原子力平和利用研究費補助金について

 昭和23年度の原子力平和利用研究費補助金に関し、科学技術庁においては4月11日付をもって以下にかかげるような二つの告示を行った。
 これは、昭和31年度における昭和31年5月7日総理府告示第234号昭和31年度における原子力平和利用研究補助金交付申請募集規則および昭和31年5月17日総理府告示第237号原子力平和利用研究補助金交付規則に相当するものであるが、告示第2号は明年度以降もこれによることとし、告示第3号に相当するものを毎年告示して研究課題および申請書提出期間を定めることとしている。
 なお昭和32年度原子力予算のうち原子力平和利用研究の助成に必要な経費は235,600千円、債務負担行為額121,800千円、合計357,400千円で、このうち昭和31年度予算において債務負担行為額として計上された126,600千円はすでに交付先が決定しているので、これを除いた分が対象となる。また研究委託の分については本申請の状況等を勘案の上、6月上旬ごろ公募のはこびになるものと予定されている。

 科学技術庁告示第2号

 原子力平和利用研究費補助金交付規則を次のように定める。

 昭和32年4月11日

科学技術庁長官 宇 田 耕 一

  原子力平和利用研究費補助金交付規則

 原子力平和利用研究費補助金 (以下「補助金」という。) の交付については、この規則の定めるところによるものとする。

(捕助金の交付の対象)
第1条 補助金は、科学技術庁長官が定める課題について行う試験研究に要する経費のうち、次の各号に掲げるものの一部又は全部について交付する。

一 機械装置又は工具、器具若しくは備品の購入、製造、改良、すえ付又は修繕に要する経費

二 原材料の購入、製造又は改良に要する経費

三 前各号に掲げるもののほか、科学技術庁長官が特に必要と認める経費

2 前項の課題は、科学技術庁告示で定める。

(補助金の交付の申請の手続)
第2条 補助金の交付の申請をしようとする者は、様式第一による申請書7通(正本1通副本6通)にそれぞれ様式第二による試験研究計画書及び様式第三による事業説明書を添えて科学技術庁長官に提出しなければならない。

2 前項の申請書の提出期間は、科学技術庁告示で定める。

(補助金の交付の決定)
第3条 科学技術庁長官は、前条の申請があったときは、当該申請に係る書類を審査し、及び必要により現地調査等を行って、補助金を交付するかどうかを決定するものとする。この場合において、適正な交付を行うため必要があると認めるときは、科学技術庁長官は、当該申請に係る事項につき修正を加えて補助金の交付の決定をすることができる。

2 科学技術庁長官は、前項の規定により補助金を交付すると決定したときは、すみやかに決定の内容を申請者に通知するものとする。

(補助金の交付の条件等)
第4条 補助金の交付の条件等については、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)の規定によるもののほか、科学技術庁長官は、必要と認める条件を附することができる。

(申請の取下げ)
第5条 申請者は、第3条第2項の通知を受けた場合において、その通知に係る補助金の交付決定の内容又はこれに附された条件に不服があるときは、当該通知後30日以内に、申請を取り下げることができる。

2 申請者は、前項の取下げをするときは、様式第四による申請取下げ届出書2通(正本1通副本1通)にそれぞれ参考となるべき書類を添えて科学技術庁長官に提出するものとする。

3 第1項の規定による申請の取下げがあったときは、当該申請に係る補助金の交付の決定は、なかったものとみなす。

(請書の提出)
第6条 第3条第2項の通知を受けた者は、遅滞なく、様式第五による請書三通(正本一通副本2通)を科学技術庁長官に提出するものとする。

(補助金の交付)
第7条 補助金は、前条の請書を提出した者に対して交付するものとする。

(補助金の支払)
第8条 補助金の支払は、原則として、補助金の交付の決定に係る試験研究(以下「補助事業」という。)の終了の認定を行い、交付すべき補肋金の額の確定した後に行うものとする。

