原子力委員会参与会

第12回

日 時 昭和32年2月22日(金)午後2時〜5時

場 所 人事院ビル 236号室

出席者

 伏見、菊池、児玉、三島、茅、山県、大屋、
 倉田、松根、瀬藤、稲生、田中 各参与
 宇田委員長、石川、藤岡 各委員
 法貴原子力局次長、島村、藤波 各課長 ほか担当官
 日本原子力研究所 嵯峨根理事、柴沼、岡野
 各監事
 原子燃料公社 高橋理事長、原副理事長

議 題

 1.英国の原子力発電に関する調査報告および米加両国原子力事情視察報告について
 2.昭和32年度原子力関係海外留学生派遣について
 3.第3回国連放射線影響科学特別委員会提出論文について
 4.昭和32年度原子力関係予算について
 5.今国会接出予定法案について
 6.その他

配布資料

 1.昭和32年度原子力予算案
 2.放射性同位元素等の放射線による障害の防止に関する法律案要綱
 3.原子炉等に関する規制に関する法律案(仮称)の問題点について
 4.原子力委員会参与全記録(第11回)
 5.原子力委員会月報第2巻第2号(2月号)

議事概要

石川委員:宇田委員長は国会の方で忙しく出席が遅れるかもわからないので先に始めたい。御通知した議題の「その他」の部分がむしろ多くて重要である。英国調査団のその後の報告については委員会月報を御参照願いたい。英国大使館へ報告書を日本文で提出して、先方で英訳してもらい、ヒントン氏からも見ているとの返事がきていて、日本から4月以降ふたたび調査団が来るのならば、地震の対策、燃料要素の点などはっきりお答えできるよう準備しておくといってまいっている。地震対策は英国は経験なく、アメリカでも研究はしているがまだ完全でなく、いずれも再検討の余地がある。敷地の広さについても日本ではもっと少なくて済むだろうとのことである。燃料の入手についてはカナダが有望視されてきている。

大屋参与:新聞に報道されていたが・・・。

石川委員:外交の秘密で、ここで申し上げられない点もある。なお、研究協定の改訂問題もできるだけまとめたい。貸与から購入に切りかえるよう折衝中である。国会方面からも双務協定を急ぐようにとの声がある。

島村課長:昭和32年度原子力関係海外留学生の派遣については委員会月報にあるとおり、前年の実績を斟酌して方針が決定されたわけであるが、民間をも入れる時期になってきたので今回は特に国家予算によらない分として募集する。合計80名という見当にしている。予算によるものはこの要領によるが、それ以外は受入先により異なり、枠外でどしどし行ってもらってよろしい。民間関係は産業会議を煩わした。なるべく早く選考を始めたい。

松根参与:国家予算は民間には使えないか。

島村課長:そういう制度はない。

藤岡委員:根拠は。

島村課長:法律上ではなくて、予算上の根拠であって予算をとる時そう要求した。2、3年前まではなかなか希望者がなかったけれども、現在では予算に頼らないで行けるのではないかと考えられるからである。

