施行した。
 三吉鉱山は、昭和31年度掘進した1号坑で平行脈を探査し、また新たに、2号坑の立入を掘進するなど270mの坑道探鉱と試錐7孔626mを施行した。この結果、露頭付近の砒銅ウラン鉱の初生鉱物とみられるコフィン石の存在を認めた。
 このほか、宮城県気仙沼地区に対して地質鉱床精査、電気探鉱および試錐探鉱を、山口県防府北方地区に対して地質鉱床精査および試錐探鉱を、岩手県北上地区、山形県鶴岡地区、岐阜県黒川地区、岡山県南部地区、鹿児島県垂水地区等に対して地質鉱床精査を行った。
 以上の探鉱の成果は、後述の2−2作業種別探鉱状況および成果にしるすとおりである。

2−2 作業種別探鉱状況および成果(第1〜3図参照)

イ、地質鉱床精査 〔    〕内は作業量

倉吉鉱山

 倉吉鉱山各地区(精査)〔10km2
 倉吉鉱山周辺花崗岩の岩石学的研究を行い、ウラン鉱床との関係を調査した。

同上(精査)〔5km2

ウラン、トリウム委員会開催にともない、倉吉鉱山全般の状況を再検討するため調査を行った。

同上(精査)〔7km2
   同 上。

広瀬(精査)〔3km2

広瀬地区全般にわたる地質調査を実施し、縮尺1万分の1の地質図を作製した。

同上(トレンチ)〔511m3

放射能異常を示す黒色ゼノリス状岩体の分布、形態を確認し、その他の異常部の追跡を行った。

よころ谷(トレンチ)〔1,184m3

現場事務所北200mの地点において、放射能異常を有する黄鉄鉱、方鉛鉱、石英脈の鏈先を把握し、また2条のNE系の絹ウンモに富む脈を確認した。

同上(精査)〔0.5km2

よころ谷沢約200m奥の地点において、黄鉄鉱鉱染脈を発見した。

よころ谷三角点〜菅ヶ原(精査)〔3km2

放射能異常を示す白色粘土を発見し、また岩倉入口付近に黄鉄鉱鉱染放射能異常部を発見し、更に菅原よりの沢入口付近一帯にも異常部を認めた。

小倉沢(精査)〔0.5km2

小倉沢最上流付近において放射能異常を有する赤鉄鉱粘土脈を発見した。

よころ谷北部(測量)〔0.13km2
  縮尺1,000分の1の地形図を完成した。

歩谷(トレンチ)〔2,567.5m3

本鏈の北の鏈先を300mにわたって確認、平行脈2〜3条を認めた。また、本鏈の南の鏈先を200mにわたって確認した。

歩谷(精査)〔0.5km2

北部において、0.2〜1.5m幅の放射能異常露頭を発見した。

歩谷およびよころ谷(測量)〔0.33km2

全地域の坑道、試錐、露頭を結びトラバー測量を実施し、1,000分の1全地域図、500分の1坑道図、100分の1探鉱坑道図を作製した。

同上(測量)〔0.1km2

歩谷坑、よころ谷坑の100分の1坑内図を作製し、よころ谷200分の1試錐地点図を作製した。

円谷(トレンチ)〔1,340.1m3

受電室側の沢の上において、新露頭線を発見した。1号坑に平行な新露頭線を発見した。また砂堀右の沢において新露頭線を発見した。

同上(精査)〔0.5km2

砂堀中の谷において、変質した露頭を発見した。

同上(測量)〔1.8km2

円谷および今泉地区の坑道、試錐、露頭を結ぶトラバー測量を実施し、1,000分の1全地域図、500分の1坑道図、100の分1探鉱坑道図を作製した。

岩倉(精査)〔0.5km2

花崗岩の焼けた部分(黄鉄鉱鉱染)に放射能異常部を発見した。

若宮−今泉(精査)〔1km2

若宮部落南沢北支流入口付近において放射能異常を有する粘土脈を発見した。ヤイ谷上流部においても異常を認めた。

