原子力の非軍事的利用に関する協力のための
日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定


 日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、1955年11月14日に原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定に署名したので、日本国政府は、アメリカ合衆国政府に対し、動力発生用原子炉の設計、建設及び運転の計画を含む原子力の平和的及び人道的利用の実現をめざす研究及び開発の計画を遂行することを希望する旨通知したので、アメリカ合衆国政府は、以下に定める計画によって日本国政府と協力することを希望するので、また、両当事国政府は、新たな協力の分野を含むこの協定をもって、1955年11月14日に署名された原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定に替えることを希望するので両当事国政府は、次のとおり協定する。

第1条

A 1955年11月14日に署名された原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の全部は、この協定が効力を生ずる日に廃止される。

B この協定は、それぞれの政府が、他方の政府から、この協定の効力発生のための法律上及び憲法上のすべての要件を満たした旨の文書による通告を受領した日に効力を生じ、かつ、10年間効力を有する。

第2条

A この協定の規定、要員及び資材の入手可能性並びにそれぞれの国において有効な関係法令及び許可要件に従うことを条件として、両当事国政府は、平和的目的のための原子力の利用の達成について相互に援助するものとする。

B 秘密資料は、この協定に基いては通報されないものとし、また、資材若しくは設備及び装置の移転又は役務の供与が秘密資料の通報を伴う場合には、資材若しくは設備及び装置の移転又は役務の供与は、この協定に基いては行われないものとする。

C この協定は、民間の所有に属するものであるか又は第三国政府から受領したものであるために両当事国政府が通報することを許されていない情報の交換を要求するものではない。

第3条

 前条の規定に従うことを条件として、原子力の平和的用途への応用(この用途に関する研究及び開発を含む。)並びにこれに関連する保健上及び安全上の問題について、次に掲げる特定の分野の情報を含む公開の情報を両当事国政府の間で交換するものとする。

(a)研究用、試験動力用、実験動力用及び動力用の原子炉の開発、設計、建設、運転及び利用

(b)研究用、試験動力用、実験動力用及び動力用の原子炉の運転及び利用に関する保健上及び安全上の問題

(c)物理学上及び生物学上の研究、医学的治療、農業並びに工業における放射性同位元素及び放射線の利用

第4条

 この協定に基いて両当事国政府の間で交換され又は移転される情報(設計図及び仕様書を含む。)並びに資材、設備及び装置の使用又は応用は、これらを受領する当事国政府の責任においてなされるものとし、他方の当事国政府は、その情報が正確であること又は完全であることを保証せず、また、その情報、資材、設備及び装置がいずれか特定の使用又は応用に適合することは保証しない。


第5条

A 研究用資材
 第3条に定められ、かつ、第2条に掲げる制限に従う原子力の平和的利用に関連する一定の研究事業にとって重要な資材(原料物質、特殊核物質、副産物質、他の放射性同位元素及び安定同位元素を含む。)は、商業的に入手することができないときは、合意される量だけ、かつ、合意される条件により、研究の目的のために変換される。ただし、いかなる場合にも、この条の規定に基く移転によりいずれかの当事国政府の管轄の下にある特殊核物質の量は、いずれの時においても、含有されるU-235については100グラム、プルトニウムについては10グラム、U-233については10グラムをこえないものとする。

B 研究用施設
 両当事国政府の特殊な研究用施設及び原子炉材料試験施設は、そのような施設を商業的に利用することができないときは、第2条の規定に従うことを条件とし、合意される条件により、かつ、合意される範囲まで、相互の利用のために提供されるものとする。ただし、その利用は、提供国政府が支障なく提供することができる場所、施設及び要員の範囲内で行うものとする。

第6条

第3条に定める合意された交換情報の対象に関して、日本国政府又はアメリカ合衆国政府は、それぞれの管轄の下にある者が、他方の政府並びにその管轄の下にある者で同政府により資材(設備及び装置を含む。)の受領及び所有並びに役務の利用を授権されたものに対し、次の条件に従って、当該資材を移転し、及び輸出し、並びに当該役務を提供するため取極を行うことを許可すべきことが、了解される。

