原子力委員会参与会

第 9 回

日時 昭和31年10月5日(金)午後2時〜5時

場所 人事院ビル236号室(原子力委員会会議室)

出席者

 伏見、菊池、児玉、三島、中泉、茅、山県、倉田(代理島)、松根(代理福田)、田中、稲生 各参与
 正力委員長、藤岡委員
 有田、海野、白川 各議員
 斎藤政務次官、篠原次長、佐々木局長、法貴次長、井上調査官、荒木、藤波、堀 各課長 ほか担当官
 駒形原子力研究所副理事長、嵯峨根理事

議題

1.藤岡委員帰朝談
2.動力炉輸入にともなう諸問題
3.その他

配布資料

1.動力炉導入に関する調査事項
2.各国の原子力予算(原子力メモ第14号)
3.欧州における原子力国際機関について(原子力メモ第16号)
4.声明(原子力政策調査団)
5.原子力政策調査団に対する米原子力委員長ストローズ氏の言明
6.原子力委員会第8回参与会記録

議事概要

 正力委員長定刻開会を宜し、ついで藤岡委員から、新参与の紹介あり、

佐々木局長:本日の主要議題は、導入原子炉の調査事項であるが、その前に藤岡委員の帰朝談を伺いたい。

(正力委員長、稲生参与、ノックス氏と会見のため中座)

藤岡委員:今回わたくしが出席したシンポジウムは、ゼネラル・ダイナミックスのホプキンス氏が主宰した国際会議であったわけである。スペイン、イタリアなど外国の学者11名がそれぞれ事情を説明したが、物理学の話よりも炉のセーフティの話が多いようであった。内容の詳細は一言には尽しかねるが、安全性等を計算するのに金額で換算したりしていた。日本では原子力はエンジニアの問題だといわれるけれども、たとえば、シャルルの法則は蒸気機関ができた後から生れたわけであって、理論物理学の役割も大きい。パロマ天文台見学等いろいろな行事もあり、湯川博士も素粒子論を話された。その他興味をひいた点は、イスラエルが小国の企業としての原子力利用の話をしたことなどがある。会議後は、西部を廻り、南加大学等訪問してきた。ノース・アメリカンでは動力炉は究極的にはsodiumだといっていた。ファン・デ・グラフが、リニア・アクセレーターに置き換えられる可能性も多い。帰途、シアトルの国際物理学会にも行ってみたが、同地は小さいながら親日的な町である。

佐々木局長:都合上、議員団報告に移りたい。

有田議員:政治家6名と研究者、役所、民間6名、計12名のグループで視察してきたわけであるが、アメリカ各地の原子炉建設は、すばらしい勢で進んでいた。資金は政府の全額出資、官民共同出資、民間出資と3種類になっているが、エネルギー資源に恵まれていながら熱心にやっているのは、日本としても学ぶべきところである。ニューヨークの国際機構の会議には石川委員が出席されていたのであるが、わが国も理事国に選出される公算大である。ワシントンでは秘密条項について特に質問した。最初シーボルト氏にきき、次にストローズ氏にきいたのであるが、結局、非軍事的なものについてはなんら秘密なしということであった。詳細は配布の記録のとおりである。

斎藤政務次官:蛇足を加える必要もないが、主力を日米協力にそそいだわけである。すなわち、燃料関係を除いて一切オープンになったわけである。なお、両国があまりにけたちがいなので、漸次実施に移していきたい。

白川議員:米国では、いわゆるパイオニア精神で行っている。投機的なところがないでもないが、自由な国柄のせいだと思われる。わが国としても総力を集中しないとなかなか追い付けない。

海野議員:ワシントンで所感をもとめられた時にも話したことであるが、わが国ではまだ原子力の受入態勢が整っていない。学者とエンジニアの一体化を図らねばならぬ。米国では学者・実業家グループの意見が着々政治化されている。日本も頭脳は劣っていないと思うが、実行力が足りない。

