第4章 保障措置及び核物質防護

5 核物質防護

 「核物質防護」とは,核物質の盗難等の不法な移転に対する防護及び原子力施設又は核物質の輸送に対する妨害,破壊行為に対する防護をいう。
 核物質防護については,原子力の開発利用の進展に伴う核物質取扱い量の急速な増大,組織的な暴力集団による不法行為に対する不安の増大等を背景に,近時,それをめぐる動きが急速に活発化してきている。
 特に,近時,原子力資材の輸出国が,輸入国に対し,当該原子力資材について一定の核物質防護上の措置を講ずることを輸出の条件としてきている点が注目される。
 我が国においては,核物質に対しては,原子炉等規制法等関係法令の実施運用により,核物質防護に対する重要性の高まりを反映して,種々の防護措置が講ぜられてきたところであるが,上記のような諸情勢に適切に対処するため,昭和51年4月,原子力委員会のもとに,「核物質防護専門部会」が設置された。
 同部会は,我が国の国情に即した核物質防護のあり方等について調査,審議を進め,昭和52年9月,その第1次報告書をとりまとめ,原子力委員会に報告を行った。
 委員会としては,我が国の主要な原子力施設の防護状況は,国際原子力機関が各加盟国の核物質防護制度のガイドラインとして発表した「The Physical Protection of Nuclear Material」(INFCIRC/225)に示されている核物質防護の要件に照らして,概ね満足し得る状態にあると考えている。
 しかし,近年,原子力資材の輸出入に当たっての条件の一つとして核物質防護の問題が二国間協定で確保しようとするすう勢にあり,このような見地から我が国の核物質防護制度に対する国際的信頼性を確保すべく,法制面の整備を進め,実施すべき核物質防護措置の内容を明確にするとともに,対応体制を確立する等今後一層の努力を払う必要があると考える。


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