原子力局 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制 原子力の開発が将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興を図り、人類社会の福祉と国民生活の水準向上にきわめて重要な意義を有するものであることはすでに明らかなところであり、わが国においてもさきに原子力基本法が制定されて原子力開発の基本方針が定められて以来、原子力に関する行政機関として原子力委員会、原子力局が設置され、開発のための機関として日本原子力研究所(以下「研究所」という。)、原子燃料公社(以下「公社」という。)が政府資金を中心として発足する一方、原子力に関する研究を開始する民間企業も急激に増加しつつある現状であり、これらの機関による原子力の開発は、核原料物質の探鉱、核燃料物質生産の研究、原子炉の設置およびその運転による研究、計測器その他原子力応用機器の研究等、次第に軌道に乗りつつある。 1.基本的精神、特に平和利用の確保 原子力開発の基本的精神についてはすでに原子力基本法において明確にされているところであり、この法律においても基本法において「原子力の研究」、開発及び利用は、平和の目的に限り、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。」と規定している精神にのっとって規制を行うこととなっている。 2.事業等の規制 この法律において規制する対象としているのは、製錬、加工および再処理の事業、原子炉の設置および運転ならびに核燃料物質の使用であって、それぞれについて指定制または許可制をとっており、次のような方針で事業等の規制を行う予定である。 (1)製錬および加工の事業ならびに原子炉の設置に関する指定または許可については、個々の指定、許可について原子力委員会の意見をきき、これを尊重して行うこととして、原子力委員会が企画し、決定する原子力開発の方針に即応しうる態勢を整えている。 (2)(1)と関連して製錬の事業および原子炉の設置については、その指定または許可をすることによって原子力の開発および利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれがないと認められるときでなければ指定または許可をしてはならないものとしており、原子力開発の計画的な促進と核燃料物質および原子炉の有効利用を図っている訳である。 (3)個々の事業等についてはまず製錬の事業は公社は当然行えることとなっているほか、指定を受けた事業者が行えることとなっており、製錬の初めの段階である抽出および精製の工程については、他の金属等とともに製錬することが望ましいもの、副産物として生産されるもの等必要に応じて民間事業者を指定する予定であるが、金属ウラン、金属トリウム等が最終的に生産される還元工程等についてはなるべく公社に集中して行わせる方針である。 (4)加工の事業については公社のほか許可を受けた業者が行えることとなっており、これは燃料の形態が原子炉の型によってことなり、また従来の技術によるところが多いので特に指定制とはせず、許可の基準として過剰設備による弊害を防ぐこととしている。 (5)原子炉の設置については研究所のほか許可を受けた者が設置できることとなっており、実験研究の段階においてはできるだけ研究所に集中することとし、実用化が進むにつれて核燃料物質および原子炉の有効利用を考慮しながら次第に広く許可をして行くこととなろう。 (6)使用済燃料の再処理の事業については、その結果として非常に危険度が高く、また兵器にも利用される恐れのあるプルトニウム、ウラン233等が分離されること、放射線による危険度の高いこと、処理すべき使用済燃料の量が当分の間は多くの事業者を必要とする程の量には達しないであろうこと等から見て、公社に集中して行わせることとしており、研究所は再処理の研究を行う必要を考慮し、みずからの原子炉から生ずる使用済燃料について研究的な再処理を行えることとしている。 (7)最後に製錬、加工、再処理の事業または原子炉の運転以外に核燃料物質を使用する場合はすべて許可制として使用目的、使用する核燃料物質の種類、数量等を把握しうるようにし、また、これらの指定、許可等を受けた者以外の者が核燃料物質を譲り受けることを禁止して、核燃料物質がみだりに散逸することを防止しようとしている。 3.原子炉、核燃料物質等による災害の防止 原子力の開発を進めるにあたって、その従業者および一般公衆に危害を及ぼすことを未然に防止し、あわせて事業施設の保全を図るためには、事前に万全の措置を講じるとともに、災害を最小限度にくいとめる措置を用意しておくことは当然であって、そのためこの法律においては次のごとき諸規定を設けている。 (1)指定、許可の際の措置 (2)保安規定 (3)施設の検査等 (4)保安のための措置、貯蔵、廃棄等の基準 (5)主任技術者 (6)危険時の措置 4.国際協力その他の必要による一般的監督 原子力基本法の精神にのっとり、原子力の研究、開発および利用に関して進んで国際協力に資することとなっているが、原子炉、核燃料物質等について国家間の条約に基づいて国が受け入れたものについて、国が種々の義務を負うことがありうることはすでに日米協定にも前例があり、近く発効する国際原子力機関憲章においても予定されているところであり、その受入態勢をととのえておくことが前々から要請されていたので、この法律においては、将来負担すべき義務についても十分これを履行しうるよう、記録、立入検査、質問、報告徴収等一般的監督の規定をおき、原子炉等の運転、核燃料物質の保全の状況等を把握できるとともに、政府がこれらについて責任を取りうる態勢を整備している。 |