昭和33年 原子力委員会月報3(4)昭和33年度基本計画決定

原子力委員会

昭和33年度基本計画決定



 原子力委員会は本年初めから昭和33年度基本計画の策定に関し検討をかさねてきたが、4月18日開催の第16回定例会議において意見の一致を見、これを内閣総理大臣に報告し、ついで総理大臣により決定され、ここに本年度わが国において実施される原子力開発利用の基本計画が示されることとなった。
 なお、本年度基本計画の決定にいたるまでの経緯の大要は次のとおりである。3月19日開催の第12回定例委員会において第1次案を検討するとともに、これについて官民関係方面の意見を聞き、また3月20日開催の原子力委員会参与会(第3回)にはかり、これらの結果を考慮して、さらに委員会で検討を加え、第2次案としてとりまとめたものを4月11日開催の第15回定例委員会で審議し、これを4月15日開催の参与会(第4回)に報告し、4月18日開催の第16回定例委員会において決定されたものである。

昭和33年度原子力開発利用基本計画

33.4.18 原子力委員会

目次

1.はしがき

2.計画の重点
(1)対外協力関係の促進
(2)実用発電炉の導入
(3)動力試験炉の導入
(4)原子炉の安全対策および原子炉災害補償制度
(5)核原料物質および核燃料物質の管理方式
(6)核融合反応の基礎的研究の促進
(7)開発態勢の整備

3.原子炉の設置計画
(1)日本原子力研究所における計画
(2)その他の機関における計画

4.核燃料の開発計画
(1)探  鉱
(2)製  錬

5.核燃料の需要

6.研究開発計画
(1)天燃ウラン黒鉛型原子炉に関する研究
(2)濃縮ウラン型動力炉に関する研究
(3)増殖炉に関する研究
(4)JRR−3炉に関する研究
(5)原子力船に関する研究
(6)核燃料に関する研究
(7)再処理および廃棄物処理に関する研究
(8)原子炉材料に関する研究
(9)原子炉関係機器に関する研究
(10)基礎的研究
(11)核融合反応に関する研究
(12)アイソトープの利用に関する研究
(13)放射線障害防止に関する研究

7.アイソトープの利用

8.放射能調査

9.科学者、技術者の養成計画
(1)国内における養成訓練
(2)海外への留学生の派遣
(3)海外からの留学生の受入れ

10.予算

参考資料目次

付表1.研究開発計画
 〃2.昭和33年度アイソトープ需要推定量
 〃3.アイソトープ利用施設の整備拡充計画
 〃4.放射能調査
 〃5.国立大学原子力関係大学院、学科、講座の新設および増設

1.はしがき

 世界の原子力の平和利用は近年著しく発展を示してきたが、わが国においても、昭和29年度以降各界の協力のもとに、その開発態勢が着々と整備されてきた。すなわち、昨年8月には、日本原子力研究所にウォーターボイラー型原子炉(JRR−1)が完成したのを初めとし、日本原子力研究所、原子燃料公社等の諸機関における施設も着々と充実し、また放射線医学総合研究所も建設期に入るなど、わが国の原子力研究開発態勢ほおおむね初期段階の整備が終ったといえよう。他方実用面においても、わが国のエネルギー事情の特殊性と、海外の原子力発電技術の進歩にかんがみ、経済採算に合い安全性の確かな実用発電炉を導入せんとする計画が日本原子力発電株式会社によって具体的に進められている。また原子燃料公社等によって国内の核燃料資源の探査、探鉱が進められた結果、人形峠地区においては採掘にとりかかりうる段階に入ろうとしている。一方アイソトープの鉱工業、医学、農業等への利用も広く行われつつある。
 かくのごとくにみるならば、昭和33年度は、過去数年間の準備段階を一応終って、原子力の平和利用の実現にふみだす第1年度ということができよう。
 原子力の開発利用は長期的総合的観点からこれを計画的に推進する必要があることはいうまでもないので、当委員会は昭和31年9月に内定した「原子力開発利用長期基本計画」のうち原子力発電に関する部分をより具体化したものとして「発電用原子炉開発のための長期計画」を昨年12月に決定したが、なお、引き続いて核燃料計画、核軌合研究計画、原子力船開発計画、技術者養成計画、アイソトープについての利用計画等を慎重に検討中である。
 この昭和33年度原子力開発利用基本計画は、これらの長期的な観点を考慮しつつ、昭和33年度において果さるべき事業の大綱を示したものである。

2.計画の重点
 昨年度に引き続き原子力平和利用に関する基礎研究および応用研究を促進することはいうをまたないが、特につぎの各項目に重点をおくものとする。

(1)海外協力関係の促進
 わが国における原子力の平和利用開発の速度を早め、動力試験炉および実用発電炉の導入に支障なからしめるために、目下交渉中の米、英両国との一般協定をすみやかに締結するほか順次その他の諸外国との協定の締結について交渉する。なお、国際原子力機関には、理事国としての立場から積極的に協力をはかるほか、第2回原子力平和利用国際会議および国連科学委員会に参加し、またコロンボ計画の実施等を通じて原子力平和利用の面で東南アジア諸国との協力を促進するものとする。

(2)実用発電炉の導入
 長期基本計画〔その1〕に示すごとく、わが国に建設する実用発電炉の第1号機は英国系の天燃ウラン黒鉛型とし、これを早期に導入する方針が決定されている。
 この方針にもとづいて、コールダーホール型発電炉の経済性、安全性等をなお実地に調査するため、本年初頭に、日本原子力発電株式会社から調査団が英国に派遣された。本年度においては、その調査結果にもとづき同発電炉の導入の可否を慎重に検討し、年内に結論をうるものとする。
 最初に導入する実用発電炉は、将来発電炉を開発するための基礎となる建設、運転等の技術を培養するという重要な意義を有している。したがって発電炉の建設、運転を通じて獲得される知識および技術は、電力会社、機器メーカー等の関係業界においても吸収活用しうるように考慮するものとする。

(3)動力試験炉の導入
 実用発電炉と増殖炉に関する技術の開発を促進し、あわせて舶用原子炉に関する技術の開発に資するために、濃縮ウラン水冷却型の動力試験炉を海外から導入し、日本原子力研究所に設置する方針にもとづき、本年度内に、日本原子力所究所は導入の契約を完了することを目標とする。