 ついで質疑応答に入り、

斎藤政務次官:10月1日号「ライフ」誌にシッピング・ポートのことが出ている。

藤岡委員:ストローズ氏が秘密条項なしとはっきり言明されたのは結構なことであった。

佐々木局長:核燃料再処理は先方の施設を使うのであろうか。

海野議員:プルトニウムを他へ渡さない方針であろう。

茅参与:国際管理機構も、この趣旨に沿ってやることとならう。

田中参与:藤岡委員のいわれたセーフティの問題は一般論であろうか。

藤岡委員:然り。

田中参与:米国における安全性の論議は政党対立の影響もあるように思われるが・・・・・・。

(午後3時半議員退席)

 動力炉輸入にともなう調査事項に議題を移し、事務当局資料朗読。

佐々木局長:万全を期したつもりであるが、なかなか完璧には参らず、15日に出発を控えているし、十分御審議願いたい。

茅参与:プルトニウムについては例のリビイ声明が問題になると思うが・・・・・・。

松根参与代理福田氏:ゲロン氏のところでは十分実験している由である。

藤岡委員:ウランとトリウムとに眼を向けたい。

田中参与:受身の質問事項が多いようであるが、国際原子力機関憲章をよく研究して自主的な質問を附け加えるべきである。

茅参与:国連の線は最低の線であって、実際に英国へ行ってみての情勢によって適当に判断する必要がある。

駒形副理事長:炉の実際の運転状況をきかれたい。

佐々木局長:有沢委員はあまりこまかくきかないようにという意見であり、大臣は細大洩らさずきく方がよいといっている状態である。

菊池参与:経済ベースということを最大条件にするのであろうか。

佐々木局長:行ってすぐ協定なり契約なりを結ぶことはやらない。

児玉参与:英、米同一のレベルから検討すべきではあるまいか。

藤岡委員:アメリカの方が実現の可能性が多い。

佐々木局長:ゲロン氏はイギリス方式に自信を持っているようである。

田中参与:米国に対しても同様の質問事項を用意されたい。

嵯峨根理事:調査団をアメリカにも送れと今いわれている。

藤岡委員:自分としては中立だが、経済との結び付きが難しいと思う。

三島参与:材料の点からみても状況に応じて上手に折衝していただきたい。

藤岡委員:この資料では政治、経済の面が主になっているが技術上の問題はどうか。

法貴次長:別に用意している。

嵯峨根理事:ノックス氏との会見の印象は大分商売的である。炉のタイプについても百余種のうちから9種を選ぶ理由を詳しく述べていた。

菊池参与:いずれにしても商談と混同しないようかさねて念を押したい。

佐々木局長:国家協定は結んでも商業取引を行っていないところもあり、その辺がなかなか難しい。前提条件を固めたいという空気が濃い。

田中参与:コスト問題をしばらくおいて動力炉を選ぶわけには参るまいか。

佐々木局長:長期計画でも検討してみたのであるが、一応英国式を採用することに決めている。米国からと両方導入しようという結論である。

菊地参与:そういうことなら、それでも結構である。

藤岡委員:船舶関係はその後、ノールウェースウェーデンから、たとえばヤンセン氏から研究していると返事が来つつあり、ランダース氏などの専門家を招へいしたいと思っている。

山県参与:ウラン濃縮を行い、プルトニウムを使うのだろうと思う。

藤岡委員:ユーラトムについては資料を御覧願いたい。大学関係の炉については東大総長の提案や関西方面の要望など勘案して、将来数ヵ所に共同使用の炉を設置する方針を定める段階にきている。運用方法も十分研究したい。

田中参与:基礎理論とエンジニアリングの協力関係を推進する方策はどうか。

佐々木局長:ゲロン氏もいっていたが重要な問題である。

茅参与:科学技術庁の主要目的ではあるまいか。

篠原次長:然り。

藤岡委員:最近、放射能の空気汚染が高まってきているし、気象庁や立教大学などと相談して常時観測する態勢を整えることにしている。

佐々木局長:放射能障害防止法の立案についても専門委員をお願いしたいと思っている。

藤岡委員:強弱の意見がいろいろあるようである。

田中参与:罰則だけでは自信ある成果は望めない。

中泉参与:現在の厚生、労働両省はインスペクションをやる実力がない。

−年後5時閉会。−