放射性同位元素の使用の確認について

 原子力局では、さきに本誌(Vol.1,No.1,P54)掲載のごとく去る5月15日締切をもって昭和31年度第1期分の放射性同位元素(アイソトープ)の申請を受付け、2回にわたる審査会、各個についての調査指導を行った後、6月末に最終決定をみた。今期は昭和31年に入ってから始めての申請受付けであったためか、申請者数件数、数量とも予想外の多数にのぼった。

第1表 専門別使用者数件数
第2表 各省別使用機関数

 今回受付けた使用者数および件数は総数411名、656件とのぼり、うち404名、648件について使用の確認を行った。専門別の使用者数、件数は第1表に見られるごとく、医学関係の究
および診療に用いられる面が全体の56〜58%を占め、次に生物、農学、動物方面の研究が16〜18%、次に工学または工業的応用が13〜16%となり、このほか物理、化学の基礎研究が約8%ある。今期に見られる著しい特徴として、工業的利用が非常に伸びてきたことで、前期は全部の8%を占めるに過ぎなかったが、今期は約2倍に増加している。この傾向は今後さらに強調されてゆくことが考えららる。使用機関は第2表のごとく、総数129で前期に比して28の増となっている。文部省関係の大学、研究所、病院が50機関でいぜんとして最も多いが、前回にはば等しく、最近は各期とも40内至50の間を占め、ほとんど増減がない。これに反して通産省関係私立の24は前回に比して9の増となってをり、また厚生省関係私立の21も9の増となっている。これらのことから、アイソトープの利用も大学関係では、機関の数としては一応飽和の域に近づき、今後は民間における工場、病院での応用が伸びゆく傾向にあることが推察される。

 使用の確認を行ったアイソトープの種類は化学的に精製したSeparated isotopeが38種、アイソトープ標識化合物が12種、医療用、工業用のCo60,Sr90,Cs137が種々の形で7種、標準線源が2種、その他 Fission Product.Tritium−Zirconium 中性子源等があり、合計62種にわたっている。

 今期の使用目的全体についてみると、理工農医の研究応用とも大部分前回に報告したものとほとんど大差なく、とりわけ新らしいものも見あたらないが、工業関係でガンマ線を高分子物質変成の研究面に使用しようとするもの、医学の分野で癌の深部治療に大量線源を使用しようとするものが非常に増えこたことが目につき、このためCo60の multicurie source の申請が圧倒的に増加を示し、約6,000キュリーに達している。

(詳細なデータは本号65頁参照)

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