原子炉地震対策小委員会経過報告書

 本報告書は、原子力委員会動力炉専門部会(当時動力炉専門委員会)に設置された原子炉地震対策小委員会が3月から7月にわたって調査研究した結果をとりまとめ、原子力委員会に提出したものである。
 なお、10月11日原子力委員会において本小委員会の改組が決定され(本誌11月号5ページ参照)、これにもとづく新しい構成による小委員会は10月から11月にわたり英国型動力炉の地震対策に関して種々検討を行ったが、その結果をとりまとめた報告書は次号に掲載する予定である。

目次

1.委員会の目的、構成および経過
 1.1 目的
 1.2 構成
 1.3 経過

2.討議事項
 2.1 討議事項の概要
 2.2 討議事項の内容
  2.2.1 英国型原子炉の構造について
  2.2.2 わが国の地震資料
  2.2.3 地震と地盤について
  2.2.4 地震が構造物に及ぼす影響
   (a) 震害資料 (b)震力 (c)免責(消震)法
  2.2.5 原子炉の耐震対策
   (a) 震力について(b)Graphite Blockについて
   (c)Reactor Core について (d)Biological Shield について
   (e)配管類の設計 (f)免震法について

3.仕様書について

4.研究(実験)計画について
 4.1 実験テーマ
  4.1.1 各地の地震動の観測
  4.1.2 Reactor Building の振動性の研究
  4.1.3 Pressure Vessel およびその Supporting Systemの振動性の研究
  4.1.4 Reactor Core の振動性の研究
  4.1.5 機械設備、その他の耐震性の研究
 4.2 実験計画

5.資料一覧

付 録 原子炉の概要

1. 委員会の目的、構成および経過

1.1 目的

 原子炉地震対策小委員会は、既存資料による英国型動力炉の耐震設計検討ならびに今後における動力用原子炉(特に英国型動力炉)の耐震対策研究の方針等について調査審議することを目的とする。
 これについては昭和32年3月14日の定例原子力委員会において、原子炉地震対策小委員会を設置することに関し、次のような決定がなされた。原子炉地震対策小委員会設定について

(1)動力炉専門委員会に原子炉地震対策小委員会を設ける。

(2)この小委員会は、既存資料による英国型動力炉の耐震設計検討ならびに今後における動力用原子炉(特に英国型動力炉)の耐震対策研究の方針および関係研究機関の研究分担について調査審議することを目的とする。

(3)この小委員会は、地震、耐震構造、動力用原子炉等に関する学識経験者に委員を委嘱する。

(4)この小委員会の調査審議の期間はおおむね1ヵ月ないし2ヵ月とする。

(5)この小委員会の庶務は原子力局原子力調査課において処理する。

1.2 構   成

委員会の構成は次のとおりである。

委員長   武藤 清  東京大学教授(工学部建築学教室)

那須 信治  〃  地震研究所長
谷口  忠 東京工業大学教授
内藤 多仲 早稲田大学名誉教授
竹山謙三郎 建設省建築研究所長
川村 泰治 電源開発(株)原子力室付
川畑 整理 東京電力(株)建設部次長
前田 一雄 中部電力(株)火力部次長(兼)原子力課長
吉岡 俊男 関西電力(株)技術研究所長
神谷 貞吉 電力中央研究所技術研究所土木部長
若林 良一 東京芝浦電気(株)鶴見研究所原子力研究課長
松本 政吉 (株)日立製作所日立工場原子力課長
前沢 芳一 三菱電機(株)原子力技術課長
大築 志夫 清水建設(株)研究部
甲野 繁夫 鹿島建設(株)企画監査第三部長(兼)原子力室長代理
園田  晋 昭和電工(株)企画部原子力課長
久布白兼致 日本原子力研究所理事
嵯峨根遼吉 日本原子力研究所理事
小林 貞雄 日本原子力産業会議企画部長