2 補助金のうち必要があると認められる金額については、大蔵大臣と協議して前払をすることができる。

(帳簿記載)
第9条 補助事業を行う者(以下「補助事業者」という。)は、帳簿を備え、補助事業の遂行についての収支の額及び補助金の使途を明記しなければならない。

(遂行状況報告書の提出)
第10条 補助事業者は、会計年度(国の会計年度をいう。以下同じ。) の毎四半期における補助事業の遂行状況に関する中間報告書2通(正本1通副本1通)を様式第六により作成し、当該四半期経過後20日以内に科学技術庁長官に提出しなければならない。この場合において、補助事業開始後補助金交付決定の日の属する四半期前までの遂行状況については、当該決定の日の属する四半期に関する中間報告書においてしなければならない。

2 補助事業が完了した日の属する四半期、会計年度の最終の四半期及び補助事業者の廃止の承認を受けた日の属する四半期に係るものについては、前項の規定にかかわらず提出することを要しない。

(実績報告書等の提出)
第11条 補助事業者は、補助事業が完了したとき又は第14条の規定による補助事業の廃止の承認を受けたときは、完了又は廃止の承認の日から60日又は翌会計年度の4月10日のいずれか早い日までに様式第七により補助事業の実績報告書3通(正本1通副本2通)を作成し、科学技術庁長官に提出しなければならない。

2 補助事業者は、会計年度が終了したときは30日以内に様式第八による補助事業の年度末報告書3通(正本1通副本2通)を作成し、科学技術庁長官に提出しなければならない。

(補助金の額の確定等)
第12条 科学技術庁長官は、前条の規定による実績報告書の存在等を行い、その報告に係る補助事業の成果が補助金の交付の決定の内容及びこれに附した条件に適合すると認めたときは、交付すべき補助金の額を確定し、当該補助事業者に通知するものとする。

2 補助事業者は、前項の通知を受けた後60日以内に様式第九により補助事業の成果を詳細に記載した試験研究成果報告書2通を作成し、科学技術庁長官に提出しなければならない。

(計画変更の承認)
第13条 補助事業者は、試験研究計画書に記載された内容を変更しようとするときは、あらかじめ、様式第十による試験研究計画変更承認申請書3通(正本1通副本2通)を科学技術庁長官に提出し、その承認を受けるものとする。ただし、その変更の内容が次の各号の一に該当する場合には、この限りでない。

一 試験研究に対する他からの協力者又は協力事項の変更

二 試験研究の参加者及び参加人員の変更(ただし、第六号に規定する条件を充たす場合に限る。)

三 試験研究の予定期間内における実施日程の変更

四 補助金交付の対象となった物件等のそれぞれの経費の1割未満の変更

五 補助対象費目のうち、補助金交付の対象とならなかった物件等に係る経費の1割未満の変更

六 補助対象とならなかった費目についてそれぞれの経費の1割未満の変更

2 前項の承認には、必要な条件を附することができる。

(廃止の承認)
第14条 補助事業者は、補助事業を廃止しようとする場合には、遅滞なく、様式第十一による試験研究廃止承認申請書3通(正本)1通副本2通)を科学技術庁長官に提出し、廃止の承認を受けなければならない。

(補助金の交付決定の取消等)
第15条 科学技術庁長官は、第13条第1項又は前条の規定により補助事業の計画に変更又は廃止の承認をしたときは、当該補助事業に係る補助金の交付の決定の全部又は一部を取り消し、又は変更することができる。

2 前項の規定による取消又は変更を行った場合には、期限を附して、すでに交付した補助金の全部又は一部の返還を命ずることができる。

(事故の届出)
第16条 補助事業者は、補助事業の遂行に重大な支障を来たし又は来たすおそれがある事故が発生したときは、遅滞なく、様式第十二による事故届出書3通(正本1通副本2通)を科学技術庁長官に提出しなければならない。

(収益の納付)
第17条 補助事業者は、補助事業の完了により、別に定める期間内に一定の収益を生じたときは、その旨を記載した申告書を科学技術庁長官に提出しなければならない。

