原子力局

昭和33年度補助金被交付研究の概要


 昭和33年度の原子力平和利用研究費補助金を交付された研究合計35件の概要、同じく昭和33年度の予算にもとづいて行われる放射能調査実施計画および33年度第1期分の放射性同位元素使用確認表等を紹介するとともに、原子力平和利用研究のうち終了したもののうちから2件をえらんで掲載した。また9月15日現在の本年度原子力留学生の受入れ交渉進捗状況と決定者の氏名、所属、留学機関、研究題目等およびアイソトープ関係海外研修生の受入れについて紹介した。

昭和33年度補助金被交付研究の概要


 昭和33年度の原子力平和利用研究費補助金の交付についてはさきに紹介したが(Vol.3、No.8、24ページ)、その試験研究の概要は以下のとおりである。(以下のうち補助金交付額のところに*印のあるものは国庫債務負担行為によるもの、*印のないものは歳出予算によるものである。)

 (注) ① 被交付者  ③ 研究費総額
     ② 研究期間  ④ 補助金交付額

1.管路内非定常沸騰熱伝達の研究

  ① 東京芝浦電気(株)  ③ 8,431,000円
  ② 33.6.1~34.9.30    ④ 3,849,000円

 目的:現在までの定常状態での沸騰現象の研究に引き続き熱出力、負荷の変動、ポンプ、回路の故障の際等の非定常状態の沸騰熱伝達を研究し、あわせて漏洩防止法の研究を行う。

 内容:(1)気泡の発生、消滅および熱伝達率自身の変化等につき精細な認識をうるため、発熱体の構造を簡単に変化しうる模型管路を試作する。(2)この管路を、熱交換器、ポンプと連結し、蒸留水を循環させて、発熱体表面での気泡発生状況、密度分布等を高速度カメラおよび光学系、γ線透視等により、定性、定量的に研究する。(3)フランジ結合部の漏洩およびその防止法を真空ポンプおよび湿度計により研究する。

2.軽水型模型原子炉伝熱回路の試作による熱伝道および循環材の漏洩防止に関する試験研究

  ① 三菱原子力工業(株) ③ 19,110,000円
  ② 33.8.1~35.3.31     ④* 10,526,000円

 目的:高温高圧水の伝熱特性および流水の模様を模型実験装置を試作して研究する。

 内容:(1)熱伝達試験回路(仕様:主配管-4"φおよび3"φの不銹鋼鋼管、測定部圧力容器-250mmφ×1,500mm高さ、加圧器、循環ポンプ、漏洩試験用結合部、流量、温度、圧力計測装置を含む。)を試作する。(2)補助装置として純水装置、補給用高圧給水ポンプ、流量、流速、温度、圧力等の計測制御設備などを設ける。(3)無漏洩工作法の研究および熱伝達に関する研究を行う。

3.液体金属伝熱回路の試作による熱伝達等の基礎研究

  ① (株)日立製作所   ③ 16,472,000円
  ② 33.6.1~34.3.31    ④  7,121,000円

 目的:液体金属冷却原子炉の開発研究に役だてるため、前年度試作の回路にさらに必要な回路を付加し、伝熱、腐食および純度管理の基礎研究を行う。

 内容:(1)Reの小さい場合の管内伝熱について正確な実験を行う。この際、伝熱面の表面温度を正確に測定する方法を工夫する。(2)液体金属が使用中に汚損していくのを一定純度に管理する必要があるので、このための物理的および化学的な純度管理用O2メータを試作する。(3)500℃くらいで回路内金属の動的腐食試験をあわせ行う。

4.動力用原子炉の主配管に必要な各型式の弁の試作および性能の研究

  ① 岡野バルブ製造(株) ③ 19,061,700円
  ② 33.7.1~35.1.31     ④* 9,400,000円

 目的:水冷却型原子炉の主配管系用として140kg/cm2、300℃に耐える実用規模のバルブを試作し、長期間試験を行う。

 内容:(1)150mm口径のウェッジゲートバルブ、パラレルスライドバルブおよび50mmベローシールセーフティバルブを試作し、圧力140kg/cm2(ベローバルブは45kg/cm2のテスト)常温で長期間繰り返し電動遠隔操作し、機能、耐久力等について検討する。(2)諸成分の材料につき、500℃までの温度で種々の物理試験を行う。(3)140kg/cm2、300℃の条件下で、グランドパッキング部の漏洩試験を行い、パッキングの種類、充填法等を研究する。(4)100mm口径の4種の試作バルブにつき1~10m/secの流速で弁の構造、工作等が弁の摩擦抵抗に及ぼす影響を調べる。