(a)第2条の制限
(b)日本国政府及びアメリカ合衆国政府の関係法令及び許可要件

第7条

A 合衆国委員会は、日本国政府に対し、Cに定める場合を除き同位元素U-235を20パーセントまで濃縮したウランを、同政府が合衆国委員会と協議の上日本国において自ら建設し、又は民間の機関に建設を許可することに決定した一定の研究用、実験動力用、試験動力用及び動力用の原子炉の燃料供給のため、及びこれに関連して必要な実験のため、契約に定める条件及び引渡日程に従って、合意される量だけ、合意するところに従って売却し、又は賃貸する。ただし、この協定の期間中にこの協定に基いて売却され又は賃貸されるウランの純量は、含まれるU-235について2,700キログラムをこえないものとし、この協定の期間中に日本国政府に売却され又は賃貸されるウランに含まれるU-235の総量から、回収することができるウランに含まれるU-235で、この協定の期間中にアメリカ合衆国政府に売りもどされ若しくは他の方法で返還されたもの又はアメリカ合衆国政府の承認を得て第三国若しくは国際機関に移転されたものの量を差し引いたものとする。

B Aに定める制限に従うことを条件として、この条の規定に基き合衆国委員会によって移転され、かつ、日本国政府の管理の下にある同位元素U-235を濃縮したウランの量は、いずれの時においても、この協定に定めるところに従い日本国政府又はその管轄の下にある者が建設し、かつ、合衆国の燃料を使用することに決定するそれぞれの一定の原子炉事業の完全な燃料装備に必要な物質の量をこえないものとする。ただし、移転された物質の最大限の活用を可能にすることが合衆国委員会の意図するところであるので、取り出された燃料要素の放射能が減衰している間若しくは同燃料要素が運送されている間又は同燃料要素がEの規定に従って日本国内において再処理されている間にも原子炉の能率的かつ継続的な運転を可能にするため必要であると合衆国委員会が認める追加量をこれに加えるものとする。

C 合衆国委員会は、要請を受けたときは、その裁量によって、前記の特殊核物質の一部を、ウランに含まれるU-235が6キログラムをこえない燃料の装備で運転することができる材料試験用原子炉における使用のため、90パーセントまで濃縮された物質として提供することができる。

D 日本国政府は、同位元素U-235を濃縮したウランを日本国における許可された使用者に配分することができるが、少くともアメリカ合衆国における民間の使用者が同国において同位元素U-235を濃縮したウランに対する権原を取得することを許可される時までは、合衆国委員会から購入した同位元素U-235を濃縮したウランに対する権原を保持することが、了解され、かつ、合意される。

E アメリカ合衆国から受領した原料物質又は特殊核物質が再処理を必要とするときは、その再処理は、合衆国委員会の裁量により、合衆国委員会の施設又は合衆国委員会が受諾する施設において、別に合意される条件に従って行われるべきことが、合意される。また、別途合意される場合を除き、照射を受けた燃料要素の形状及び内容は、その燃料要素が原子炉から取り出された後再処理のために合衆国委員会又は合衆国委員会が受諾する施設に引き渡されるまでの間は、変更してはならないことが、了解される。

F アメリカ合衆国から入手した物質を燃料とする原子炉において生産され、かつ、アメリカ合衆国政府が所有権を有しない特殊核物質で、原子力の平和的利用のための日本国の計画における同国の需要をこえるものに関し、アメリカ合衆国政府は、(a)当該物質を、アメリカ合衆国政府との間の協力のための協定の条件に従って燃料が供給される原子炉において生産された特殊核物質のアメリカ合衆国における時価で購入する優先権及び(b)その購入優先権を行使しないときは当該物質の第三国又は国際機関への移転について承認する権利を有するものとし、かつ、ここにこれらの権利を付与される。

G この協定に基いて賃貸された燃料のいずれかの部分の中に照射の過程を経た結果生産された特殊核物質は、日本国政府の債権勘定となり、Eに定める再処理の後日本国政府に返還されるものとし、同物質に対する権原は、その返還の時に同政府に移転されるものとする。ただし、アメリカ合衆国政府が原子力の平和的利用のための日本国政府の計画における同政府の需要をこえる前記の特殊核物質を、日本国政府の妥当な債権を認めた上で保有する権利でここに与えられるものを行使する場合は、この限りでない。

H 日本国政府がこの協定に従って供給することを合衆国委員会に要請するある種の原子力資材は、注意して取り扱い、及び使用しない限り、人体及び財産に有害である。日本国政府は、このような資材の引渡を受けた後は、アメリカ合衆国政府に関する限り、その安全な取扱及び使用について、すべての責任を負うものとする。日本国政府は、合衆国委員会がこの協定に基いて同政府に賃貸する特殊核物質又は燃料要素に関し、その特殊核物質又は燃料要素の生産又は加工、所有、賃借並びに占有及び使用から生ずる原因のいかんを問わないすべての責任(第三者に対する責任を含む。)について、その特殊核物質又は燃料要素が合衆国委員会から日本国政府又は同政府のために行動する者に引き渡された後は、アメリカ合衆国政府に対しその責任を免かれさせ、かつ、損害を与えないようにするものとする。

