第II部 各論
第3章 核燃料サイクル

5.プルトニウム燃料の製造

 我が国は,核燃料リサイクルを推進するため,使用済燃料の再処理を行い回収されるプルトニウムを利用することとして,段階的に開発努力を積み重ねている。
 プルトニウムの利用形態に関しては,ウラン資源の利用効率が特に高い高速増殖炉での利用を基本とし,高速増殖炉の実用化を目指すこととしているが,また,我が国が高速増殖炉の実用化に向けて,実用規模の核燃料リサイクルに必要な技術,体制等を整備していくため,軽水炉自体によりプルトニウムのリサイクル利用及び,核燃料利用の面で融通性に富む新型転換炉における,プルトニウム利用を進めることとしている。
 このように使用済燃料の再処理により生ずるプルトニウムは,高速炉用MOX燃料及び軽水炉,新型転換炉用MOX燃料への利用を図ることが可能である。高速増殖炉及び新型転換炉の開発の進展に応じて加工体制を整備していくとともに軽水炉への利用の要請に対応していく必要がある。

(1)硝酸プルトニウムの混合転換
 MOX燃料の原料となるプルトニウム原料粉は,海外再処理で得られたもの及び東海再処理工場から得られた硝酸プルトニウムを動力炉・核燃料開発事業団が独自に開発した「マイクロ波加熱直接脱硝法」によって混合転換しなものを使用している。
 本技術の実用化を図るためのプルトニウム転換技術開発施設は,1983年4月からの試運転以後,1993年3月末までに約8,620キログラムの混合転換粉を製造している。

(2)MOX燃料加工
 MOX燃料加工の研究開発は,動力炉・核燃料開発事業団を中心として実施されてきており,その加工実績も1993年3月末までの累積で約123トンM40Xに達しており,我が国は世界的に見てトップレベルにある。
 現在の製造設備能力は,新型転換炉原型炉「ふげん」用燃料製造施設の10トンMOX(プルトニウム燃料第二開発室)/年及び高速増殖炉用燃料製造施設の5トンMOX(プルトニウム燃料第三開発室FBRライン)/年である。FBRの実験炉「常陽」と原型炉「もんじゅ」及びATRの原型炉「ふげん」に用いるMOX燃料については,今後とも動力炉・核燃料開発事業団が製造を行うが,新型転換炉実証炉用燃料についても同事業団のプルトニウム燃料第三開発室ATRラインの整備が予定されている。
 また,軽水炉による核燃料リサイクル利用計画及び2000年度に予定されている六ケ所村の再処理工場の操業開始を踏まえ,年間約100トン程度の国内MOX燃料加工の事業化を図る必要があり,現在,民間関係者を中心として,事業内容に関し具体的な検討が進められている。
 その事業化の推進のためには,国内における技術の実証を図るとともに,動力炉・核燃料開発事業団の有するMOX燃料加工技術の民間事業者への円滑な移転を行なう必要がある。そのため,動力炉・核燃料開発事業団のプルトニウム燃料第三開発室の活用等について,関係者の間で早急に検討を進める必要がある。
 また,海外再処理により回収されるプルトニウムについては,少なくとも一定期間の間,適切な量を海外においてMOX燃料加工することとされており,電気事業者において,軽水炉におけるプルトニウム利用のため,その具体化が進められている。


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