なお、委員長から次の諸氏に幹事を委嘱した。

梅村  魁 東京大学助教授
久田 俊彦 建設省建築研究所
弘田 実弥 日本原子力研究所
秋野 金次 日本原子力研究所

また、原子力委員会および原子力局からは主として次の諸氏が出席した。

石川 一郎 原子力委員会委員
法貴 四郎 原子力局次長
加世田 昇 原子力局原子力調査課

1.3 経過

 原子炉地震対策小委員会の審議経過は次のとおりである。

第1回  昭和32年3月23日(土)午前
     人事院ビル原子力委員会 会議室

議題:1.委員会設立と自己紹介

2.次回からの進め方の検討
英国型動力炉の耐震設計および耐震対策研究上の概括的な問題点を1〜2ヵ月でまとめることとし、当分毎週土曜日定例的に委員会を開催することになった。


第2回  昭和32年3月30日(土)午前
     建築学会 会議室

議題:英国型動力炉の概要、特にグラファイト積層に関する資料の説明、質疑


第3回  昭和32年4月13日(土)午前
      建築学会会議室
議題:主として地震震力と被害に関する資料の説明、質疑


第4回  昭和32年4月20日(土)午前
      建築学会 会議室
議題:1.地震震力と被害に関する資料の説明
    2.耐震対策研究テーマに関する意見説明
    3.耐震の仕様書に関する意見説明
    4.火力発電所および東海村の地盤の説明


第5回  昭和32年4月27日(土)午前
      建築学会 会議室
議題:1.黒鉛ブロックの模型について説明
    2.地震の仕様書に関する意見説明
    3.地震振動について説明
    4.仕様書の検討


第6回  昭和32年5月11日(土)午前
     建築学会 会議室
議題:1.実験テーマの検討
    2.仕様書の検討


第7回  昭和32年7月13日(土)午前
      建築学会 会議室
議題:報告書の検討


 なお幹事会の経過は次のとおりである。

第1回 昭和32年4月24日(水)
    仕様書のとりまとめ

第2回 昭和32年5月2日(木)
    仕様書、実験テーマのとりまとめ

第3回 昭和32年5月18日(土)
     仕様書のとりまとめ

第4回 昭和32年5月31日(金)
    1.仕様書のとりまとめ
    2.報告書作成方針検討

第5回 昭和32年6月15日(土)
    1.報告書作成
    2.実験のtime table作成 

第6回 昭和32年6月22日(土)
    報告書作成

第7回 昭和32年6月29日(土)
    報告書作成

第8回 昭和32年7月2日(火)
    報告書作成


2. 討 議 事 項

2.1 討議事項の概要

  まず英国型原子炉の構造について各種の公表された資料により検討したが、主要部分はいわゆる Commercial secretに属し詳細には知ることができなかった。しかし耐震化のためには、当然独自の方策が立てられ、実際の設計にあたって改めて研究され決定さるべきであるから、この点は苦にするに及ぶまい。
 耐震を考えるとき問題となる地震動に関しては、過去の記録や種々の資料が集められて検討されたが、明確な結論を得ることはできなかった。しかし設計に当って予想すべき将来の地震動について、必ずしも工学的判断からこれを決定し得ないことはない。なお早急に、原子炉建設が将来予想される地域の強震記録の収集に着手されることが賢明である。
 本委員会の討議事項の中で、最も重要であり、またさかんな議論が行われた問題は、Biological Shield の内部についてその耐震化をいかに行うべきかであった。英国の設計では耐震的な考慮がほとんど払われていないので、その耐震化を行うためのideaすなわち免震(または消震)構造の方法がいくつか提案された。
 一方完全固定に近い方法で耐震化することの可能性も述べられた。免震構造にする場合は、当然免震部と非免震部との間に相対変位が生じ、そのためPipeやTube類の設計が複雑になるので、固定化する方法がもし可能であるならば、まずそれがなされるべきであるという技術的な理由と、英国から輸入する炉について大きな設計変更を望むのは無理であり、適当な補強法をなし得るのならば、それより考案し、英国側との交渉に備えるべきであるという二つの理由から固定化するための補強法の検討を早急に実験的に確める必要があると考えられた。
 設計に当って採用する地震力については、原子炉がモルタルを用いないでれんがを積みかさねたような特殊な構造のCoreをもつものであり、また放射能を内蔵するものであるから普通の建物のように現行建築基準法の規定そのままを採用するわけにはいかない。しかし、原子炉に対する震力は構造物の性質、修理の難易、重要度および破損にともなう危険度などを考え合わせて、現在までの知識でその大綱を定めることにより、原子炉の耐震設計は可能であろうとの結論に達した。したがって固定式構造のものについていかなる強度を与えるべきかの検討が行われ、あとに掲げた仕様書にあるような静的震度による第1次耐震設計方針が決められたのである。
  次に討議されたおもな項目を述べる。

