第1章 国民とともにある原子力
2.原子力政策円卓会議の開催

(3)今後の原子力政策に反映すべき提言と原子力委員会の対応

6月24日に行われた原子力に関する情報公開及び政策決定過程への国民参加の促進に関して必要な措置を取るよう原子力委員会に求めた提言に続いて,10月3日には,第11回までの円卓会議の議論を踏まえ,モデレーターが取りまとめた提言が原子力委員会に提出されました。
 原子力委員会では,それぞれの提言に対応した同委員会としての対応を発表しました。専門部会等の公開,専門部会の報告書に関する国民からの意見募集などが着実に実施されています。

 円卓会議を通じて行われた原子力に関する議論の成果を適切に政策へ反映していくことが重要との立場から,円卓会議モデレーターによる提言が取りまとめられた。まず,円卓会議で様々な情報を解りやすく,幅広く国民に伝えることを含め,情報公開を一層促進するとともに,原子力政策の決定過程に国民の声を一層反映させる必要があるとの議論があったことを踏まえ,6月24日,円卓会議モデレーターは原子力委員会に対して,情報公開と政策決定過程への国民の参加に関する提言を行った。*
 さらに,円卓会議モデレーターは,第11回までの議論全体を踏まえ,エネルギー供給の中での原子力の位置付けの明確化,核燃料サイクル,原子力の安全確保と防災体制の確立,立地地域との交流・連携の強化,新円卓会議に関する提言をとりまとめ,10月3日に原子力委員会へ提出した。*


*「原子力政策円卓会議における議論の原子力政策への反映について」 :資料編323ページ参照。


*「原子力委員会への提言」 :資料編326ページ参照。

 また,これらの提言に対する対応として原子力委員会は,6月24日の提言に対応して9月25日に「原子力に関する情報公開及び政策決定過程への国民参加の促進について」*を決定し,次いで,10月11日には,10月3日の提言に対する対応として「今後の原子力政策の展開にあたって」*を決定した。


*「原子力に関する情報公開及び政策決定過程への国民参加の促進について」:資料編324ページ参照。
*「今後の原子力政策の展開にあたって」 :資料編330ページ参照。

 以下に,これらの原子力委員会としての対応で特筆すべき事項をその後の進展と併せて概説する。
 なお,原子力委員会は,10月11日の決定の考え方やその具体的措置を実施していく中で,原子力開発利用長期計画の上に,同計画の見直しをも視野に入れ,適切に反映していく予定である。
①専門部会等の公開
 原子力委員会は,政策決定過程の透明化及び国民の政策決定過程への参加の促進の観点から,原子力委員会の専門部会等の会議を原則として全て公開することとした。核不拡散,核物質防護,外交交渉に関する事項を扱う等個別の事情により非公開とするか否かについては,各専門部会が判断することとなっている。なお,会議を非公開とする場合にも,非公開とする理由を明らかにし,インターネットに掲示する予定である。
 この決定を受け,10月18日に開催された高レベル放射性廃棄物処分懇談会が初めて公開され,一般の方が傍聴する中,活発な議論が行われた。その後,原子力バックエンド対策専門部会(11月15日),原子力国際協力専門部会(11月25日)が相次いで公開された。

②専門部会報告書に関する意見募集
 「国民とともにある原子力」では,政策の決定過程において広く国民の意見を十分取り入れることが必要である。この考えを具現するため,原子力委員会では,原子力委員会の政策策定において重要な役割を果たしている専門部会等の報告書を作成する過程において,国民の意見を求めることとした。具体的には,まず報告書案を一定期間公開し,これに対する具体的な意見を募集する。応募のあった意見を検討した上,反映すべき意見は採用し,不採用とした意見については,明確な不採用の理由を付して報告書と併せて公開する。

 これを受け,原子力バックエンド対策専門部会において報告書案「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について案」がとりまとめられ,これを公表するとともに,11月28日から12月27日にかけて広く国民の意見を募っている。今後,国民から提出された意見は原子力バックエンド対策専門部会において検討されることとなっている。
③情報公開請求への対応体制の整備
 原子力の研究開発利用に関する情報は,核不拡散,核物質防護,財産権の保護,外交交渉に関する事項など慎重に取扱わざるを得ないものがあるものの,安全性に関するものを中心に従来より,その公開に努めている。
 しかしながら,原子力活動に関する情報公開の要望には,原子力の基本に関する事項から極めて専門性の高いものまで様々であり,適時的確に情報が提供される体制は,必ずしも十分なものではなかった。
 「国民とともにある原子力」は,原子力の問題を国民一人一人が自らの問題として考えることをも期待するものであるが,その前提の情報については,十分に提供されなければならない。こうした観点から円卓会議での議論を踏まえ,原子力情報に関する公開請求に対して,迅速かつ適切に対応するため,関係行政機関と連携を図りつつ,体制整備を行うこととした。今後,国は別途検討されている情報公開法の議論をも踏まえつつ,適切な対応に努めていくこととしている。
④高速増殖炉懇談会(仮称)の設置
 「もんじゅ」の扱いを含めた将来の高速増殖炉開発のあり方について幅広い議論を行うため,円卓会議の議論における提案などを踏まえ,高速増殖炉懇談会(仮称)を設置することとした。
⑤防災対策の取組の強化・促進
 原子力防災対策の充実は,原子力施設が当該立地地域において安心感を持って受け入れられる上で重要である。従来より,国は,災害対策基本法の体系の下,体制の整備を図ってきたが,円卓会議の提言を受けた原子力委員会の決定において,国の関係行政機関の役割と連携を明確にした強固な防災対策の確立に向け,関係行政機関における取組を強化・促進することとしている。
 中央防災会議においては,原子力事故災害を含めた各種の事故災害対策をより実践的なものとするための防災基本計画の改訂作業を行っている。また,原子力安全委員会の専門部会においては,原子力防災対策の技術的事項を定めている防災指針について,より実効性のあるものとするための検討を今後とも進めていく。さらに,関係行政機関において,これらの検討を注視しつつ,今後とも関係地方公共団体の意見も踏まえ,原子力防災対策の充実強化に努めることとしている。
⑥新円卓会議の開催
 モデレーターからの提言では,これまでの円卓会議について,原子力にかかわる諸問題に関する意見を国民の広い範囲にわたって求め,掘り下げた議論を行い,原子力行政に提言を行う場として有効であるとしている。
 原子力委員会としても,円卓会議は,ともすれば専門的な議論になりがちな原子力開発利用に係る諸問題について,広く国民各界各層からの多くの参加者に自らの問題として議論をお願いする場を提供するという観点からも意義があると考える。提言では,議論の成果をとりまとめ,原子力委員会に対して提言を行う新たな円卓会議の開催を求めている。
 原子力委員会は,このような新円卓会議の提案を踏まえ,従来の円卓会議の装いを新たにして新円卓会議を開催することとしている。
 原子力委員会としては,モデレーターからの提言において求められているエネルギー供給の中での原子力の位置付けの問題や,「どこまで安全なら安心なのか」という社会的受容性の問題,いわゆるNIMBY(NotIn My BackYard),すなわち,たとえ原子力の必要性は認めても,原子力施設が自分の近くに立地することには反対という考え方の問題など,今後,原子力を現代文明との関係において考える際に避けて通れない問題などについても議論されることが重要であると考えている。


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