資料

コールダーホール改良型発電炉の
耐震化に関する調査報告

日本原子力発電訪英調査団報告から


 原子力委員会はさきに原子炉地震対策小委員会を設けて英国コールダーホール改良型発電炉の地震対策に関して研究検討を行い、日本原子力発電株式会社の訪英調査団による英国側との折衝に関しても有力な資料を提供し、また、同小委員会の関係者中から次の諸氏が調査団の地震調査班員として参加した。本資料は調査団報告書のうちから関係箇所を抜粋したものである。

班長 東京大学教授 武藤清
    東京大学教授 那須信治
    早稲田大学教授 内藤多仲
    東京大学助教授 梅村魁
    建築研究所部長 久田俊彦
    日本原子力発電(株)
    建設部長代理 川畑整理

コールダーホール改良型発電炉の耐震化に関する調査報告(地震班)

1. 調査経過の概要

 地震班は、1月8日から2月19日にわたりUnited Kingdom Atomic Energy Authority(英国原子力公社、以下AEAと称する。)およびAssociated Electrical Industry−John Thompson Group(以下AEIグループと称する。)、General Electric Company−Simon Carves Group(以下GECグループと称する。)、English Electric-Babcock&Wilcox−Taylar Woodrow Group(以下EEグループと称する。)の3原子力グループの関係者との会談その他関係諸施設の視察を行って、その間各グループによる英国型動力炉の耐震設計案の検討ならびにこれに関する協議を行い、この型の動力炉を日本に設置する場合英国側の耐震設計が現段階において安全であるかどうかの判定を純学術的立場から行った。またその結果に基き最終的仕様書を作成してこれを団長を通じ英国側に手交するとともに、地震班としての結論的意見書を先方に送付した。

 なお、出発に先だってAEAのOwen氏あて上記の判定目的を滞英中に達成するために必要なすべての設計図、資料等の準備方を依頼した。

2.英国における耐震設計とその検討

1)AEAの耐震設計に関する見解と現状
 AEA工業化本部においては各国の耐震法規、文献等を調査研究し、その結果、動力学的設計法として米国サンフランシスコの建築法規をとり、これに基いて原子炉構造物に対する震度を研究した。また震度0.3および英国の材料許容応力度を用いて英国側の設計を検討した結果、耐震化が可能であるとの結論を得ている。実験については実大寸法のグラファイトブロックおよびタイル約25トンを用いてパイルをつくり、補強構造物の有無の二つの場合について静的加力試験(水平震度0.3まで加力)を行い、満足すべき結果を得たむね報告があった。また高温の炭酸ガス流中のグラファイトが放射線をうけた場合質量移行によって密度が若干低下するが、寸法は変化せず強度に影響のないこと、中性子吸収によるウィグナーグロスが予想より僅少なことが明らかにされた。
 次に具体的耐震計画に対するAEAの見解と立場については、グラファイトパイルをかため、これをさらに外部から何らかの方法によって支持することにより、その耐震化をはかる考えがのべられた。注目すべきことは原子炉、熱交換器、ガス導管を含む第一次回路を重視してその設計震度を十分とりたいむねの申出があったことで、3グループをまじえて協議の結果、安全確保の見地から仕様書において熱交換器の設計基準震度を原子炉部分と同じく水平0.6、上下0.3にとることとし、またガス導管に対しては設計震度2をとることとした。これらの値は普通建物の設計基準震度0.2をはるかに上まわるものであり、十分の安全度を期待し得るものである。AEAはそのほか、地震時の動力停止の完全を期するために発電所の周辺の相当距離にdetectorを配置して地震動をとらえる提案等がなされた。AEAとの会談によって明らかにされたことは、現在コールダーホール型の改良発展について耐震問題を含め設計の全般にわたって、AEAは、直接これを行わず、各グループに全部をまかせていることである。しかし、なお今後とも各グループに対して援助協力を惜しまないむねを表明している。

2)AEIグループ、GECグループ、EEグループの耐震設計とその検討
 各グループは昨年AEAを通じて日本から送付した“耐震設計に関する予備的提案”によって設計をすすめていたが、その状況は訪英当初においてはすべてがかならずしも満足すべきものではなかった。しかし会談をかさねるにしたがって地震班の意図するところを急速に了解して、滞在の後期においては、当方の耐震設計方針に則した種々の改良設計の詳細を提示するに至った。以下耐震上の主要な問題点についてのべる。

