原 子 力 局

昭和32年度原子力平和利用研究概要

 昭和32年度原子力平和利用研究費補助金は、本誌前号29ページにおいて紹介したように、9月12日科学技術庁庁議において交付試験研究題目数34、被交付者数28(25社、1研究所、1大学、1県)、試験研究費総額482,818,158円、補助金交付決定額205,735,000円であるが、その対象となった研究の概要は、次のとおりである。

1.原子炉用黒鉛の耐地震性に関する研究

1.交 付 先 昭和電工(株)

2.補 助 額 7,361千円

3.研究目的 耐地震性大なる黒鉛パイルの建造技術の確立

4.研究内容
 黒鉛ブロックの形状、接合方式、堆積方式を究明するため、ブロックの形状、接合方式による強度試験を実施し、耐震性増強のための堆積方法の研究を行い、これらのパイルの模型により、大型起振機を用い、高温において振動を与え、耐震性の効果を検討する。

2.二重サイクル系における熱交換器に関する研究

1.交 付 先 東京芝浦電気(株)

2.補 助 額 2,585千円

3.研究目的 二重サイクル系を有するBWRにおける水系および蒸気系の各熱交換器の特性試験を行うとともに、これが圧力タンクにおける沸騰現象に及ぼす影響を検討する。

4.研究内容
 31年度補助金による管路内沸騰現象装置に汽水分離器と水系の熱交換器をつけ加え、水系熱交換器の前およびポンプのバイパスにそれぞれ弁を設け、全循環量と水系、蒸気系の分配量を変化させるごとくし、圧力タンク内に設けた電熱板により熱を発生せしめ、圧力75kg/cm2、温度280°Cにおける各熱交換器の特性試験を行うとともにこれが沸騰現象に及ぼす影響につき研究する。

3.小型試作品による電磁ポンプの基礎研究

1.交 付 先 (株)日立製作所

2.補 助 額 5,144千円

3.研究目的 液体金属(NaあるいはNaK等)を

 冷却体としている原子炉に使用される電磁ポンプを試作研究する。

4.研究内容
 このポンプの容量は次のとおりとする。

   管径:1インチ

   流量(最大):50g/min

   使用温度:250°C

 電磁ポンプの試作とともに簡単なポンプ性能試験回路を製作する。最初は安全性を保つため水銀を使用して実験するが、漸次NaおよびNaKを使用するように研究する。

4.液体金属伝熱回路の試作研究

1.交 付 先 (株)日立製作所

2.補 助 額 7,618千円

3.研究目的 液体金属(とくにNaまたはNaK合金)を冷却体として使用する動力用原子炉の計画の資料を得るため伝熱等の基礎データを得る。

4.研究内容
 本研究は昨年度の継続であって回路のおもな部分は次のとおりである。

   加熱部・・・・・・200kW電熱

   冷却部・・・・・・給水加熱器、蒸発器および過熱器

   電磁ポンプ

   計測部・・・・・・電磁流量計、液体金属用液面計、圧力計等

 本研究では上記回路を試作検討し、さらに高温、低温試験片室を設け、材料の腐蝕、質量の移行等の研究を行う。また精製装置を設け液体金属の純度管理も行う。

5.原子炉用熔接構造物の内部応力の除去に関する研究

1.交 付 先 石川島重工業(株)

2.補 助 額 7,952千円

3.研究目的 原子炉容器の製作に備えて、本容器の熔接加工による内容応力の除去について研究する。

4.研究内容
 厚板鋼の熔接試験を行い、次いで、この結果を使用して、実物大の容器を製作し、容器製作の際の施工法を検討し、あわせて東京芝浦電気において実施した高周波焼鈍法を実施して現場焼鈍の施工法をも検討する。

6.原子炉冷却系統における弁のベローによる漏洩の防止に関する基礎研究

1.交 付 先 岡野バルブ(株)

2.補 助 額1,370千円

3.研究目的 原子炉冷却系統において弁からの漏洩を防止する方法を考える。さし当ってこの研究では、ベローを使用した場合を中心に研究する。

4.研究内容
 この研究の重点を既存ベローにおき、次のような試験を行う。

1.特殊装置によりベローに内圧および外圧を加えそのたわみと圧力の関係をもとめる。

2.ベローの破壊強度を求める。

3.ベローの繰返し荷重試験をし、各種の応力に対する疲労限界を求める。

 以上のほかベローを実際のバルブに取りつけ高温高圧のもとで試験する。

7.酸化ウラン核燃料の製造法に関する研究

1.交 付 先 三菱金属鉱業(株)