2.2 討議事項の内容

2.2.1英国型原子炉の構造について
英国型の原子炉の耐震対策を検討するために、まず、その実体をつかむ必要がある。このため各種公表資料が集められ、特にReactorCoreの概要が検討された。

2.2.2 わが国の地震資料
 わが国の地震の強震記録、各地域における地震危険度等の資料が集められた。

2.2.3 地震と地盤について
 地震は地盤によってその性質が異なる。したがって将来原子炉の建設されると予想される地盤はあらかじめその地盤性状、地震性状、が検討されているべきである。そのため候補地である東海村および参考のため各地の火力発電所の地盤資料が集められた。また常時および強震時の地震記象を微動計、SMAC型強震計等により、収集することが要望された。

2.2.4地震が構造物に及ぼす影響
 同一地盤にある建物でも、その構造が違うと地震の影響が異なる。

(a)震害資料
 まず、原子炉に類似性のある一体構造物(墓石のごとき単体、土蔵、れんが造、火力発電所等)のわが国における震害例が集められた。

(b)震   力
 一方、過去の強震記録に対する各種上部構造の反応を理論的に調べ、剛強な構造物には現行建築基準法以上の相当の震力が加わることが報告された。

(c)免震(消震)法
 上記震力を低減するには、構造物を局部的に破損させるか、その剛性を人工的に極度にさげておくことが必要である。原子炉のReactor Coreに破損をゆるさないで震力を低減しようとする考案が集められた。

2.2.5 原子炉の耐震対策
 英国型原子炉の構造の例は、わが国ではあまり見られないもので、熱応力の回避と同時にその耐震性を考えなければならない。しかも、その最も重要な Core 部分は Graphite Blockを積みかさねたもので、現在わが国の建築基準法で規定している耐震計算法の数値をそのまま適用するわけにはいかない。
 このため、原子炉の耐震対策について各種の意見が提出され、これらの意見をもとにして一応英国型に対する仕様書の第1次草案と今後の実験計画が取りまとめられたのである。
 ここには耐震対策として提出された各種意見を列挙する。

(a)震力について
○基礎版を下げるほど震力は減るであろう。
○米国では、水平地動加速度0.33gを実際に記録している。
○原子炉建物のロッキング振動性からみてCore部分では基礎版の2倍ないし3倍程度の震力を予想すべきである。
○水平動と同時に上下動も考慮すべきである。
○衝撃的震力も考えて設計すべきである。
○地盤係数を実験的に測定しなければならない。

(b)Graphite Block について
 Graphite の機械的性質、力学的性質、物理的性質が調べられた。
 Graphite Block の型状について提案があったが、とにかく一本化するよう、かつ加工施工が容易で材料のロスが少ないことが望まれる。

(c)Reactor Coreについて
○Garter 部分を、耐震的な補強構造とすること。
○Keyを補強すること。
○黒鉛構造体と支持鋼板の間の熱膨脹を逃げること。
○黒鉛構造体と支持鋼板の間を免震構造とすること。