助谷(精査)〔0.5km2

牧(思谷)において、0.1〜0.15m幅の粘土脈に400c/mの放射能異常を認めた。

福本(精査)〔0.5km2

倉吉南方約 20kmにおいて、変質花崗岩および黄鉄鉱、輝水鉛鉱を随伴する青色粘土脈に放射能異常を確認した。

松崎(精査)〔0.5km2

倉吉北東約10kmにおいて、花崗岩中に迸入しているリソイダイトの粘土化部分にリン灰ウラン鉱を確認した。

倉吉各地区(精査)〔4km2

倉吉鉱山の探鉱状況を把握し、今後の方針を確立するため全般的な調査を行った。

同上(精査)〔5km2

同 上。

人形峠鉱山
夜次(精査)〔5km2

含ウランレキ岩層の延長を峠地区から夜次地区に追跡し、その存在を確認した。

夜次北部(トレンチ)〔899.5m3

池河造林沢 露頭線の追跡、不整合面の確認、含ウランレキ岩層の層厚、賦存範囲の確認に努め、含ウランレキ岩層は、北方に向い基盤の上昇によって尖滅することを確かめ、北限および西限を確認した。層厚は平均2m、最大4m、放射能異常は自然数の平均2〜4倍、最高6倍である。
造林沢西部:2ヵ所において含ウラン層と不整合面を確認した。レキ岩層の厚さは最大2mであり、放射能異常は自然数の約2倍である。北部においては、アルコーズ砂岩が発達し、レキ岩層は薄くなる。
造林沢上流:花崗岩のみで、含ウランレキ岩層は認められない。

夜次(測量)〔0.65km2

縮尺1,000分の1の地形図を作製した。

夜次南部(トレンチ)〔632.5m3

含ウランレキ岩層の厚さは最大4.7m、放射能異常は自然数の平均2〜3倍、最高5倍である。南に行くほど基盤が上昇し、含ウランレキ岩層が薄くなることを確かめ、南限を確認した。

赤和瀬(トレンチ)〔1,537.1m3

西部AW:含ウランレキ岩層と花崗岩との不整合面と、その賦存範囲を確認した。含ウランレキ岩層の厚さは最大3.5m、放射能異常は自然数の平均2〜4倍、最高9倍である。
西部A:AW地区の南東で含ウランレキ岩層とその賦存範囲を確認した。レキ岩層の厚さは平均2.5m、最大6.5mである。放射能異常は自然数の平均2〜3倍、最高8倍である。
西部B:赤和瀬川に沿い、A地区の北東方で、含ウランレキ岩層を確認した。その北西部ではレキ岩層はなく花崗岩のみであることを確認した。
西部C:B地区の更に北東方で、花崗岩のみであることを確認した。

中津河西部(トレンチ)〔955.4m3

花崗岩の上に凝灰角レキ岩ないし安山岩質火山角レキ岩が直接不整合にのり、人形峠層に当る水成岩が欠除している。凝灰角レキは高清水層に対応すると思われるが、放射能異常は認められない。しかし本層の下位、花崗岩の直上に特に0.02〜0.1mの厚さの含細レキ花崗岩質砂岩があり、これには自然数の1.5倍の放射能異常が認められる。

高清水(トレンチ)〔126m3

海抜高度750〜850mの間で不整合面を数ヵ所確認し、高清水高原頂上直下で安山岩熔岩と花崗岩にはさまれる第三紀層の完全柱状図を作製した。多くの地点で放射能異常を認めることができなかったが、1地点で自然数の1.5倍の放射能異常を認めた。

恩原(精査)〔6km2

恩原貯水池周辺における第三紀層の分布範囲をほぼ明らかにした。第三系の北限は、予想以上に広いことがわかり、更に辰巳峠まで連続していることがわかった。以上の第三系と人形峠層および高清水層との直接の関係は不明であるが、おそらく同時期の堆積物と考えられる。現在のところ、放射能異常は認められていない。