(1)構造計画一般
 各グループとも現在各自が英国において実施しつつあるコールダーホール改良型の設計を基として、これを150MWの規線において耐震化する方針をとっているが、グループによっては部分的に大きく変更しているものもあり、またいわゆる消震構造を提示したものもあった。
 しかし、各グループが到達した最終的な構造計画をみると、熱交換器を原子炉に近づけて一枚の厚い鉄筋コンクリート基礎盤の上にまとまりよく配置しており、これらは耐震的にみてもっとも好ましい計画であると考えられる。

(2)圧力容器、グラファイトパイル構造部
 地震力に対してグラファイトパイルそれ自体をかためる方針は、いずれのグループもこれを計画しており、その方法としてはまずパイルの内部にグラファイトのキイを挿入し、あるいはブロックやタイルを改良するなどの考案が行われており、すでにその効果について実験的にこれを確かめているところもある。次にパイルの周囲をしめるガーターについてはこれを強力にすることが当然考えられており特殊の考案がなされつつある。
 以上のようにして一体化したパイルに加わる震力を、いかにして処理するかは各グループとももっとも苦心を払っているところであるが、いずれにしてもパイルの外側に設けられた補強構造物たとえば鋼製のシリンダーのごとき構造物でこれをうけ、あるいはさらにその構造物に加わる力を圧力容器を通して生体しゃへいコンクリートまで伝えるという設計が行われている。この場合上記の各構造部間の地震力の伝達に対しては、コールダーホール動力炉にみられるようなシヤーキィ(Shear key)による方法あるいはコンプレッションスペーサー(Compression Spacer)による方法等が考えられており、これらはいずれも各部の熱や放射線による変形に対しては、支障を起さず、しかし地震力はこれを伝え得るという機構を満足する特殊の考案装置となっている。
 次に圧力容器は各グループとも現在英国で実施しつつある改良型の形を用いており、これは上記のグラファイトパイルおよびこれを支持するグリッド構造物とともにたとえば鋼製の円筒形スカートのごとき構造物で支えられている。この圧力容機はガス圧および熱による応力をうけるほか、地震力をうけるのであるが、下部のみで支えるいわゆる自立式の場合でも計算上は仕様書に要求する強度を満足する設計が可能である。
 しかし、この場合頂部の強震時の変形は数センチメートルとなり、この変形が大きいことは圧力容器に接続するガス導管や上部のスタンドバイプに損傷をおこしやすく好ましくない。このためには変形をできるだけ小さくすることが肝要で、それには周囲の生体しゃへい用の強力な鉄筋コンクリートに特殊の装置を用いて支持させることによって、きわめて安全に設計できるのでこの方針が採用された。
 以上のような構造は、昨年原子力委員会地震対策小委員会において原子炉の現状を変更することなく実施し得るもっとも妥当な耐震設計案としてとりあげられ、これらのうちいくつかについて約250MWの出力の動力炉を対象として具体的に数値計算を行い、各部の詳細な設計を行って耐震化の見通しを得たのである(小委員会経過報告書参照)。ただし、このような耐震構造法が核工学的に、また工事施工上、支障がないかどうかは、英国側にただすべく疑問として残されていたのであるが、英国各グループの最終的構造計画においてはこの種の構造法を採用し、それぞれの設計について、日本側の仕様書に基き各構造部の応力、変形の計算を行い、地震班に提示したのである。われわれは、これらについて前記の準備した資料に基き各部について詳細な検討を行った結果、耐震化を十分達成し得ることができると判定した次第である。

(3)熱交換器および導管部
 熱交換器は、(1)にのべたように生体しゃへいコンクリート壁に近づけて設けられる設計となったが、自立式のものでは地震時の振幅が大きくなるので、これと圧力容器との間にかなりの相対変位が起り、これらを結ぶガス導管部の損傷が懸念される。この不安を解消するためには、圧力容器の場合とどうようの装置によって熱交換器の上部を生体しゃへいコンクリート壁に連結する方法をとるべきであり、討議の結果この方法が採用されることになった。
 またガス導管部は、運転時に起る熱変形を自由に許すものでなければならないが、地震時の震力に対しては固定的に支持しうることがのぞましい。これに対しては日本側で用意した上記の条件を満足する解決案を提示し、また英国側においても特殊の設計を考えているので、圧力容器、熱交換器を生体しゃへいコンクリート壁へ結びつけることとあいまち、上記の方法によって完全な耐震化が達せられると考える。

