各省関係

通産省原子力発電所安全基準委員会の発足

 「原子炉等規制法」にもとづく「発電用原子炉施設規則」により、発電原子炉の設計、工事方法の認可、施設、性能検査等は通産省が行うことになっている。このため通産省では、さる4月28日の省議で、「原子力発電所安全基準委員会」を設置して、原子力発電所の施設基準、検査基準、立地基準の審議、検討に乗りだすことを決め、6月18日にその第1回委員会を開いた。
 なお、本稿は日本原子力産業会議の厚意により原子力国内事情第3巻第6号から転載したものである。

通産省原子力発電所安全基準委員会の発足

会長に高井東電社長を選任


 通商産業省では、昭和33年4月28日の省議により通産省に調査機関として原子力発電所安全基準委員会を設置することを決め、その第1回委員会が6月18日(水)開かれた。
 この委員会の設置の目的は、別項の通りであるが原子力発電所の施設基準、検査基準および立地基準を作成するものであり、原子力委員会の原子炉安全基準専門部会の結果と合わせて、わが国の原子炉に関する技術基準となるものである。

 第1回会合の議事経過は次のとおりである。

1.大臣挨拶(代理小出栄一公益事業局長)
2.経過説明(佐伯貞雄公益事業局技術長)
3.会長選任 高井亮太郎氏(東京電力社長)を選出
4.会長挨拶
5.議  事
(1)委員会会則について
(2)専門委員委嘱および専門委員会委員長の指名について
 電気専門委員会委員長 八木金蔵(電気事業連合会工務部長)
 機械専門委員会委員長 伊藤俊夫(関西電力支配人)
 原子炉専門委員会委員 長山田太三郎(電気試験所電力部長)
 立地専門委員会委員長 福田節雄(東大教授)

(3)審議項目について
 なお、今後の運用は、7月以降毎月各専門委員会の開催が予定され、審議の経過によって本委員会が開催されることとなるが、審議期間としては1年程度で概略の案を得る方針としている。

原子力発電所安全基準委員会の設立経緯  (33.6.18)

通産省公益事業局

1.近年における日本の原子力平和利用の積極化の趨勢にかんがみ、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の利用が平和の目的に限られ、かつ、これらの利用が計画的に行われることを確保し、あわせてこれらによる災害を防止して公共の安全を図るために、製錬、加工及び再処理の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関して必要な規制を行うことを目的」として、昭和32年に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下原子炉等規制法と称する。)」が公布、施行された。

2.現状における原子力平和利用の具体的なものとして原子力発電所のわが国への導入が考慮されているが、この際は、前記原子炉等規制法により政府による設置の許可、設計および工事の方法の認可、施設検査、性能検査等が必要とされることとなっており、かつ設計および工事の方法の認可、施設検査、性能検査については通商産業大臣がこれを行うことが規定されている。

 なお原子力発電所の建設、運転に当っては、従来の水、火力発電所と同様に旧公益事業令、旧電気事業法施行規則等によって、原子力発電所の設置許可等全般的に通商産業大臣の規制があり、これらをあわせ考慮して、昭和32年通商産業省令「発電用原子炉施設規則」が公布、施行され、原子力発電所の建設、運転に当っての法令上の手続き、取扱いが整備されることとなった。

3.設計および工事の方法の認可申請書、施設検査申請および、性能検査申請あるいは原子力発電所の設置許可申請等がなされて、これを認可し、あるいは許可するには、それぞれについての保安的ならびに電力供給確保を考慮した認可基準ないしは、許可基準が必要である。
 すでに日本原子力発電(株)では第1期工事計画としてコールダーホール改良型原子力発電所建設の具体化を進めており、ただちにこれらの基準が必要となるのみならず、今後の原子力発電所建設の積極化に対しても、緊急な用意が必要であろう。

4.このため本年4月28日通商産業省省議において、原子力発電所に関する施設基準、検査基準および立地基準を審議するために、通商産業省の調査機関として「原子力発電所安全基準委員会」を設置することが決定され今日に至ったものである。(本委員会の設立経緯は以上のとおりであるが、これに関連して他の類似の委員会等との関係につき説明する。)