第8条

両当事国政府は、必要であるときは、第3条に定める合意された交換情報の対象に関連して相互に合意するところに従い、かつ、第2条に掲げる制限及び相互に合意する条件に基いて、研究のために必要な量より多量の資材(特殊核物質を除く。)について、商業的に入手することができないときは、その賃貸借又は売買のための特別取極を両当事国政府の間で随時行うことができる。

第9条

A 日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、この協定に基いて日本国政線に提供されるすべての資材、設備又は装置が非軍事的目的のためにのみ使用されることを確保することについての共通の関心を強調する。

B アメリカ合衆国政府は、この協定の他のいかなる規定にもかかわらず、この協定に定める保障措置が第11条に規定する両当事国政府の合意により国際原子力機関の保障措置によって代置される範囲を除き、次の権利を有する。

1 設計及び操作を非軍事目的のために確保し、かつ、保障措置の効果的な適用を可能にする目的をもって、アメリカ合衆国政府若しくはその管轄の下にある者が日本国政府若しくはその管轄の下にある者に提供し、又はそのようにして提供される次の資材、すなわち、原料物質、特殊核物質、減速材物質若しくは合衆国委員会が指定するその他の資材のいずれかを使用し、加工し、若しくは処理する

(i)原子炉並びに
(ii)その他の設備及び装置で合衆国委員会がその設計が保障措置の効果的な適用に関連があると決定するもの

の設計を審査する権利

2 アメリカ合衆国政府又はその管轄の下にある者が日本国政府又はその管轄の下にある者に提供する原料物質又は特殊核物質に関して、並びにそのようにして提供される次の資材、設備又は装置、すなわち、

(i)原料物質、特殊核物質、減速材物質又は合衆国委員会が指定するその他の資材
(ii)原子炉
(iii)その他の設備又は装置で合衆国委員会がこのB2の規定の適用を条件として提供する品目として指定するもの

のいずれかにおいて使用され、それから回収され、又はその使用の結果生産される原料物質又は特殊核物質に関して、

(a) 操作記録の保持及び提出を要求し、並びに前記の原料物質又は特殊核物質の計量性の確保に資するための報告を要請し、かつ、受領する権利並びに

(b)日本国政府又はその管轄の下にある者の管理の下にある前記の原料物質又は特殊核物質がこの条に定めるすべての保障措置及び第10条に定める保証に従うべきことを要求する権利

3 B2にいういずれかの特殊核物質で、日本国において非軍事的目的に現に使用されておらず、かつ、第7条F(a)及びGの規定に基いてアメリカ合衆国政府により購入され若しくは保有されないか、第7条F(b)の規定に基いて移転されないか、又は両当事国政府が相互に受諾する取極に基いて他の方法により処分されないものを、合衆国委員会が指定する貯蔵施設に寄託すべきことを要求する権利

4 日本国政府と協議した後、この協定が遵守されているかどうかを決定し、及び必要と認められる独立の計測を行うために、B2の規定の適用を受ける原料物質及び特殊核物質の計量に必要なすべての場所及び資料に日本国内において近づくことができる要員を指名する権利。ただし、いずれか一方の当事国政府の要請があるときは、前記の要員は、日本国政府が指名する要員を伴うものとする。

5 この条の規定又は第10条に定める保証に対する違反があり、かつ、日本国政府が妥当な期間内にこの条の規定を履行しない場合には、この協定を停止し、又は廃業して、B2に掲げる資材、設備及び装置の返還を要求する権利6保健上及び安全上の事項について日本国政府と協議する権利

C 日本国政府は、この条に定める保障措置の適用を容易にすることを約束する。

第10条

日本国政府は、次のことを保証する。

(a)前条に定める保障措置が維持されること。

(b)日本国政府又はその管轄の下にある授権された者

に対しこの協定に基き、賃貸、売却その他の方法により移転される資材(設備及び装置を含む。)が原子兵器、原子兵器の研究若しくは開発又は他の軍事目的に使用されないこと並びにその資材(設備及び装置を含む。)が授権されていない者に対し、又は日本国政府の管轄の外に移転されないこと。ただし、合衆国委員会が、他の国又は国際機関へのそのような移転がアメリカ合衆国とその国又は国際機関との間の協力のための協定の範囲内に入ると認めて、その移転に同意する場合は、この限りでない。