(4)原子炉の安全対策および原子炉災害補償制度
 国内において研究用原子炉が運転を開始し、さらには実用発電炉の導入が具体化しつつある状況にかんがみ、放射線による障害の防止について万全を期すために、わが国の実情に則した具体的対策を研究し、原子炉等規制法、放射線障害防止法等を有効に実施する。
 さらに放射線障害防止の技術的基準に関する法律により放射線障害防止の技術的基準の確立をはかる。なお原子炉の安全対策の研究に潰漏なきを期するとともに原子力の実用化を促進する見地から、原子力賠償責住保険および第三者損害補償の一連の制度につき検討する。

(5)核原料物質および核燃料物質の管理方式
 核原料物質および核燃料物質の管理については現在これらの物質の有効利用ならびに放射線障害防止の見地から「原子炉等の規制に関する法律」により規制が行われているが、原子力の開発の進展にともなう海外との協力関係の強化等の関係から、これらの物質の管理方式を核燃料政策の有効な実施、原子炉災害補償制度の円滑な運営等種々な角度から検討する。
 またトリウムの買入れに関する方針も引き続き検討する。

(6)核融合反応の基礎的研究の促進
 将来は核分裂反応に続いてさらに核融合反応による原子力の利用が世界的に実用化されるに至る大勢がようやく顕著となってきたので、核融合反応の研究をいっそう推進するものとする。

(7)開発態勢の整備
 原子力の平和利用の実現にふみだす第1年度にあたり、わが国の原子力政策に多万面の知識を活用し、各界の意見をいっそう反映する必要があるので、原子力委員会の専門部会を充実するため既存の原子炉安全、原子力船、放射能調査等の専門部会のほか、新たに核融合、核燃料、核燃料経済、災告補償等の部会を新設し、これにともない専門委員を増員する。
 日本原子力研究所にはわが国はじめての研究炉としてJRR-lが完成したが、各種の試験所究を行う一方これを各方面で活用しうるよう考慮するものとする。
 またわが国の原子力関連技術の開発を促進するために、外国との技術提携について慎重に検討する。

3.原子炉の設置計画

(1)日本原子力研究所における計画  日本原子力研究所では昨年度完成し、運転を開始したJRR-1により種々の試験研究を行うとともに、第1表にもとづき次の原子炉設置計画を推進する。

(イ)昨年度に引き続き年末までにJRR−2の建屋ならびに炉の組立を完了し、ついで臨界前試験、臨界試験を実施する。

(ロ)JRR−3の設計を行い、構成要素の製作、建屋の建設ならびに一部据付工事を実施する。

(ハ)動力試験炉ほその仕様書を作成し、購入の契約を行う。

(ニ)その他増殖炉開発の一環としてU−Th系重水均質炉の臨界集合体による実験を実施し、U−Pu系高速炉予備実験としてブランケット部の指数実験を行う。また天然ウランおよび重水の入手をまってJRR−3の指数函数炉実験を行う。

(2)その他の機関における計画

(イ)関西方面に設置される予定の大学共同研究用原子炉は本年中に発注される予定である。

(ロ)日本原子力発電株式会社は7月末に提出される英国各社の見積書を検討のうえ年度末までに契約を完了する予定である。
 原子力委員会はこれらの各種原子炉の設置に際して特にその安全性の見地から慎重に検討し、設置の可否を判定する。

第1表

4.核燃料の開発計画

<1)探鉱 >
 わが国の核燃料の開発に必要な地質的基礎資料を得るため、31年度から通商産業省地質調査所が組織的調査を行っているが、引き続き同所が放射能強度分布概査としてエアボーン25,000km2、カーポーン4,800km2、地表概査1,500km2、計31,300km2、また放射能異常地調査としてカーボーン2,400km2および地質鉱床概査を行うほか、鉱床調査として地表精査、地化学探査、物理探査および構造試錐等を実施する。
 原子燃料公社は引き続き人形峠、倉吉を中心とする地区において坑道探鉱、試錐探鉱等を推進するほか、新たに岩手、宮城、山形、岐阜、岡山、山口等の各県において坑道探鉱あるいは試錐探鉱等を開始する。
 また民間企業に対しては通商産業省が探鉱補助金を交付して探鉱開発を促進する。

(2)製錬
 原子燃料公社は精製還元中間試験工場およびその関連施設を完成して年度内に金属ウラン約1.2トンの試験生産を行う。また原子燃料試験所を完成して製錬の諸工程の基礎ならびに応用試験を行い、これらによって核燃料の製錬技術の確立を図るとともに、このために必要な各種試験検定の実施を目的とする機器類を整備する。

 なお核燃料の加工、使用済燃料の再処理等に関する技術はいまだ実験室的段階であるので、研究開発計画の項において述べることとする。

5.核燃料の需要
 本年度において必要な核燃料は研究用原子炉に必要なものと、原子燃料公社の精製還元中間試験工場の原料としてのイエローケーキならびに各種試験所究用の金属および酸化物であって、一部国産に期待するほか2国間協定その他の方法により海外から入手する予定である。その概略は第2表のとおりである。

第2表

6.研究開発計画
 原子力の平和利用を進めるためには、広範囲かつ多種多様な研究開発を必要とし、その詳細については付表1に示すが、本年度に日本原子力研究所、原子燃料公社、放射線医学総合研究所、国立試験所究機関および民間企業において行う研究開発計画の概要は次のとおりである。

(1)わが国に導入を予定されているコールダーホール改良型発電炉については、将来同型式の発電炉の国産化を進めるため、日本原子力研究所および民間企業において黒鉛、マグノックス等原子炉材料に関する基礎的工学的研究ならびに原子炉設計製作技術の研究開発を促進するとともに、冷却ガス条件ならびに燃料要素の改良のための基礎研究等を行う。

(2)濃縮ウラン型動力炉についてはその将来性にかんがみ、実用発電炉、舶用原子炉および増殖炉に関する技術の開発ならびに原子力船の設計試作に必要な資料をうるため、濃縮ウラン軽水型の動力試験炉を日本原子力研究所に導入することが計画されているが、本年度においては後記原子力船に関するものを除き、日本原子力研究所および民間企業においてジルカロイ、ステンレス鋼等原子炉材料の冶金学的研究をはじめ、冷却系の研究等を実施する。

(3)増殖炉はわが国原子力開発の目標の一つとして設定されているが、本年度は日本原子力研究所において増殖炉開発のための設計研究、均質炉の臨界集合体実験、高速炉予備実験等を実施する一方、炉材料の核物理的性質の研究、スラリーの流動伝熱等冷却系の研究を行う。

