「原子力委員会月報」の発刊

 原子力の研究、開発、利用の成果をひろく公開することば原子力基本法に明示されているところであるが、原子力委員会、原子力局は発足早々にして昭和31年度の原子力予算の査定、関係法案の審議等の問題に全力をあげ、十分な広報活動をするに至らなかった。しかし原子力委員会においてははやくから基本法の方針に基づきわが国の原子力開発利用の推進状況を適当な形で広く発表する必要が論ぜられておった。4月になり、原子力委員会の仕事も軌道に乗り、原子力局の人員も増強されるに及び、わが国の原子力開発利用状況を主として原子力委員会の審議決定事項を通じて記録し毎月発表することになった。

 まず当初の案としては月報の編集は調査課が担当するが執筆は各担当課が行い、発行は日本原子力産業会議に委託することとし、3月30日の第20回定例委員会の審議にかけたところこの線にそって進めることに決定した。これに基づき産業会議と打合せた結果、たまたま日本原子力産業会議においても原子力に関する月報の発行を計画し、政府の動きについても原子力局の協力を得てこれを収録する案を立て、同月報を産業会議の月報として発行したいということであった。原子力局としては、民間においてかかる月報が発行されるということは極めてよろこばしいことであるが、一方、委員会および原子力局としての立場で、かかる月報を発行し政府機関並びに各界の利用に供する必要もあるのでこの間の調整をいかにするかという問題を慎重に検討し、4月6日の第21回定例委員会にはかったところ別刷りの形で委員会としての月報を出すということで諒解された。そこで原子力局と産業会議との間で細目の打合せを行い

(1)原子力委員会、原子力局関係の事項は原子力局で執筆編集して産業会議にわたし、産業会議はこれに民間関係の記事を編集して追加し、この両者の共同編集による月報を産業会議名で「原子力国内事情」として発行する。

(2)原子力局で編集した部分については増刷りの形で表紙、目次、その他必要部分を加えて「原子力委員会月報」として発行する。ことに意見が一致した。なお両者間で月1回編集会議を開き記事の調整をはかることも決定した。

 かくして原子力委員会月報には政府関係の原子力に関する研究機関の記録をはじめ、日本原子力研究所、原子燃料公社関係の記事、補助金を出している会社の報告等すべての関係事項を載せたいと考えているが、さしあたって委員会の審議決定事項を中心に主要な記録、局業務の紹介等をもって第1号を発行した。

 この月報は各省庁からの入手希望が多いが、局としては予算上部数にも限りがあってこれらの希望に応じられないきらいもあり残念であるが、このような場合は前記「原子力国内事情」を利用していただくこととし、関係各省庁からの絶大な協力を得て、原子力成果公開のための広報手段として原子力開発利用に関する政策およびその実施状況をできるだけ正確かつ詳細に伝える目的を果したいと思う。