第11条

日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、国際原子力機関が提供する施設及び役務を実行可能な限りすみやかに利用するための相互に満足する取極を行うことについての共通の関心を確認し、このため、

(a)両当事国政府は、この協力のための協定の規定をいかなる点において改正することを希望するかを決定するため、いずれか一方の当事国政府の要請があったときは、相互に協議する。特に、両当事国政府は、前記の国際機関の後援の下に協力国に与えられる同様の援助に関連して同国際機関が要求する条件、管理及び保障措置(保健上及び安全上の基準に関するものを含む。)を、いかなる点において及びいかなる範囲まで同国際機関に実施させることを両当事国政府が希望するかを決定するため、相互に協議する。

(b)いずれの当事国政府も、(a)に定める協議の結果相互に満足する合意に達しない場合には、通告によりこの協定を廃棄することができる。日本国政府は、この協定がそのようにして廃棄された場合には、この協定に基いて受領し、かつ、同政府又はその管轄の下にある者が占有するすべての原料物質及び特殊核物質を合衆国委員会に返還するものとする。

第12条

この協定の適用上、

(a)「合衆国委員会」とは、合衆国原子力委員会をいう。

(b)「設備及び装置」及び「設備又は装置」とは、器具、機械又は施設をいい、特殊核物質を使用し、又は生産することができる施設(原子兵器を除く。)及びその構成部分を含む。

(c)「者」とは、個人、社団、組合、会社、協会、信託、財団、公私の組織、団体、政府機関又は公社をいい、この協定の両当事国政府を含まない。

(d)「原子炉」とは、ウラン、プルトニウム若しくはトリウム又はウラン、プルトニウム若しくはトリウムの組合せを利用することにより自続的核分裂連鎖反応がその中で維持される機械(原子兵器を除く。)をいう。

(e)「秘密資料」とは、(1)原子兵器の設計、製造若しくは使用、(2)特殊核物質の生産又は(3)エネルギーの生産における特殊核物質の使用に関するすべての資料をいう。ただし、権限のある当局により非公開指定から解除され、又は秘密資料の範囲から除外された資料は含まれない。

(f)「原子兵器」とは、原子力を利用する装置で、その主たる目的が兵器、兵器の原型又は兵器の試験装置としての使用又はそれらの開発にあるものをいう。ただし、その装置の輸送又は推進のための手段は、それが装置の分離されかつ分割されうる部分である場合には含まれない。

(g)「特殊核物質」とは、(1)プルトニウム、同位元素233若しくは同位元素235の濃縮ウラン及び合衆国委員会が特殊核物質であると決定するその他の物質又は(2)これらの物質のいずれかで人工的に濃縮した物質をいう。

(h)「原料物質」とは、(1)ウラン、トリウム若しくはいずれか一方の当事国政府が原料物質であると決定するその他の物質又は(2)いずれか一方の当事国政府が随時決定する含有率においてこれらの物質の一若しくは二以上を含有する鉱石をいう。(i)「両当事国政府」とは、日本国政府及びアメリカ合衆国政府をいい、アメリカ合衆国政府を代表する合衆国委員会を含む。「当事国政府」とは、両当事国政府のいずれか一方をいう。


以上の証拠として、この協定の両当事国政府は、正当な権限によりこの協定に署名させた。

1958年6月16日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書2通を作成した。

  日本国政府のために

朝海浩一郎

  アメリカ合衆国政府のために

ウォルター・S・ロバートンン
ルイス・L・ストローズ


アメリカ合衆国国務長官代理から日本国特命全権大使あての書簡

 書簡をもって啓上いたします。本官は、本日署名された原子力の非軍事的利用に関する協力のためのアメリカ合衆国政府と日本国政府との間の協定に言及し、同協定の締結のための交渉において到達した次の了解を確認する光栄を有します。

1.両当事国政府は、提供される資材及び情報が不完全及び不正確でないことを確保するために最善の努力を払うものであるので、両当事国政府によって提供される資材、設備及び装置の使用若しくは応用又は情報(設計図及び仕様書を含む。)の使用は、この協定の第4条の規定に基き、これらを受領する当事国政府の責任においてなされるものとし、これらを供給する当事国政府は、その情報、資材、設備及び装置がいずれか特定の使用又は応用に適合することは保護しない。

2.この協定の第7条の規定に基くU-235の移転に関し、合衆国原子力委員会は、現行の政策に基いては動力用原子炉における使用のための燃料は売却することのみができる。動力用原子炉のための燃料の賃貸借の可能性を規定した目的は、現行のアメリカ合衆国の政策が賃貸借を認めるように改正された場合に、両当事国政府が協定を改正しないで賃貸借を考慮しうるようにすることである。