(4)JRR−3に関しては、本年度内に一部据付工事を開始するが、 日本原子力研究所においては設計計算、指数函数炉実験ならびに制御機構の開発試験を行い、民間企業におけるアルミニウム等の原子炉材料の試作研究等を促進する。

(5)原子力船については造船および海運国たるわが国の位置ならびに世界の趨勢にかんがみ、極力開発を推進する。このため日本原子力研究所、運輸省運輸技術研究所において前記動力試験炉の導入に関連し、舶用原子炉の一般特性、安全性ならびに制御等に関する研究を実施するとともに、運輸省運輸技術研究所および民間企業において原子力船の基本設計に関する研究を実施する。

(6)核燃料に関しては、将来の自給度の向上を目標に引き続き地質調査所および原子燃料公社による核原料物質の探査、探鉱および採鉱に関する試験研究を進めるとともに、製錬に関しては原子燃料公社がウラン精鉱の精製還元中間試験工場を完成する一方、国立試験研究機関、原子燃料公社および民間企業において低品位ウラン鉱の処理を中心に試験研究を行い、また加工に関しては日本原子力研究所においてJRR−3の燃料要素の試作ならびに冶金学的研究、動力炉、増殖炉用燃料としてのウラン合金、トリウム合金ならびにセラミックス系燃料の物理学的冶金学的研究を行う。なお民間企業を中心に広く核燃料の被覆加工に関する研究開発を進める。

(7)核燃料の再処理および廃葉物処理は原子力平和利用の進展にともない将来重要な分野を構成するものであるので、日本原子力研究所において再処理に関する化学的研究を行うとともに、廃棄物処理に関しては総合的根本的な対策を検討し、特に日本原子力研究所において化学的研究のほか廃棄物処理装置の研究等を行う。
 また原子燃料公社において再処理に関する資料の収集調査に着手する。

(8)原子炉材料の研究開発は原子力関連技術の確立をはかるため緊要な分野であるので、上記各型式の原子炉に必要な材料の研究開発はもちろん日本原子力研究所、国立試験研究機関および民間企業により広く重水等の減速材、燃料被覆材ならびに遮蔽材その他に関する試験所究および製造技術の開発を進展せしめる。

(9)原子炉関係機器の製作技術は将来動力炉の国産化を進めるために必要不可欠のものであるから、民間企業を中心に原子炉用各種容器の製作、特に熔接技術の開発ならびに冷却系循環装置の製作技術を促進する。

(10)原子力平和利用の研究開発については上記応用研究ならびに開発研究のほか、これらの研究をささえる核物理的研究等の基礎研究、特に日本原子力研究所における原子炉材料および燃料の物理的研究、分析化学的研究ならびに放射化学的研究および電気試験所における放射線標準確立のための研究等を促進する。

(11)以上核分裂を基礎とする原子力利用のための研究開発とならんで本年度は核融合の研究を促進するよう積極的にとりあげ、大学における基礎研究と関連せしめつつ電気試験所等において超高温プラズマによる核融合反応に関する研究を行う。

(12)なおアイソトープの利用は医学上、産業上の発展に資するところ大であるので、これに関する研究は国立試験研究機関ならびに日本原子力研究所において従来から実施されてきたが、引き続き線源およびトレーサーとしてのアイソトープの医療、農業、土木ならびに工業等各方面への利用研究を促進する。特に日本原子力研究所のコバルト60による10kcγ線源を使用して放射線の工業的利用の基礎研究を行うほか、JRR−1による短寿命アイソトープの製造に関する研究開発を進展せしめる。

(13)各分野における原子力平和利用が進展するにともない、放射線による障害の防止はきわめて切実な問題となりつつある事実にかんがみ、障害事故発生の可能性およびその具体的対策を研究し、放射線管理職員の養成に努力するとともに放射線医学総合研究所、日本原子力研究所ならびに国立試験研究機関において放射線の人体および動植物への影響ならびに放射線障害の診断および治療の研究を進めるとともに、放射線の防護ならびに汚染除去および防止の研究を行う。

7.アイソトープの利用
 昭和32年度におけるアイソトープの使用件数は延べ約4,200件で前年度に比較し約30%の増加となっている。
 この増加の傾向は今後も引き続くものと予想され、本年度の需要推定量を付表2に示すが、この需給の円滑化を期するため関税免除の延長等の措置により輸入の促進をはかる。
 一方、日本原子力研究所はJRR−1により Na24、K42、Au198等の短寿命のアイソトープの実験的な生産を行い、その国内自給をはかる。
 また国立試験所究機関の各分野におけるアイソトープ利用施設をさらに拡充して研究の促進を期することとし、その詳細を付表3に示す。
 一方、放射線化学、品質管理、工程管理、日動制御への利用研究ならびに応用等工業方面への利用の拡大についての民間企業の自主的な努力を期待する。

8.放射能調査
 わが国および周辺の放射能分布、生活環境の汚染度等につき調査し、国民生活への影響および今後の原子力の開発利用の推進に関する基礎資料を作成するため昨年度に引き続き大気、海洋、地表、動植物および食品の調査を行うほか、新たに人体の放射能等の調査を本年度から行うが、特に測定法を統一し、分析法を確立し、あわせて測定器の整備充実を図り、精度の向上に努め、また標準試料を作成し、国際的な測定法の統一に対し寄与する。調査結果は取りまとめ各関係機関の利用に供する。
 本年度の実施計画を付表4に示す。

9.科学者、技術者の養成計画

 原子力関発利用の進展にともなう原子力関係専門科学者、技術者の需要の増加に応ずるため、組織的かつ長期的な人員養成計画が必要である。原子力委員会においては原子力関係科学者、技術者養成計画を立案中であるが、さしあたり次の計画を実施する。

(1)国内における養成訓練
 海外から随時科学者、技術者を招へいし、国内の技術水準の向上をはかる一方、 日本原子力研究所においてはJRR−1、ファン・デ・グラフ、Co60照射室等の諸施設を一般に開放し、また外部から技術者を受け入れて各種の研究に協力を求める等の措置を通じて原子力技術者の養成を期する。このほか随時短期間の訓練を行うものとする。
 アイソトープ利用に関する技術者の養成については、前年度に日本原子力研究所に設置されたアイソトープ研修所において年間約250名の技術者を養成する。
 なお日本原子力研究所に設置される原子炉研修所については、33年度は調査ならびに準備期間とし、34年度から開所する予定である。
 このほか文部省の計画によれば大学における原子力関係の技術者の養成については講座、学科、設備等の増設が行われる予定である。
 その詳細を付表5に示す。