2.補 助 額11,212千円

3.研究目的 重ウラン酸アンモンを煆焼して八三酸化ウランを作り、これを還元して二酸化ウランとし、一次焼結、粉砕加圧成型の後二次焼結してペレット型酸化ウラン燃料要素を製造する技術を確立する。

4.研究内容
 二酸化ウランはその製造法によって化学組成、結晶構造、粒子形状、粒度分布等が非常に違う。これらの性質はその後の焼結機構に非常に影響があるので、粉末の製造法と性質との関係およびそれに応じた以後の各工程の処理条件を明らかにするため、重ウラン酸アンモンのか焼試験、八三酸化ウランの還元試験、二酸化ウランの一次焼結試験、二酸化ウランの二次焼結試験、およびこれによってできた焼結体の機械的、物理的、化学的性質を判定して焼結の最適条件を決定する。

8.原子炉用金属ナトリウムの製造に関する研究

1.交 付 先 昭和電工(株)

2.補 助 額 8,085千円

3.研究目的 原子炉用冷却材としてのナトリウムの精製および製造法を確立し、あわせて工業的分析法を確立する。

4.研究内容
 Naの精製法についは濾過法とコールドトラップ法の組合せによる酸化物の除去と真空蒸溜法による有害金属の除去の基礎条件を検討する。
 工業分析法についてはサンプリング法、酸素等の微量成分の分析法を確立する。

9.原子炉用ジルコニウム合金の熔解加工に関する研究

1.交 付 先 (株)神戸製鋼所

2.補 助 額 9,560千円

3.研究目的  消耗電極電弧熔解法によるジルコニウム合金熔製、加工法の技術を確立し、加工製品の耐蝕性、機械的性質ならびに分析法を研究する。

4.研究内容
 真空アーク熔解の際の電極の作製、熔解法等を鋳塊についてマクロ組織超音波試験を実施して、鋳塊の健全性を判定して最適の方法を確立し、得られた合金を加工し、抗張試験、衝撃試験、高温クリープ試験、耐蝕試験等により加工品を調査して加工性を調査する。

10.不滲透炭素材料の液体金属に対する耐熱および耐蝕性の向上に関する研究

1.交 付 先 日本カーボン(株)

2.補 助 額1,907千円

3.研究目的 液体金属を使用する原子炉に使用する可能性のある不溶透炭素の高温における炭素の耐蝕性について研究を行い、構造材料としての可能性を検討する。

4.研究内容
 耐蝕試験装置を用い、高温における耐蝕試験をNa、Bi について研究を行い、耐熱、耐蝕性の向上をはかり、構造材料としての性質を究明する。

11.動力炉におけるコンクリートの熱成長とその対策に関する研究

1.交 付 先 日本セメント(株)

2.補 助 額1,135千円

3.研究目的 高密度コンクリートは熱サイクルによる成長が通常コンクリートに比し著しく大きい、これが対策をはかるための熱成長の基礎的な研究を行うものである。

4.研究内容
 骨材用岩石の種類、コンクリートの製造方法と熱サイクルを与えた場合のコンクリートの成長度、歪の分布を研究し、無サイクルの場合と比較検討し、その対策を講ずる。

12.原子炉用ボロンスチールの製造に関する研究

1.交 付 先 川崎製鉄(株)

2.補 助 額 3,079千円

3.研究目的 原子炉制御用ならびに遮蔽用ボロン鋼の製造法の確立をはかる。

4.研究内容
 真空および空気中での高周波熔解により4%までの硼素含有の炭素鋼、ステンレス鋼を製作し、熱間ねじり、熱間鍛造、抗張力、硬度等の各種試験を行って成分条件、熱間加工条件に対する冶金学的基礎を得、次いで現場製造実験として2トン高周波炉で最良成分条件のボロン鋼を熔解して制御用遮蔽用としての特性を検討する。

13.放射線の散乱線を減弱する塗料の試験研究

1.交 付 先 大日本塗料(株)

2.補 助 額 698千円

3.研究目的 放射性物質を取り扱う部屋等で天井、壁体等から散乱される二次線を減弱せしめる塗料の製造および塗装法の研究

4.研究内容
 下塗に鉛粉、鈴丹、鉛白、酸化水銀等の重金属の顔料を用いた塗料を用い、中塗、上塗にベンガラ、チタン白等を用いた塗料により、散乱線を減弱せしめんとするもので、これらの顔料、基材の組合せ、各塗料の組合せによる塗料の製造塗装方法の研究を行う。