人形峠、辰巳峠間の各地区(写真測量)〔40km2

写真測量を行い、1万分の1の地形図を作製した。

峠(精査)〔0.5km2

黒色ウラン鉱物の研究を行うためその産状を調査、試料採取を行った。

岩手県野田玉川鉱山(精査)〔0.5km2

坑内の閃ウラン鉱と他鉱物の共生関係、その他総合的賦存状況を調査した。

岩手県北上(精査)〔100km2

主として北上中軸帯から東部太平洋岸地帯にわたり、種々の金属鉱床の旧坑、露頭など計60有余の箇所を調査し、既に閃ウラン鉱の確認されている野田玉川鉱山、山口鉱山のほかに岩泉付近の亀山鉱山、久慈市小袖海岸の甲良岬露頭など十数ヵ所に放射能異常を確認した。
野田玉川鉱山:古生層中のマンガン鉱床で、含モリブデン断層亀裂に自然数の30倍に達する放射能異常を確認した。
山口鉱山:花崗岩と古生層の接触部に胚胎するスカルン(銅)鉱床に、自然数の40倍に達する放射能異常を確認し、200分の1の坑内地質鉱床図および放射能分布図を作製した。
甲良岬露頭:花崗閃緑岩中の輝水鉛鉱−黄銅鉱−黄鉄鉱−石英−緑泥石脈に最高500c/mの放射能異常を確認した。
亀山鉱山:花崗岩と古生層の接触部に胚胎するスカルン(銅)鉱床中に放射能異常を確認した。
その他鉱山:(省略)

岩手県川井鉱山(精査)〔1km2

古生層中に胚胎するマンガン鉱床について地質鉱床調査、放射能分布調査を行った。

宮城県気仙沼

羽田金取(精査)〔10km2

金取地区において硫砒鉄鉱を主とする石英脈に自然数の5〜6倍の放射能異常を確認した。羽田地区において輝水鉛鉱−石英粘土脈に自然数の3倍の放射能異常を確認した。

同上(測量)〔4.2km2

金取地区の縮尺5,000分の1の地形図を作製した。

気仙沼東部(精査)〔6km2

石割峠−万才峠を通る地帯(幅500m、延長6,000m)で放射能異常が認められ、特に1〜2m厚の黒色変質砂岩において、自然数の3〜4倍の放射能異常を確認した。

金取(測量)〔0.2km2

金取地区旧坑付近の縮尺1,000分の1の地形図を作製した。

宮城県大内炭田(精査)〔5km2

  坑内および坑外1露頭に放射能異常を確認した。更に、放射能分布図、炭柱図を作製し、地質鉱床概査を行い、周辺旧坑および露頭の放射能異常を調査した。

山形県朝日町(精査)〔5km2

朝日鉱山、大成鉱山において、花崗岩中の裂罅充填型金、銀、銅、蒼鉛、モリブデン鉱床に放射能異常を確認し、100分の1の坑内地質鉱床図および放射能分布図を作製した。また、同型の大張鉱山、黒森鉱山においても、放射能異常を確認し、また、上記鉱山周辺の露頭について調査を実施した。

岐阜県

黒川鉱山(精査)〔1km2

石英斑岩中の裂罅充填型金、銀、銅、鉛、亜鉛鉱床中に放射能異常を確認し、500分の1の坑内地質鉱床図および放射能分布図を作製した。

岩倉鉱山(精査)〔1km2

花崗岩中の裂罅充填型螢石−石英脈中に放射能異常を確認し、500分の1の坑内地質鉱床囲および放射能分布図を作製した。

付地町(精査)〔1km2

旧坑、露頭の調査を行い、尾ヶ平露頭に放射能異常を認めた。

長野県大町(精査)〔0.5km2

高瀬川上流の花崗岩地帯に由来した河成漂砂鉱床の調査を実施した。

琵琶湖および伊賀上野周辺(精査)〔6km2

花崗岩地域に近接する堆積岩の放射能分布を調査した。また、五百井マンガン鉱山において、放射能異常を確認した。

岡山県南部(精査)〔50km2

地質調査所の行ったカーボーンの異常地点の地質
鉱床精査および旧坑調査を行い、大笹鉱山周辺の馬越露頭、城山元鉱山において、花崗岩中の裂罅充填型銅鉱脈中に放射能異常を確認し、また、金子鉱山において、花崗岩に近い石英斑岩中に胚胎する不規則塊状銅鉱床中に放射能異常を確認した。また、カーボーンによる放射能異常は、花崗岩の良好な露出によることを確認した。

岡山県加茂鉱山(精査)〔1.22km2

古生層との接触部に近い黒ウンモ花崗岩中の輝水鉛鉱−石英脈の下盤際の緑色を帯びたウンモ集合体に異常を認め、200分の1の坑内地質鉱床図および放射能分布図を作製し、更に、周辺5鉱山を含む地表調査も実施した。