(2)海外への留学生の派遣
 本年度においては昨年の65名を上まわる85名を外国の政府機関、民間企業の研究所等に派遣し、海外の技術を習得せしめる。そのため関係諸国との間に 緊密な連絡をとり、諸外国の協力を求める。

(3)海外からの留学生の受入れ
  ユネスコの依頼による東南アジアの留学生25名を受け入れ、アイソトープ研修所において約1ヵ月間にわたりアイソトープ関係の基礎技術を研修せしめるとともにコロンボ計画、国際原子力機関およびlCAのフェローシップによる海外研修生約30名をアイソトープ関係の応用技術について研修のため受け入れる。

10.予算
 以上の諸計画を実施するに必要な経費は総額11,174,181千円であり、その内訳は第3表のとおりである。

第3表

[参考資料]

付表1  研究開発計画

1.原子炉の設計および開発試験

1.増殖炉、動力炉、研究用原子炉の設計研究〔原研〕増殖炉としては、熱中性子および高速中性子増殖炉の設計研究を行い、動力炉としては、各種の型について比較検討を行い、研究用原子炉としては (イ)MTRおよびETRについて調査検討、(ロ)JRR−3について性能向上のための熱的核的計算を行う。

2.均質炉臨界実験〔原研〕
 U235 2kg、Th 2トン、D2O 2トンをスラリー状にして使用する臨界実験装置の組立を行い、U−Th系の基礎データを得る。

3.高速炉予備実験〔原研〕
 天然ウランを親物質とし高速炉のブラソケットを組み立て、JRR−1を中性子源として、ブランケット内 の中性子スペクトルの性質を研究し、あわせて種々の格子配置に対する拡散距離を測定する。

4.指数凾数炉実験〔原研〕
  32年度に引き続きバックリングの精密測定と中性子束分布の微細構造を測定する。

5.国1炉に関する開発試験〔原研〕
  (イ)国1炉実物大モデルによる冷却系の試験研究
  (ロ)模擬燃料棒の研究
  (ハ)燃料棒被覆の接触熱抵抗とその非破壊試験法の研究
  (ニ)チャージングマシン機構の試作研究
  (ホ)燃料棒除熱の異常時における研究
  (ヘ)制御棒構造の試作研究
  (ト)アイソトープ取扱い装置の試作研究

6.動力炉地震対策試験〔原研〕
 東海村地区の詳細な地震動の観測を行う。

2.原子炉材料の物理的研究

1.原子炉による炉材の検査法の研究〔原研〕
 Pile Oscillator を使用し、原子炉材料の純度測定および中性子吸収断面積の測定法の研究を行う。

2.低速中性子に対する原子炉材料の核物理的性質の研究〔原研〕
 (イ)JRR−1、JRR−2から出てくる中性子およびγ線のエネルギーならびに強度分布
 (ロ)低速中性子に対する原子炉材料の散乱、吸収および分裂の断面積
 (ハ)複合核のエネルギー準位の密度と幅
 (ニ)原子炉材料に中性子が捕獲されたときに放射されるγ線のエネルギー分布と強度
 (ホ)中性子をポーラライズして種々の物質にあて、中性子の角度分布、γ線の偏向等を測定する。

3.高速中性子に対する原子炉材料の核物理的性質の研究〔原研〕
 Time of flight 法により各種炉材中における高速中性子の弾性、非弾性散乱、(n,γ)反応、(n,n)散乱、(n,p)反応を測定する。

4.射損傷の研究〔原研〕
(イ)放射線によって惹起される物理構造および諸性質の変化の機構の研究
(ロ)現在使用される物質および将来使用される可能性のある物質における物理的性質の照射の影響と回復を測定する。

5.熱中性子線による原子炉材料の研究〔原研〕
  中性子回折装置を設置し、原子炉材料の照射損傷等を研究する。

3.原子燃料に関する試験研究

(探鉱、採鉱、選鉱)

1.核原料物質の探査に関する試験研究〔地質調〕

2.核燃料物質の探査、探鉱、採鉱に関する試験研究〔公社〕

3.ペグマタイト鉱床鉱物の利用に関する研究〔資源試〕

 前年度に引き続きペグマタイト鉱床鉱石の選鉱および製錬研究を実施する。

4.人形峠鉱山産鉱石の選鉱に関する研究〔公社〕

(製錬、加工)

5.乾式法によるウラン精錬の研究〔東工試〕

 前年度に引き続き粗製ウラン塩から純酸化ウランの製造および塩素化残査の利用について研究する。

6.ウラン鉱の圧力溶解による抽出またはスラリーからのウラン化合物の精製に関する試験研究〔民間企業〕

7.トリウム化合物の精製に関する試験研究〔民間企業〕

8.イオン交換法によるウラン製錬に関する研究〔公社〕

9.ソルベントリーチングによるウラン製錬に関する研究〔公社〕

10.溶媒抽出によるウラン製錬に関する研究〔公社〕

11.低品位ウラン鉱の有機溶媒による抽出精製に関する試験研究〔民間企業〕
 国内産低品位ウラン鉱石を硫酸浸出し、その浸出液から有機溶媒を使用してミキサーセトロラーからウランを抽出精製する方式を確立する。

12.スラグまたはスクラップ等からのウラン回収に関する研究〔公社〕

13.ウラン地金の諸性質に関する研究〔公社〕

14.国産1号炉燃料要素製造ならびに冶金学的研究〔原研〕
 天然ウランの俗解鋳造、加工、物理冶金的性質、β焼入法、燃料要素の非破壊検査に関する研究を行う。

15.動力炉および増殖炉用燃料としてU合金、Th合金ならびに燃料の粉末冶金学的研究〔原研〕
 主としてセラミックス系燃料の研究を行う。

16.原子燃料の固体物理的性質の研究〔原研〕
 (イ)照射による変形の生長機構の研究
 (ロ)セラミック燃料の焼結機構の研究
 (ハ)U、Th、Pu等の物理的性質を測定し、相変態の状況を研究する。

