第1章 国民とともにある原子力
2.原子力政策円卓会議の開催

(1)原子力政策円卓会議の設置及び開催

 原子力政策円卓会議では,モデレーターの議事進行により国民各界各層から招へいした人々と原子力委員とが,原子力に関する様々な分野について議論を行いました。
 会議は全面的に公開され,議事録などはインターネットでも提供されています(科学技術庁ホームページ(http://www.sta.go.jp/)内の「原子力委員会からのお知らせ」)。
1996年4月以降9月までに11回の会議が行われましたが,様々な分野の専門家,地方自治体の首長,原子力に批判的な意見を持つ方,そして公募による参加者など幅広い分野の人々が,公開の場で,原子力について忌憚なく意見を交わし,議論の成果はモデレーターにより提言などの形でとりまとめられました。

①国民との対話,国民の声の反映のための取組の強化
 国では,昨今の原子力政策に対する不安感などの高まりを真摯に受け止め,原子力政策に関する国民的合意形成に向けて努力してきている。
 もとより,原子力開発利用に当たっては,[国民とともにある原子力」でなければならないことは,1994年6月に原子力委員会が策定した原子力開発利用長期計画にも示されており,これまでも国は,国民の理解と協力が原子力開発利用にとって不可欠であることを繰り返し表明してきている。具体的には,例えば,原子力開発利用長期計画の策定に際して意見募集を実施し,「ご意見を聞く会」を開催(1994年3月)したほか,「『もんじゅ』についてご意見を聞く会」を開催(1995年2月)するなど国民との対話,国民の声の政策への反映に努めてきた。
 しかしながら,今日の状況に照らし,一層の努力が必要であることを強く認識し,「原子力政策に関する国民的合意の形成を目指して」(1996年3月)に示された様々な施策に,関係者が一丸となって取り組んでいる。
②原子力政策円卓会議の設置
1996年3月15日,原子力委員会は,原子力政策円卓会議の設置を決定した。
 原子力政策円卓会議(以下「円卓会議」という。)は,原子力政策に対して一層の透明性,アカウンタビリテイ (分かりやすく説明をする責任)が求められている現状を踏まえ,国民各界各層から幅広く参加を求め,その多様な意見を今後の原子力政策に反映させることを目指し,原子力委員会の一組織として設置したものである。同会議においては,単に我が国のエネルギー確保という観点のみならず,世界的・歴史的な視点を踏まえ,現代の世代が豊かな社会を次の世代にどのように引き継いでいくかというような問題も含め,幅広い対話が行われることとなった。
③円卓会議の運営
 国民各界各層に幅広く参加を求める円卓会議の運営に当たっては,参加者の間で十分に討議が行われるよう様々な工夫が行われた。まず,会議を運営し,とりまとめを行うモデレーターを複数の有識者に委嘱することとし,議事及び議事録も全面的に公開することとした。原子力委員会は4月16日,大学教授,ジャーナリスト,評論家など6名の有識者をモデレーターとして決定し,発表した。*
 円卓会議では,このモデレーターの議事進行の下,国民各界各層からの招へい者と原子力委員を交え,議論が進められた。その結果,4月25日の第1回以降9月18日まで11回の会議が開催され,各界各層からの招へい者は,のべ127名に上った。これらの招へい者は,原子力ばかりでなく,エネルギー問題全般に関する専門家,また,広く自然科学系から人文・社会系にいたる様々な分野の研究者,立地地域を中心とした地方自治体の首長,電気事業者,ジャーナリスト,評論家,文化人など多彩な分野の方々であり,また,原子力に批判的な意見を持つ方々からも毎回参加を得て,熱心な討議が行われた。このほか,原子力に関して国民からの率直な意見を得るため,科学技術庁が,都道府県からの推薦及び一般公募により委嘱した原子力モニターにも参加の希望を募ったほか,広く国民に一般公募を行った。とくに,原子力モニターからの公募及び一般公募に際しては,若い方の意見を得るため,30歳未満の方が半数以上となるように配慮して抽選を実施した。
 また,会議の内容の記録としては,会議の概要をまとめた議事概要と出席者の発言について可能な限り忠実に再現した議事録が,それぞれ,各回,出席者の確認を得つつ作成された。これらの議事録,議事概要は,公開され,インターネットを通じても提供されている。

 インターネットによる原子力政策円卓会議に関する情報提供:科学技術庁ホームページ(http://www.sta.go.jp/)内の「原子力委員会からのお知らせ」


*「原子力政策円卓会議のモデレーターについて」:資料編321ページ参照。

 また,一部の会議については,約4時間にわたる会議の模様全体がテレビでも放映された。円卓会議は,東京ばかりではなく,京都市,横浜市,そして「もんじゅ」をはじめ,原子力発電所が立地している敦賀市でも開催した。
 このように,円卓会議の開催に当たっては,一人でも多くの国民に円卓会議の議論の輪に加わっていただけるよう,情報公開を心がけた運営を行った。この結果,11回の会議を通じて,毎回,平均して200名を超える傍聴があり,とくに敦賀市で開催された第10回円卓会議には500名を超える傍聴があった。また,科学技術庁ホームページの円卓会議の情報にアクセスした件数が延べ約3万2千件(1996年11月末現在)に上るなど,国民の高い関心がうかがえた。
 円卓会議は,幅広い分野の人々が,公開の場で原子力について忌憚なく意見を交わし,同時に多くの国民がその議論に触れ,原子力に関する様々な問題について考える「場」を提供するものであり,「国民とともにある原子力」という観点からも,意義のあることと考えている。


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