(4)地震時自動停止装置その他
 緊急時の自動停止については、仕様書〔附〕に示したとおり、二重の原子炉停止装置を用意して万全を期すことになっており、特に強震時に対するものについては日本の用意したような特殊の考案も提示された。その他発電所の機械類の転倒、損傷防止、使用済燃料の貯蔵施設の耐震に対しては仕様書に示したような十分大きな震度で設計することとなった。

(5)耐震化と経済性
 英国型原子力発電所を仕様書〔附〕にしたがって耐震化する場合、上に述べたような構造が考えられるが、この場合一般建築構造部の耐震化、原子炉、熱交換器をのせる巨大な鉄筋コンクリート基礎盤の設置のほかに、上にのべたように、とくに生体しゃへいコンクリート内部の各構造部、熱交換器およびガス導管部の耐震化が必要である。これらに対する経費は設計にもよるが、先方およびわれわれの行った試算によってもこの種の動力炉の経済性を阻害することはないと考えられる。

3.結論
 上記のような調査と検討の結果地震班は次の結論を得た。すなわち、英国の原子力グループが準備した耐震設計案を現段階において判定すると、英国型動力炉はこれを日本の地震条件に対してその経済性を阻害することなく、再設計することが可能であり、耐震上の見地からは、3グループに設計せしめ、その見積書を提出させてさしつかえないと考える。なお、各グループとも十分能力ある専門家を擁し、かつ今後日本側と協力して最善の設計を行うことを強く希望しているので、契約後は相互の協力により安全かつ合理的な実施設計が得られるものと考える。
 以上の調査結果と判定に基いて地震班は最終仕様書〔附〕を作成した。また、滞英中の討議経過にかんがみて次の基本的2項目を強調する結論的意見書を作成し、これをAEA工業化本部および3原子力グループに送付して耐震設計の基本方針の徹底をはかった。すなわち、

(1)原子炉建物はできるだけコンパクトに設計すべきである。圧力容器、蒸気発生器のようなすべての主要構造部分は、遮蔽コンクリートに連結して構造全体を剛なものとし、地震の際の振動と変形を最小限にとどめるべきである。

(2)グラファイトパイルは適当なキーをグラファイトブロック間に挿入し、また外周を強力なガーターで締め付ける等の方法によってできるだけ一体化すべきである。さらにこのように一体化したパイルは注意深く設計したキーあるいはスペーサーを用いて、外部の補強構造物を利用して効果的に支持されるように設計すべきである。なお、各グループは、きたる7月見積書を提出することになっているが、日本側においてもこれに誤りなく対処しうるように引き続き鋭意調査研究を続けるとともに、すみやかに適切な実験を行って実施設計の完成をはかるべきであると考える。

4. 附 耐震設計仕様書 正本英文、副本 日本文

〔附 (正)〕


SPECIFICATIONS AND REQUIREMENTS
FOR
EARTHQUAKE RESISTANT DESIGN

The earthquake resistant design of the atomic power station shall be based on the principles that:

(1) Employees at the station as well as the residents of the neighbouring areas are guaranteed safety from radioactivity in the event of earthquakes, and that

(2) The sufficient strength and serviceability are guaranteed for such parts where the post-operation repair work is not feasible and where their failure will endanger the public safety.

Specifications with regard to earthquake resistant design will be listed below. However, since it is considered that the analyses should be made in consistence with the nature of the structures designed and the design should be made with sound engineering judgment, all design and analysis of the major structural parts shall be reviewed by the client before making a final decision.

1. All buildings and structures of the station shall be designed in accordance with the Japanese Building Code unless otherwise specified. However, the Ministry of Construction Notification No.1074 (with regard to the intensity modification factor by locality,soil and structure of building) shall not apply.

Note : (1) The computation and designing shall be made in accordance with paragraphs 1-8, Section 3 of the Law Enforcement Order.

(2) For any structural parts specified under Item 2, 3 and 4 of the present specifications, the datum line for the determination of the design seismic coefficients shall be taken at the bottom surface of the foundation mat.

(3) The reactor and steamraising unit sshall share a common foundation mat in order to minimize their relative displacement by earthquake. The bottom surface of this foundation mat shall be placed at an elevation lower than GL-13 meters in the lower gravel layer of the site, where GL indicates the elevation of the graded ground surface.

2. The reactor building, its foundation mat and post-irradiation fuel storage (passage inclusive), except those parts specified under Item 3,4 and 5, shall be so designed as to safely resist the seismic force one and one half times the value specified in the Building Code.

