原子力委員会参与会

第 8 回

日 時 昭和31年8月24日(金)午後2時〜5時

場 所 人事院ビル236号室(原子力委員会会議室)

出席者

 伏見、菊池、嵯峨板、児玉、三島、中泉、脇村、大屋、倉田(代理大西)、松根、瀬藤各参与

 石川、藤岡、有沢、湯川(代理井上)各委員

 佐々木局長、法貴次長、島村、荒木、藤波、堀、鈴木各課長 ほか担当官

 駒形日本原子力研究所副理事長

議  題

 1.原子力開発利用長期基本計画について
 2.昭和32年度原子力関係予算について
 3.その他

配布資料

 1.原子力開発利用長期基本計画(案)
 2.昭和32年度原子力予算概算総表
 3.各国の原子力予算
 4.原子力委員会からの「原子力開発利用長期基本計画策定上の問題点に関する日本学術会議への諮問」についての回答(日本学術会議原子力特別委員会)
 5.アイソトープ・センターの構想に対する意見(中泉参与)
 6.原子力委員会第7回参与会記録

議事概要

 佐々木局長から定刻開会を告げ、本日は主として32年度予算と長期基本計画についておはかりしたいと述べ、まず、予算はちょうど暑い時に事務当局で作業して、委員会で内定していただいたもので、昨23日国会の科学技術振興対策特別委員会にも説明したものであると述べた。

 (事務局から予算概算総表の資料の内訳につき、前年度と異なる点、テーマ別に整理した点などの説明があった。)

 佐々木局長:総じて本年度はいわばわが国の原子力の態勢整備、開発準備の時期であったが、来年度は原子炉がはじめて設けられ、デスク・プランからいよいよ実施段階に入る年である。一方国際的にはこの9月にできる予定の国際原子力管理機構が明年から活動を開始するし、日本も理事国として国際協力に新しい部面がひらける。また、第2回のジュネーヴ国際会議で2ヵ年間の成果を発表し合う。もう一つは、来年度のわが国の原子力予算はある意味で100億予算といえるのであるが、それとほぼ同額の100億円近いものがマニラのアジア原子力センターに投ぜられて、明年度中にだいたい建設できるものと予想される。またアイソトープ世界会議がロンドンで開かれ、国連の科学委員会も開催される。こういう内外の情勢を勘案して一応予算を作成したわけである。日本原子力研究所、原子燃料公社、科学研究所、電気試験所等一切のものを系統だてて、秩序正しく開発できるようにした。アイソトープ関係も同様である。

 もう一つの特徴は、補助金などの重複を避けて計画的に考えられたことである。各方面からの要求を117億まで圧縮した。関連産業の育成は工業化の段階に入ってきている。アイソトープ利用は農林方面に主として重点をおく。全体として東海村が中心になるが、名古屋、大阪などにもそれぞれ中心をおくようにしたい。人員は、米国はAECだけで9万人、英国の公社は2万4千人であるのに対し、日本は原子力周70、日本原子力研究所200、原子燃料公社100と合計370人にすぎない。今後の養成が重要で、また国際協力も必要である。予算額は米国7,000億円、英国700億円、フランス450億円に比べ、日本の119億円は過大ではない。昨日の白民党幹部の話でも当然であるということであった。

 石川委員:先刻の話のように、この予算は8月の暑い最中に行ってきた次第である。

 大屋参与:筋道立ってよくできており、金額も妥当だと思う。

 石川委員:だいたい100億と見当どおりの額になっている。

 大屋参与:関西では大学がいわば共同施設を置く方法もあると思うが・・・・・・・・・。

 石川委員:京都大学が大学連合の運営委員となればよいわけである。たとえば、繊維会社が自分で研究所を作ったりするとやりにくくなってくるのではあるまいか。

 松根参与:動力炉購入費はどうされるか。

 佐々木局長:追加計上するか、民間に協力を頼むかいたしたい。

 大屋参与:国産炉の方はどうであろうか。

 佐々木局長:動力実験炉は輸入する。資金面は米国などで行っているように、はじめは国費で、後電力会社等に協力してもらう。

 松根参与:具体的な問題は多少研究の余地もあるが、電力界は協力できると思う。

 大屋参与:プルトニウムが濃縮ウランと同じようには使えないとすれば、考え直さねばならないのではあるまいか。

 嵯峨根参与:全然使えないというわけではない。

 大屋参与:シスラー氏などの話から判断すると、大きな増殖炉を作る時、フィッション・プロダクトを米国へよこせという意向らしい。

 佐々木局長:以上で予算は御承認いただいたことにして、次の議題に移りたいが・・・・・・・。

 伏見参与:大学関係は、委員会としても基礎研究重視の御方針と思うし、応援を期待する。

 石川委員:研究所などでも、望む場合には予算をつけたいとも思うが、柵を設けないようにしてやっていきたい。

 佐々木局長:次は長期計画であるが、9月はじめに内定ということにして、米、英、ソなどへの調査団や産業会議の調査団が帰ってき

てから最終決定にいたしたい。しかし予算との関係もあるので、内定の線だけは早く出しておきたい。伏見、中泉両参与の意見書も出ているし、十分御審議願いたい。

 (事務局から資料を朗読し、佐々木局長から内容の説明があった。)

