原子力委員会

特殊核物質の賃貸借に関する日本国政府と
アメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国
原子力委員会との間の第二次協定について


 標記の日米両国間における第二次細目協定の調印は、5月8日午後5時30分(日本時間9日午前6時30分)ワシントンの米原子力委員会において下田駐米代理大使とホールAEC渉外部長との間で行われた。この協定は、昭和30年11月14日調印された「原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(昭印30年12月27日条約第19号)すなわちいわゆる日米原子力研究協定にもとづいて、目下茨城県那珂郡東海村に建設することになっており、現在AMF Atomics 社において製作にあたっているCP−5型実験用原子炉に使用される燃料としての20%濃縮ウラン4kg(ウラン235分が4kg)の貸与の条件等の細目を規定したものであり、昨31年11月23日署名されたウォーターボイラー型実験用原子炉(本年6月ごろ運転を予定されている)のをめの燃料としての濃縮ウラン2kgの賃貸借を規定した第一次協定、すなわち正式には「特殊核物質の賃貸借に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の協定」(昭和31年12月14日条約第24号)につぐもので、本協定に認められた20%濃縮ウラン6kgの制限限度まで充足されることになる。
 この協定は次に記すように前文、全文8条および交換公文からなっており、第一次協定と内容的に類似しているが、副産物のプルトニウムの処理、免責条項、貸借量の解釈、濃縮度についての了解等の点で若干ことなっており、CP−5型がウォーターボイラー型に比して出力が大きく、燃料が金属加工された板状のものであることなどの点から、当然のことながら第一次協定に比して複雑な規定となっている。
 5月17日国会においてこの協定および第1次協定第1条の特例に関する公文の交換について承認が得られた。

特殊核物質の賃貸借に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府
を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の第二次協定

 日本国政府(以下「賃借者」という。)及びアメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会(以下「賃貸者」という。)は、1955年11月14日に署名された原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(将来改正され又はこれに代るものを含む。)に基く特殊核物質の賃貸借に関し、同協定に含まれるすべての条件、規定及び保証に従って、次のとおリ協定する。

   第 1 条
A 賃貸者及び賃借者は、日本国茨城県那珂郡東海村日本原子力研究所に設置されるAMF原子力会社製の重水型研究用原子炉の操作における使用のため、19.5パーセントから20パーセントまでの間に濃縮したウランに含まれるU−235において4キログラムをこえない量の濃縮ウランであって賃借者が雇用する契約者(以下「請負人」という。)がアメリカ合衆国において製造する燃料要素に含まれるものを、それぞれ、賃貸し、及び賃借することに同意する。ただし、この物質の4キログラムの最大限の活用を可能にすることが賃貸者の意図するところであるので、取り出された燃料要素の放射能が日本国内において減衰している間若しくは燃料要素が運送されている間も、又は相当の量の燃料要素がたまたま喪失され若しくは破壊された場合にも、原子炉の効果的かつ継続的な操作を可能にするため必要であると賃貸者が認める追加量を、賃借者の要請に基き、これに加えるものとする。前記の濃縮度についての規格は、原子炉のためのフィッション・チェンバーにおける使用のため賃借者に賃貸されるウランの濃縮度には必ずしも通用されるものでないこと及び両当事者は、そのウランの同位元素U−235についての濃縮度に関し随時合意することができることが了解される。

B 両当事者は、この協定の条件に従い、引渡の日、引き渡される量及び濃縮ウランの賃貸者への返還の日程について、書簡の交換により随時合意することができる。

C 両当事者は、前記の燃料要素に関し、その燃料要素の使用の結果その中で生産されるすべての物質について賃貸者が所有権を有すること及びその物質がこの協定の規定に従うべきことを合意する。

   第 2 条
A 賃借者との協議の後賃貸者及び請負人が合意する日程に従い、賃貸者は、六弗化ウランを請負人に提供するものとする。請負人に対するその提供は、賃貸者の施設において行われ、かつ、賃貸者が請負人について要求する料金及び条件(その物質を受領し、かつ、アメリカ合衆国において製造作業を行うために必要な許可を含む。)に従わなければならない。

B この協定の適用上、請負人が製造するそれぞれの燃料要素に含まれるウランの同位元素U−235についての濃縮度は、Cに規定する場合のほか、請負人がその燃料要素の製造のため賃貸者から受領したウランの濃縮度とする。それぞれの燃科要素に含まれる濃縮ウランの量は、請負人が決定し、かつ、賃貸者が適当と認める審査又は分析の後同意するものとする。賃借者は、請負人に対し、それぞれの燃料要素を確認すること並びに各燃料要素に含まれる濃縮ウランの量及び、Cに定める手続が執られない限り、同位元素の含量についての請負人の決定の証明書を賃貸者に提出することを要求するものとする。