松根参与:若干は出せる力がよいのではあるまいか。

石川委員:金が十分にあればともかくであるが・・・。

岡野原研監事:松根参与の意見に賛成である。中途半端な世話ならむしろしない方がよいくらいであろう。たとえば、個人的折衝で大学へ行くのはどういう取扱になるか。

島村課長:この制度とは無関係である。

倉田参与:わたくしも官、民区別しない方がよいと思う。

島村課長:しかし、経費は別問題である。

茅参与:留学を奨励する場合、ドル枠がとれているというのではないか。

島村課長:円予算である。今ただちに変えることは難しい。

菊池参与:乗鞍観測の時に私大が参加できなかった例もある。

山県参与:学術会議ではどうしていられるか

茅参与:一応公務員にしてからである。

島村課長:会社のためでなく、国家のために研究に行くのなら方法もあると思う。

倉田参与:国のため出やすいようされたい。

大屋参与:渡航手続上の特典は考えられないか。

島村課長:さようなことはなく、国家関係だけが25名である。

岡野原研監事:きゅうくつに考えないでよいのではないかと思う。多少の余地を残してもらいたい。

石川委員:大蔵省へ折衝してみたい。

松根参与:「大学関係を除く」とはどういう意味か。

茅参与:提唱したのはわたくしであるが、いろいろいきさつがある。

石川委員:扉を開くことに努めて、あらためて報告しよう。

大屋参与:民間を入れるよう前々から要望してある。

藤岡委員:難しいきまりがあるわけでもあるまいから再考の余地はあるであろう。気分の問

題ともいえよう。

茅参与:留学生の専門別分類の意味は重大にとらなくてよろしいか。

藤岡委員:さほど厳密にとっていただかなくてもよろしい。

瀬藤参与:炉の地震対策の研究は進んでいるか。

法貴局次長:動力炉小委員会で検討することとし、2回ほど集まり問題点を整理している。たとえば建築研究所、電力中央研究所、日本原子力研究所などで始めている。

瀬藤参与:第2回調査団に間に合うか。

法貴局次長:なんらかの方法を考えたい。

大屋参与:解決の見込はあるのか。

法貴局次長:見込ありと考えてやっている。

大屋参与:イギリスよりも日本でやるべきであろう。

石川委員:報告書にも「解決し得る」と記してある。

田中参与:アメリカ、特に太平洋岸で研究していないか。

嵯峨根原研理事:よくわからないが、原研では地震研究所と共同で検討を始めており、固有震動等、現地で測るべきである。

藤岡委員:次に、新聞にも出ていたが、第3回国連放射線影響科学特別委員会提出論文について申し上げると、ストロンチウムの分析が重要となってきて、そのデータを持ち寄ることになっている。生物体に対する影響ことに遺伝についてはむしろセシウムの研究が重要である。4月の後、今秋と来春とにまた開催される。今回は東大斉藤教授、立教村地教授、東大都築教授、東大檜山教授の四つの論文を提出する。いわゆるサン・シャイン・レートで、鹿の角とか茶の葉とか年々殖えるものについて調べている。何年か後には相当な量になる。アメリカが許容量を3分の1に切り下げたおりからでもあり、新聞記者も重大視しているので、内容全部は発表できかねるが、檜山教授が許される範囲で話した。早速、国会の外務委員会でもとり上げられ、朝日新聞の社説にもとり入れられたが、直接は外務省の担当ではあるが原子力委員会でとりまとめている。原子力平和利用とは一応別問題である。これについて大阪市大の西脇助教授は最近の原水爆実験の影響に比べたら、平和利用にともなう影響は問題にならないとのべている。

大屋参与:立教の武谷教授だったと思うが、700万キロの炉のフィッションプロダクトは1年間に実験される5,000個の原水爆の影響に相当するといっている。セシウム、ストロンチウムの壁に突き当る。

藤岡委員:量だけの表現ならばあるいはそうなるかもわからないが、炉の安全性とは全然別であろう。

大屋参与:適当に処理されれば大丈夫であるということを大衆に知らせたい。

石川委員:前回にもお話したとおり、ドイツでストラウス氏が日、独両国とも原子力は同じくスタートから出発したといっていたが、その後ヴァンケ氏が原子力相となり、その秘書から在日大使館を通じレポートが送られてきた。商務官と打ち合わせ双方原文のままの資料を交換するようにしたいと思っている。ユーラトムでも、独外務次官が力強い演説をしている。日本も孤立しないようにせねばならぬ。マニラ・センターはなかなか規程が難しく、白人優先のような観もある。

島村課長:次に予算について御報告申しあげたい。まず、予算獲得についての御応援を感謝する。資料はお配りしてあるほかに、月報にも載っている。だいたいの経緯は、前回にも申し上げたように最初122億の要求に対し、大蔵省の査定は29億で当方としては103億の復活要求を行い、第1次35億、第2次45億と査定との間に相当の差があったが最終的に現金60億と債務負担行為30億合計90億に決定した。予算総表について申し上げると、助成費が増え、当然のことながら燃料関係が増加し、放射能調査や放射線医学総合研究所が新たに加わっている。いずれにしても、国会の審議を経た後に実行計画を立てて認可をとらねばならない。