同上(測量)〔0.22km2

本鉱山および周辺の測量、縮尺1,000分の1の地形図を作製した。

岡山県阿部鉱山(精査)〔5km2

花崗岩中の銅鉱脈に放射能異常を認め、数次にわたり、坑内外の地質鉱床精査、坑内放射能分布調査を実施した。

岡山県大笹鉱山(精査)〔1km2

花崗岩中の裂罅充填型銅鉱床中に放射能異常を確認し、坑内放射能分布調査および坑内外の地質鉱床調査を実施した。

岡山県新美川鉱山(精査)〔1km2

花崗岩中に迸入する閃長岩体中に放射能異常が認められた。

同上(トレンチ)〔400m3

閃長岩体の規模、形態の把握、鉱石鉱物の産状の究明に努めた。

岡山、山口県(精査)〔2km2

岡山県阿部、大笹、山口県松ヶ谷、八坂、銅谷各鉱山の鉱床賦存状況を調査した。

山口県

松ヶ谷鉱山(精査)〔20km2

花崗岩中の気成型W−Mo石英脈、黄鉄鉱鉱染緑泥石脈等において、それぞれ自然数の2〜3倍の放射能異常を確認した。
八坂鉱山(精査)花崗岩中の裂罅充填型鋼−石英−粘土脈中の富鉱部に自然数の4〜8倍の放射能異常を確認した。
銅谷鉱山(精査)花崗岩中の裂罅充填型銅−粘土脈の上、下盤に2〜4倍の放射能異常を確認した。
栄和鉱山(精査)花崗岩中のタングステン石英脈で、輝蒼鉛鉱に富む部分で最高800c/mの−放射能異常を確認した。

山口松ヶ谷鉱山(測量)〔0.13km2

本鉱山およびその周辺の測量、縮尺1,000分の1の地形図を作製した。

島根県宝満山鉱山(精査)〔3km2

坑内において、凝灰岩中の銅−石英脈および捨石について放射能測定を行い、その他、松江宍道付近の花崗岩と第三紀層下底の放射能測定を行った。

愛媛県(精査)〔8km2

大島大頭山、波万白岩鉱山、立岩鉱山において、主としてペグマタイト鉱床につき調査を行った。 周桑郡と越智郡境の椎ノ木越において、花崗岩を貫く粘土化変質石英斑岩脈に放射能異常を確認した。
鈍川周辺露頭、金山鉱山、青波旧坑の地質鉱床、放射能異常調査を行った。

広島県南生口(精査)〔1km2

細粒優白質花崗岩中のモリブデン、石英脈下盤際に3,800c/m、その他同様の石英脈に沿い1,200c/m、その他異常が確認された。

福岡県竜円鉱山(精査)〔2.5km2

鉱区内に分布するペグマタイト鉱床に強放射能異常帯を確認した。
すでに放射性鉱物の存在することが確認されていたペグマタイト中の鉱脈様放射能異常帯をトレンチによって追跡した結果、ペグマタイト外には伸びないことが判明した。 

鹿児島県垂水鉱山(精査)〔4km2

   0m坑本鏈の錫石−褐鉄鉱粘土脈に約15mにわたって強放射能異常を確認した。その強度は、自然数の5〜30倍である。その他、+7m坑では、含銅粘土脈および褐鉄粘土脈に放射能異常を確認した。その強度は、自然数の3〜4倍である。

鹿児島県〔2km2

万黒鉱山(精査):旧坑口崩壊のため、貯鉱場の鉱石を調査した結果、最高2,000c/mの含銅磁硫鉄鉱石を発見した。
立神鉱山(精査):鉱区内で新露頭の放射能強度を測定した結果、自然数の3〜4倍の異常を示すことが判明した。
(花崗岩中の銅−鉛−絹ウンモ−石英脈)

鹿児島県垂水鉱山周辺(精査)〔2km2

周辺地区に分布する旧抗および露頭の放射能強度を測定したが、数条の錫石−石英脈に異常を認めた。その強度は、自然数の2〜3倍である。

ロ、物理および地化学探鉱  〔 〕内は方法

人形峠鉱山

恩原〔電気探鉱、放射能探鉱〕

測線延長は30km、測点数は3,000、測定面積は240,000m2で、比抵抗値および放射能強度の分布を調査したが異常を認められなかった。

峠、夜次〔地化学探鉱〕

調査面積は300,000m2で、600ヵ所の沢水について亜鉛、リン酸を検出し、要精査地帯を摘出した。

中津河〔地化学探鉱〕

調査面積は2,000,000m2で、400ヵ所余の沢水についてウラン、リン酸、亜鉛の3成分を検出し、人形峠鉱床の延長と考えられる精査を要する範囲を限定することができ、更にこの調査により人形峠ウラン鉱床の地化学探鉱法を確立することができた。