14.原子炉冷却水汚染監視器の試作研究

1.交 付 先 東京芝浦電気(株)

2.補 助 額 3,704千円

3.研究目的 原子炉冷却水の汚染を監視して、燃料破損箇所を発見する装置を研究する。

4.研究内容
 原子炉冷却水中の核分裂生成物をイオン交換塔に集めてこれをシンチレーションカウンターで検出する。

15.放射性廃液汚染除去及び監視装置の試作研究

1.交 付 先 (株)堀場製作所

2.補 助 額 6,894千円

3.研究目的 放射性物質を取り扱う実験室から仕る廃液を安全に処理するために必要な監視装置の研究を実施する。

4.研究内容
 昭和30年度、31年度の委託費により学振(京大)において行った放射性廃液処理の研究を基礎として設計された処理装置を用い、安全確実に廃液を処理する際に必要な監視装置について、薬品沈澱、濾過装置、イオン交換塔等に必要な pH、電気伝導度、放射能測定等の監視装置を試作する。

16.放射性空気汚染監視器の試作研究

1.交 付 先 神戸工業(株)

2.補 助 額 3,501千円

3.研究目的 原子炉、ホットラボ近辺の空気塵埃中の放射線強度を測定する装置を試作検討する

4.研究内容

1.エアサンプラーの試作研究を行う。このサンプラーは濾紙送り機構と排気速度300l/min以上の吸引速度の安定なポンプからなる。

2.GMプローブ、シンチレーションプローブを試作し、このサンプラーに最も適当なものを選定する。

3.レートメータによる計数回路を試作研究する。

4.記録装置、警報装置等の遠隔指示方法を研究する。

17.放射性物資利用施設の空気汚染除去装置の試作研究

1.交 付 先 東洋キャリヤ(株)

2.補 助 額 3,159千円

3.研究目的 放射性物質利用施設の汚染空気を効率よく除去する装置の試作研究を行う

4.研究内容

1.各種の空気濾過器を試作研究する。

2.実験室のモデルにおいて換気量、換気装置の研究を行う。

3.粉塵発生機により実際の放射性粉塵を発生させ、空気濾過器、換気装置等の総合試験を行う。

18.放射性ガス監視器の試作研究

1.交 付 先 (株)島津製作所

2.補 助 額 3,104千円

3.研究目的 原子炉、ホットラボ等において活性化される放射性ガスによる汚染を監視する装置を試作研究する。

4.研究内容

1.ガスサンプラーを試作研究する。固定されたフィルターを通過したガス体は粉塵を除去されてガス検知室に導かれ、ここで放射能を検知する。

2.検出器はガス検知室に直接挿入するため水密型のものとしなければならない。これにはγ線用シンチレーションカンターを使用する。

3.計数回路、記録方法等についてもあわせて研究する。

19.計数管式表面汚染計の試作研究

1.交 付 先 (株)科学研究所

2.補 助 額 3,007千円

3.研究目的 携帯用表面汚染計、特にα線放射性物質あるいはβ線およびγ線放射性物質の最大許容表面濃度をそれぞれ区別して測定し得るように研究する。

4.研究内容
 この研究で特に留意するのは、軽量小型として携帯に便とし、かつα、β、γの各放射線を識別することにある。したがって

1.特殊形状をもつGM計数管の試作研究

2.半円筒側面窓型計数管の試作研究

3.増幅、指示回路の安定化と小型化

4.電気部品の改良

5.α線、β線、γ線の影の選別機構の研究等に重点をおく。

20.極微弱汚染度監視装置の試作研究

1.交 付 先 大倉電気(株)

2.補 助 額 3,389千円

3.研究目的 大気その他の物質が微弱な放射線による汚染を有するのを監視する装置を試作研究する。

4.研究内容
 本研究の目標は全目盛幅1/1000mr程度の微弱な放射能を測定するにあるため10-17A程度の計測回路を試作研究することにある。したがって、この研究の重点は振動容量型変換器、直流饋還増幅器等の電気回路を試作することにおく。
 なお総合研究としては原研指導のもとに電離槽と接続して絶対放射能等の測定を行う。

21.放射線障害の予防及びゲルマニウム果糖溶液の製造とその応用に関する研究

1.交 付 先(財)石炭綜合研究所

2.補 助 額1,173千円

3.研究目的 レントゲン障害および貧血に有効と考えられるゲルマニウム果糖醋塩を合成して動物試験および臨床的検討を行う。

4.研究内容
 ゲルマニウム果糖醋塩を合成し、マウスに対し450~650レントゲン照射の場合の治療効果を精製痘苗と比較検討する。

 一方それらの場合の病理組織的検索と臨床効果についても検討する。

22.標織化合物(試薬)の製造に関する研究

1. 交 付 先 第一化学薬品(株)

