第1章 国民とともにある原子力
3.「国民とともにある原子力」に向けた様々な取組

(1)地域フォーラム,シンポジウムなどの開催

 国では,原子力政策円卓会議の開催以外にも,「大臣と原子力を語る会」,地域フォーラム,一日資源エネルギー庁の開催など「国民とともにある原子力」に向けて国民との対話,意見の反映を進める取組を行っています。

①大臣と原子力を語る会
1996年4月13日,「もんじゅ」が立地されている敦賀市において,「もんじゅ」事故を契機とする原子力に対する不安などに関して中川科学技術庁長官が直接敦賀市民と対話する「大臣と原子力を語る会」が開催された。

 「大臣と原子力を語る会」では,事前に意見,質問を募集し,応募のあった96人中,直接発言することを希望した47人から①「もんじゅ」事故の対応と責任,②国の役割,③地域振興・イメージアップ,④若い世代から,⑤防災対策,⑥これからの課題などの6テーマについて,抽選により選ばれた11人の市民が発言し,大臣との対話が行われた。
 「大臣と原子力を語る会」では,中川科学技術庁長官は,国及び事業者のそれぞれの責任の所在を明らかにし,「もんじゅ」事故を大きな教訓としていくことの必要性を強調した。これには,参加した市民からは,「安心して眠れない,『もんじゅ』は2度と動かしてほしくない。」といった意見があった一方,「『もんじゅ』を途中で放棄せず,立派に仕上げることが国の責任。」との期待も寄せられた。なお,この会の模様は,敦賀市のケーブルテレビで1週間にわたって放映された。
 会終了後のアンケートで8割近い人々が「役に立った」と評価したことは,今後ともいろいろな場面で原子力問題を議論していくことが重要であることを示している。
②地域フォーラムの開催
1996年6月15日,科学技術庁と通商産業省の共催による「原子力発電所の耐震安全性を考える地域フォーラム」が,福島県大熊町で開催され,原子力安全委員会の指針の関連,福島原子力発電所の具体的な耐震安全性の関連,双葉断層の関連の三つの論点について質疑応答が行われた。

 また,核燃料サイクル施設が立地している青森県でも1989年以来,国と住民の方々が直接対話を実施する「フォーラム・イン・青森」が開催されている。このフォーラムは,毎年,青森県内で数回開催されており,核燃料サイクル施設の安全性,核燃料リサイクルの必要性などについて,科学技術庁及び通商産業省の職員が住民の疑問に答えるものである。1996年度は,8回の開催が予定されており,1989年以来109回の開催を数えることとなる予定である。
③シンポジウムなどの開催
 通商産業省においても,その職員を積極的に各地へ派遣し,原子力に係る諸問題についての国民的な合意形成に資すべく努力を積み重ねていくという方向が打ち出されている。すなわち,「一日資源エネルギー庁」,「全国講演キャラバン」,「一日総合エネルギー調査会」の試みが各地において行われている。国は,毎回,これらの場において,エネルギー政策,とくにその中での原子力発電の位置付けなどを説明するとともに,幅広く国民の意見を聴いている。
1996年6月11日,資源エネルギー庁長官が出席し,新潟で「一日資源エネルギー庁」が開催された。資源エネルギー庁長官による「今後の我が国のエネルギー政策」に関する基調講演の後,コーディネーターと資源エネルギー庁幹部を含む6名のパネリストにより,「これからの暮らしとエネルギー」ど題したパネルディスカッションが行われた。
 基調講演では,エネルギーの安定供給,地球環境問題への対応などの観点から展開されている省エネルギーの推進,新エネルギーや原子力の導入といった総合的なエネルギー政策が説明された。625名の参加があり,事前に提出された質問や意見は173に上った。これらの質問や意見を反映させつつ,シンポジウムが進行された。また,11月14日には,906名の参加と285の質問や意見の事前提出を得て,同様の一日資源エネルギー庁が,大阪で開催された。

 また,直接国民にエネルギー政策を説明する「全国講演キャラバン」は,1996年度において,資源エネルギー庁職員がパネリストとして参加する形で,これまで全国各地で13回開催された。開催地は北海道の札幌市から九州の宮崎市までにわたっており,身近な暮らしや地球環境,そして将来の姿といった視点からエネルギーを考えることをテーマとして,有識者による講演や資源エネルギー庁職員をパネリストに含むパネルディスカッションが行われた。なお,その内容については,地元紙などで掲載されている。
 このほか,10月以降,各通商産業局ごとに一日総合エネルギー調査会が開催されている。これは,総合エネルギー調査会基本政策小委員会及び原子力部会における審議状況を紹介するとともにエネルギー政策に対する各地域からの意見を聴取し,今後の総合エネルギー調査会の審議に反映させようとするものであり,各地域に在住の学識経験者,地方自治体関係者,学校関係者,マスコミ関係者,産業界関係者などの参加を得て開催されており,その審議は一般に公開されている。


目次へ          第1章 第3節(2)へ