ユネスコ主催放射性同位元素国際会議について

 本会議の計画についてはさきに本誌 Vol2 No.5 25ページに紹介したが、その後計画は予定どおり進行し、9月9日午前11時パリのソルボンヌ大学における開会式をもってスタートした。既報の計画のうち若干の変更をみたところは、本会議で取り扱う議題を主として基礎的学術分野におけるアイソトープの利用に限定し、実際的応用分野におけるものは明年のジュネーヴ会議に譲ったことと、日本からの提出論文が最終的に次の10編と決定したこととである。

提出論文課題

C14 トレーサーによるマイクロ反応の機構の研究

島村  修 他(東大理)

β線後方散乱による古文化財の調査

朝比奈貞一 他 (科学博物館)

       

日本の湖沼における底水層および湖底土壌間隙水中の沃素の集積と特に関連ある含水金属酸化物による沃素イオンの共沈

菅原  健 他(名大理)

C14 を用いる海洋生産力および海水中におけるCaCO3 の溶解積の研究

三宅  泰雄(気象研)

鋼塊中の非金属介在物の成因に関する研究

斎藤  恒三(東北大工)

放射性同位元素標識法によるアルカロイド生合成機構の研究

柴田  承二 他(東大医)

光合成の機作に対する二三毒物の影響について

田宮  博 他(東大理)

P32を利用する網膜の感光機構の研究

本城市次郎 他(阪大理)

P32 標識菌による結核の経気道感染に関する実験的研究

山村 雄一 他(刀根山病院)

肥料評価に対するラジオアイソトープの利用に関する最近の研究

三井 進午(東大農)

 開会式において英国代表のJ.コッククロフト卿が会長に就任、副会長4名(米、ソ、仏、日)を指名した。日本代表は木村健二郎博士(日本原子力研究所理事)である。なお日本からの出席者は18名、うち政府からの指名代表は前記木村氏のほか、次の5名である。

田宮  博  東京大学教授

山崎 文男  (株)科学研究所主任研究員

三井 進午  東京大学教授

斉藤 恒三  東北大学教授

鈴木 嘉一  原子力局アイソトープ課長

 他の出席者は在仏の関係学者および産業界からの参加者である。
 会議は医科大学新館講堂で9月20日まで続行され、物理化学工学部門と生物医学部門の二会場に分れて平行的に進められた。木村副会長のほかに、田宮、斉藤両氏は議長、三井氏は副議長をつとめた。全参加国数60、出席者総数1,200名、提出論文総数245の多きにのぼった。このうち、参考までにおもな国からの参加者数および提出論文数を記せば、次表のようである。


 すなわち、日本は参加者数としては世界の第9位であるが、提出論文数としては第6位であった。
 本会議のほかに、特別講演も毎夜開催され、また特殊なテーマについてのシンポジウムがあり、放射線障害の問題について、鈴木代表が出席した。またアイソトープの研究開発に功労のあった13名の人々にパリ市からメダルが贈与されたが、わが木村代表もその一人であった。