2. 補 助 額 4,646千円

3. 研究目的 アイソトープ標識化合物はアイソトープと同様に各分野における研究ならびに利用面があり、この需要も年々増加しているので、さしあたり最も需要の多いものを取り上げ、国内での円滑なる供給体制を図るための製造の研究を行う。

4.研究内容
 最も需要の多い標識化合物はC14標識化合物(特に配糖体)である。この生合成の研究を行い、自給体制を確立する。さらにP32、S35、I131等の半減期の短いアイソトープ標識化合物の合成についても技術的能力を獲得する。

23.放射性医薬品の製造に関する研究

1. 交 付 先 大日本製薬(株)

2. 補 助 額 3,428千円

3. 研究目的 放射性標識化合物で特に医学分野に使用されているものおよび今後医学の進歩に役立つ放射性医薬品についての製造研究を行う。

4. 研究内容
次の三つの放射性医薬品の製造研究を行う。

1) 現在癌等の腫瘍治療剤として用いられている放射性金コロイド液の製造研究

2) 貧血症造血機能診断に用いる放射性鉄複合体の製造研究

3) 高血圧症の早期診断用放射性医薬品の製造研究

24.チューリップ及び紫雲英の品種改良に関する研究

1. 交 付 先 富山県

2. 補 助 額 3,855千円

3. 研究目的 北陸地方の特産であるチューリップ等の品種改良を行い、輸出の振興を図るとともに、畜産(酪農)の振興に必要な飼料である紫雲英の品種改良を行う。

4. 研究内容
 チューリップおよび紫雲英を照射または浸漬によって突然変異をおこさせ、新品種を育成する。その目標は変化に富む花、耐病性、収量の増加、早生化等である。

25.γ線及びβ線利用による主要園芸植物の品種改良に関する研究

1. 交 付 先 東京農業大学

2.補 助 額1,026千円

3.研究目的 蔬莱類および花卉類(球根類)にγ線およびβ線を利用して品種改良を行い、短期間に新しい形質をそなえた優良種苗を創設して輸出産業に貢献しようとするものである。

4.研究内容
 照射または浸漬により、蔬菜類については早生、耐病性、耐旱性、耐寒性、増収性等の形質について突然変異を誘発して優良な雑種第1代種子を作り、球根類(花卉)についても同様に花形、花色、草状等につき新品種を育成する。なおこれらの遺伝的様式もあわせて検討する。

26.リップ法による国産ウラニウム鉱よりウラニウムの抽出精製に関する研究

1. 交 付 先 (株)日本オルガノ商会

2. 補 助 額1,792千円

3. 研究目的 低品位ウラン鉱からのウラン抽出について、RIP抽出法における各最適抽出条件、最も工業的、経済的な処理工程の検討、実装置の設計に必要な諸データの収集を行い、RIP抽出法の基本方式の決定をする。

4. 研究内容
 RIP抽出は硫酸抽出した液を5%のスラリーとしてRIPにかけてウラン抽出を行い、吸着および脱着の方式、吸着や沈澱の最適pH、通液速度、振動速度、溶出液組成、温度等の各種の条件を決定する。

27.炭酸ガス冷却型原子炉における炭酸ガス圧送器、熱交換器等に関する基礎研究

1. 交 付 先 富士電機製造(株)

2. 補 助 額14,616千円

3. 研究目的 炭酸ガス冷却炉における熱交換器、炭酸ガス圧送機等に関する研究を行い、将来これらの設計に必要な資料を得ることにある。

4. 研究内容
 炭酸ガス冷却炉に使用する炭酸ガス圧送機を試作し、その翼形、材質、軸からのガスの漏洩防止等に関する研究を行うとともに、炭酸ガス冷却炉における熱交換に関する基礎資料を得るため炭酸ガスを300~600℃、3~35気圧の範囲に変化させて、発熱、黒鉛、熱交換器等の熱伝達に関する研究を行う。さらにCO2 ガス中に含まれる微小物質を定性定量し、これが放射能を帯びた場合の対策につき検討する。

28.舶用原子炉の制御に関する実験的基礎研究

1. 交 付 先 川崎重工業(株)