3.第7条Eに定める再処理施設の受諾及び第9条B 3に定める貯蔵施設の指定に関し、合衆国原子力委員会は、諸要因特に管理及び保障措置の効果的な適用に関する要因を考慮することを希望する。2以上から貯蔵施設又は再処理施設が選択される場合には、合衆国原子力委員会は、その選択に当り、日本国政府の負担となる相対的費用の問題について慎重に考慮するものとする

4.協力のための協定の第9条B1及び2の規定に基いてアメリカ合衆国政府に与えられる権利の行使に関し、両当事国政府は、アメリカ合衆国政府に与えられるこの権利は、協定に定めるところに従って提供される資材、設備及び装置が非軍事的目的にのみ利用されることを確保するためにそう入されたものであることを認める。この点に関し、この原則を定めている第9条Aに言及する。アメリカ合衆国政府が雇用する要員が前記の査察権を行使するに当って入手した情報は、関連する資材及び施設が非軍事的目的に使用されていることを決定するためにのみ利用されるものとする。

5.合衆国原子力委員会が第9条B1及び2の規定に基いて指定することがある「その他の資材」に関し、その指定は、合衆国原子力委員会が、その資材が第9条に定める管理及び保障措置を受けるべきであることを決定した上で行う。

6.第9条B5及び第11条(b)に定めるところに従って資材、設備及び装置並びに(又は)原料物質若しくは特殊核物質が返還される場合には、アメリカ合衆国政府及び日本国政府は、その返還に関する適正な取極に関して相互に協議するものとする。

7.アメリカ合衆国政府及び日本国政府の代表者は、協定の適用から生ずる問題について相互に協議するため随時会合することができる。

8.アメリカ合衆国政府は、原子力の開発のための日本国政府の計画が、試験動力用、実験動力用及び動力用の原子炉の追加設置を含むものであることを了解する。アメリカ合衆国政府及び日本国政府が、前記の追加される原子炉で利用される特殊核物質の追加供給を規定するために、両当事国の憲法上及び法律上のすべての要件に従って、協力のための協定の規定を改正することができることが了解される。本官は、日本国政府の同意があれば、この書簡及び貴使の返簡が前記の了解を記録にとどめたものとみなすことを提案いたします。本官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向って敬意を表します。

  1958年6月16日

極東担当国務次官補

  ウォルター・S・ロバートンン

  アメリカ合衆国駐在日本国特命全権大使

         朝海浩一郎閣下



日本国特命全権大使からアメリカ合衆国国務長官代理あての返簡

 書簡をもって啓上いたします。本使は、本日署名された原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定に関して、同協定の締結のための交渉において到達した次の了解を述べられた本日付の閣下の書簡に言及する光栄を有します。

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 本使は、さらに、日本国政府が、前記の了解に同意し、並びに閣下の書簡及びこの返簡が前記の了解を記録にとどめたものとみなすことを確認することを閣下に通報する光栄を有します。

 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向って敬意を表します。

  1958年6月16日

朝海浩一郎

  極東担当国務次官補

       ウォルター・S・ロバートンン閣下



(覚書)

 合衆国及び日本国の政府の代表者の間で最近行われた原子力の非軍事的利用に関する協力のためのアメリカ合衆国政府と日本国政府との間の協定の締結のための交渉において、日本代表は、同協定案第7条Fの購入優先権の規定に関して合衆国政府がその立場を明確にすることを要請した。

 協定案第7条F(a)の規定は、合衆国から入手した物質を燃料とする原子炉において生産される特殊核物質で原子力の平和的利用のための日本国の計画の需要をこえるものを日本国から購入する優先権を合衆国政府のために保留している。合衆国政府は、1956年11月18日の大統領の声明の重要性を十分に了知した上で、この規定を含めることを提案したものである。この声明の関連部分は、次のとおりである。すなわち、

 「私が承認した措置の一つは、協力のための協定に基いて供給された物質を燃料とする合衆国外にある原子炉において生産されるプルトニウム及びウラン233を特定の価格で購入するという提案である。こうして合衆国が入手した物質は、平和的目的にのみ利用される。」

 この声明は、じ来取り消され、又は修正されておらず、したがって、引き続き本件についての合衆国の政策である。

前記のことが第7条F(a)の規定についての合衆国政府の立場を明確にするものと期待される。

国務省 ワシントン

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