5.原子炉用超厚板およびクラッド鋼の溶接に関する研究

  ①(社)日本熔接協会 ③ 17,891,300円
  ② 33.9.1~34.3.31    ④ 9,000,000円

 目的:圧力容器用超厚板構造用鋼およびクラッド鋼の溶接施工法、検査基準を確立する。

 内容:(1)圧力容器の各種溶接法については、開先形状、溶接順序、予熱条件、亀裂、残留応力、変形などについて研究を行う。(2)材料の溶接性、熱による欠陥の発生と脆化、溶接部の硬度、組織、クラッド鋼の剥離と変形、耐食性等につき研究検討する。(3)放射線検査、磁気検査、浸透検査などにより欠陥検査法を研究する。

6.特殊加工法による原子炉用大型キャンドモーターポンプの試作研究

  ① 三菱電機(株)    ③  30,122,000円
  ② 33.8.1~35.3.31   ④* 12,853,000円

 目的:キャンドモーターの実用規模のものを製作するにあたって必要となる特殊加工法を研究しようとするものである。

 内容:350kVA、440V、60∞、4P、1,800rpm、140kg/m2、300℃程度のキャンドモーターを目標として、その製作に必要な(1)ステンレスケーシングの溶接加工、(2)ボリウトの精密加工、(3)大型薄肉インコーネルの加工、(4)デポジット、クラッド等の研究、(5)炭素ベアリングの硬度、摩耗の試験等の工作法の研究を行う。

7.原子炉肉厚溶接構造物の現場検査の研究

  ① 東京芝浦電気(株)  ③ 6,016,500円
  ② 33.6.1~34.3.31     ④ 2,405,000円

 目的:2~4インチ厚さの厚鋼板ならびにその溶接加工した部分の現場検査を容易ならしめるため、小型軽量ベータトロンの使用法を確立する。

 内容:(1)ベータトロンを現場用可搬型にする研究、(2)現有ベータトロンによる原子炉用肉厚構造物の非破壊検査の基礎実験、(3)可搬ベータトロンによる現場検査を行う。

8.酸化ウラン、ステンレス鋼被覆燃料要素の製造に関する研究

  ① 三菱原子力工業(株)  ③ 7,207,000円
  ② 33.6.1~34.9.30     ④* 3,550,000円

 目的:UO2、不銹鋼被覆の燃料棒は、今後実用性大となる見込なので、その製造技術、特に端部の溶接加工法を確立する。

 内容:(1)不銹鋼鋼管の試験、検査法、(2)燃料棒端部

の密封溶接法の研究、(3)UO2ペレット入り燃料要素の試作等を行う。そのうち、主眼を(2)におき、TIG溶接法によって端部をエンドプラグを使って溶接する方法を研究する。

9.PWRおよびBWR型原子炉の圧力容器の強度解析に関する研究

  ① (株)科学研究所  ③ 5,548,000円
  ② 33.9.1~34.3.31   ④ 2,796,000円

 目的:溶接加工部の残留応力の測定を行うために、光弾性解析法の応力を研究する。

 内容:溶接部の残留応力をエポキシ樹脂を用いて光弾性皮膜法により解析する。またそのための測定装置を試作する。

10.舶用原子炉の動揺時における安全棒落下の実験的研究

  ① 川崎重工業(株)   ③ 5,095,600円
  ②  33.6.1~34.3.31   ④ 2,028,000円

 目的:船舶の動揺時における摩擦、加速度等の影響を考慮した安全棒の落下試験を行う。

 内容:循環水系統、安全棒およびその駆動装置、動揺装置からなる特殊な装置により安全棒の落下に関する研究を行う。この場合、動揺等の要素は運輸技術研究所の水槽試験によって得たデータおよび実船によって得られたデータを上記装置に挿入する。