C 賃借者が請負人と適当な取極を行った後要請するときは、各燃料要素に含まれる同位元素U−235についての濃縮度は、賃貸者及び賃借者が別段の合意をしない限り、次の機関のいずれかが決定することができる。

(1)テネシー州オーク・リッジのオーク・リッジ国立研究所及びケンタッキー州パドゥカの原子力施設を操作するユニオン・カーバイド原子核会社

(2)オハイオ州ポーツマスの原子力施設を操作するグッドイヤー原子力会社

(3)ワシントン州ハンフォードの原子力施設を操作するジェネラル・エレクトリック会社

(4)イリノイ州レモントのアルゴンヌ国立研究所を操作するシカゴ大学

 両当事者は、請負人が燃料・要素を製造する過程において前記のいずれかの分析者によるアメリカ合衆国における分析のため試料を取り出す時点について合意するものとする。分析の費用は、賃借者が負担するものとする。

D  原子炉のための燃料要素の請負人による製造並びにその燃料要素に含まれるウランの量及び同位元素U−235についての濃縮度の確定が完了したときは、賃借者は、賃貸者が賃借者との協議の後指定するアメリカ合衆国内の積出港に賃貸者のすべての許可要件に従ってその燃料要素を送付する契約者を取りきめるものとする。両当事者が別段の予告期間について合意しない限り、賃借者は、その燃料要素を輸出することを希望する日に先だち少くとも30日の予告を賃貸者に与えるものとする。賃貸者は、その指定港におけるその燃料要素の賃借者への引渡及び輸出を実施するため必要な措置を執るものとする。輸送の費用(容器の費用並びにその燃料要素の請負人から賃借者に至るまでの国内における及び海外への輸送に必要な荷造の費用を含む。)及びその燃料要素の保管費並びに賃借者への送付に関連する物理的な取扱に関するすべての手配については、賃借者が責任を負い、賃貸者は責任を負わない。

E  燃料要素に含まれる濃縮ウランの輸出地における賃借者による受領は、適当な受領証によって証明されるものとする。賃借者は、その後は、前記の協力のための協定の規定に基くその濃縮ウランの保全について、健康及び安全の危険に対する保護措置について、並びに同濃縮ウランのあらゆる喪失及び破壊(原因のいかんを問わない。)について、全責任を負うものとする。

   第 3 条
 賃借者は、照射を受けた燃料要素を、放射能が適当に減衰した後、かつ、賃貸者が受諾する健康及び安全の危険に対する適当な保護措置に従って、賃貸者及び賃借者が第1条Bの規定に基き合意する日程により、賃貸者が賃借者との協議の後指定するアメリカ合衆国内の到着港において自己の負担で引き渡すものとする。この場合、賃貸者は、その燃料要素の輸入のため必要な措置を執るものとする。その後に、賃借者は、両当事者が別段の合意をしない限り、自己の負担で、その燃料要素を賃貸者が指定する再処理施設又は他の施設に輸送する契約者を取りきめるものとする。賃貸者は、次条A(2)(b)に定めるところに従い、その燃料要素の再処理の費用がその燃料要素に含まれる回収することができる特殊核物質の価額をこえると賃貸者が決定し、かつ、賃貸者及び賃借者がその燃料要素を再処理しないことに合意するときは、その燃料要素貯蔵のため又は他の適当な処分のため受領するものとする。賃貸者は、再処理のためその燃料要素を受領し(次条A(2)(b)に定める場合を除く。)又は賃借者と過当な金銭的決済を行うものとする。ただし、賃貸者が認める他の施設を利用することができるので賃貸者がその燃料要素を自己の施設における再処理のためには受領しないと決定するときは、賃借者は、自己の負担で、その燃料要素を前記の他の施設で賃貸者の仕様に合致するプルトニウム金属及び六弗化ウランに又は合意される他の形状に再処理するよう手配するものとする。その燃料要素を再処理のため送付し、又は受領する賃借者の契約者は、賃貸者がその契約者について要求する料金及び条件(その物質を受領し、かつ、アメリカ合衆国において再処理作業を行うために必要な許可を含む。)に従わなければならない。