(d)Biological Shield について
○耐力的には十分である。
○ロッキング振動が主である。
○Biological Shield だけは絶対的耐震構造にして万一にそなえる。

(e)配管類の設計
 ボイラーは建築法規によっている。
 変圧器は震度0.5にしている。

(f)免震法について
 Reactor Coreを完全にかためることができないときには免震法を考えなければならない。

 原子炉を免震構造とするならば、バネまたはSpringで全体で支えられるであろうから、耐力的な構造は不必要になるが、免震部と非免震部の相対変位は当然ダクトに伝わり、thermal expansion 以外の変形を極度に避けていると推定されるダクトのmechanical designに新たな問題が生じ、U字型jointやCalder型で採用されている bellow でこれが処理し得るか否かは検討を要する。

3. 仕様書について

 この小委員会の当初の目的の一つに、英国型動力炉の耐震設計検討として英国側に提示するいわゆる仕様書をまとめることが掲げられていた。このためその中に織り込まれる内容や表現についても各種の提案があり議論が行われた。たとえば日本の地震記録のみを与えて設計は全く先方にまかすとか、あるいは不利益な地震の速度や加速度さらに最大許容変位量を与えて対策は英国に考えさせる等があったがこのようなDynamic な要求をしたとしても英国側を困惑させるのみであろうから、普通建築物の設計で行われるように静的な計算を行うものとして、仕様書の中に書き入れる震度の数値をどうすべきかが討論され、いくつかの提案があり、これらを総合的にまとめた原案について再三検討を行い、後に掲げる仕様書、すなわち英国型原子力発電所の耐震設計に関する予備的提案(英文を正とし、和文を副とする。)の草案を作製した。
 この草案で、地震荷重のとり方は明らかになったが望ましい構造計画、具体的な設計計算の方法は明示されておらず、したがって、設計者の判断で相当変化するであろうが、このような実際的な問題は将来の決定にゆだねられることにした。
 Shieldは強固な設計が可能であろうから、これを丈夫にしてたとい原子炉が崩壊しても第三者に損傷は与えないことを第一義とした。草案のように原子炉設計用の荷重を大にすることは炉心の設計を困難にするものであるから、小さな数値にすべきであるとの意見もあったが、今回のものは草案であり、英国側の意向と炉の構造詳細の判明につれ今後改正すればよいと考えた。
 また予備的折衝の資料という意味で表現は弱めてある。内容の要点は、原子力発電所の施設も建設するのであるから、日本の建築基準法に準拠して耐震設計を行うものとし、一般構造物→原子炉建家およびその付属施設→原子炉のShield→その内部、というように段階をつけ各部の重要性、破損の修理の可能性、炉心構造の特性等に応じて大きな設計震度を規定した。そのほか、大きな地震時には必ず原子炉が停止すべきである等、必要な条項が付加されている。
 なお、後に、日本の建築法規の規定がどのような目的を持っており、普通の構造物にはなぜそのような規定を適用しているかを述べ、原子炉のごとき構造物には適用し得るものでないことを説明してある。


Draft

Preliminary Proposal for Earthquake Resistant
Design of British-type Nuclear Power Station


The Present proposal is prepared by the Special Committee for Earthquake Resistant Reactor, and it presents a general guide for the aseismatic design of a British-type Nuclear Power Station to be built in Japan.

The underlying principles of the present proposal are:

(1) To guarantee the public and employees security against the radiation.

(2) To guarantee the publicient strength and serviciability for such parts where the post-operation repair work is not feasible, or the failure of such parts will be fatal to the power generation.

The proposed items are listed below. How- ever, some of the numerical values may be modified later along with the progress of design, consulting with the nature of structure employed therein.

1. All building and other structures should be designed in accordance with the Japanese Building Code requirements except those specified elsewhere.
Note: It is pre-assumed that the procedures to be followed in the course of structural design and analysis are similar to those specified in the Code. (Building Standard Law Enforcement Order, Chapter 3, Sections 1-8.)