11.原子炉の圧力検出部の加工に関する研究

  ① (株)東京計器製造所  ③ 3,249,865円
  ② 33.6.1~34.3.31     ④ 1,409,000円

 目的:原子炉用圧力計は高いレスポンスを要求され、かつ従来の計圧用弾性体計器には問題が多いので、材料、受圧部の構造、遠隔指示法等を研究し、実用品を試作する。

 内容:(1)耐熱、耐食、耐放射線損傷性の大なる材料を研究する。(2)べローズ、ダイヤフラムおよびブルドン管方式による原子炉用高温高圧圧力計の受圧部を試作する。(3)上記に遠隔指示機構を付属せしめる研究もあわせ行う。

12.リン酸液よりの溶剤抽出によるウランの精製に関する研究

  ① 日産化学工業(株)   ③ 4,348,268円
  ② 33.8.1~34.3.31     ④ 1,782,000円

 目的:昭和30年、31年、32年の3ヵ年間にわたり継続してきたリン鉱石からのウラン抽出に関する研究成果を改良し、いっそう高い収率、収量の、また経済的なウランの回収法を検討する。

 内容:リン鉱石からウランの抽出については、化学沈殿法およびイオン交換法によって現在まで研究がなされてきたが、今回は溶剤抽出法によりさらに高収率の方法を開始しようとするものである。この工程はリン酸液の鉄による還元、還元リン酸液上、n-オクチルアルコール系有機溶剤による液-液抽出、含ウラン抽出溶剤から硫酸およびフッ酸の混酸による処理、溶剤の回収、回収リン酸液からリン酸アンモニア系肥料の製造等の各工程について検討する。

13.原子炉用高純度酸化トリウムの精製法の研究

  ① 三井金属鉱業(株) ③ 26,741,000円
  ② 33.8.1~34.10.31   ④* 7,080,000円

 目的:原子燃料として十分な純度を有する酸化トリウムを生産するための工業的諸条件を検討する。

 内容:モナズから抽出したリン酸トリウムをカ性ソーダ処理して水酸化トリウムとし、これを硝酸に溶解し、TBP抽出により精製する各工程について工業的生産規模における諸条件を検討する。

14.トリウム化合物の精製に関する試験研究

  ① 旭電化工業(株)    ③ 10,344,000円
  ② 33.7.1~34.3.31      ④ 5,839,000円

 目的:溶剤抽出法および陰イオン交換樹脂法併用によるトリウム化合物の精製法の検討を行う。

 内容:TBP抽出およびイオン交換による各工程の硝酸酸性溶液および炭酸塩溶液両者の場合についての各種条件について検討を行う。

15.コールダーホール型原子炉を対象としたウラン-クロム合金燃料棒の製造研究

  ① 住友金属工業(株)  ③ 24,049,000円
  ② 33.9.1~34.8.31     ④* 14,012,000円

 目的:熱サイクル効果および照射成長の少ない均一健全な燃料棒の製造条件を確立する。

 内容:アーク溶解炉によるウラン-クロム合金の溶解造塊、熱間鍛造、抽伸仕上げ、熱処理等の各工程および特に真空焼鈍、最適クロム含有量、分析法等について検討する。

16.スウェージング等による酸化ウラン燃料体の製造に関する研究

  ① 三菱原子力工業(株) ③ 23,026,000円
  ② 33.7.1~34.12.31    ④* 10,759,000円

 目的:酸化ウラン燃料体の製造費の大幅の引下げを目標として、高密度酸化ウラン粉末を被覆管に充填し、これを圧縮加工して高密度の酸化ウラン燃料体を製造する方法を確立する。