   第 4 条
A 賃借者は、請負人が製造する燃料要素に含まれる濃縮ウランの賃借に対し、次に定める料金を次に定める時に合州国通貨で賃貸者に支払うものとする。

(1)この協定に基いて賃借される濃縮ウランであって請負人が製造したそれぞれの燃料要素に含まれるものにつき、引渡の時における濃縮度を基礎として計算した濃縮ウランの価額の年率4パーセントの使用料。その使用料は、それぞれの燃料要素が賃借者に引き渡された日から、(4)に定める場合のほか、賃貸者が再処理のため受領する物質については、賃貸者が当該燃料要素を賃貸者の仕様に合致するプルトニウム金属及び六弗化ウランに若しくは合意される他の形状に再処理した日又は賃貸者が当該再処理のため妥当な期間であると決定する期間が満了した時のいずれか早い時までのもの、賃貸者の施設以外の施設において再処理される返還された燃料要素については、それぞれの燃料要素が再処理のためその施設に送付された日までのものとする。

(2)次に掲げる価額の差に等しい消耗及び濃縮度低下補償の料金

(a)各燃料要素に最初に含まれ、かつ、この協定に基いて賃借される濃縮ウランの量及び同位元素U−235についての濃縮度から決定される価額

(b)賃貸者の再処理施設又は認められた再処理施設に送付された当該燃料要素から回収することができる特殊核物質の量及び濃縮度から決定される価額。返還された燃料要素から回収することができる特殊核物質の量及び濃縮度は、賃貸者に送付された燃料要素については賃貸者が、認められた再処理施設に送付された燃料要素については賃貸者の同意を得て同施設が、決定する。ただし、賃借者の要請があるときは、照射を受けた各燃料要素から回収することができる後者の場合の特殊核物質の量は、賃貸者による分析によって、又は賃貸者及び賃借者が合意する他の方法によって決定するものとする。その分析の費用は、賃借者が負担するものとする。
 賃貸者が、操作記録に基き、再処理の費用がその燃料要素から回収することができる特殊核物質の価額をこえると決定し、かつ、賃貸者及び賃借者がその燃料要素を再処理しないことに合意するときは、その燃科要素に含まれる物質による債権は、認められない。

(3)賃借者がこの協定に基き賃借した濃縮ウランを含むいずれかの燃料要素を、その喪失、盗難、又は完全な破壊のため、賃貸者の再処理施設又は認められた施設に返還することができないと両当事者が決定したときは、賃借者は、その後30日以内に、(2)(a)に定める価額を支払うものとする。

(4)(3)に定める決定が行われた時に、その決定に係る燃料要素に関する使用料は、終了する。賃貸者が(2)(b)の最後の文に定める決定を行う場合には、使用料は、その決定に係る燃料要素が前条に定めるところに従って賃貸者により指定された施設に送付された時に終了する。

(5)再処理のため賃貸者に返還され、かつ、賃貸者により再処理された燃料要素に関しては、その燃料要素を再処理するための賃貸者の料金に等しい再処理料

B  この条の規定の適用上、賃借者に引き渡されるそれぞれの燃料要素に含まれる濃縮ウランの価額は、賃貸者が設定した各種の濃縮度の同位元素U−235を含むウランの価額の表であって当該燃料要素が賃借者に引き渡された時に実施されていたものに従って決定されるものとする。賃貸者の再処理工場又は認められた再処理施設に返還されたそれぞれの燃料要素から回収することができる濃縮ウランの価額は、当該燃科要素が賃借者に引き渡された時にそれに含まれていた濃縮ウランに適用された価額の表に従って決定されるものとする。引き渡された燃科要素に含まれるウランの濃縮度又は返還された燃料要素から回収することができるウランの濃縮度が価額の表中の二の連続した濃縮度の間にあるときは、当該濃縮度に対する価額は、それらの二の濃縮度の間の直線内挿法によって決定されるものとする。賃貸者に返還された燃料要素から回収することができるプルトニウムの価額は、その物質について賃貸者が設定する燃料としての価額で、プルトニウムを含むそれぞれの燃料要素が賃貸者の再処理施設又は認められた施設に送付される時に実施されているものとする。

C この協定に基く料金は、次のとおり支払われるものとする。

(1)使用料は、年払いとする。

(2)消耗及び濃縮度低下補償の料金は、返還された燃料要素から回収することができるプルトニウムの量並びに返還された燃料要素から回収することができるウランの量及び濃縮度の決定に基いて発出される請求書を賃借者が受領した後30日以内に支払われるものとする。