瀬藤参与:さきほども話が出ていたように、地震の研究に本腰を入れるべきではないか。

法貴局次長:紙と鉛筆だけではなく本式に取り組みたい。

島村課長:研究所においても実行予算を練り直してもらっているところである。

三島参与:公社の32年度の構想はどうか。

高橋公社理事長:海外の精鉱を輸入して製錬研究を行う計画がある。人形峠の開発も予想以上に進んでいる。

三島参与:燃料加工は住友金属あたりに行わせるのか。

嵯峨根原研理事:実際には再検討の段階にきているが、動力炉にも間に合わせねばならないのに、まだ方針論のみで結論に達しない。

三島参与:相当早くかからないと支障をきたすかもわからない。学者の指導よりもよい工員が最初に必要になってくるので、民間会社にスタッフをもとめねばならぬ。

嵯峨根原研理事:2、3の会社にはたらきかけたい。

田中参与:地震の問題は、現実にはたとえばコールダーホール型について研究せねばならないと思うが・・・。

嵯峨根原研理事:予算にも関連してくる。シールドなどについて動力研究班でいろいろやっている。委員会で方針を決めていただかねばならない。

大屋参与:アメリカでU235を取った後のU238だけのものを日本に手軽にもらえると、加工試験に好都合だと思う。

藤岡委員:おもしろい考えだから早速調査しよう。

瀬藤参与:1962年まではカナダはウランを米国にだけしか出さないということであったが。

石川委員:カナダ政府に商社が陳情しているし、産出量も増えているのでわが国へも輸入できると思う。

藤岡委員:加工は公社で行うこととなろう。

茅参与:文部省では科学技術者養成訓練は一貫したものをもっていず、大学側から提出した案をその都度実現するかたちになっている。原子力行政に関して、大学関係を別扱いにするようにした首唱者は実はわたくしであるが、それにこだわらずに御応援願いたい。

藤岡委員:自分としても協力を惜しまないつもりであるが、昨年8大学が、原子力研究の計画を提出された時は忙しかったし、いわば連絡不十分の結果となった。人員の需要を調査して計画を立てねばならず、米英でも行っていることであるし、わたくしとしては産業会議あたりに調査をお願いしたいと思う。

大屋参与:だいたい想定できるであろう。

瀬藤参与:前回の参与会でも人員養成についてはお顔いしてある。

午後4時半 宇田委員長来場

宇田委員長:就任以来予算その他で多忙のため、参与会開催の機会を得られず残念であった。エネルギー資源対策は難しい問題であって国会でも討論されている。35年末の需給対策からみても日本経済の延びの見通しには難関が多く、原子力の果すべき任務は重大である。明快な方針を示さねばならぬ。たとえばアイソトープ導入の基本的態度、また動力炉を中心とする技術的水準の向上、原子力発電あるいは国産動力炉の計画などの問題がある。最近は、原水爆の実験が中止されない場合の予防を含めての対策など、委員会としては、当面の諸事項を打ち合わせているが、すべての点にわたって御意見を承りたい。

島村課長:次に法律案の説明に移りたいが、科学技術庁設置法の改正は、放射線医学総合研究所を設立するためのもので簡単であるから説明を省略させていただいて、障害防止法案につき前回以来かわったところだけを説明申しあげる。所管の問題は、関係省庁と話し合って解決した。レントゲン関係を除いたので法律の名前を変えた。使用、販売とも許可制として技術庁専管とした。運搬は運輸省へ譲った。労働あるいは医療、薬事行政についても調整を行っている。機器については、具体的には審議会で決めることになる。次に管理法について配布の資料につき説明申し上げる。核燃料物質の加工は許可制となり、灰の処理も当然規制するわけであ