17.セラミックス系またはサーメット系ウラン燃料の製造に関する試験研究〔民間企業〕

18.天然ウランの溶解および鋳造に関する研究〔民間企業〕
 前年度から引き続き真空アーク溶解炉により健全なウランインゴットの製造方式を確立する。

19.原子燃料の被覆に関する研究〔民間企業〕
 前年度に引き続きドローイングにより天然ウラン燃料に被覆材を被覆する方法を確立する。

20.天然ウラン燃料の加工に関する研究〔民間企業〕

21.ウラン−235存在比測定用質量分析に関する試験研究〔民間企業〕
 U235測定用として高分解能、高感度の質量分析器を試作する。

22.金属トリウムおよびその合金の製造に関する研究〔金材研〕

 溶融塩電解法とエーメス法によりトリウム精錬の工業化への基礎を固める。

23.六弗化ウランの製造法ならびに各製造工程移送に要する耐食性機器類の試験研究〔民間企業〕
 核燃料の製造および再処理等の研究のためUF6の製造法を研究しかつUF6の移送に関連し、テフロン等の材料による耐食性機器の試作研究をする。

24.合金系ウラン燃料の製造に関する試験研究〔民間企業〕

25.燃料要素の検査に関する調査研究〔原研、公社〕

4.原子炉用材料の製造に関する研究

(重水)

1.水の蒸留法を組み合わせた重水の製造に関する研究〔民間企業〕
 中濃度濃縮に適していると考えられる水の蒸留法につきヒートバランスおよびマテリアルバランスを中心に研究する。

2.二重温度交換法による重水の濃縮に関する試験研究〔民間企業〕
 低濃度濃縮に適していると考えられる二重温度交換法につき二硫化水素の各種装置に対しての腐食を中心に研究すると同時に交換反応法の機構について研究する。

3.水素の液化精留による重水素の濃縮に関する試験研究〔民間企業〕
 重水製造法のうち理論的に最も有望視されている水素の液化精留につきヒートパランス、マテリアルバランスを中心に研究する。

4.最終段階における重水の濃縮方法に関する研究〔民間企業〕
 高濃度濃縮特に最終の段階における重水濃縮装置の化学工学的な諸問題の解析を中心にその解決法を研究する。

5.二重温度交換法による重水の製造に関する研究〔民間企業〕

(黒鉛)

6.黒鉛の放射線損傷に関する試験研究〔民間企業〕
 31年度までに政府の育成した技術により製造された黒鉛につき米国の原子炉を利用して実際に放射線を照射してその損傷の試験を行う。

7.炭素材料資源の調査研究〔資源試〕
 原子炉用黒鉛の原料として石炭およびその黒鉛化物中のホウ素の定量ならびに生成黒船の性状を調査研究する。(被覆材)

8.原子炉用ジルコニウムとハフニウムの分離法および精錬の研究〔名工試〕
 四塩化ジルコニウムからハフニウムの分離、連続塩化物電解によるジルコニウム製造およびジルコニウムの分析を実施する。

9.原子炉用アルミニウムおよびその合金材料に関する試験研究〔民間企業〕

10.原子炉構成材料の溶解、鋳造、加工、被覆およびそれらの冶金学約諸問題に関する研究〔原研〕
 マグノックス、ジルカロイ、ステンレス鋼、Mo、Nb等について研究を行い、試験、照射試験については照射損傷、熱応力試験、さらにBeの成型加工の調査研究を行う。

11.原子炉内における燃料および構成材料の腐食浸食の研究〔原研〕
 高温高圧下ならびに放射線照射下静的、動的な腐食侵食の研究を行う。

12.原子炉およびその付属装置に必要なアルミニウムおよびステンレス鋼の熔接施工ならびに検査に関する試験研究〔民間企業〕

13.ジルコニウム合金、マグネシウム合金または不銹鋼の製造または加工に関する試験研究〔民間企業〕

(遮蔽材)

14.放射線影響に対する保護物質に関する試験研究〔民間企業〕
 放射線障害に有効に作用する各種物質についてその基礎的研究を行う。

15.中性子の遮蔽を主目的とする放射線遮蔽材料の製造に関する試験研究〔民間企業〕
 ホウ素を含有する遮蔽材としてボラールの研究、特にボロンカーバイドの製造につき基礎的研究を行う。

16.中性子の遮蔽を主目的とする遮蔽材としての水素化金属に関する試験研究〔東海大学〕
 水素化金属の中性子に対しての特性について研究を行う。

17.動力炉用原子炉の遮蔽体の材料および設計施工法に関する研究〔建研〕
 コンクリートの熱的性質を大型構造物の設計施工と関連せしめる研究を行う。

(その他)

18.原子炉用金属材料の腐食、侵食に関する試験研究〔金材研〕
 高温高圧下の軽水、重水、高湿高圧ガス等による腐食、侵食の試験を行う。

19.原子炉用ステンレス鋼熔接部の熱脆化と熱応力破壊の防止に関する研究〔金材研〕
 原子炉の炉心部および出力系統に使用されるステンレス鋼熔接部は高温使用中に組織変化にもとづき脆弱化しやすく、また温度の変動による熱応力破壊を受けやすく、その防止策を確立する。

20.原子炉用窯材料の製造研究〔大工試〕
 高純度トリヤ、セリヤ、ペリリヤ製大型るつぼの製造および炭化ベリリウムの合成焼結について研究を行う。

21.ベリリウムおよび酸化ベリリウムの成型加工に関する研究〔民間企業〕
 減速材および反射材として有効なベリリウム金属のリアクターグレイドのものの精製法とその酸化物の成型加工につき研究する。

22.原子炉冷却用炭酸ガスの精製に関する試験研究〔民間企業〕

5.原子炉冷却系の研究

1.炭酸ガス冷却型原子炉における炭酸ガス圧送機、熱交換器等に関する基礎研究〔民間企業〕
炭酸ガス冷却型原子炉の設計製作に必要な基礎資料をうるため、特にガス圧送機および熱交換器に関する研究を行う。

2.ガス冷却型原子炉の熱輸送方法の改善による温度上昇と出力増加に関する研究〔原研〕
 加圧高温変速風洞を用い、実際の原子炉と同一条件でフィンの形、ガスの状態をいろいろ変化させ、温度上昇と出力増加の研究を行う。