 内容:高密度で強圧縮に適するUO2 粉体を得るための製造条件、被覆管への充填方法、圧縮方法、仕上方法について検討し、あわせて燃料体の試験を実施する。

17.ウラニヤ・トリヤ系セラミック燃料の製造に関する試験研究

  ① 東京芝浦電気(株)  ③ 12,350,000円
  ② 33.6.1~34.3.31    ④ 5,668,000円

 目的:ウラニヤ・トリヤ2成分系のセラミック燃料を試作し、その特性を調べるとともに真空ホットプレスを試作し、それによる成型法と通常のセラミック製造法と比較検討する。

 内容:真空ホットプレスの試作、原料調整、成型加工、試作品試験等を実施する。

18.二酸化ウラン焼結体の製造に関する研究

  ① 住友電気工業(株)  ③ 13,544,000円
  ② 33.8.1~34.3.31    ④ 7,864,000円

 目的:安定な棒状、板状等の二酸化ウラン焼結体を製造するための粉末製造法、成型法、焼結法を研究する。

 内容:押出法による棒状UO2 焼結体、コールドプレスによる板状UO2 焼結体、Slip casting によるUO2 焼結体等について成型、焼結の条件を検討する。

19.セラミック系ウラン燃料(ウランカーバイド)の製造に関する試験研究

  ① (株)科学研究所  ③ 5,514,219円
  ② 33.9.1~34.3.31   ④ 3,055,000円

 目的:ウランカーバイドの工業的に可能な製法の試験研究を行い、燃料として使用可能な高純度製品を得るための技術的諸条件を決定する。

 内容:硝酸ウラニルから八三酸化ウランを製造し、これを粉砕する工程、ウランカーバイド(UC2)製造用炉の試作、UC2の製造工程、UC2の焼結工程等について検討する。

20.原子炉用炭酸ガスの精製に関する研究

  ① 昭和炭酸(株)   ③ 10,322,680円
  ② 33.8.1~34.7.31  ④* 4,950,000円

 目的:発電用原子炉の冷却材としての高純度の炭酸ガスの国産化を目的とする。

 内容:炭酸ガス製造工程中の諸条件を追求するため、製品ガス純度に最も大なる影響を与える吸収、分解工程のモデルプラントを設計製作し、炭酸アルカリ吸収液による炭酸ガスの精製試験研究を行う。この際本研究は分解塔の中段から炭酸ガスを抽出し、所期の目的を達しようとするものである。

21.原子炉用不銹鋼鋼管の製造および加工に関する試験研究

  ① 住友金属工業(株) ③ 15,729,000円
  ② 33.9.1~34.3.31    ④ 7,380,000円

 目的:小型、薄肉長尺の、仕上精度、寸法精度の高い原子炉用不銹鋼鋼管の国産化を目標とし、その引抜熱処理、脱スケール法および検査法を確立する。

 内容:不銹鋼鋼管のマンドレル引抜き、押出法によるフィン付管の試作、小径薄肉管の仕上法および寸法、表面仕上、精度等の検査法、非破壊検査法等について研究する。

22.原子炉用マグネシウム合金の製造に関する研究

  ① 古河電気工業(株)   ③ 15,159,000円
  ② 33.7.1~34.3.31     ④ 6,281,000円

 目的:原子炉用の燃料被覆材として使用されるマグネシウム合金の優良鋳塊製造法を研究し、実用形状の燃料被覆用キャンを試作する。

 内容:マグノックスA-12合金を研究対象として、入手しうるフラックスを使用して溶解、鋳造する場合の種々の条件と鋳塊内欠陥との関係の検討およびアルゴン溶解、鋳造法による鋳塊と普通溶解法による鋳塊との比較検討を行う。

23.遠心鋳造法による原子炉用ステンレス鋼管の製造に関する研究

  ① 日本金属工業(株)  ③ 14,919,057円
  ② 33.8.1~35.1.31    ④* 6,489,000円

 目的:304L 鋼種につき工業的規模の遠心鋳造による試作を行い、最適の製造条件を確立し、あわせて製品の諸性質の調査検討を行う。

 内容:遠心鋳造のための溶鋼成分、鋳型の厚さ、予熱温度、回転数、鋳込速度、温度等の条件、試作品の機械的性質、非破壊検査法等を検討する。

24.原子炉用ジルコニウムおよびその合金の研究

  ① (株)科学研究所  ③ 6,363,600円
  ② 33.9.1~34.3.31    ④ 3,225,000円

 目的:国産ジルコニウムスポンジを用いたジルコニウム合金を工業生産するまえにあらかじめ国産向き合金組成を決定し、高温強度と耐食性を兼ね備えたジルコニウム合金を開発する。