3. The biological shielding structure and principle substructure of steam raising units shall be so designed as to safely resist seismic forces three times as large as those specified in the Building Code.

Note : Three times as large seismic forces asspecified in the Code (Article 88 in the Law Enforcement Order) is assumed to act upon the above mentioned structures and, if any, all structural units which are structurally connected to them.

4. All structures and structural parts inside the biological shielding structure and steam raising units shall be so designed as to safely resist horizontal seismic forces as specified under Item 3 of the present specifications together with vertical seismic forces (upwards and downwards) whose intensity is equal to 50 percent of horizontal forces. In this case, these vertical and horizontal forces are considered to act simultaneously.

5. Design seismic coefficient for the gas duct proper, joints and supports shall be 2. 0 in all horizontal directions.

6. The biological shielding structure, graphite pile, pressure vessel, stand pipes, cooling system and steam raising units shall designed so that no damage results due to the most adverse deflection raising from the calculation under seismic forces specified.

7. A seismic switch shall de provided in order to enable automatic start of the scramming mechanism of the reactor as soon as the vertical acceleration received by a pick-up on the foundation mat reaches or exceeds a certain value (adjustablefor the range 30-100 gals.)

It is further required that an emergency shutdown system shall be provided separately. The emergency shut-down system shall be capable of shutting off the reactor completely even during the action of seismic forces one and one half times as large as those specified under Item 4 of the present specifications. The emergency shut-down system shall work automatically and immediately as soon as the horizontal acceleration at the foundation mat reaches or exceeds 200gals. The emergency shut-down system shall be in such a nature that it shall not have any residual poisoning or obstructive effect after its operation.

8. All mechanical equipment and their installations in the power station shall be adequately designed and safe against overturning or dislocation during earthquake, according to the type and location of respective unit in accordance with the corresponding requirements as previously stated. Above all:

(a) The instrumentation system and control system for emergency treatment shall be so designed as to maintain their functions even when subjected to earthquake forces as specified under Item 4.

(b) The fuel handling equipment and all overhead cranes shall have locking mechanisms in order that they should not be dislocated by earthquake during operation.

(c) The emergency power sources shall maintain their functions even when subjected to earthquake forces as specified under Item 3.

9 The design improvement may be required based on the future experimental results which will be conducted by the client when deemed necessary.

Such design improvement may be applied only to the final design.

10. If necessary, a specific design criterion may be specified for each specific design of a structural part or parts. Supplementary Notes to Item 6.

The relative displacements and deformations of the units of the reactor assembly due to seismic forces heretofore specified shall be limited to such a degree that meet the following requirements:

(A) The deformation and displacement of the graphite pile shall be limited to such an extend that:

(1) The relative displacement of the graphite pile to the pressure vessel

i ) does not obstruct loading of fuel,

ii) does not obstruct operation of the control rods, and

iii) does not cause damage to the gas seal or other accessory equipment, and

(2) The deformation of the pile during oscillation

i) does not cause damage to the fuel elements in the channel,

ii) does not cause damage to the locking mechanism of the fuel elements.

iii) does not obstruct the loading and discharging of the fuel elements after the earthquake, and

iv) does not obstruct cooling by blocking of the gas passage.

(B) The relative displacement of the pressure vessel to the biological shield shall be limited to such an extend that it

i) does not cause damage to stand pipes,gas ducts, etc.

ii) does not obstruct the charging of the reactor, and

iii) does not obstruct the operation of the control rods.

(C) The relative displacement between any adjacent two of the steam raising units, pressure vessel and blower shall be limited to such an extent that it does not cause damage to bellows, hangers, duct proper, or joints.

(D) The supporting structures of the graphite pile and the pressure vessel shall be designed as to safely resist earthquake forces with sufficient precautions for thermal effects.


