第1章 国民とともにある原子力
1.国民の声を原子力政策に反映させることを求める気運の高まり

(3)原子力施設の立地を巡る動き

 原子力施設の立地に関しては,10年ぶりに原子力発電所の新しい立地点が国の電源開発基本計画に組み入れられる(東北電力(株)東通原子力発電所1号炉)などの動きがありました。
 また,1996年8月4日に新潟県巻町において巻原子力発電所の建設の賛否に関する住民投票が行われ,その結果,巻原子力発電所の建設に反対する票が過半数を占めました。
 いずれにしても,関係者は原子力に対する国民の一層の理解が得られるよう,さらに努力していかなければなりません。

 原子力施設の立地に関しては,以下の動きがあった。
1996年7月に東北電力(株)東通原子力発電所1号炉が電源開発調整審議会の了承を得て国の電源開発基本計画に組み入れられた。これは,増設ではない新規立地点としては1986年12月に北陸電力(株)志賀原子力発電所1号炉が電源開発調整審議会に上程されて以来,10年ぶりのことである。
1996年8月4日,新潟県巻町の巻原子力発電所の建設の賛否について住民投票が行われた。投票の結果,巻原子力発電所の建設に反対する投票が過半数を占め(賛成:7,904票,反対:12,478票),笹口巻町長は,9月6日に通商産業省資源エネルギー庁長官あて「国の電源開発基本計画から巻原子力発電所建設計画の除外について」と題する要望書を提出した。こうした住民投票という方法については,原子力発電所の建設の賛否のような複雑な問題について適用することが適切かどうかを含めで様々な議論がなされている。
1996年11月には,北陸電力(株)志賀原子力発電所2号炉,12月には中部電力(株)浜岡原子力発電所5号炉の第一次公開ヒアリングが行われるなどの進展が見られた。
 また,原子力施設の新増設に係る安全審査に関しては,1994年5月より安全審査が行われていた東北電力(株)女川原子力発電所3号炉の設置許可が1996年4月に,設計及び工事の方法の認可が9月に行われた。このほか,東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所6号炉が使用前検査に最終的に合格し,11月より営業運転を開始した。なお,東通原子力発電所1号炉の設置許可申請が8月に行われ,現在通商産業省による安全審査が行われている。
 いずれにしても,今後とも関係者は原子力施設の円滑な立地を目指して,原子力に関する国民の一層の理解が得られるよう,さらに努力していかなければならない。


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