5.すなわち、時を同じくして原子力委員会において、原子炉安全審査専門部会、原子炉安全基準専門部会の設立があったが、原子炉安全審査専門部会は「設置を予定される原子炉の安全性についての科学技術的検討」、原子炉安全基準専門部会は「原子炉施設の安全性についての科学技術的基準の制定」をそれぞれ行うこととしている。
 安全審査専門部会は、原子炉設置許可申請に当っての個別の審議を行うこと、安全基準専門部会は原子炉についての放射線障害防止に関する一般的基準、実験研究用原子炉の施設基準および検査基準の審議を行うことを主たる目的としており、通商産業省の原子力発電所安全基準委員会は発電用原子炉を含む原子力発電所の施設基準、検査基準および立地基準の作成を目的としているので、これら委員会の総合的な審査結果によって、わが国の原子炉に関する技術基準は相当に整備されるものとなろうと考えられる。

原子力発電所安全基準委員会の設置について (省議決定 33.4.28)

通商産業省

 わが国将来のエネルギー需給の趨勢にかんがみ、昨年来原子力発電開発の必要性が強調されるとともに、電力需給構造および関連産業技術水準等から原子力発電は、今後わが国において十分な適合性があるとされている。
 これによって、昨年11月には日本原子力発電(株)が設立されて、わが国における原子力発電具体化への第1段階が踏み出されたが、その他電力会社数社においても、主要機器メーカーとの連繋のもとに独自の立場における原子力発電所建設計画の立案研究が進められつつあり、わが国における原子力発電所の建設は相当規模行われるものと予想されるに至った。
 かような状況に対処して、原子力発電所の建設、運転に関する規制について、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」により電気関係法令に基く通商産業省の所管とされている発電用原子炉の設計および工事方法の認可、施設検査ならびに性能検査に関し、すでに「発電用原子炉施設規則」が公布施行されているが、その実体的規定となるものは、施設基準、検査基準、立地基準等であり、これらを早急に確立する必要がある。
 これがため、下記により通商産業省に臨時の調査機関として原子力発電所安全基準委員会(以下「委員会」という。)を設置する。

1.委員会は、原子力発電所に関する施設基準に関し、調査審議し、その結果を通商産業大臣に報告する。

2.委員会は、通商産業大臣の委嘱する学識経験者35名以内の委員をもって組織する。

3.委員会に専門的事項を調査審議するため、専門員を置くことができる。専門委員は会長が委嘱する。

4.委員会の会長は、委員の互選により定める。

5.委員会の庶務は、通商産業省公益事業局において処理する。

6.委員会の存続期間は、昭和35年3月31日までとする。ただし、必要に応じ延長することができる。

7.委員会の運営に関し必要な事項は、会長が定める。

原子力発電所安全基準委員会委員(順不同)
井上 五郎  (中部電力社長)
岩下 文男  (東芝社長)
内海 清温  (電発総裁)
大石 主計  (電気協会専務理事)
小倉 義彦  (石川島芝浦タービン社長)
太田垣 士 郎(関西電力社長)
大山 松次郎 (電研理事)
兼子  勝  (通産省地質調査所長)
木村 音吉  (住友機械社長)
倉田 主税  (日立製作所社長)
小平 吉男  (気象庁気象研究所長)
後藤 以紀  (電試所長)
駒形 作次  (原研理事長)
坂田 昌一  (名大教授)
坂本 武男  (産業機械工業会専務理事)
佐藤 篤二郎 (九州電力社長および火力発電技術協会長)
関  義長  (三菱電機および三菱原子力工業社長)
高井 亮太郎 (東京電力社長)
竹山 謙三郎 (建設省建築研究所長)
都築 正男  (日赤中央病院長)
手塚 敏雄  (川崎重工社長)
土光 敏夫  (石川島重工社長)
那須 信治  (東大地震研究所長)
日比 種吉  (電機工業会専務理事)
福田 節雄  (東大教授)
福田 武雄  (東大生産研究所長)
藤井 深造  (新三菱重工社長)
伏見 康治  (阪大教授)
松根 宗一  (電通専務理事)
武藤  清  (東大教授)
安川 第五郎 (原電社長)
和田 恒輔  (富士電機会長)