3.模型原子炉伝熱回路の試作による熱伝達および循環材の漏洩防止に関する試験研究〔民間企業〕

4.原子炉冷却材循環用パルプの試作に関する研究〔民間企業〕

5.沸騰中の燃料棒焼切れ限度の研究〔原研〕

6.電熱体をパイプとしてその中を水が流れる装置により水の流速、燃料棒の表面状況について試験を行う。

6.燃料棒の熱応力と熱伝導の研究〔原研〕
 不均一加熱下の材料に圧縮または引張を加えた場合の各種変形量を測定して、燃料棒についての熱応力、ひずみ等の基礎資料を得る。

7.液体金属の加熱と熱流動の研究〔原研〕
 1"φのパイプで作られた試験ループで流動試験を行い、ポンプ、測定器具の特性、熱伝達係数を測定して高温下における取扱法を習熟する。

8.U−Th系スラリーの流動伝熱の研究〔原研〕
 U−Th系のスラリーにつき、その諸特性の測定と、そからが流動伝熱に及ぼす影響を研究する。この研究のために常圧の小型のテストルーブを作る。


6.原子炉付属設備に関する研究

1,原子炉用熔接構造物の高周波加熱による局部焼鈍法に関する研究〔民間企業〕
 原子炉用大型熔接構造物の局部焼鈍法を確立する。

2.原子炉またはこれに付帯する機械装置の熔接、加工または現場施工に関する試験研究〔民間企業〕

3.原子炉用容器の製作に対するステンレス肉盛溶接に関する研究〔民間企業〕
 原子炉用厚板のステンレスによる肉盛熔接方法を確立する。

4.原子炉圧力容器用クラッド鋼の製造または加工に関する試験研究〔民間企業〕

5.ウラン溶解用真空溶解炉の試作に関する研究〔民間企業〕

 7.原子炉の制御系に関する研究

1.原子炉制御に関する研究〔原研〕
 Simulator の開発、kinetic simulator および制御棒駆動装置モデルによる原子炉制御の研究を続行する。

2.原子炉動特性の研究〔原研〕
 (イ)JRR−1、JRR−2の動特性の研究
 (ロ)3 crystal γ ray spectrometer の製作
 (ハ)gas scintillator の製作

3.燃料棒破損の検出に関する研究〔原研〕
 (イ)核分裂生成物のβ線、γ線検出のためエネルギー分析崩壊特性等を測定する。
 (ロ)核裂による遅発中性子の検出法の研究
 (ハ)各種検出器の性能試験を行う。

4.計算機の整備、応用に関する研究〔原研〕
 高精度の大型アナログ計算機を整備し、制御系の設計計算、動力炉の炉本体、熱系統、制御系すべてを含めた原子炉動特性の計算を行う。

 8.燃料の再処理および廃棄物処理に関する研究

(再処理)

1.溶剤抽出法による燃料再処理装置の研究〔原研〕
 高放射能下の抽出操作と装置、放射能損傷を受けたT.B.P.の精製法および装置、廃液から硝酸の回収法と装置、廃燃料の溶解法と装置、イオン交換等燃料の再処理に必要な基礎工学的研究を行う。

2.溶剤抽出法による使用済燃料の再処理に関する化学的研究〔原研〕
 各分裂生成物のT.B.P.向流抽出装置によるウランならびに核分裂生成物の反覆抽出の過程の追試を行い、またウラン核分裂生成物のT.B.P.および他の有機溶媒抽出機構を熱力学的構造論的に追試し、さらによい抽出溶媒の選択を行う。

3.弗化物の分留による濃縮ウラン系の燃料の再処理の研究〔原研〕
 弗素およびその化合物の取扱法を習得するとともに分留法の検討を行う。

4.核燃料物質の精製および燃料要素の再処理に適したイオン交換樹脂または有機溶剤に関する試験研究〔民間企業〕

(廃棄物処理)

5.廃棄物処理の化学的研究〔原研〕
 (イ)ルテニウムの化学的研究
 (ロ)放射性廃棄物の固定法の研究

6.放射性廃棄物処理装置の研究〔原研〕
 放射性廃棄物処理装置、イオン交換処理装置、沈殿濃縮装置、蒸発濃縮装置、イオン交換膜処理装置の調査研究を行う。

7.各種物性定数の測定研究〔原研〕
 主として燃料の抽出、再処理に使用される各種物質につき、密度、表面張力、比熱、粘度の一般特性の測定設備のほか、特に平衡定数および高温高圧下における物性測定設備を整備する。

9.原子炉材料および燃料の分析化学および放射化学的研究

(分析化学)

1.核燃料の分析化学的研究〔原研〕
 (イ)ウラン中の不純物の定性定量法
 (ロ)常量から微量に至るUの分離ならびに定量法
 (ハ)Thの分離ならびに定量法
 (ニ)Puの分離ならびに定量法の研究

2.原子炉材料の分析化学的研究〔原研〕
 (イ)黒鉛中のホウ素、希土類元素等の定量法
 (ロ)ジルコニウム中のハフニウムの分離ならびに定量法
 (ハ)重水の迅速定量法
 (ニ)Beの精製ならびに微量不純物の定量法

(放射化学)

4.核燃料核種の放射化学的研究〔原研〕
 (イ)トリウム、パラジウム、ウラン、弗素、燐およびウラン、ネプツニウム、プルトニウム、弗素、燐の相互分離、精製法の研究ならびに放射化学的定量法の研究
 (ロ)単離されたプルトニウム、ネプツニウムおよびパラジウムならびにそれらの化合物の化学的性質の研究


5.原子炉定数の化学的測定法に関する研究〔原研〕
(イ)核分裂生成物の分離、定量法の研究
(ロ)burn up, breeding gain 等の原子炉定数の化学的決定法の研究

6.放射化分析法の研究〔原研〕

分析器具の検討、試料の調整法およびジルコニウム中のハフニウムの定量法等を研究する。

10.原子力船に関する研究

1.原子力船の設計に関する試験研究〔民間企業〕

2.水冷却型船舶用原子炉の熱流動と加圧装置に関する研究〔原研〕
 加圧水型における表面沸騰、水の流動とキャビテーション流体抵抗の研究を行う。

3.原子力船に関する研究〔運技研〕

原子力船舶につき、各種性能を計算して建造の資料を求める。

4.原子力機関の動揺および振動に関する研究〔運技研〕
 船舶の動揺、振動等に見合う動揺台を作り、熱源を電気とした模型原子炉を載せて動揺によるボイドの変化、燃料要素の機械的強度等を試験する。

