第3章 我が国における原子力開発利用の展開
1.我が国における原子力発電の動向

(3)プルトニウム利用への展開

 我が国は,ウラン資源の有効利用を図り,エネルギーの安定供給に貢献するため,使用済燃料の再処理により得られるプルトニウムの利用体系の確立を目指すこととしている。その際,ウラン資源の利用効率が圧倒的に優れている高速増殖炉の利用を基本とするが,当面は軽水炉及び新型転換炉において一定規模でのプルトニウム利用を進めることとしている。
 原子力委員会は,1989年5月「核燃料リサイクル専門部会」を設置して,軽水炉でのプルトニウム利用の進め方,ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の加工体制の整備,海外からのプルトニウム返還輸送の進め方等について,検討を開始した。

①軽水炉によるプルトニウム利用及び新型転換炉
 我が国における軽水炉によるプルトニウム利用(プルサーマル)は,電気事業者を中心に進められており,現在,ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の少数体実証計画が進められている。これに続いて,実用規模の実証計画を1990年代前半を目途に進め,その後,本格利用に移行することとしている。
 新型転換炉(ATR)の開発は,これまで動力炉・核燃料開発事業団において進められてきており,現在,原型炉「ふげん」(電気出力16万5千キロワット)が順調に運転されている。
 また,これに続く実証炉については,電源開発(株)が1999年の運転開始を目指して,青森県大間町に電気出力60万6千キロワットのATR建設のための準備を進めている。

②高速増殖炉
 我が国における,高速増殖炉(FBR)の開発は,これまで動力炉・核燃料開発事業団を中心に進められてきている。同事業団の実験炉「常陽」(熱出力10万キロワット)は,現在まで順調に運転されており,各種技術データが得られている。この成果を踏まえ,同事業団では民間の協力を得て,1992年の臨界達成を目指して福井県敦賀市に原型炉「もんじゅ」(電気出力28万キロワット)の建設を進めている。

 実証炉については,日本原子力発電(株)を中心として,1990年代後半の着工を目途に,実証炉関係の研究開発,基本仕様の選定等を行うこととしている。また,日本原子力発電(株)は,動力炉・核燃料開発事業団から開発技術の円滑な移転を受けるため,1989年3月,同事業団との間に「高速増殖実証炉の研究開発に関する技術協力基本協定」を締結した。
 また,動力炉・核燃料開発事業団の大洗工学センターを中心として原型炉「もんじゅ」,大型化等に関する研究開発が実施されており,民間においても所要の研究開発が進められている。

③高速増殖炉使用済燃料の再処理
 高速増殖炉使用済燃料の再処理は,高速増殖炉の増殖の特性を発揮させ,燃料の有効利用を図るために不可欠である。
 この技術については,動力炉・核燃料開発事業団において,実規模モックアップ試験,高レベル放射性物質研究施設における基礎的データの蓄積等が図られている。
 高速増殖炉時代の核燃料サイクルの要となる高速増殖炉使用済燃料再処理の研究開発は,高速増殖炉の研究開発と整合性を図りつつ行うこととしており,今後は,工学規模でのホット試験を経て,2000年過ぎの運転開始を目途にパイロットプラントを建設することとなっている。

④MOX燃料加工
 プルトニウム利用体系を確立するためには,多量のプルトニウムの安全取り扱い技術を含めて所要の研究開発を進め,MOX燃料加工の実用化を図る必要がある。
 MOX燃料加工については,動力炉・核燃料開発事業団が行ってきており,現在,供給能力は,新型転換炉原型炉「ふげん」用燃料製造施設10トン/年及び高速増殖炉用燃料製造施設5トン/年となっている。1989年3月には,同事業団が1966年にMOX製造の技術開発に着手して以来累積100トンMOXの製造を達成した。これらに続き,現在,新型転換炉実証炉用燃料製造施設(40トン/年)の建設が進められている。
 また,電気事業者によるプルサーマル実用規模実証計画用燃料加工については,動力炉・核燃料開発事業団の施設を活用し,その設備増強等により対応することとしている。その後の本格利用については,原則として民間が事業主体として実施することとなっている。

⑤プルトニウムの輸送
 海外再処理によって回収したプルトニウムの国際輸送については,関係機関の緊密な連携の下に輸送体制の整備を図ることとしている。
 回収プルトニウムの国際輸送の方法としては,航空輸送及び海上輸送が考えられる。1988年7月に発効した新日米原子力協力協定では,一定のガイドラインに従う航空輸送に対し,包括同意が得られた。また,その後の日米両国の交渉を経て,同年10月には,一定のガイドラインに従う海上輸送についても包括同意が得られることとなった。
 現在,航空輸送については,動力炉・核燃料開発事業団において輸送容器に関する検討を進める一方,米国原子力規制委員会(NRC)において,具体的な試験基準案の作成が進められている。また,海上輸送については,将来の輸送を想定した所要の準備が進められている。


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