開発利用基本計画に関する田中参与との懇談

 3月28日開催された第1回参与会において田中慎次郎参与から原子力開発利用基本計画に関し主としていかなる方針のもとに調査研究して計画を樹立していくのがよいかという点につき意見を聞くこととなり、同参与を中心とした懇談会が4月3日午後2時から2時間にわたって総理官邸原子力委員室において行われ、石川、藤岡両常勤委員をはじめ局長、総務課長、村田、石川が出席した。同氏の意見を中心に懇談会の要点を以下にかかげる。

 まず田中参与から「『原子力開発利用基本計画策定要領』(第1号参照)の第4項の『計画策定に当って次の事項を考慮するものとする』とある『考慮』ということばが弱い。この第4項の問題こそ基本計画策定上最も大切な問題である。1960〜1970年の10年間は世界全体としてみて原子力によるエネルギー需給上決定的な期間となるものと予想され、ここの見透しが大切である。」という意見が出され、いきなり問題の核心に入った。そしてアメリカ、ソ連等の例をひいてこの期間に原子力技術の進歩がある段階に達し、原子力の経済性がはっきりするであろうと述べ、次いでアメリカのウラン鉱買上げ政策やカナダのベネット氏の言明等にふれて原子燃料の輸出国がふえていく可能性を述べ、更に現在の双務協定による形式から国際的な管理機構が確立して具体的に動くようになり、一つの国にしばられることがなくなるであろうと論じ、以上三つの点からみて1960〜1970年の見透しをしっかりつかむことが大功で、この見透しを予め十分考慮に入れて資料を集め基本計画をたてることが肝要であると結論した。

 次いで質疑を交えての懇談に入り、二、三の点について論じた後ふたたび前記3点について、1、2は比較的容易であるが、第3はなかなかむずかしい。国際機構、軍縮問題、特にアメリカ国内法改正の動向に注意する要がある。

 条約と国内法との間に矛盾がおこった場合に条約が優発するかどうか。軍需以外は一般に民間にうつる傾向があるが、その動向をよく考えねばならぬ等述べ、また国際機関にも一種のブロックができるのではないか。ヨーロッパでは各国協力の傾向にあると指摘した。

 次いで動力用炉以外の炉の問題、原子力関係の特許の問題、国際機構と双務協定との関係特にその検査方式について論じられた後、学界と産業界との協力を要望し、資本系統の問題にふれ、更に原子力研究所の原子力工業簿記を充実して原価計算に力を入れておく必要につき論じ、研究所が技術ばかりで回ってしまわないよう将来の原価計算のために役立つようはじめから経理をはっきりさせるよう強調された。最後に1960〜1970年の間に予想される条件の中に日本としてはうまく乗って行くことが大切で、そのためにはどうしたらよいかが今後5年間の課題であると結んだ。

(文責在筆者)

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