2. Reactor building and attached steam raising structures, except those specified under Article 3-5, should be so designed as to safely resist the seismic force which is one and one half times the specified values in the Code.

3. Biological shielding structure and its principal sub-structure (except foundation mat) should be designed to the 3 times as large seismic force as specified in the Code.
Note : 3 times as large seismic force as specified in the Code (Article 88 in the Law Enforcement Order) is assumed to act upon the biological shielding structure and, if any, all structural units which are structurally connected to it.

4. All structures and structural parts inside the biological shielding structure should be designed to the equally as large horizontal force as specified under Article 3 of the present proposal in all directions, together with a vertical force which is one half of the previously mentioned horizontal force. These horizontal and vertical forces are considered to act simultaneously.

5. Cooling system of the reactor assembly should hold sufficient cooling capacity even when the reactor assembly is subjected to such a seismic force as mentioned in Article 3. It is further required that any probable leakage of the coolant will never endanger personnel on duty.

6. The emergency shut down system is required to equip a seismic switch immediately shuts down the reactor automatically as soon as the seismic acceleration at a specified location reaches a certain critical value. It is further required to equip a back-up system which is capable so completely shut off the reactor even during the action of the seismic force which is one and one half times as large as specified under Article 4 of the present proposal, considering the insufficient function the automatic shut down system.
Note: For example, shut down starts to function when the foundation mat reaches or exceeds 100 gals.

7. If necessary, an emergency control room is to be provided separately.

8. The fuel discharging system should be so designed that, in emergency cases, it is feasible to remove the damaged fuel elements as quickly as possible lest the radiation from the fission products should endanger the personnel.

9. Making a due consideration on an earthquake damage of the station, an emergency electric power supply should be installed. Its capacity should be sufficient to ensure the safe keep up of the entire powerstation.

10. All mechanical equipments and their installations of the power station should be adequately designed according to the type and location of each unit in accordance with the corresponding requirements as previously stated.


英国型原子力発電所の耐震設計に関する予備的提案(案)

 この提案は日本に英国型原子力発電所を建設する場合、その耐震設計をいかにすべきかについて地震対策小委員会が準備的に提示したものである。
 その考え方は発電所が強震を受けた場合にも
(1)放射能に対して周囲の人々ならびに従業員の安全を確保すること。
(2)修理が困難な部分および致命的重要部に対しては十分の強度と安全性を保有させることを目標としている。

 次に提案項目を示す。なお設計の具体化にともない、構造物の性状に応じて数値的に変更することがありうる。

1. 発電所の全建物および構造物は以下に特に指示した場合を除き、一般に日本の建築法規にもとづいて設計する。

注 構造計算および設計の方法は建築基準法施行令第3章第1節ないし第8節の規定にもと づいて行う。

2. Reactor Building とこれに付属する Steam Raising Structure は3ないし5項に示す部分を除き、日本の建築法規に示した数値の1.5倍の地震力に対して安全なるように設計する。

3. Biological Shielding Structureおよびこれを支持する主要構造物(基礎版を除く)は、日本の建築法規に示した数値の3倍の地震力に対して安全なるように設計する。

注 設計用地震力としては法施行令第88条に示した数値の3倍の水平力がShieldingおよびこれに構造的に接続した各部に作用するものと考える。

4. Biological Shielding Structure の内部の各部は3項に示す水平震度(各方向)とその50%の垂直震度に対して安全なるように設計する。この場合上記の水平力、垂直力は同時に作用するものとする。

5. 原子炉のCooling Systemは第3項に示した地震力をうけた場合でも原子炉の冷却のために十分な能力を有し、かつ冷却材の漏洩が作業員に危険をおよぼさないように設計する。