倉吉鉱山

気仙沼、金取〔電気探鉱〕

測定面積は、第1区域80,000m2、第2区域100,000m2である。第1地区においては、自然電位法では、低電位地域が鉱脈を指示し、旧坑鉱脈の建と一致することを確認した。比抵抗法では、だいたい前者による低電位帯と平行して高比抵抗の岩石の分布状態を明らかにすることができた。
第2地区においては、新規鉱脈の存在を予想し得る示徴は得られなかった。

円谷〔電気探鉱〕

測定面積は135,000m2で、この結果により鉱床線を予想しトレンチ計画の基とした。

よころ谷〔電気探鉱〕

調査両積は200,000m2で、本調査により鉱脈の延長を予想することができた。

歩谷〔電気探鉱〕

調査面積は290,000m2で歩谷の南北地区にわたり実施し、既知鉱床の延長および多数の平行脈を探査した。

円谷〔電気探鉱〕

調査面積は、265,000m2で、この結果により鉱脈の延長を予想することができた。

ハ、試錐探鉱(抄)


ニ、坑道探鉱

     〔   〕内は種類および掘進長

人形峠

峠〔水平2,024.7m、掘上104.5m、掘下273m〕
1号坑は、190m付近から西坑口にいたる300mにわたって鉱況良好で、鉱層は最厚部分で3mに達し、50〜3,000c/mを示す。
2号坑は、坑口付近から200mにいたる間が最も良好で、鉱床の厚さ3mに達し、200〜3,000c/mを示す。
3号抗および奥3号坑は、坑口から断層付近までが鉱況良好で、断層沿いに高品位黒色ウラン鉱があり、2,000〜3,000c/mを示す。
4号坑は、一般に鉱況不良である。

夜次〔水平650m〕

北部は、坑口から20mで、厚さ2mのリン灰ウラン鉱があり、400〜500c/mを示す。掘進するにつれて高品位黒色ウラン鉱に変り、500〜1,000c/mを示し、U3O8 0.07〜0.1%に達する。
南部は、70m付近から厚さ1.5〜2mで、1,000〜1,500c/mを示している。
計  3,052.2m

倉 吉
円谷〔水平850m、掘上43m〕

1号坑は鉱況劣勢である。
2号坑は120mでモリブデンをともなう石英粘土脈に着脈した。脈幅は0.2mで、500〜600c/mを示す。

歩谷およびよころ谷〔水平893.8m、掘上24m〕

歩谷1号鏈は鉱況がよくないので一時中止した。
歩谷2号鏈は脈幅0.15〜0.2mの石英粘土脈で、300〜400c/mを示す。
歩谷本鏈は脈幅0.1〜0.8mの石英粘土脈で、500〜1,000c/mを示している。
よころ谷1号坑は水平的ひろがりはあまり大きくないことが判明した。
計  1,810.8m

三吉〔水平270m〕

1号坑は鉱況劣勢であった。
2号坑は両盤がグライゼン化したタングステン石英脈に着脈し、コフィン石の存在を確かめた。
総計 5,133m

2−3 鉱区出願等の状況
  将来の探鉱および開発にそなえて探鉱契約を結びあるいは鉱区を買収するとともに、他方全国にわたりウラン鉱賦存の有望な地域に試掘権の出願を行った。その出展鉱区、探鉱契約鉱区、公社所有登録鉱区、租鉱権設定鉱区は次のとおりである。

開発事業実績

(1)出願鉱区
  合   計  835鉱区 27,804,764アール

(2)探鉱契約鉱区(抄)
     計   150 鉱区

(3)公社所有登録鉱区(抄)
     計    10 鉱区

(4)公社租鉱権設定鉱区(抄)
    計    1鉱区

3.積燃料物質の生産(加工を含む)状況

 昭和32年度においては、実際生産にはいたらず、東海製錬所建設の前段階である茨城県那珂郡東海村の敷地の選定、中間試験工場における製錬方式の決定および設計図面の購入にとどまった。また、工場の操業管理上必要な原子燃料試験所の建設を完了した。この間、各研究機関に研究を依頼し、あるいは、公社職員を実習のため派遣して指導協力を求める等国内におけるウラン製錬に関する研究を推進した。