原子力発電所安全基準委員会専門委員会委員(案)(順不同 22名)
電気専門委員会(22名)
大山  彰  (東大助教授)
北方 義貫  (原電建設部電気課長)
木村 又男  (三菱電機電力技術部長)
朽木 雄蔵  (電研電力部電力課長)
坂水  弘  (東北電力原子力調査部第二課長)
島  史朗  (日立製作所電機事業部原子力課長)
島津 新一  (島津製作所研究部長)
武田  新  (電機工業会技術部長)
内藤  正  (電試標準器部長)
林田 武一  (九州電力総合研究所原子力研究室主査)
日比 栄一  (東芝火力技術部原子力発電課長)
福田 節雄  (東大教授)
前沢 芳一  (三菱原子力工業技師長付)
丸山 賢三郎 (中国電力調査室原子力課長)
宮崎 清俊  (日本電気調査室調査役)
宮田  滋  (電発原子力室)
宮本 省三  (関西電力原子力部第二課長)
望月 恵一  (原研動力炉準備室員)
八木 金蔵  (電連工務部長)
山本 広三郎 (富士電機設計研究部長)
吉田 正一  (中部電力火力部原子力課長)
脇坂 清一  (東京電力原子力発電課長)
機械専門委員会(21名)
阿部 弥之助 (中国電力火力部火力課長)
石井 健夫  (電研火力部汽機課長)
伊藤 俊夫  (関西電力工務室担任支配人)
植田 辰洋  (東大助教授)
金森 達雄  (関西電力火力部次長)
小島 義正  (住友金属技師長)
椹  富彦  (原研動力炉準備室員)
鈴木 小兵衛 (東京電力火力部次長、火力協会)
武田  新  (電機工業会技術部長)
田中 正三  (川崎重工原子力研究室長)
谷下 市松  (慶大教授)
楢林 愛朗  (機械試験所企画課長)
野村 顕雄  (原電建設部機械課長)
日板野 漠  (石川島重工技術本部技術長)
広瀬 六郎  (中部電力火力部火力建設課長)
藤永  一  (三菱原子力工業技術部設計課長)
宮田  滋  (電発原子力室)
森  恒忠  (九州電力火力部原子力課長)
森島 国男  (日立製作所電機事業部火力課)
谷内田 清  (新三菱重工技術部次長)
吉村 国士  (石川島芝浦タービン企画部長)
原子炉専門委員会(27名)
石井 健夫  (電研火力部汽機課長)
石沢 俊雄  (北海道電力第二工務部原子力課長)
川村 泰治  (原電技術部次長)
国近 昭徳  (四国電力社長室企画課長)
小島 義正  (住友金属技師長)
坂水  弘  (東北電力原子力調査部第二課長)
佐藤 加賀生 (三菱原子力工業技術部長)
重見 通雄  (通産省重工業局電機通信機課長)
島  史朗  (日立製作所電機事業部原子力課長)
武田  新  (電機工業会技術部長)
武田 栄一  (東京工大教授)
都甲 泰正  (原研動力炉準備室員)
長安  実  (関西電力原子力部次長)
日比 栄一  (東芝火力技術部原子力発電課長)
広瀬 岩吉  (北陸電力社長室次長)
藤井 正一  (建設省建築研究所主任研究員)
藤本 謙吉  (原燃治金部計画課長)
牧清 隆太郎 (石川島重工原子力部長)
丸山 賢三郎 (中国電力調査室原子力課長)
宮田  滋  (電発原子力室)
武藤  清  (東大教授)
森  恒忠  (九州電力火力部原子力課長)
八木 金蔵  (電連工務部長)
山田 太三郎 (電試電力部長)
山本 広三郎 (富士電機設計研究部長)
吉田 正一  (中部電力火力部原子力課長)
脇坂 清一  (東京電力原子力発電課長)
立地専門委員会(26名)
秋野 金次  (原研動力炉準備室員)
握美 節夫  (厚生省公衆衛生局企画課長)
石沢 俊雄  (北海道電力第二工務部原子力課長)
伊藤 彊自  (気象庁気象研究所応用気象研究部長)
岡田 純夫  (自治庁長官々房調査課長)
奥田 豊三  (建設省地理調査所測地課長)
小原 周三  (東北電力原子力調査部長)
川畑 整理  (原電建設部部長代理)
川原 英之  (通産省企業局産業施設課長)
朽木 雄蔵  (電研電力都電力課長)
国近 昭徳  (四国電力社長室企画課長)
斉藤 正次  (通産省地質調査所地質部長)
中安 米蔵  (建設省河川局計画課長)
長安  実  (関西電力原子力部次長)
那須 信治  (東大地震研究所長)
林田 悠紀夫 (農林省農林水産技術会議総務課長)
広瀬 岩吉  (北陸電力社長室次長)
福田 節雄  (東大教授)
丸山 賢三郎 (中国電力調査室原子力課長)
宮田  滋  (電発原子力室)
森  恒忠  (九州電力火力部原子力課長)
大木  栄  (東大教授)
八木 金蔵  (電連工務部長)
山田 太三郎 (電試電力部長)
吉田 正一  (中部電力火力部原子力課長)
脇坂 清一  (東京電力原子力発電課長)