5.舶用原子炉の制御に関する実験的基礎研究〔民間企業〕
 船舶の急激な負荷変動に対するボイド変化、熱伝達の過渡現象等を模型原子炉により研究し、この制御を検討する。

11.核融合に関する研究

1.核融合反応を目的とした超高温プラズマに関する試験研究〔民間企業〕

2.超高温プラズマによる核融合に関する研究〔電試〕

衝撃大電流放電を利用して超高温プラズマを発生させ、重水素、その他の核融合反応を生起させることを目的とする。さしあたっては超高温を正確に測定することを目的とする。

12.放射線測定機器および測定法に関する研究

1.放射線(能)標準確立の研究〔電試〕
(イ)中性子標準の絶対測定
(ロ)熱中性子計測器較正用スタンダードパイルの設備
(ハ)中性子計測器のエネルギー特性の測定
(ニ)α線放射体標準試料製作
(ホ)β線放射体標準試料製作
(ヘ)γ線照射量の絶対測定および計測器の特性

2.放射線の化学的計測に関する研究〔東工試〕
 放射線障害防止に用いるフィルムバッジ、タングステン酸銀、燐酸銀による特殊感光材およびポリビニルアルコールを保護膠質とする乳剤の研究

3.大量コバルト60のキュリー量測定に関する研究〔民間企業(委)〕
 Co60による標準線源を製造する。

4.放射線計測電子管回路の開発研究〔原研〕
 放射線計測器および原子炉制御用中性子測定器ならびに制御用電子管回路の開発研究を行う。

5.ミリマイクロセカンドパルスの基礎技術に関する研究〔原研〕
 ミリマイクロセカンドパルス発生器、広帯域分布定数増幅器の試作検討を行う。

6.放射線測定器部品(絶縁材料、電子管等)の放射線障害防止に関する試験研究〔民間企業(委)〕
 約10,000キュリーのCo60を線源として絶縁材料、電子管等に照射してその影響を調べる。

7.放射線の測定に関する研究〔放医研〕

放射線管理に使用される測定器および測定法の研究を行う。

8.放射線管理における低汚染検出法向上の研究〔原研〕

放射線測定器の線質特性の向上の基礎を究明する。

9.個人管理法の改善に関する研究〔原研〕

個人管理用測定器具の改善等の研究を行う。

13.放射線による障害防止およびその治療に関する研究

1.放射性物質に関する分析等に関する研究〔放医研〕

2.汚染除去および防止の研究〔原研〕
(イ)各種キレート化剤の配合および使用条件
(ロ)酸化チタンの特性
(ハ)超音波洗浄法の研究

(放射線の人体および動植物に及ぼす影響)

3.放射線照射に関する研究〔放医研〕

4.放射線に関する生化学的研究〔放医研〕

5.人体に対する放射線の影響に関する研究〔放医研〕

6.放射線の生物に対する影響に関する研究〔放医研〕

7.人体に対する放射線許容量に関する研究〔放医研〕

8.γ線照射による研究〔家畜試〕
(イ)炭疽菌ニューカスルヴィルスにγ線を照射し、病源微生物の変異に関する研究
(ロ)γ線照射による家畜の障害に関する研究

(放射線障害の診断および治療)

9.放射線による障害の予防薬および治療薬に関する研究〔放医研〕

10.放射線障害の早期発見および予防警戒法に関する研究〔放医研〕

11.放射線障害の診断およびその基準に関する研究〔放医研〕

12.放射線障害の治療およびその基準に関する研究〔放医研〕

(放射線の防護)

13.放射線防護に対する研究〔放医研〕

14.原子炉その他放射線取扱における放射線防護の研究〔原研〕

15.放射線利用施設の設計および施工に関する研究〔建研〕

16.原子力産業用ガラス材料の研究〔大工試〕

17.放射線の遮蔽に関する研究〔民間企業〕

18.放射線障害の防止に必要な機械装置または器具の試作に関する研究〔民間企業〕


14.アイソトープの製造に関する研究

1.短寿命RIの製造の研究〔原研〕
 JRR-1によりNa24、K42、Au198、P32、I131、As76、Br82 等のRI製造法の研究を行う。

2.RI製造用ターゲットの分離精製に関する研究〔原研〕
 P32、As76、Br82、I131 等のターゲットの硫黄、酸化砒素、臭化物、テルルの微量不純物の検出定量分離精製の研究

 15.アイソトープの利用に関する研究

(動植物細菌等に関する利用)

1.アイソトープによる遺伝の研究〔遺伝研〕
 放射線によるマウスおよび蚕に及ぼす影響を研究する。

2.人体に対する放射線遺伝の統計的研究〔放医研〕

3.γ線による桑、蚕の品種改良の研究〔蚕糸試〕

4.γ線照射による作物の品種改良に関する研究〔農技研〕
 突然変異体を育成し、優良品種の育成および安配母体を作り、品種改良を行う。

5.食品の保蔵の研究〔食料研〕
 γ線の殺虫殺菌効果および食品の品質に及ぼす影響を検討する。防黴剤の作用効果をラジオオートグラフ法を用いて究明する。

6.γ線による水産食品の保蔵に関する研究〔水産研〕
 γ線による殺菌機構、魚肉蛋白質の変性、魚油の変質に関する研究を行う。

7.放射線利用に関する研究〔栄養研〕
 魚介および肉類の放射線殺菌にともなう変質とさらにその生体に及ぼす毒性について白ねずみを試験動物として研究する。

8.アイソトープによる絹糸蛋白質合成過程に関する研究〔蚕糸試〕
 蚕にC14で標識したアミノ酸類その他関連物質を摂取せしめ、アミノ酸類の蚕体内における代謝機構、絹糸蛋白質への合成過程を解明、蚕の飼育方法の改善をする。

9.アイソトープによるトレーサー研究〔家畜研〕
(イ)ニワトリの白血病の病理的研究をラジオオートグラフにより行う。
(ロ)ヴィルス感染機序の研究の基礎を明らかにする。

10.家畜飼養法改良改善に関する研究〔農技研〕
 家畜の骨軟に関する研究、ニワトリの産卵生理に関する研究を行う。

11.アイソトープによるトレーサー研究〔水産研〕
(イ)養魚飼料の効率に関する研究
(ロ)水産動物油の栄養価および毒性に関する研究
(ハ)浅海生物の増殖に関する研究
(ニ)魚類の放射能汚染に関する研究