(3)A(3)の規定に基く料金は、A(3)に定めるところに従って支払われるものとする。

(4)再処理料は、賃借者がその料金の請求書を賃貸者から受領した後30日以内に支払われるものとする。

   第 5 条
 賃借者は、この協定に基いて賃借する燃料要素に含まれる濃縮ウラン又はその燃料要素の中で生産される他の物質の生産、製造、所有、賃借又は占有及び使用から生ずる原因のいかんを問わないすべての責任(第三者に対する責任を含む。)について、その濃縮ウランが賃貸者から賃借者に引き渡された後は、アメリカ合衆国政府及び賃貸者に対しその責任を免かれさせ、かつ、損害を与えないようにするものとする。燃料要素がアメリカ合衆国に返還され、かつ、第3条に定めるところに従って輸入されたときは、この条の第1文の規定は、この燃料要素に関してアメリカ合衆国において前記の原因から生ずるすべての障害、喪失又は損害についてのアメリカ合衆国又は賃貸者の責任に対しては、適用されない。

   第 6 条
 アメリカ合衆国議会の議員若しくは準州代表又は同国の属領代表は、同国の法律に従い、この協定のいかなる部分にも、また、それから生ずるいかなる利益にも関与し又は参加することができないものと了解される。

   第 7 条
 この協定の適用上、「燃料要素」は、燃料棒、燃料板及びフィッション・チェンバーを含む。

   第 8 条
 この協定は、日本国がその国内法上の手続に従ってこの協定を承認したことを通知する賃借者の公文を賃貸者が受領した日に効力を生じ、1955年11月14日に署名された原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(将来改正され又はこれに代るものを含む。)の期間が満了し、又は同協定が廃棄されるまで効力を存続する。
 以上の証拠として、この協定の当事者は、正当な権限によりこの協定に署名させた。

 1957年5日8日にワシントンで、日本語及び英語により本書2通を作成した。

日本国政府のために

下 田 武 三

アメリカ合衆国政府を代表して行動する
合衆国原子力委員会のために

ジョン・A・ホール


参   考     (日 本 側 書 簡)

 書簡をもって啓上いたします。本使は、本日署名された特殊核物質の賃貸借に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の第二次協定に言及し、同協定を締結するための交渉において到達された次の了解を述べる光栄を有します。

1  前記の協定第1条Bによれば、日本国政府(以下賃借者という。)及び合衆国原子力委員会(以下賃貸者という。)は、賃借者に賃貸される物質の引渡の日及び返還の日について合意することができることとなっている。引渡及び返還の日程を確定する場合に、賃借者は、その合意された日程にかかわらず、その物質を1960年9月30日より前のいかなる時にも返還することができることが了解される。賃借者は、いかなる場合にも、1960年9月30日又は同協定の終了の時のいずれか早い方の時に同物質を返還するものとする。

2 賃貸者は、賃貸者が前記の協定第2条Aの規定に従って六弗化ウランを賃借者が雇用した請負人に引き渡す時に、引き渡す六弗化ウランの濃縮度及び純度を請負人に通告し、かつ、その通告の写を賃借者に送付するものとする。請負人に引き渡された六弗化ウランの量、濃縮度及び純度が請負人と賃貸者との間の契約に掲げる仕様に合致しなかったときは、アメリか合衆国政府の責任及び補償義務は、賃貸者が、その人六弗化ウランの返還に対し、賃貸者の施設において同仕様に合致する六弗化ウランを引き渡すため合理的な努力を払い、かつ、同仕様に合致しない六弗化ウランの賃貸者への返還のため生じた荷造及び輸送のための請負人の合理的な費用を払いもどすことのみに限定されるものとする。

3 前記の協定第3条及び第4条A(2)(b)の規定に関し、賃貸者は、返還された燃料要素の再処理の費用がその中に含まれる回収することができる物質の価額をこえるか否かを決定するに際し、賃借者に対し、再処理費用の総額見積り及びその主要事項別細目を供与するものとすることが賃借者の了解である。

4 前記の協定第5条の規定に関し、同条は、賃借者がその同意なしでアメリカ合衆国の裁判所の管轄に服することを意味することを目的とするものではないことが了解される。

 貴下が前記の了解を確認されれば幸であります。

1957年 5 月 8 日

日本国臨時代理大使 下 田 武 三

合衆国原子力委員会 ジョン・A・ホール殿



(アメリカ側書簡)

 書簡をもって啓上いたします。本官は、本日署名された特殊核物質の賃貸借に関するアメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会と日本国政府との間の第二次協定に関する本日付の貴下の書簡に言及いたします。その書画において、貴下は、ある事項に関する貴下の次の了解を述べられました。

   1 、、、、、、

   2 、、、、、、

   3 、、、、、、

   4 、、、、、、

本官は、前記の事項に関するわれわれの了解を確認いたします。

1957年 5 月 8 日

合衆国原子力委員会 ジョン・A・ホール

日本国臨時代理大使 下 田 武 三殿