6. 非常停止装置として地震による加速度が所定の位置で所定の値に達した場合、原子炉が直ちに自動的に停止するようなSeismic Switchを設ける。
 なおこの装置の動作が不十分な場合を考慮して、4項に示した震度値の1.5倍の地震力をうけた場合においても原子炉を停止せしめうるBack up Systemを設けなければならない。

注 Shut−down System はたとえば基礎版上において100galの水平加速度が生じたとき発動する。

7. 必要とあらば別にEmergency Control Room を設ける。

8. 地震により原子炉内の燃料要素が万一損傷した場合、分裂生成物逸出の危険を除去するため燃料取替装置は可及的すみやかにこれを取り去るよう設計する。

9. 発電所の震害を考慮して非常電源を準備し、その容量は発電所の保全に十分なるものとする。

10. 発電所の機械設備およびその取付部についてはその状況に応じ上記各項に準じて耐震設計を行う。


Introductive Remarks to the Japanese Seismic Building Code

 The current Japanese Seismic Code psovisions specify the seismic force in the form of statical equivalent. However, it does not mean that such statical consideration is sufficient to avoid any structural damage completely.

 The Code provisions are, as their nature, the minimum requirements. Their purpose is primarily to save human lives by preventing structures from fatal damage. Therefore, the numerical values-the seismic coefficients-are so determined that a certain amount of local damage is allowed unless such damage will never induce the serious damage.

 The earthquake effect is, as well known, dynamic, and there may exist fairly large acceleration pulses which are well over the specified design seismic force. However, all structures currently built in Japan are, in good extent, flexible and buctile, and it is considered that the conventional building structures could stand to such a large acceleration because of their structural nature.

 Therefore, the current Japanese Building Code provisions cannot be applied, as they are, to a structure which is not similar, in nature, to the conventional building structure, or to such a structure in which even a slight damage cannot be allowed. For such a structure, the design seismic coefficient is to be specified individually.


4. 研究(実験)計画について

4.1 実験テーマ

英国型動力炉の耐震対策研究上必要と考えられる実験テーマを列記すると以下のごとくである。

4.1.1 各地の地震動の観測
 構造物の耐震設計にまず必要な資料は地震の性状を示すそれらの記録であるが、地震動の性質は敷地の地理的位置と地盤の状況に大きく支配される。普通の構造物では部分的破壊が許されるので、長年の経験により、一応妥当な設計がなし得ると考えられる。しかし英国型動力炉のように未知の要素を多分に含んだものを、しかも経済的に設計せんとすれば、とにかく基礎的な地震の資料をあらかじめ備えておくことが痛感される。そのため単に東海村のみならず、将来動力炉を建設する候補地には強震計を設置し、その地域の地震特性をつかんでおくことが必要であり長期計画が望まれる。

4.1.2 Reactor Buildingの振動性の研究
 Reactor Building は構造主体として厚いベタ基礎と厚いコンクリート壁で構成される非常に強剛なBiological Shieldを有する構造体であり、地震時におけるこの構造主体の振動は弾性変形ではなくしてRocking振動と推定される。Rocking振動は地盤の性状と上部構造の剛性規模に関係するが、従来このような構造体の実例がないのでReactor BuildingのRocking振動の状態が推定し難い。
 そこでこれを解析するに必要な次の実験が考えられる。

(a)地盤の地震性状の検討
 まず現状において想定すべき震動を定めるために、4.1.1の長期観測を待たず、既往の地震記録の解析、敷地の震動特性の検討などを行う。

(b)上部構造物の振動実験
i 適当な地盤上の剛な既存建物の振動実験
ii 大型モデルのRockingなどから地盤係数、基礎深さによる震力の低減、その他を推定し、Reactor Buildingの振動性およびその耐力などを研究する。

(c)弾性支持等による免震法の検討
 上記の実験は建物基礎が地盤上に直接置かれるものとして、必要なものを例記したのであるが、構造物に地震力を直接伝えないため、弾性支持その他の方法で建物を支えようとするに必要な研究もあげられる。