 内容:国産ジルコニウムに各種合金要素を添加した場合のその溶成条件およびその合金の性能の判定を行う。

25.原子炉炉心用改良型ステンレス鋼の製造に関する研究

  ① 日本冶金工業(株)   ③ 14,879,540円
  ② 33.7.1~34.3.31      ④ 8,880,000円

 目的:独自の製鋼法により Co、Ta、Mn 等を極度に制限した改良型347を試作し、原子炉炉心用としての用途に対するその適合性を確め、原子炉用材料の国産化態勢の実現に資する。

 内容:実験室規模において、予備試作試験を実施して工業的規模における試作規準を把握し、次にアーク炉により試作溶解し、鍛造、圧延等を経て製造上の諸問題を検討し、諸特性を確認し、さらに冷間成型性の試験を経て棒材および板材の試作まで実施する。

26.原子力圧力容器用超極厚クラッドスチールの製造研究

  ① (株)日本製鋼所   ③ 19,697,450円
  ②  33.7.1~34.3.31    ④ 8,660,000円

 目的:超極厚クラッドスチールの製造法を確立する。

 内容:200mm厚のクラッドスチールをオープンサンドウィッチ法およびセミサンドウィッチ法によって圧延製造し、これに対する各種試験を実施して、製造法の適否を検討する。

27.ウランおよびウラン合金の真空溶解鋳造炉の研究

  ① 日本真空技術(株)  ③ 22,071,500円
  ② 33.9.1~35.3.31     ④* 11,589,000円

 目的:高純度ウランをうるため、アーク炉式真空溶解炉を開発する。

 内容:(1)真空アーク溶解炉を設計製作し、運転を行って、①溶湯の最少限度の量を決める。②挿入材料の不純物の限界を知る。③遠心鋳造法を応用して、細くて長いインゴットを作る。④傾注方式の基礎実験および底つぎ方式の研究を行う等々の問題を解決する。(2)最後にウランを使って溶解試験を行う。

28.核燃料物質の精製に適した有機溶剤に関する研究

  ① 東京芝浦電気(株)  ③ 9,074,800円
  ② 33.6.1~34.3.31    ④ 3,210,000円

 目的:ウラン、トリウム化合物中から不純物を分離するために溶剤抽出による精製においてTBP以上に有効な溶剤、抽出条件等を探求する。

 内容:硝酸トリウムのヘキソン抽出の際の添加物として、特殊ヒドラジン誘導体を合成し抽出促進の実験を行う。ウラン、トリウムの溶媒抽出において硝酸溶液に代り硫酸溶液を使用し、溶媒としてアミン系有機窒素化合物を用いて抽出実験を行う。ミキサセトラを使用しイソホロンによる抽出実験を行う。またウラン、トリウム中に含まれる微量不純物の分析方法についても研究する。

29.原子力船の原子炉位置および付近構造に関する研究

  ① 三菱日本重工業(株) ③ 18,000,000円
  ② 33.9.1~34.3.31      ④ 8,316,000円

 目的:船舶のコンテナー周辺の耐振構造、リアクター位置の船体性能に及ぼす影響および衝突事故に対する防御方式の基準を決定する。

 内容:(1)衝突事故に対するリアクター・コンテナー周辺の有効な防御構造の研究として舷側構造の模型を製作し、これに船首部構造に近似したものを衝突させ、その与える損傷を調べてこれに対する防御対策をたてる。(2)リアクターの位置が船体性能に及ぼす影響の研究として適当な大きさのタンカーを想定し、この船の種々な場所にリアクターを積んだ場合の集中荷重の影響、振動性等の研究を行う。