2. 補 助 額15,360千円

3. 研究目的 船舶に原子炉を利用する場合には、負荷変動が著しく大きくかつ頻度も大であるので、その急激な負荷変動に対応する制御方式および機構に関する基礎資料を得んとするものである。

4. 研究内容
 熱源(出力約1,000kW)として蒸汽を使用したBWRの模型回路を作り、その負荷を0~100に変動せしめて、炉、熱交換器、蒸気ドラム、タービン、コンデンサー回路における各部の負荷変動に対する対応性につき研究し、炉の制御方式、制御機構についての基礎データを得る。

29.原子炉用熔接構造物の高周波加熱による局部焼鈍法に関する研究

1. 交 付 先 東京芝浦電気(株)

2. 補 助 額 8,228千円

3. 研究目的 原子炉用の大型熔接構造物は現地熔接と焼鈍が必要となるが、この現地焼鈍に高周波加熱による方法を利用して熔接による部分的な内部応力の除去を行おうとするもの。

4. 研究内容
 まず鋼板およびステンレス鋼の熔接部について加熱による残留応力の変化とその強度に及ぼす影響を特に衝撃試験および疲労試験によりしらべ、次いで実物に近い構造の模型により高周波加熱を実施し、加熱方法により内部応力の変化を各種歪計をもって測定し、高周波加熱による部分焼鈍法を確立する。

30.原子燃料の被覆に関する研究

1. 交 付 先 (株)日立製作所

2. 補 助 額 5,388千円

3. 研究目的 引抜法により天然ウラン上にアルミを被覆する技術を確立する。

4. 研究内容
 昭和31年度において実施した研究の継続であって、昭和31年度において銅、鉄等のウランに似た金属を利用してアルミ被覆についての方法を研究したが、これらの成果をもとにしてウランについて実施しようとするもので、アルミおよびアルミ合金等の被覆材の動的腐蝕試験、ウランの熱処理、ウランに対する被覆実験および燃料要素の表面欠陥の検査等の研究を行う。

31.最終段階における重水の濃縮方法に関する研究

1. 交 付 先 旭化成工業(株)

2. 補 助 額10,672千円

3.研究目的 回収電解法による重水の高濃度濃縮に際して90%以上の濃縮段階においては、重水の吸湿性のため、濃度の低下を見る。そのため、特殊な電解槽、蒸溜装置を用い、濃縮方法を研究するものである。

4.研究内容
 高濃度重水濃縮専用の電解槽を試作し、電解質を含む高濃度重水を空気に接触せしめず、ただちに蒸溜器に注入し、重水を製造し、電解質は前工程に循環せしめる連続方式装置の製作および運転の研究を行う。また最終濃縮における重水の分析は現在の質量分析では精度が悪く採用できぬため、赤外分析による方法を研究するものである。

32.水の蒸溜法を組合せた重水の製造に関する研究

1.交 付 先 昭和電工(株)

2.補 助 額 27,080千円

3.研究目的 重水の中間濃縮の研究に際し、交換反応法による低濃度濃縮との組合せにより、水の蒸溜法の研究を行う。

4.研究内容
 蒸溜法による中間濃縮の研究に必要な原料低濃度重水を水の電解および交換反応法により供給し、30%程度までの濃度の重水を蒸溜法により濃縮するに際しての熱効率、蒸溜効率、H2O-HDO-D2O三成分系の蒸溜等の研究を実施する。

33.ベリリウム及び酸化ベリリウムの成型加工に関する研究

1.交 付 先 日本碍子(株)

2.補 助 額 9,124千円

3.研究目的 反射材、減速材に使用するベリリウム、酸化ベリリウムの製造方法の研究を行う。

4.研究内容
 原子炉に使用できるBe-oxideの精製および還元、金属Beの精製の研究を行い、これらを用い成型に必要な原料の調製方法の研究を実施し、次いでベリリウム、酸化ベリリウムの成型方法、加工方法の研究および焼結体の焼結に関する研究を行う。

34.原子炉用容器の製作に対するステンレス肉盛熔接に関する研究

1.交 付 先 新三菱重工(株)

2.補 助 額 4,883千円

3.研究目的 クラッドスチールを得る方法として、ボイラー用鋼板にステンレスを肉盛熔接法によって得る方法について研究する。

4.研究内容
 まず平板における肉盛熔接法について各種熔接法について比較検討し、熔接部の性能試験を実施し溶接法を決定し、円筒、鏡板、耐圧容器に肉盛熔接を実施して施工法、熔接条件の調査、欠陥の発生度、焼鈍による影響等を検討する。