 そのおもなるものは、次のとおりである。

東京工業大学理工学部電気化学教室  向助教授
1.塩化ウラニルの電解還元に関する研究
2.塩化ウラニルのフッ化ならびに4フッ化ウランの脱水に関する研究

東京大学工学部冶金学教室  吾妻教授
無水フッ化水素による4フッ化ウランの製造に関する研究

東京大学工学部応用化学研究室  平野教授
還元用マグネシウムおよび金属ウランの分析に関する研究

京都大学工学部冶金学教室  西原教授
4フッ化ウランのマグネシウム還元に関する研究

日本原子力研究所化学部
金属ウランの分析に関する研究

三菱金属鉱業株式会社鉱業研究所
国内産ウラン鉱の選鉱製錬に関する研究

 精製還元中間試験工場建設については、Cox &Weinrich Consulting Chemical Engineerから技術を導入することとし、9月未契約を行い、関係装置ならびに機器の設計図面および仕様書等の資料が11月以来あいついで到着した。一部輸入機器については、ただちに、昭和32年度下期の外貨割当を得るよう申請するとともに、国内調達機器については発注準備を完了した。また、工場建家の設計に着手した。
 東海製錬所の一部である原子燃料試験所は基礎試験室および応用試験室からなり、前者は選鉱、製錬および加工等に関する基礎的試験ならびに原料、半製品および製品の分析検定その他工場の運転に必要な諸種の試験を行うが、後者は人形峠産鉱石を主とする国内産鉱石について1日3トン処理の粗製錬(選鉱を含む)試験を行う。
 基礎試験室は、鉄筋コンクリート造り平屋建394坪および付属機械室からなり、7月未設計を完了して8月中旬から工事を開始し、12月21日、建家の完成をみた。
 内部の温湿度調整換気設備、給排水およびガス配管工事は、10月中旬工事を開始し、1月中旬完成した。
 その他電気工事および機械室、変電所、排水等の建設も順調に進み、1月完工し、2月18日開所した。なお、昭和32年度債務負担行為として予算計上の応用試験室の建設は、昭和33年未完成予定である。
 また、いっぽう、住宅施設として独身寮敷地を選定し、9月中旬ブロック造2階建40名収容の独身寮の設計を完了して10月中旬から工事を開始し、共同棟は1月未、B棟は2月15日にそれぞれ完成した。
 これらの整備にともない、試験研究所上必要な機器、試薬類の購入、検収、調整等の業務を進め、基礎試験室における試験研究開始に備えた。
 また、32年8月に新設した人形峠分析室は、機器の整備にともない、漸次迅速分析法に切り替え、螢 光分析およびポーラログラフ分析の研究も進め、坑内外水のウラン分析、ウラン以外の元素の分析、篩分試験等も可能となった。操業については、標準作業法の大部分を作成完了したので、分析方法はほぼ軌道に乗り、次表の分析を行った。

分析処理件数実績

4.建物、構築物及び機械設備の建設並びに改修の状況

省略

5.業務組織の概要及び職員の状況

(1)業務組織表  省略

(2)32年度人員増減状況(抄)

   採   用    111名

   逃   職     3名

   年度末人員    199名

       (注 役員を除く)

6.財務の概況

  原子燃料公社の昭和32年度予算は、収入予算については、資本収入393,000,000円、国庫補助金257,872,000円、雑収入1,000,000円、合計651,872,000円、支出予算については、当初、探鉱費222,589,000円、開発費1,434,000円、製錬費222,995,000日、一般管理費161,875,000円、予備費42,979,000円であったが、年度中途において、製錬計画の変更によって予算変更を行い、その結果、製錬費234,782,000円、予備費31,192,000円となった。なお、予備費については、年度末までに、探鉱費、開発費、製錬費および一般管理費にそれぞれ使用した。

 公社資本金については、32年5月11日付150,000,000円、32年9月16日付100,000,000円、32年11月26日付50,000,000円、33年3月29日付93,000,000円の追加出資を受け年度末430,000,000円となった。

 補助金については、32年12月18日付180,000,000円、33年2月14日付62,586,000円、33年3月29日付15,286,000円、計257,872,000円の交付を受けた。

 昭和32年度損益計算書および貸借対照表は、次のとおりである。

昭和32事業年度原子燃料公社損益計算書


昭和32事業年度原子燃料公社貸借対照表