〔附(副)〕

耐震設計仕様書ならびに要望事項

 原子力発電所の耐震設計に関する基本的な考え方は(1)発電所が地震を受けた場合、放射能に対して周囲の人々ならびに従業員の安全を確保すること(2)修理が困難な部分および保安確保上、重要な部分に対しては十分の強度と安全性を保有させることを目標としている。
 次に耐震設計に関する指定事項を示す。ただし強度計算は設計される構造物の性質に基いてなさるべきものであり、また設計は適正な工学的判断によって行われるべきものであるから、主要構造部の設計と強度計算は、最終決定の前に注文者側において検討する。

1.発電所の全建物および構造物は以下とくに指示した場合を除き一般に日本の建築法規に基いて設計する。
 ただし、建設大臣告示第1074号(地域、地盤および構造種別による設計震度の修正に関するもの)は適用しない。

注(1)構造計算と設計は建築基準法施行令第3章第1節ないし第8節によって行う。

(2)この仕様書の第2、3、4項に指定する構造物に対してはそれらの設計震度を定めるための基準線を基礎版の底面とする。

(3)原子炉と蒸気発生器は地震による相対変位を最小とするために共通の基礎版上に置く。この基礎版の底面はGL−13m以下にある下部砂礫層に置く。この場合のGLは平坦に整地した地盤の表面を指すものとする。

2.原子炉建物、および基礎盤、使用済燃料貯蔵施設(その通路を含む)は3、4、5項に示す部分を除き、日本の建築法規に示した数値の1.5倍の地震力に対して安全なるように設計する。

3.生物遮蔽構造物および蒸気発生器の主要下部構造線は日本の建築法規に示した数値の3倍の地震力に対して安全なるように設計する。

注 法規(施行令第88条)に定められた値の3倍の地震力が上記の構造物およびそれに構造的に接続した部分に作用するものとする。

4.生物遮蔽の内部ならびに蒸気発生器は3項に示す水平震度と、その50%の垂直(上下方向)震度に対して安全なるように設計する。この場合上記の水平力、垂直力は同時に作用するものと考える。

5.ガスダクト本体、継手および支持部に対する設計用震度はすべての水平方向に対して2.0とする。

6.生物遮蔽、黒鉛パイル、圧力容器、スタンドパイプ、冷却系統および蒸気発生器は、規定した地震力によって計算したもっとも不利な変形によって損傷を生じないように設計する。

7.基礎盤上においた感震器の上下動の加速度がある値(30〜100galの範囲内で調節可能)に達した場合またはこれをこえた場合、ただちに原子炉のスクラム機構が働くような感震スイッチを設ける。
 さらにこれとは別の非常停止装置を設けること。
 この非常停止装置は第4項に規定する震度の1.5倍の地震力をうけた場合にも完全に原子炉を停止できるものとする。
 この非常停止装置は基礎版の水平加速度が200galに達したときまたはそれをこえたときただちに自動的に働くようにする。
 非常停止装置はそれが作動した後においても運転に障害が残らないようなものでなければならない。

8.発電所内の機器装置およびその取付部分は上記の各規定に準じて、それぞれの形と位置に応じ地震力によって転倒、移動がおこらないよう設計する。なかんずく

(a)非常用計測系および制御系は第4項に定めた地震力が働いた場合にもその機能を保有するようにする。

(b)燃料取扱装置およびすべての天井走行超重機は運転中に地震によって移動しないように固定装置を備える。

(c)非常用電源は第3項に示した地震力に対してもその機能を保持するようにする。

9.必要ある場合は注文主によって行われる実験の結果に基いて設計の改良が要求されることがある。このような設計の改良は最終設計に対してのみ行う。

10.必要ある場合は各部構造の細部についてその設計基準を定めることがある。


(附)第6項の補足説明

 ここに規定した地震力による原子炉施設各部の相対変位と変形は次の各項に示す条件を満たさなければならない。

(A)黒鉛パイルの変位と変形は次に示す各項の範囲内にある。

(1)黒鉛パイルの圧力容器に対する相対変位が

i)燃料装填に支障をきたさない

ii)制御棒操作に支障をきたさない

iii)ガスシールその他の付属装置を破壊しない

(2)振動時におけるパイルの変形が

i)チャンネル内の燃料要素に損傷を与えない

ii)燃料要素の支持機構を破壊しない

iii)地震後、燃料の装填および取出しに対して支障をきたさない

iv)ガス通路の閉塞により冷却を阻害しない

(B)圧力容器の生物遮蔽に対する相対変位は次の範囲内になければならない。

i)スタンドパイプ、ガスダクト等に損傷を与えない

ii)原子炉の燃料装填に支障をきたきない

iii)制御棒操作に支障をきたさない

(C)蒸気発生器、圧力容器および送風器の相隣接する二つのあいだの相対変位はダクト本体、ベロー継手、吊材等に損傷を与えてはならない。

(D)黒鉛パイルおよび圧力容器の支持構造物は温度の影響を考慮するとともに地震力に対して安全に抵抗できるよう設計しなければならない。