国際原子力機関は、昨年10月ウィーンにおいて発足し、わが国も理事国として同機関の運営に対して重要な地位を占めるにいたり、原子力の平和利用に対して国際的にもはなばなしい活躍をすることとなった。同機関は発足以来事務局長スターリング・コール氏を中心として事務局の整備をいそいでいたが、去る1月22日コール氏から藤岡委員に対して同機関事務局のアイソトープ部長に就任方要請があった。藤岡委員は岸首相はじめ関係各方面と話し合ったうえ、アイソトープ部長への就任を受諾することとなった。アイソトープ部長はウィーンに常駐することとなっているので、原子力委員会委員は辞任することとなった。同委員は2月28日羽田発空路ウィーンに向う予定である。
藤岡委員は原子力委員会が発足した昭和31年1月1日原子力委員会委員に任命され、昭和32年7月1日再任された。この間ずっと常勤の委員としてわが国の原子力行政に多大の貢献をした。すなわち、原子力委員会の発足にさきだち、昭和29年12月から約3ヵ月にわたり原子力海外調査団長として欧米先進諸国の原子力事情を調査して原子力開発の発鞭をつけ、さらに昭和30年夏ジュネーブにおいて開催された第1回原子力平和利用国際会議に日本政府代表として出席、また原子炉予算問題や日米原子力協定問題に際して事態のとりまとめに努力し、さらに昭和31年エニウェトック環礁付近において行われた原水爆実験影響調査技術顧問団の団長として活躍したことが特筆される。
いま原子力委員会委員としての任期を2年余残して同委員を辞任することになったのであるが、国際的な機関にわが国からはじめて主要な地位に就任することになり、わが国が国際的な立場から原子力平和利用に協力し、国際原子力機関をもりたてていく上に大きな活躍を期待されている。
藤岡委員略歴
明治38年3月6日生
大正14年3月 東京帝国大学理学部物理学科卒
昭和 9年7月 東京文理科大学助教授
16年5月 東京文理科大学教授
24年8月 東京教育大学理学部長兼東京教育大学教授
29年1月 日本学術会議会員(任期2年)
29年3月 科学技術行政協議会委員(任期3年)
30年7月 ジュネーブ原子力平和利用国際会議日本政府代表
30年1月 原子力委員会委員(任期1年6月)
32年7月 原子力委員会委員再任