原子力委員会参与会

 原子力委員会設置法施行令(昭和31年1月24日公布政令第4号)第2条により、原子力委員会に参与を置き会務に参与させることになり、その名簿を3月9日の第17回定例委員会において決定し、各候補者の承諾を得て3月27日正式任命を見たことは前号記載のとおりであるが、その第1回の参与会が翌3月28日開催されたのをはじめとして、本稿締切(5月末日)までの間に原子力開発利用基本計画を中心に3回の会が開かれた。以下にその記録をかかげる。

第 1 回

日 時 昭和31年3月28日(水)午後2時〜5時

場 所 総理大臣官邸 大食堂

出席者

 伏見、菊池、嵯峨根、児玉、三島、脇村、大屋、倉田(代理駒井)、松根、久留島、岡野、田中 各参与
 正力委員長、石川、藤岡、湯川、有沢各委員
 志村代議士
 佐々木局長、島村、堀、鈴木各課長 ほか担当官

配布資料

 1 参与名簿
 2 原子力基本法
 3 日本原子力研究所法案
 4 原子燃料公社法案
 5 核原料物質開発臨時措置法案
 6 原子力開発利用基本計画策定要領
 7 原子力研究開発計画
 8 各省原子力予算一覧表
 9 長期電力需給想定(電気事業連合会)

議事概要

 開会の挨拶 正力委員長の代理として石川委員から本日初顔合せする旨の挨拶が行われ
た。

 経過報告 佐々木局長から、30年末、内閣に原子力利用準備調査会ができて、31年1月原子力委員会、原子力局が発足して以来、研究開発計画、予算編成、産業会議結成、法案作成等を行ってきた経過を説明した。

 議事経過 参与側から、参与の責任、権限について質問があり、事務局側から回答があった。

 児玉、菊池両参与から予算関係について、田中参与から法案関係について質疑が行われ、委員会、局側から回答があった。

 岡野参与から、官民公平に扱ってもらいたい、との意見があった。

 大屋参与から、ウランの入手見込について質問があり、これに対して、藤岡委員から回答があった。

 松根参与から資料の整備を要望し、電気事業連合会から電力関係資料が配布された。

  (途中、委員、参与の自己紹介が行われた。)

 基本計画策定要領について佐々木局長から説明があり嵯峨根参与、児玉参与からの質問、局側からの回答があった。

 午後4時、正力委員長が来場し、支持と援助を願う旨挨拶があった。

 次いで嵯峨根参与から自由討請の希望があり、正力委員長から運営方法についての諮問が行われ、参与側から回答があって、午後5時閉会した。

第 2 回

日 時 昭和31年4月20日(金)午後2時〜5時

場 所 総理大臣官邸 大客間

出席者

 伏見、菊地、嵯峨根、児玉、木村、三島、大屋、倉田(代理大西)、松根、久留島、岡野、瀬藤、田中 各参与

 正力委員長、石川、藤岡、湯川(井上代理)各委員

 佐々木局長、島村、堀、鈴木各課長ほか担当官

議 題 原子力開発利用基本計画の策定について  その他

配布資料

 1昭和31年度原子力開発利用基本計画(案)
 2 原子力開発利用基本計画策定に対する田中慎次郎参与の意見(要旨)
 3 長期エネルギー需給想定の問題点
 4 原子力メモ(第2号)
 5 国産原子炉に関する問題点について
 6 日本原子力研究所敷地に関する件
 7 日本原子力研究所の敷地について
 8 原子力発電計画に関するお願い(電気事業連合会)
 9 原子力委員会第1回参与会記録

議事概要

 開会の挨拶 石川委員から委員長を代理して基本計画を主として相談したいとの挨拶があった後、事務局側から資料について説明が行われた。

 田中参与の意見書について嵯峨根参与から楽観的すぎるとの意見があった。

 ウランの価格について意見の交換。

   (午後3時正力大臣来場)

 ウランの濃度について意見の交換。濃縮・天然併用について論議が行われた。

 特許問題について事務局から調査を行うことを約した。長期エネルギー需給想定の問題点について 資料の信憑性について、いろいろの意見があり、中庸で行くこととなった。

 原子力発電計画に関するお願いについて 松根参与から主旨の説明が行われた。

 昭和31年度原子力開発利用基本計画(案)について 局、委員会側から内容を説明して、各界の意見をもとめた。

 終りに、正力委員長から研究所の敷地問題についての経過説明があって、午後5時散会した。

第 3 回

日 時 昭和31年5月7日(月)午後2時〜5時

場 所 総理大臣官邸 小客間

出席者

 菊池、嵯峨根、児玉、木村、三島、中泉、脇村、大屋、倉田(代理大西)、松根、久留島、岡野、瀬藤、田中 各参与

 正力委員長、石川、藤岡、有沢各委員

 佐々木局長、島村、堀、鈴木 各課長ほか担当官

 駒形原子力研究所長

議  題 昭和31年度原子力開発利用基本計画について、その他

配布資料

 1 昭和31年度原子力開発利用基本計画(案)
 2 日本原子力研究所法
 3 原子燃料公社法
 4 核原料物質開発促進臨時措置法
 5 原子力研究所設立事務手続日程表
 6 原子力委員会第2回参与会記録