2 科学技術庁長官は、前項の申告書の提出があった場合において、補助事業者が相当の収益を得たものと認定したときは、交付した補助金の全部又は一部に相当する金額を国に納付させるものとする。

(成果の公開)
第18条 科学技術庁長官は、補助事業の成果を公開し、又は公開させることができる。

   様式第一

原子力平和利用研究費補助金交付申請書


   様式第二

試験研究計画書




   様式第三

事業説明書



   様式第四

申請取下げ届出書

   様式第五

請書

   様式第六

試験研究中間報告書


   様式第七

試験研究実績報告書





   様式第八

試験研究年度末報告書


   様式第九

試験研究成果報告書

   様式第十

試験研究計画変更承認申請書

   様式第十一

試験研究廃止承認申請書

   様式第十二

事故届出書

 科学技術庁告示第3号

 原子力平和利用研究費補助金交付規則(昭和32年4月11日科学技術庁告示第2号)第1条第2項及び第2条第2項の規定に基き、昭和32年度における原子力平和利用研究費補助金に係る試験研究課題及び申請書の提出期間を次のように定める。

  昭和32年4月11日

      科学技術庁長官 宇 田 耕 一

原子力平和利用研究費補助金に係る試験研究課題及び申請書提出期間

1.試験研究課題は、次のとおりとする。

1 原子炉又はこれに附帯する装置に関する研究

(1)動力炉の対地震性に関する試験研究

(2)熱交換器、循環用ポンプ、制御装置等原子炉に附帯する装置の製造に関する試験研究

(3)原子炉又はこれに附帯する装置に関する熔接施工、漏洩の発見又は防止に関する試験研究

2 核原料物質又は核燃料物質に関する研究

(1)ウラン化合物の精製に関する試験研究

(2)マグネシウム還元法又はその他の新しい方法による金属ウランの製造に関する試験研究

(3)焼結型、固溶体型等の燃料要素の製造に関する試験研究

(4)濃縮ウランの製造に必要な設備又は原材料に関する試験研究

3 減速材、反射材又は冷却材に関する研究

(1)水の蒸溜法、二重温度交換法若しくは水素の液化精溜法又はその他の新しい方法による重水の製造に関する試験研究

(2)異方性及び放射線損傷の少ない黒鉛の製造に関する試験研究

(3)ベリリウム又は酸化ベリリウムの成型加工に関する試験研究

(4)ナトリウム、ナトリウムカリウム合金等の液体金属の製造又は再処理に関する試験研究

4 原子炉又はこれに附帯する装置等に使用する材料に関する研究

(1)原子炉又はこれに附帯する装置に使用する金属材料(以下「特殊金属材料」という。)の製造又は加工に関する試験研究

(2)特殊金属材料の熔接、肉盛等に関する試験研究

(3)特殊金属材料の腐蝕又は浸蝕に関する試験研究

(4)原子炉又はこれに附帯する装置に使用する非金属材料の製造又は加工に関する試験研究

(5)核燃料物質の製錬もしくは再処理、放射性廃棄物の処理又は冷却材の再処理に使用するイオン交樹脂又は有機溶媒の製造に関する試験研究

5 放射線の遮蔽又は放射線障害の防止に関する研究

(1)ボラルもしくはポロン鋼またはボロン、ボロンカーバイト等を含む合成樹脂の製造に関する試験研究

(2)放射線により変質しない塗料、放射性を帯びることの少ない塗料または汚染された放射性の除去が容易な塗料の製造に関する試験研究

(3)汚染監視装置、放射性粉塵除去装置その他の障害防止用の装置または器具の製造に関する試験研究

(4) 障害防止用の薬剤または洗剤に関する試験研究

6 放射線の利用に関する研究

(1)高エネルギーアイソトープのキューリー量の測定法に関する試験研究

(2)標識化合物の製造に関する試験研究

(3)アイソトープ利用による上下水道における漏洩に関する試験研究

(4)放射線利用による物質の品質向上に関する試験研究

2.申請書の提出期間は、昭和32年4月11日から昭和32年5月10日までとする。