原子力委員会参与会

第 11 回

日 時 昭和31年12月21日(金)午後2時〜5時

場 所 人事院ビル 236号室

出席者 伏見、菊池、児玉、三島、山県、大屋

 倉田(代理大西)、松根、瀬藤、稲生 各参与

 石川、藤岡、湯川 各委員

 井上専門委員

 篠原科学技術庁次長

 佐々木原子力局長、法貴次長、島村、藤波、

 堀、鈴木 各課長 ほか担当官

  日本原子力研究所 駒形副理事長、嵯峨根、

  木村 両理事

  原子燃料公社高橋理事長、原副理事長

 議 題 1.石川委員等帰朝報告
      2.放射線障害防止法案について
      3.その他

 配布資料
    1.訪英原子力発電調査団中間報告
    2.原子力委員会第10回参与会記録

 議事概要

 定刻、佐々木局長の開会のことばに続いて石川委員の帰朝報告に移った。

 石川委員:9月20日から10月13日まで滞米。その間、国際原子力機関規約採択会議に列席してきた次第である。9月23日にその協譲が行われ、26日に調印式が無事終了した。原案に対する大修正は見られなかったが、日本としても不満足な点を加瀬代表の演説の中に表わしたいと思ったところ、他の小国からも相当多く同様な意見が出ていた。理事国選出の票が取れなくなっても困るので、無難な発言にとどめる結果となったが、ともかく所期の目的を達成し得て結構であった。会議の空気は、日本の国会と同様に、むしろ出身国の方へ向いてものをいっている。たとえば、ソ連グループがなぜ中共を入れないかということを、実際は国連の下部機構にはその必要がないにもかかわらず、執拗に繰り返す。各国代表は学者でなくて大公使が多かったが、2週間の会期中七十数ヵ国が発言した。無事発足はしたものの、これからの運営には骨が折れよう。一つの問題は原子力学校について経費その他の点で殊に小国から議論が出た。また、知識や原料をもらう後進国が、その供給国から監督を受けるのは困るという意見が多いが、結局、当分は玉石混淆で行くよりほかあるまい。日本代表は最初準備会で紹介されて、以後了解運動を続けた。米国原子力委員とも何度も会い、特にフォール渉外部長からは協定原案をもらい、後事を向坊アタッシェ等に託して英国へたったような次第であった。日本の法律がまずいために米国に迷惑をかけている点もある。イギリスには10月14日に着き、17日のコールダーホール開所式に列席した。女王の祝辞が非常に印象深かった。ヒントン卿ほか二十数人と挨拶し、懇談した。18日出発、19日ドイツのシュトラウス氏に会った。日本の方が先輩だと語っていた。つまり東海村に一日の長がある。なお、10月20日から同国の原子力行政は国防省の所管に移された。フランスではフィリッポンの社長に会い、重水の工場を見せてもらった。サクレはまだ整備中のようで、低家賃の住宅など建設中であり、やはり子供の学校の問題があり、一例としてゲロン氏はパリに住んでいる。近くの硫安の工場を見学した。国内のウラン資源も有望で、国民全体が希望をもつようになっている。イギリスで訪英調査団と合流したわけであるが、だいたい中間報告のとおり、まちがいない。今後の態度は、これから決定いたしたいと思う。次にカナダに向い、同地ではハウ大臣、ベネット氏、ロイ氏等と会い、米、英、加の関係等いろいろきいたが、結論としては今しばらく待ってみてくれるようにとのことであった。再びアメリカに行き、フォックス氏から原子力発電のコスト等についてきき、シッピングボートへも行き、オークリッジに一泊した。アルゴンヌでは一部建設中のところをみたが、留学生も皆元気でやっている。ウラン製錬のクライマックス工場を見学したが、やはり全体としてアメリカは人数からいっても最も充実しており、わが国としても人員養成の重要性が痛感させられた。英国に対しては、情報交換、人物交流の途を早く開きたい。米、英の相違は、たとえば、アイゼンハウア一大統領はウランを平和目的以外に使わないことを声明しており、イギリスではプルトニウムの兵器生産への転用を警戒している。炉なり燃料なりを買う時に考えればよく、神経質に議論する必要はない。つまり、炉の導入に2、3年かかるとしても双務協定だけは早く締結して知識交流を行いたい。そのためにも、もう一度英国へ調査団を派遣しデータをもらって判断したい。結局価格の問題である。今回の訪英調査団も同国の4グループについていろいろきいたが、炉を発注して4年かかるそうである。米国の原子力事情は相当進展しているし、協定を急ぐのが先決問題だという感じを受けた。

