第2章 核燃料サイクル

5.核燃料物質の輸送

 海外から我が国へ輸送される核燃料物質は,発電用低濃縮ウラン燃料の場合は,海外で濃縮された六フッ化ウラン またはさらに転換加工された二酸化ウラン粉末の形態で輸送されている。
 これらの核燃料物質は,加工事業所間においては,二酸化ウラン粉末,また,加工事業所と原子力発電所等の間においては,新燃料集合体の形で輸送されている。
 使用済燃料については,東海再処理工場で再処理する場合は,各原子力発電所から,使用済核燃料専用運搬船「日の浦丸」により東海再処理工場へ輸送されている。また,英国及びフランスに再処理を委託しているため,同様の専用運搬船により,両国へも輸送されている。
 核燃料物質の輸送は原子力発電設備容量の増加に伴い増えており,昨年生じたフランスの貨物船沈没事故あるいはプルトニウム輸送では大きな関心を集めた。
 すなわち,昭和59年8月25日,ベルギー沖の公海上で,六フッ化ウラン入りの輸送容器30基を積載したフランスの貨物船がカーフェリーと衝突し,約15mの深さの海域に沈没した。しかし,積荷は全て回収され環境への影響がなかつたことが確認されている。
 また,同年11月15日には,フランスにおいて再処理され回収されたプルトニウムが,我が国に船舶田本船籍)により輸送された。輸送に当たっては,他の核燃料物質と同様に,関係省庁が各々の法令に基づいて輸送の安全確保に万全を期したところである。なお,プルトニウムの輸送については,航空機による輸送が今後の有力な輸送手段の一つとして国際的な関心が高まっているため,現在安全確保の観点から検討がなされている。
 また,海外再処理に伴う返還廃棄物の輸送に関し,輸送基準を適用するに当たって必要な諸条件など安全性に係る事項についても検討されている。


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