30.放射線遮蔽用大型窓硝子の製造研究

  ① 日本光学工業(株)  ③ 17,996,151円
  ② 33.8.1~34.3.31    ④  9,934,000円

 目的:放射線遮蔽用窓硝子としての鉛含有量のきわめて高い大型窓硝子の製造を研究する。

 内容:ルツボ容量の増大にともなう諸問題すなわち溶解操作、硝子徐冷操作等について検討するため6回程度の製造試験を行い、比重6.2、鉛当量0.55cm、D線に対する内部透過率98.8%以上で腺理、気泡等の少ない、非着色性の大型放射線遮蔽用窓硝子の製造条件を決定する。

31.ガンマ線用および中性子用フィルムバッジの改良研究

  ① 富士写真フイルム(株) ③ 8,213,750円
  ② 33.7.1~34.3.31       ④ 3,683,000円

 目的:ガンマ線用および中性子用フィルムバッジの改良研究を行う。

 内容:ガンマ線用および中性子用のフィルムバッジは補助金により一応の成果をあげているが、(1)乳剤の物理的特性を向上させる。(2)包装の物理的特性を考慮してできるだけ簡単なものとする。(3)フィルムバッジと組み合せて最もよい総合特性を得るようなバッジケースを試作する等の点でさらに改良し感度、取扱い等を向上させる必要がある。

32.散乱ガンマ線の防御に関する研究

   ① 鹿島建設(株)     ③ 19,272,860円
   ② 33.6.1~35.3.31    ④* 4,894,000円

 目的:原子炉およびホットラボにおける放射線遮蔽に関する設計の基礎を確立する。

 内容:理論的研究と相まって幾何的各エネルギー条件における後方散乱線線質の把握および特殊散乱台による後方散乱線の空間分布の測定により、散乱放射線の防御理論ならびに防御設計理論をたて、それにもとづき防御構造体の部分試作を行う。またこの際ローカルシールド等に対し特に重量を小ならしめる材料ならびに設計法を各種供試体につき研究する。

33.チェレンコフ効果を利用した燃料破損検出装置の試作研究

  ① (株)日立製作所  ③ 15,948,000円
  ② 33.4.1~34.3.31   ④ 5,982,000円

 目的:チェレンコフ計数管を使用して液体冷却原子炉における燃料破損検出装置の研究を行う。

 内容:原子炉燃料破損の検出では冷却水中に表われるγ線を計測する方法とβ線を計測する方法とがある。前者についてはすでにかなりの研究がすすめられているが、本研究においては後者をチェレンコフ効果を利用して測定しようとする。すなわち核分裂生成物により生ずるβ線をγ線のバックグラウンドを少なく、正確に測定することにより燃料破損箇所の検出を行おうとする研究である。

34.低バックグラウンドエアーモニターの試作研究

  ① (株)日立製作所  ③ 8,870,300日
  ② 33.8.1~34.3.31   ④ 2,901,000円

 目的:湿式電気集塵機構および水銀拡散ポンプ機構を適用して高効率の粉塵サンプラーを作り、放射能汚染の監視を行う。

 内容:従来のものでは紙等のフィルターによりサンプリングしていたが、非常にこまかいちり(1μ以下の大きさ)をとることができないので効率がわるかった。この研究では水銀拡散ポンプの機構を応用してちりを水に吸収させてこの水の放射能を測定しようとするものである。この目標は10-9~10-10μc/ccの空気汚染度を測定する低バックグラウンドモニターを試作す
ることにある。

35.エレクトロルミネッセンスを利用した多投型増幅装置に関する研究

  ① 神戸工業(株)    ③ 4,709,975円
  ② 33.8.1~34.3.31   ④ 2,560,000円

 目的:従来の放射線検出装置(シンチレータおよび光電子増倍管の組合せ)に代りミシチレータ、エレクトロルミネッセンスおよび光導電物質の組合せにより新方式の放射線検出器を研究する。

 内容:純度の高いCdS、Ge等に光が当ると導電率が変る。またエレクトロルミネッセンス螢光体に電圧がかかると発光する。この二つの現象を利用してシンチレータにより光にかわった放射線を光のままで増幅し計測することを研究する。非常に小型になること、増倍率が非常に大きいこと、光電子増倍管のように暗電流がないことなどの特徴がある。