4.1.3 Pressure Vessel およびその Supporting Systemの振動性の研究
(a) 基礎やShieldに固定した場合の検討
 Calder Hallの動力炉はPressure Vesslが逆A型の Support で基礎盤上に支えられ、また改良型のものにはスカート型の鉄板で連続的に支持されているが、これらの方法は耐震設計上の面からみると固定方式といえる。この固定方式にした場合、Supporting System,Pressure Vessel および中の Graphite 積層物が複雑な合成振動をするものと考えられるが、その振動性状を明らかにするとともに、Shieldとの相対変位の結果、DuctやPipe類の必要なFlexibilityを推定する。

(b) 免震法の検討
 Graphite構造物に直接地震動が伝わることを逃げるため、GraphiteのSupportを含めてPressure Vesselを免震的に支える方法を研究するに必要な実験を行う。

4.1.4 Reactor Coreの振動性の研究
 Graphiteを積み上げたReactor Coreの振動性は最も複雑であり、これの究明と耐震設計法の確立のためには非常に多くの実験と検討が必要である。一方もちろん英国側と交渉し、Graphite積層構造についてその詳細を知るべくつとめ、その結果によっては実験の計画も変えていかねばならないであろう。必要と思われる実験を列記すれば次のとおりとなる。
(a)サイコロ力学の検討
 非常に多くのブロック状のものの積層体であるので、その基本的なサイコロの動力学の確立が根本的には要求される。
(b)Graphite Core の振動性の研究
 しかし実際のGrapbiteCoreはその材料の力学的特性、Block,Tile,Key等の型状、寸法、全体の数量等影響する要素が非常に多くかつ複雑であるので、結局は実物による振動実験によらなければその実態はつかめないであろう。しかし材料が高価なので実物実験はできないからいくつかの要素に分かち全体を推定する必要がある。

i 数量は少なくても実大もしくは実大に近いGraphiteを使用した振動実験
ii 適当な材料でつくった非常に数の多いブロックの集合体の振動実験
iii Graphiteの型状、寸法の震動耐力に及ぼす影響
等の実験を行う。

(c)Graphite Core の補強法の検討
 英国においてもGraphiteは周囲でGarter, Restraint 等で拘束されており、これが振動的にどれだけの効果をもたらすか、またそれを補強して耐震的な設計とするためには、どのような補強法が考えられるか等を実験的に検討する。さらに全く新しいGraphiteの拘束方法の研究も望ましい。

(d)熱応力が振動耐力に及ぼす影響の検討
 Calder Hall Type で炉内の温度は250℃程度であるが、改良型では400℃にもなる。熱膨脹を逃げるためGraphiteはその底部において、耐震上非常に不利なボール・ベアリングで支えられ、銅板の上に載っているが日本としてはこれがないような設計(たとえばG.E.C.グループの改良型)を研究すべきである。
 しかも炉内の温度分布は一様でなく上部ほど高温なので、全体的もしくは部分的に歪んでおり、Graphiteの間に空隙もあると考えられるので、これが振動耐力に及ぼす影響を実験的に調べる必要がある。

(e)Graphite Core の免震法の検討
 Graphite Coreには本質的に地震動が伝わらないことが望ましいから、Core を免震的に設計することも検討されなければならない。

4.1.5 機械設備、その他の耐震性の研究
 機械設備、その他の設計および据付についても地震対策を考慮する必要があり、とくにダクトは thermal expansionのほかにGore, Shield、熱交換器間の相対変位の問題があるので、これらについて研究しておく必要がある。

4.2 実験計画

 以上の実験を行うに当っては、実験結果の見通しが困難であり、したがって長期的実験計画もたてにくいが、さしあたり英国の設計による小規模実験から進め、その結果が得られるごとに大規模実験に進むべきであると考えられる。

 このような理由から、次のごときTime Tableによって実験、研究を行うのが妥当であろう。

5. 資料一覧       略

付録 原子炉の概要  略

実験テーマのTime Table