る。公社はいわば特別扱いとなる。

山県参与:炉の検査は、イギリスではロイドが行うらしいが、保険関係で、日本でも民間の団体で行うことは考えられないか。

石川委員:イギリスでも炉はまだ国有であって一部分だけをロイドが行うにすぎない。

茅参与:レントゲンを除いた理由は何か。

島村課長:基本法にもとづいた方がよいわけであって、レントゲン関係は直接原子力開発に関係なく、また新しい問題であるためである。

嵯峨根原研理事:レントゲンの意味には、学術上の矛盾はないか。

島村課長:医療用とはかぎらない。

藤岡委員:定義は政令で行う。

茅参与:卑近な例で申せば、泥棒するには警官がいるから止めておこうというような理由のように思える。

嵯峨根原研理事:米国で行われないような規制が、わが国で行われるであろうか。

島村課長:基準については各省とも尊重することになっている。

菊池参与:既設のものはどうか。

島村課長:施行当日からではないが、規制される。

嵯峨根原研理事:関心が多いと思うから、慎重公正に願いたい。

藤岡委員:十分審議するはずである。

松根参与:原子炉を原研に集中する方針と、関西にもおくという点との調整はどうか。

藤岡委員:関西の原子炉設置は委員会以前の問題であっていわば引き継がれたかたちである。大学用の炉も、原研の支所にしようかとの考えもあったが、5年、7年先に動力炉ができるかもわからないし、研究炉は小規模であるからと例外的に扱っている。

瀬藤参与:大臣は国会で長期計画にあまり触れられない方がよいと思う。

宇田委員長:国会においても、そのようになってきている。東海村に集中するのは結構であるが、企業との態勢としては国家管理すべきものではないという考え方である。阻止してはいけないと思う。大学関係も単純にはいわれない。

田中参与:保安は衛生上のも含むか。

藤波課長:含めるようになる。

伏見参与:関西の炉は。

島村課長:「承認」とよみかえる。

伏見参与:燃料の始末は。

島村課長:再処理の事業が当然公社により行われる。

岡野原研監事:技術者の養成につき、アカデミックなことは学校で行い得るが応用技術は人を増すだけでは解決できない。研究所が行うべきだと思う。もう一つは、指導者層の養成も必要である。

藤岡委員:文部省とも関連してくるが、今のところ指導者層養成は大学院で行うことになっている。電気・冶金等の再教育は研究所で担当されてよろしかろう。それ以下のところは今後の問題であろう。

大屋参与:一研究所のみでなく、日本全体のためである。

宇田委員長:北京で技術家、ことに土木関係技術者の養成は、6,000人を半年理論、半年現場と、12,000人として訓練している。文科系統も再教育している。乏しい予算で緊急養成することも必要であるが、来年は特殊学校を作る必要がある。基本的な重要問題であるから文部省とも話し合うつもりである。

瀬藤参与:電気や航空の場合と同様に学部か大学院かの問題は再考の要がある。

藤岡委員:原子力学科のためには、物理も電気も必要である。

瀬藤参与:大臣のカレッジ論よりも、原子力学科が先ではあるまいか。

児玉参与:原子力工学科の出身者が必ずしも原子力発電に従事するともかぎらないが・・・。

茅参与:さきほど申した文部省の無定見を是正すべきである。

宇田委員長:卒業即失業の弊を改めねばならぬ。世界的に競争せねばならない。経済拡大のねらいは、現内閣の重要目的の一つである。文部大臣は、科学のみでなく精神文化も重要であるといっているが・・・。

倉田参与:電気界からの勧告で京都大学と静岡大学に電力工学が設けられたのも一つのよい例である。

山県参与:はっきりした線が出されるのを待ちたい。

嵯峨根原研理事:若い人の養成よりも、ここ10年くらいは先生クラスが大切である。

藤岡委員:同感ではあるが、差し当りは留学生制度などを活用していきたい。

嵯峨根原研理事:東京大学ならばそれがやれるであろう。

藤岡委員:相談会を開きたい。

次回は、3月15日(金)午後2時に開会することを決定して午後6時散会した。