 大屋参与:双務協定を結んでいけないという意見はどういう意味であろうか。

 石川委員:字句の表現などに微妙な点はあるが、あまり躊躇していると立ち遅れる。現行の細目協定をいずれ改訂せねばならないし、よい機会であると思う。

 大屋参与:11月のストローズ声明をみても双務協定と秘密保持とは一応無関係のように思える。

 石川委員:ストローズ氏との会見の際にも、あまり慎重すぎると誰も、何も買えなくなるといっていた。

 有沢委員:双務協定と炉の購入とは必ずしも結び付いていないのではないか。

 石川委員:英国の方は燃料の点で協定を結ばないと供給してもらえない。

 大屋参与:英国の炉を買う義務がありそうに思えるが・・・・・・・・・。

 石川委員:英国のは非常に安全であるし、米国からも買うとしてもやはり必要である。

 有沢委員:ナイロンを買ってくるように簡単にはいかないと思うが・・・・・・・・・。

 大屋参与:要するに双務協定は事前の効用もあるにせよ燃料問題等の実際上の効果が大きい。

 伏見参与:研究協定と動力協定との関係はどうか。

 石川委員:一緒になっている。

 嵯峨根理事:炉や燃料を買おうと思えば、たとえば、カナダとも双務協定を結ばねばならない。

 有沢委員:われわれはカナダから炉を買おうとは思わない。

 嵯峨根参与:タックス・ペイヤー同士の意味合いがすこし違うけれども・・・・・・・・・。

 藤岡委員:バイラテラルの交流は具体的にはどうか。

 嵯峨根参与:たとえばフォックス・ミッションも、現状では留学生の引受にも困難がともなうといっていたが、そのような点が改善されると思われる。

 藤岡委員:現に留学生は相当数行っているし、むしろ国内問題ではあるまいか。

 嵯峨根理事:現況に満足するか否かの問題である。国立研究所でなくて事業会社の方へ行くようになってくる。

 石川委員:アルゴンヌあたりでも、ほかの小国から大勢きていて、日本は存外少なかった。

 大屋参与:イギリスはすこし事情が違う。

 大西氏:技術の交流はなかなかむずかしく、ロンドン・バブコックとジャーマン・バブコックの間ですら難関が横たわっている。

 瀬藤参与:英国内の四つのグループもそれぞれ違っている。

 大屋参与:結論として、たいして義務付けられるのでなければ双務協定に賛成である。

 石川委員:内容によっては締結してもよい。

 松根参与:電力の最近の需要の増え方は非常なもので、来年は石炭の必要量が400万トン増加し、10年後には石油1,000万トンを必要とする。10年後の電力需要量の半分を原子力発電によるものとすれば130万キロとなり、逆算すれば5年後に20〜30万キロの原子力発電ができても早すぎない。いずれ詳細は次回に申し上げたい。

