第4回 日 時 昭和32年5月31日(金)午後2時〜5時 場 所 人事院ビル236号室(原子力委員会会議室) 出席者 菊池、三島、脇村、山県、大屋、倉田、松根、瀬藤、稲生、田中 各参与 議 題 1.昭和32年度原子力開発利用基本計画について 議事内容 1.昭和32年度基本計画について 石川委員:今日の議題は長期基本計画を予定していたが、32年度基本計画が決定したので御披露する。(島村政策課長から32年度基本計画の説明あり) 島村課長:32年度基本計画は、これまでの参与会等で伺った御意見を参考として決定した。ことに三島参与の御発言によって燃料関係に力を入れるように変更した。 菊池参与:CP−5の重水は国産できるか。 田宮担当官:今のところは輸入する予定で、建設には間にあうつもりである。 2.基礎研究の充実について 三島参与:ウラン鉱石の還元法に関する研究は、国内の諸方面で行われている。原子燃料公社は生産を主とする所なので、各方面で行われている研究を総合的にまとめるセンターが欲しい。たとえば、原研に基礎的な研究をするスタッフを置いて、相互に連絡をとるようにする。今のままでは工業化する際にデータがまちまちになる。 嵯峨根原研理事:最近東北大学の先生にもきていただき、研究も軌道にのると思う。 藤岡委員:溶融電解法によりウランの精錬を工業化する時の欠陥をお尋ねしたい。あるいはマグネシウム還元を実用化するとして、プラントの輸入が必要であるか。国内での基礎研究を積み上げていってやっていけるか。 三島参与:溶融の方はあまり知らないが、還元法としてはマグネシウム還元が使われているのではないか。ごく初期には小規模のパイロットプラントを輸入するのがよいと思う。それを見本にし、日本の若手の研究者を総動員して協力をさせていくようにしたい。 田中参与:濃縮ウランを日本でつくることは見すてているのか。 藤岡委員:見すててはいない。今すぐ大工場をつくることは考えられないので、委託研究を行っている。 大屋参与:高い電子ボルトをもつシンクロサイクロトロンによる研究では、日本はかなりおくれている。素粒子の研究や原子炉工学の分野で世界に伍していくには設備があまりに貧弱ではないか。材料試験もやらねば、動力炉の開発面でハンディキャップがあると思う。 菊池参与:エネルギーの領域ごとに別の研究題目があるので、現在の核研の粒子破壊装置は今後とも使えるが、いずれは高エネルギーのものによる実験をやりたい。核研は第2次計画で考えているが、造るとすれば50〜100億電子ボルトの装置が必要で、約40億円の資金を要する。人員の点からも今の核研のままでは不可能であり、原研の目的とも多少ちがうので、どうしていくべきか考えていきたい。 大屋参与:西欧諸国とちがい、日本は独力でこのような装置を造っていかねばならない。 原子力発電が軌道にのったら、全国を勧進してでも、核研究の面を充実させたい。 瀬藤参与:技術者の養成訓練はもっと基礎的な面からかためていけないものか。 藤岡委員:現在の日本の養成計画は大学の先生を養成しようというものではなく、遺憾ながら生徒の養成計画にすぎない。 嵯峨根理事:外国では人員養成のそのような根本的な問題をどの程度真剣に考えているのか、宇田委員長に御視察願えれば幸いと思う。 3.原子力開発にともなう世銀借款について 宇田委員長:世銀の考えとしては、世界的にみて原子力に対する融資をしなければ時代後れとなるおそれがある。また原子炉を英国から買っても米国から買っても金融すべきである。この二点は確定している。世銀では原子炉型式を選択する委員会を設けているので、日本に導入する場合もその委員会にメンバーを送るのがよいと思っている。 田中参与:世銀から借りる場合、原子力発電所自体の範囲での利益によって償還計画をきめるのか。 松根参与:原子力は工業採算のみではいかぬから、電力会社等の保証等でやると思う。 4.天然ウラン買入の問題について 荒木原子力調査課長:米国からの天然ウラン買入は、昨年米国案が届き、来週初めにそれに対するわれわれの案を提出する。研究協定で天然ウランと一緒に重水を買入れる考えである。 米国のAECは国際原子力機関の規約に従う建前から、新しい案を提出してくるように思われる。 佐々木原子力局長:カナダからのイエローケーキの購入を考えている。これは燃料公社の中間精錬工場に使う。カナダの協定案が6月末〜9月初めにできる予定で、他の国とかけ離れて厳しい条件でないかぎり、カナダからの輸入は早く実現しそうである。 藤岡委員:ウラン238からできるプルトニウムを軍事用に使わないという保証があれば自由に出す方針らしい。 嵯峨根理事:逆にいえば、オブザーバーつきの自由で完全な自由ではない。 5.その他 1)宇田委員長から6月4日に出発して欧米を視察するにあたって挨拶があった。 宇田委員長:欧米各国で外交交渉や準備交渉をやるのではないが、各国の原子力開発方針の長短や日本との提携の可能性を調べてきたい。資金対策、ことに輸出入銀行や世銀からの借款に関する問題も検討したい。発電用原子炉の開発の問題に関しては、原研は長期の基礎研究をやるべきである。10万kW以上の原子炉は、電力会社やメーカー等を資本構成の中心にもってきて、そのようなグル−プの原子炉を入れたい。これが政府のだいたいの基本方針である。 2)亘理原子力局調査官から、配布資料にもとづいて、ユーラトムの開発計画に関する説明があった。 3)島村政策課長から、国会で審議された原子力関係の諸法律について、配布資料にもとづき説明があった。 |