第10章 核拡散防止
5 核物質防護

(2)我が国における核物質防護

 我が国においても,昭和51年4月,原子力委員会の下に核物質防護専門部会を設置し,我が国の国情に即した核物質防護のあり方について調査検討を行い,昭和55年6月,報告書をとりまとめ,その内容は新しい長期計画に盛り込まれた。
 その中において,
① 核物質の盗取等が発生する恐れがある場合,又は,発生した場合において事業者等,治安当局及び規制当局が有機的に連携協力が図れるよう体制を整備すること。
② 関係行政機関において今後の原子力施設及び核物質の輸送量の増大,核物質防護措置に関する国際的要請に対応して,必要に応じ核物質防護に係る法令整備等を図り,また核物質防護条約については,批准に備え諸般の整備を進めること。
③ 事業者等が中心となって核物質防護システム全体の有効性,信頼性等を高めるために必要な研究開発を進め,国はその有効性等を確認し,また適切な規制を行うために必要な研究開発を推進すること。
が,長期的指針として提示された。我が国においては,上記の長期計画及び核物質防護専門部会報告書に沿った形で,関係行政機関において所要の施策が講じられてきているところであり,科学技術庁においても,核燃料物質の輸送については輸送のたびごとに,原子力施設の新設又は重大な変更のたびごとに届出を受け,適宜指導を行っている。昭和56年の届出件数は,核物質の輸送に伴う届出272件,原子力施設の新設及び重大な変更に伴う届出1件であった。
 核物質防護の目的を実現するためには,国が行う規制に必要な基準,指針,評価手法等についての研究開発,施設等の核物質防護システム及びその構成機器等の研究開発の推進が必要であり,科学技術庁において所要の研究開発が実施された他,現在,日本原子力研究所及び動力炉・核燃料開発事業団において,関連研究開発が実施されているところである。
 昭和57年度の我が国における核物質防護研究開発項目は次表のとおりである。


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