 藤岡委員:事情はよく分るが、そのためには燃料要素を買わねばならない。

 松根参与:燃料輸入は漸次楽になろう。

 藤岡委員:今のところでは新鋭火力の方が経済的で、原子力の場合は炉から燃料からそっくり買わねばならぬので金がかかる。

 有沢委員:原子力を本組みにして発電計画を立てられたい。

 大屋参与:むかしの戦時計画のように簡単にも行くまいけれども、戦後の暗黒時代を再びきたさないように電力界が責任を持つべきであって、要は肚の問題であろう。

 松根参与:余裕をもって早目にやらないと国全体が困る。

 有沢委員:戦争ではないけれども技術を結集せねばならぬ。

 藤岡委員:タイミングの問題である。

 佐々木局長:経済5ヵ年計画以来情勢も変化している。

 有沢委員:原子力開発にもっと金を使わねばならない。

 石川委員:現状が最善ではない。

 大西氏:国策的見地から長い目でみることが必要である。

 藤岡委員:外国の電力界は火力と並行しているのかあるいは原子力一本であろうか。

 松根参与:石油による火力と併用であって石炭によるものはほとんどない。

 山県参与:船の方でも年々400〜500万キロリットルの石油が必要で10年後には倍くらいになるかもしれない。

 大屋参与:繰り返していうとおり、皆事情はわかっているのであって、国なり委員会なりの決心が必要であり、よく認識していただきたい。

 嵯峨根理事:英国の内情は十分掴み得たとはいえず、自分の研究所の指導原理も確立されていない実情である。

 駒形副理事長:日本原子力研究所の本年度の経過報告を申し上げたい。財団法人時代に東海村に土地を選定して6月15日に組織変更し、ひきつづき建設と研究とを進めてきている。所員は現在約200名。ウォーターボイラー型原子炉の設置も予定どおり順調に進捗し、1月中に部品が全部到着して3月中に組み立て、据付を終り、6月には試験運転を行う。第2号炉についても所員3名が三菱グループ数名とともに準備のため渡米中である。国産炉、動力炉、船舶関係等、所期の目的に向って進んでいる。

 高橋理事長:原子燃料公社は8月8日に正式発足した。2ヵ月後の10月20、21両日には鳥取県に出張所を開き、ひきつづいて探鉱をつづけているが、ことに人形峠は予想以上に進展している。なお、エア・ボーンを行う計画もあり、小鴨の方も有望な露頭が発見されている。また宮城、岩手の県境にもウラン鉱が確認されていて、季節や予算の関係で明年度から強力に探鉱を推し進めたい。明年度は役、職員を増加して一層陣容を強化したいと思う。

 佐々木局長:次に「放射線障害防止法案」に進みたい。

 瀬藤参与:医学関係のはテレビ受像機まで入るようになっているが・・・・・・・・・。

 藤岡委員:こちらの場合、詳細は政令で定めることになっている。

 大西氏:ポータブルのレソトゲン器械までいちいち取り締まるのは実際上不可能ではあるまいか。

 島村課長:根本的に申して機器類まで取り上げるのは疑問視されてきつつあるので、細かいものまでは入らないと思う。なお、局長の話のように一応法案の準備は進めていくが、いずれ別に審議会を置くことになっている。

 児玉参与:大学の研究室の場合のように短期間に放射性物質を取り扱う場合はどうか。

 島村課長:法の精神としては規制に従っていただかねばならないが、実際問題としては文部省の方で善処してもらえよう。

 瀬藤参与:燃料について質問いたしたい。国内の探鉱もさることながらウランを外国から入れる方はどうか。

 佐々木局長:カナダやタイから輸入することを考慮中で、近くポルトガルへも連絡したい。

 高橋理事長:製錬試験所計画も持っている。

 湯川委員:公社では研究は行わないのか。

 佐々木局長:建前としては事業体の色彩を強くしており、たとえば化学処理の研究などは研究所と共同して行うことになっている。

 藤岡委員:リファイニングの段階と違い、コンセントレーションは鉱石によりことなる。

 三島参与:材料試験炉の購入はその後どうなっているか。

 嵯峨根理事:米国で見てきたが、信頼はできても旧式であり、フュエル・エレメントも簡単でなく、問題が多い。

 藤岡委員:全然輸入を断念したわけではないが・・・・・・・・・。

 次回の参与会は新大臣がきまってから改めて通知することとして午後5時散会した。