12.放射線利用に関する研究〔公衆衛生院〕
(イ)食品衛生面における食品の細菌学的、化学的汚染源および汚染機構に関する研究
(ロ)ポルフィリンの代謝に関する研究
(ハ)公衆衛生上重要な疾病(くる病等)の発生機序および予防法に関する研究
(ニ)人工放射性物質による大気汚染に関する研究

(農業、鉱工業、土木等に関する研究)

13.γ線照射による木材材質処理に関する研究〔林試〕
 γ線を照射することにより、木材と接着材間に架橋結合をもたらし接着性能の飛躍的向上をはかる。

14.有機合成反応への利用に関する研究〔東工試〕
 大量の放射線を照射して有機物の合成反応分解反応の促進について研究する。

15.放射線利用に関する総合研究〔名工試〕
 (イ)放射線照射により高分子材料の品質改善に関する研究
 (ロ)γ線による高分子化合物の合成の研究
 (ハ)放射線照射による化学反応の促進の研究
 (ニ)放射線発光体の研究

16.放射線化学の研究〔原研〕
 Co60 10kc γ線源およ

17.非金属材料の放射線損傷の研究〔原研〕

原子炉用非金属材料の放射線損傷を研究し、品質改善の基礎研究を行う。

18.アイソトープの繊維工業への利用に関する研究〔繊維試〕
(イ)繊維糸ならびに織物の不均一性の研究
(ロ)繊維の摩耗量測定の研究
(ハ)繊維製造過程における化学反応機構解析の研究

19.鉄筋コンクリートの中の鉄筋の腐食に関する研究〔土木研〕
 コンクリートの中でのC14O2の拡散を知ることにより鉄筋の腐食を研究する。

20.コンクリート中の材料分離およびグラウトの研究〔土木研〕

21.アイソトープによるトレーサー研究〔林試〕
(イ)C14でラベルされた接着原料を用いて、木材の接着機構に関する研究を行う。
(ロ)注入処理に用いられるクレオソート
 PCP等をC14でラベルされた有機化合物を原料として合成し、木材への浸透度および吸着の状態を解明する。
(ハ)木材の養分吸収ならびに移動に関する研究を行う。

22.工具摩耗の研究〔機械試〕

放射線利用による摩耗試験を従来法の寿命試験と併用して比較試験する。

23.アイソトープの利用に関する研究〔資源技研〕
(イ)選鉱における工程管理の研究
(ロ)潤滑油の劣化および摩耗機構の研究
(ハ)選炭における工程管理の研究
(ニ)鉱山保安技術に関する研究

24.堰堤漏水および灌漑水量測定に関する研究〔農技研〕
 堰提模型を作成し、Na24、P32、I131 を用いて漏水箇所発見技術の基礎を確立、各種模型水路を作製し、Na24、Br82、Co60を用いてdiffusion method により灌漑水量測定法を確立する。

25.漂砂対策工法の研究〔運枝研〕
 漂砂実験水槽により漂砂の現象を解明し、港湾の埋没、沿岸の欠漬等の防止対策を確立する。

26.アイソトープの発酵工業への利用に関する研究〔発酵研〕
(イ)発酵菌の物質代謝の機構解明に関する研究
(ロ)発酵微生物の物質代謝系の変革および推進に関する研究
(ハ)照射による微生物の変異に関する研究

27.アイソトープによる試薬の精製、試験法の研究〔大工試〕
 RIを標準試薬の精製に用いてその不純物の除去を研究し、RIを含む試薬による試験法を研究する。

28.アイソトープ利用による施肥法改善に関する研究〔農技研〕
 水稲中における炭化水素、窒素の動態をC14、N13、N15を用いて研究する。また土壤中の各成分の輪廻に関する研究も行う。

29.アイソトープ利用の研究〔北海道農試〕
(イ)馬鈴薯の疾病に関する研究
(ロ)泥炭地の改良ならびに合理的施肥法に関する研究

30.アイソトープ利用の研究〔関東東山農試〕
(イ)火山灰土の改良ならびに合理的施肥法に関する研究
(ロ)家畜の飼養改善に関する研究
(ハ)草地改良に関する研究

31.アイソトープ利用の研究〔東海近畿農試〕
(イ)秋落水田の改善ならびに施肥法改善に関する研究
(ロ)ニカメイチュウ防除における農薬の残留量の研究

32.アイソトープ利用の研究〔九州農試〕
(イ)暖地瘠薄畑の改良ならびに施肥の合理化に関する研究
(ロ)病虫害に関するトレーサー研究

33.アイソトープによる薄膜の測定ならびに容器に関する研究〔産工試〕
(イ)プリフォーマーによる硝子繊維付着量の測定
(ロ)印刷インキ付着量の測定
(ハ)放射性物質の包装容器に関する研究

34.中性子線を利用する水分計に関する研究〔土木研〕

35.地下水の追跡法に関する研究〔土木研〕

(医療、医薬品等に関する利用)

36.放射線利用に関する研究〔衛生試〕
(イ)放射線照射による薬品および食品の衛生学的研究
(ロ)放射性医薬品の規格および試験法の研究

37.放射線利用による胸部諸臓器の悪性腫瘍の治療に関する研究〔東一病〕

38.消化器系統の悪性腫瘍の治療に関する研究〔東二病〕

39.婦人科領域の悪性腫瘍の治療に関する研究〔大阪病〕

40.放射線利用に関する研究〔予防衛生研〕
(イ)生物学的製剤および抗菌性物質製剤の製造ならびに検定に対するRIの応用に関する研究
(ロ)抗生物質の生合成に関する研究
(ハ)ペニシリンアレルギーの研究
(ニ)寄生虫卵殺滅に関する研究
(ホ)S35 によるファージ合成機構の研究

(その他)

41.Liniac の調整測定および Power micro wave の研究〔原研〕

42.短寿命RIの利用研究〔原研〕
(イ)短寿命RIの同時トレーサー法の利用研究
(ロ)短寿命RIの工業測定法の開発研究

43.放射性同位元素のトレーサーとしての利取法に関する研究〔民間企業〕

44.放射線の利用に関する研究ならびに利用機器の試作に関する研究〔民間企業〕

45.標識物質の製造に関する研究〔民間企業〕

付表2 昭和33年度アイソトープ需要推定量


付表3 アイソトープ利用施設の整備拡充計画


付表4 放射能調査



付表5 国立大学原子力関係大学院、学科、講座の新設及び増設