第5章 安全確保及び環境保全のための調査研究等
2 環境放射能調査

(1)核実験に関する放射能調査

① 経緯及び平常時における放射能調査
 政府は,昭和36年10月,核実験に伴う放射性降下物の漸増に対処するため,内閣に放射能対策本部を設置し,その方針等に基づき,現在,科学技術庁を中心に関係各省庁,都道府県等の協力のもとに,環境放射能水準に関する調査研究を実施している。
 この調査は,本来諸外国の核実験に由来する放射性降下物を対象としたものであるが,原子力施設所在県で行う調査では,次第に原子力施設周辺もあわせ対象とするようになってきていた。しかし,昭和49年度から電源開発促進対策特別会計により原子力発電所,使用済燃料再処理施設等の周辺において府県が行う放射線モニタリングに対し,放射線監視交付金が交付されることになったので,国が一般会計の放射能調査委託費により都道府県に対して委託している調査から原子力発電所等を直接対象とするものを除くこととした。
 放射性降下物を対象とした調査は,いわば,放射能調査全体の基盤をなすかたちで行われており,これに原子力施設周辺の調査,原子力軍艦寄港に伴う調査がかみ合わされて総合的に国民の健康と安全が確保されていることを監視し,確認していくようになっている。

② 核実験時における放射能調査
 最近において,核実験による我が国への放射能の影響がみられたのは中国の核実験のみである。中国は昭和51年9月26日に第19回目の核実験(大気中)を行い,引き続き10月17日に第20回目(地下),11月17日に第21回目(大気中),更に,昭和52年9月17日に第22回目(大気中)の核実験を行った。そのうち,大気中の核実験である第19回目,第21回目及び第22回目の核実験に関して,放射能対策本部は,幹事会を開催し,核実験時における調査体制をとって調査を行った。この調査は全国の高空浮遊じん,雨水落下じん,地表浮遊じん,牛乳等の放射能を測定又は分析するものであり,これらの一部について,平常値より高い放射能が検出されたが,放射能対策本部が定める放射能対策暫定指標の第1段階(監視を強化する必要があるレベル)より低い値であったため,行政上の措置をとる必要はなかった。
 また,第20回目の核実験は地下実験であったため平常時調査を行ったが,その結果,異常は認められなかった。

③ 研究の状況
 適切な放射能対策を実施するため放射線医学総合研究所をはじめ,その他の国立試験研究機関において,環境,食品,人体における放射性核種の挙動,汚染対策等について研究を行っている。
 また,昭和34年以来,我が国の環境放射能調査及びその対策研究等の成果について関係国立試験研究機関,関係都道府県衛生研究所,関係民間機関等の参加を得て,毎年「放射能調査研究成果発表会」を開催してきたが,昭和51年度は,11月に第18回発表会を放射線医学総合研究所において開催した。


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