議事概要

 開会の挨拶 石川委員から委員長に代って経過報告かたがた基本計画について相談したいとの挨拶があった。

 佐々木局長から「研究所法」、「公社法」、「核原料開発臨時措置法」の3法は無事国会を通過成立。研究所は5月15日ごろ設立委員会を開き、6月中旬発足。公社は、その後になる模様との説明があり石川委員から研究所の出資募集についてあらかじめ協力を依頼し、駒形研究所長から研究所の現況と将来の計画について説明が行われた。

 次いで東海村の現地の状況、炉の購入に関する米政府の財政援助等について質疑応答が行われた。

   (午後3時、正力大臣来場)

 基本計画につき参与ひとりひとりの意見を聴くこととなる。

 菊池参与:年度計画については特別の意見はないが、原子力発電はあわてる必要はない。
 国産炉の方が、勉強にもなってよろしい。

 嵯峨根参与:ウラン受入と動力協定との関係、大学への炉の設置、核融合の基礎的調査の意味、国産炉についての考え方、アイソトープ関係の責任の所在、技術者の訓練方法等不明な点多く、もっと基礎的材料を掴む要がある。

 児玉参与:関連産業の育成に当っては、できるだけ重複を避けて補助金を出すよう、殊に中間試験は、最小限にとどめたい。ケミカル・プロセスの研究を加えるべきで、また、基礎研究のグループも持つ必要がある。発電については工業史からみてもコストの低下が予想されるし、急ぐという結論はおかしい。

 木村参与:燃料関係で、トリウムについても国で買上げるなど、貯蔵法を考えねばならない。廃棄物の処理について、ケミカル・プロセスが必要である。また、アイトープの配分に、東海村は適当でない。化学関係専門家養成は、国内だけでできると思う。

 三島参与:金属材料は、数種類の炉を予想して、各研究者にテーマを分担させるなど、万全の策を講ずべきである。純理論を研究所で行い、作る方は、民間会社とタイアップする。長期計画につき、産業技術の空白を埋めるためには技術導入も望ましいが、他方国内専門家の研究意慾も阻害してはならない。

 脇村参与:人造石油の場合のようにせっかく技術導入しても受入態勢不充分のため失敗する、ということのないよう用心されたい。技術者の数的拡充も必要である。現在の経済政策の最大の欠陥は、石油問題の見通しの誤りであって、発電促進説の論拠は、この点で薄弱である。

 大屋参与:企業家としては、国営の場合と違って、多少の冒険を伴なうものであって、原子力も多角利用が考えられ、その大宗の電力を急ぐのをここで、不都合とも申されまい。

 倉田参与(代理、大西氏):炉の目的を直ぐ電力と結び付けるのも無理かも分らないが、炉の設置は、東京に偏しないよう配慮されたい。発電については、中間的に、石油、石炭混焼型から、ウラン、重油混焼型に持って行きたい。

 松根参与:石油輸入の問題や、内地の石炭との関係等いろいろあるが、長い目でみると、原子力発電が必要であって、動力専門委員会の設置を望む。また、第2点として、外国の調査団にデッサンを考えてもらいたい。

 久留島参与:大体、原案どおりで結構。発電も5年先でよろしく、商業的段階に至るまでの準備は当然必要である。

 岡野参与:原子炉の研究、製造、使用は、官民合同して行わねばならず、信用あるところからなら、試験炉を導入することは、大いに意義がある。

 瀬藤参与:発電問題は、学者側のように、躊躇するにも当らず、一方、1年を争うことでもない、慎重を要する。原子力研究所と原子核研究所の2本建は、外国の例は少いが、国費を上手に使われたい。技術者訓練も然り。

 技術導入については、学界と実業界の話し合いはつくと思うが、現在世界的に研究の段階であるまいか。エネルギー需給調査は政府機関で行って、目標を定むべきであって、本当の意味の自由経済は現今あり得ない。

 田中参与:大体結構であるが、実施の結果を年々報告してもらいたい。1965年から70年の間には技術の進歩、コストの低下等が原子力発電に期待され、来夏は国際機構も確立され、全体的に楽観してもよろしかろう。電力界と学界との協力が望まれる。また技術導入は選択を誤らないよう。燃料政策も重要で、濃縮か天然か後に問題を残さないよう注意されたい。

 以上で各参与からの意見聴取を終り、次回開催日時等を決定して、午後5時閉会した。

(文責在筆者)

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