大屋、嵯峨根、三島各参与間で燃料関係の質疑応答あり。

 松根参与:増殖炉を国産する意気はさかんであるが、見通しがつかないのではあるまいか。

 佐々木局長:従来よりも情勢がかなり進展し、ペイするようになれば電力会社が自分でやるだろうという見込がついてきた。政府に頼らないのならばそれでも結構であるが、当分は日本原子力研究所でやる必要があろう。

 菊池参与:動力炉の輸入に何年かかるか。

 佐々木局長:据付までに4年を要する。

 石川委員:英国から買うときまっても、手続などに半年から1年を要するだろう。

 大屋参与:4年もかかって発電を行うのは悠長すぎはしまいか。

 石川委員:政策的にいってもむしろ長くかかる方がよい。

 菊池参与:外国でも十分にはわかっていないていどであって、長期計画にも「慎重にやる」という意味の辞旬もあり、そのようにして行きたい。

 大屋参与:ウランの入手が楽になるという前堤のようであるが、前々から申すとおり、決して楽観できないと思う。濃縮、天然とも考え方が甘い。

 石川委員:しかし入手を見込まないと計画が立たない。

 嵯峨根参与:いずれにしても、もう一度こまかく検討する必要がある。たとえば増殖炉の型にしてもまだ研究所にわかっていない状態である。

 脇村参与:スケジュールが除いてあるようだが・・・・・・・。

 佐々木局長:附表はわざと抜いてある。

 脇村参与:やはりウラン入手が自由になるとのお考えか。

 嵯峨根参与:紐なしで入るとは考えられないが・・・・・・・。

 脇村参与:国内外の見通しがついてからの計画かと思ったが・・・・・・・。

 石川委員:いわばひとの懐をあてにするようなものであるが、やむを得ない。

 嵯峨根参与:なんらかの手を打ちたい。

 脇村参与:探鉱方針はいかが。

 佐々木局長:権利を買い上げたり、探鉱奨励金を出したりするわけである。

 石川委員:国内資源としては、最近秋田県に4,000カウントのものが発見されている。また製錬の方も、電気試験所と東京工業試験所で新しい方法の実験に成功している。

 佐々木局長:なお海外へはカナダなどに照会中である。

 嵯峨根参与:カナダでは、むしろテメリカのオーバー・プロダクトを心配しているようである。

 瀬藤参与:エネルギー需給想定は、わたくしの記憶では重油を考慮に入れて再検討するということであったと思うが、たとえば電力業界も同じ結論に達するかどうかデリケートな点もあろう。

 佐々木局長:数量的でなくて、むしろ経済企画的な面から問題を処理すべしという御議論であった。

 瀬藤参与:長期計画全体について、以前にも申し上げたが、研究所、公社のやることはは

っきりしているが、そのほかは委員会が主体となってやるのであるか。

 佐々木局長:関連産業の育成など内容によっていろいろわかれてくると思う。

 瀬藤参与:要員育成について文部省との関係が不明確であるが、万全の策を講ぜられたい。

 伏見参与:国内で濃縮ウランの生産はするのだろうか。

 嵯峨根参与:低濃縮についての調査研究を行われたい。

 大屋参与:平和利用なのだから低濃縮と明記すべきではあるまいか。

 伏見参与:現在までのウランの需給状態はいかが。

 佐々木局長:米国としても天然ウランを輸出した経験がないから国と国との協定が必要となるわけであり、紐付き云々の問題が生じてくる。

 石川委員:最近の連絡では、はじめてだから慎重を期しているといってきている。

 伏見参与:ベルギーのものの輸出状況はいかが。

 佐々木局長:英米の承諾なしには動けない状態らしい。スイスも同様である。

 大屋参与:グッドマン氏はなぜ鉱石を買わないかとしきりにいっていた。ヒントン氏も燃料問題については返事を渋っていた。

 脇村参与:オーストラリアも軍事用以外はイギリスにさえ売らない。

 嵯峨根参与:日本はトリウムについてインド・ブラジルなどに眼を向けるべきである。

 大屋参与:モナザイトをインドは輸出禁止したそうであるし、海外事情に留意せねばならない。せっかく炉を作っても天然ウランを売らぬといわれないともかぎらず、イギリスの炉も売れなくなるという声もある。

 駒形原研副理事長:実験用ウラン4トンすら入手手続に難渋している実情である。

 中泉参与:わたくしの意見書にも関連することであるが、予算説明の時、高分子照射は関西で行うといわれたように記憶する。制度上、アイソトープの医学利用研究を研究所で行われるのも結構であるが、医学の性質上、東海村では不便である。

 石川委員:関西支所など設ける予定ではあるが・・・・・・・。

 田中参与:天然ウラン重水型国産炉でアイソトープをも生産しようと最初から二重目的で行くのは混雑のもとではあるまいか。

 石川委員:アイソトープ専用炉を別に一つ作るという意見もある。

 嵯峨根参与:アイソトープの価格が外国では下りつつある事情も考慮せねばならない。専用炉では高くなろう。

 駒形副理事長:現段階ではこの計画とおりでよいのではないかと思う。

 田中参与:研究所開放の問題ともからんでくる。

 中泉参与:同じアイソトープの中でも、輸入できないような短命なものやピストンリングの実験のように外国でやれないものはぜひ国産されたい。

 伏見参与:学術会議の意見も同様である。

 (意見書一部朗読)

 三島参与:現在のところ、長期計画はこのていどで行くよりほかあるまい。

 石川委員:1週間くらいのうちなら御意見をきかせていただいて訂正いたしたい。9月上旬にもう1度集っていただきたいと思う。

 以上をもって午後5時閉会した。