専門委員会審義項目 (33.6.18)

通産省公益事業局

1.電気専門委員会

(審議範囲)
原子力発電所を総合する電気部分(制御計測関係を含む)についての施設基準および検査基準を作成する。
(説明)
 現在、水力、火力発電所の電気施設基準が作成されつつあるが、従来の発電所の電気施設以外の特に制御計測に関する施設を主体とする原子力発電所特有の電気施設の施設基準および検査基準を、また電力系統から見た原子炉、汽機および発電機の制御方式あるいは負荷応動特性に対する要求等についても審議を行う。

2.機械専門委員会

(審議範囲)
 原子力発電所を総合する耐圧部分、タービンその他の機械についての施設基準および検査基準を作成する。
(説明)
 原子力発電所における耐圧容器、汽機その他の機械およびこれらの付属設備についての施設基準および検査基準を審議するのである。
 現在通産省公益事業局の内規として発電用ボイラー技術基準があるが、放射線による材料劣化、新鋼材の使用等の問題点があり、これらの問題点を勘案した耐圧容器および付属設備の設計、製作および検査の基準をも審議するものである。

3.原子炉専門委員会

(審議範囲)
 原子炉施設(電気および機械専門委員会に属するものを除く)についての施設基準および検査基準を作成する。
(説明)
 原子炉施設に関し、電気および機械専門委員会で審議するもの以外の施設基準および検査基準を審議するが次のごとく非常に広範囲の施設が対象となる。

a)原子炉の炉心設計に関する基準
b)燃料の選定、取扱方法およびその検査に関する基準
c)減速材、反射材の選定、製作およびその検査に関する基準
d)冷却材の選定および検査に関する基準
e)放射線遮蔽装置の材料、構造、工事方法および検査に関する基準
f)制御材の選定、制御方法および制御装置の検査に関する基準
g)原子炉の運転、保守に関する基準
h)原子炉安全装置の種類、動作方法およびその検査に関する基準
i)放射性廃棄物の処理方法、廃棄方法および計測方法に関する基準
j)原子炉施設の耐震に関する基準

 ただし、この委員会では、放射線障害に直接関係する部分は、原子力委員会の原子炉安全基準専門部会の審議をまって、これと協調せしめる方針とする。

4.立地専門委員会

(審議範囲)
 原子力発電所の立地基準を作成する。
(説明)
 原子力発電所では事故時はもちろん正常運転時においても放射性廃棄物の発電所周辺に及ぼす影響が非常に大きいから発電所選定に当っては、天災によって惹起する事故の要因のできるだけ少ない地点を選ぶべきであり、このためには気象、地質、地震頻度、河川、人口密度等について十分調査すべきであり、また保安面のみではなく送電系統内の一発電所として経済的かつ効果的な地点を選定しなければならない。
 この二つの観点より原子力発電所を建設する際の立地の基準を審議する。ただし、この委員会では、気象関係、放射線障害防止上の人畜との離隔等は、原子力委員会の原子炉安全基準専門部会の審議をまって、これと協調せしめる方針である。