原子力委員会参与会 第 4 回 日 時 昭和31年6月1日(金)午後2時〜5時 場 所 総理大臣官邸 大客間 出席者 伏見、菊池、嵯峨根、児玉、木村、三島、脇村、大屋、倉田(代理大西)、松根、久留島、岡野、瀬藤、田中 各参与 正力委員長、石川、藤岡、有沢、湯川 各委員 斎藤科学技術庁政務次官、篠原科学技術庁次長 佐々木原子力局長、法貴原子力局次長、島村、荒木、藤波、堀、鈴木 各課長ほか担当官 駒形原子力研究所副理事長、大来経済企画庁計画部長 議 題 1.昭和31年度原子力開発利用基本計画について 配布資料 1.昭和31年度原子力開発利用基本計画 議事概要 開会の挨拶 正力委員長から、いろいろ御意見を承るため御参集願った旨の挨拶が行われた。 議事経過 佐々木局長から、議題と資料について説明があり、前日の定例委員会でだいたい話し合った「昭和31年度の基本計画」を本日決定いたしたい。ほかに、資料としては「長期基本計画の問題点」を列挙したものをお届けしてあり、なお、経済企画庁等に協力願って「長期エネルギー需給想定」を準備してある。また、御要望によって、補助金関係の状況を明らかにするため、「研究概要」と「関連表」を作成した、と説明し、議事に入った。 まず事務局側で、31年度基本計画を朗読し、内容の審議に移った。 途中、正力委員長から、ヒントン卿との会見結果の報告があり、英国では、原子力発電が近く商業ベースに乗るから、日本でも早く動力炉を入れよということであった。ロイド卿の時にも、経済基礎についてききただしたのであるが今回一層明瞭となった。天然ウランも、軍関係でない普通の価格で引き合うし、濃縮ウランは電力の少ない国には向かない由。アメリカの調査団の意見もきき、真剣に取り組みたいと思うが、本日、皆様の御意見も伺いたいと述べた。 次いで嵯峨根参与から天然ウラン・石墨型の場合は、小型のものは省略できるというわけであり、日本で燃料の入手が容易であるならば、という大きな仮定がついている、と補足説明があった。 次に、長期エネルギー需給想定について、経済企画庁計画部から資料につき説明があり、これに対して各参与から次のような意見が述べられた。 大屋参与:ヒントン卿の意見につき、自分も昭和のはじめ、アンモニアの合成に携った時の経験から、小規模のものを積み重ねるのば合理的ではあるが、時と金の無駄であると思う、と発言。 脇村参与:経済史学者としての立場からみれば、硫安の場合も、2回、3回と積み重ねていったのであり、人造石油も、約10年間パイロットプラントで苦労している、と反駁。 大屋参与:前回の児玉参与の御意見と同様、パイロット・プラントを積み重ねるやり方がいけないというのである、と弁明。 午後3時半、科学技術庁斎藤政務次官等が来場して就任の挨拶を行い、つづいて篠原科学技術庁次長、法貴原子力局次長からそれぞれ挨拶があった。 藤岡委員:ヒントン卿の意見は、天然ウランと濃縮ウランとの相違からきている。 岡野参与:10万キロワットは疑問としても、1万キロワットくらい行っておれば決してマイナスにはならないと思う。 正力委員長:テレビジョンの場合の経験に徴しても、時期をよくみて行うことにしたい。湯川博士も欧米に行かれるし、局からも英国へ調査員を派遣したい。 この後、エネルギー需給想定について質疑応答が行われ、菊池参与から、石油、石炭のほか原子力の想定を入れてもらいたい、との要望があった。 31年度基本計画について、天然ウランの価格未定の点、探鉱計画の問題、原子力アタッシェの状況、基本計画の決め方、実施方法、アイソトープ・センター問題、炉の規模、技術者養成、訓練の範囲等につき質疑応答が行われた後、委員会決定の原案どおり了承された。 ついで「原子力開発利用長期基本計画策定上の問題点」を事務局が朗読し、一応意見をもとめたが、なお、再検討のうえ、次回に諮ることとなった。 再び、正力委員長から、近日、英国へ調査員を派遣したい、との言明があった。これに関連してヒントン卿との会見の記録を資料として整備することとした。 二、三の参与から、発言記録の訂正の申込があり、参与会の運営方針について打ち合わせ、次回開催日を6月22日(金)と決定して、石川委員から、研究所の出資募集の経過報告と協力依顛があって、午後5時閉会した。 |