JRR−1の運転開始

 日本原子力研究所では、わが国最初の原子炉JRR−1(ウォーターボイラー型炉)の組立を本年4月末ほぼ完了し、5月27月にはマリンクロット化学会社で加工した硫酸ウラニルの入着を見た。(本誌第2巻第6号32ページ参照)その後炉体および建屋の漏洩試験、測定器の安正など臨界実験を行うために必要な各種の準備が進められ、8月中旬には燃料の溶解が開始された。この間、不良部品の取換え、燃料溶液系統の一部設計変更による手直し、操作員の誤りによる破損計器の復旧、燃料中の不純物の除去など、当初予想されなかった障害が次々と生じたが、日本原子力研究所の担当者たちは、よくこれらの困難にうちかって、8月下旬には臨界実験の準備を完了した。

 8月26日には、ノースアメリカン航究会社、インターナショナル・アトミックスのロードバック、カクラム両技師の指導のもとに、神原JRR−1管理室長以下21名の研究所員によって午前9時からいよいよ臨界実験が開始された。

 最初、サブパイル室の燃料ドレインタンクに7lの蒸溜水(少量の硫酸アルミニウム、硫酸銅、硫酸鉄を添加)が満され、これが圧縮酸素によって炉心に注入された。炉心の下部には、BF3カウンター、核分裂箱があり、あらかじめ装入されている中性子源による炉心の中性子束が計数された。

 次いで、6回に分けて燃料溶液(濃度:U235100g/水1l )が逐次追加注入された。1回ごとに中性子束カウント数の逆数とU235量が図上にプロットされた。この線図を外挿して、零出力臨界質量はU235 1,170gと推定された。

 最終回には、U235 1,194.1gが注入された。このとき燃料溶液の質量は33,574.1g、容量は約25l であった。4本の制御安全棒がつぎつぎと引き抜かれた。4本目の制御棒が約半分引き抜かれたとき、急速に中性子カウント数が増大し、炉は臨界に達して出力60ミリワットを示した。時に8月27日午前5時23分であった。

 その後、9月3日にはU235 102.3gが追加注入され(U235総量1,296.4g)全出力運転試験の準備が完了し、6日午後10時には40kWの出力で約1時間にわたる連続運転が行われ、ここにJRR−1の試運転は成功裡にほぼ完了した。